株価
MIXIとは

株式会社MIXIは、東京都渋谷区に本社を置く日本のIT企業で、もともとは国内SNSの先駆けである「mixi」を運営する会社として2000年代に大きな存在感を放った。しかし現在では事業構造が大きく変化しており、スマホゲーム「モンスターストライク(モンスト)」を中心とするデジタルエンターテインメント事業が圧倒的な主力となり、売上の大半を占める“ゲーム企業”へと進化した。コンピュータエンターテインメント協会や日本オンラインゲーム協会の正会員でもあり、エンタメ産業の中心企業のひとつとして位置付けられている。
SNSとしてスタートした「mixi」は、日本における初期のコミュニティ文化を形成した歴史的サービスでもあり、招待制SNSとして一時期は絶大な人気を誇った。しかしスマホ時代へのシフトや他SNSの台頭により利用者数は減少し、現在はエンタメ・スポーツ・コミュニティ事業の一部として継続されている形になっている。とはいえ、広告収入や一部有料サービス「mixiプレミアム」、アフィリエイトなどによる収益源は維持されている。
一方で、同社の転機は2013〜2015年にかけて「モンスターストライク」が爆発的ヒットを記録したことに始まる。これによりゲーム事業が急拡大し、2015年にはゲーム・映像領域を統括するブランド「XFLAG」を立ち上げ、ゲーム開発、アニメ化、イベント事業、オフライン施策など多面的なエンターテインメント展開を推進した。2022年の社名変更を機にXFLAGブランドはMIXI本体へ統合され、より一体的なエンタメ戦略が強められている。
MIXIはゲーム一本足ではなく、スポーツ関連事業にも積極的に参入している点が大きな特徴である。2019年には競輪・オートレースのネット投票サービスを運営する「チャリ・ロト」を買収し、ギャンブル領域にも参入。自社開発の投票アプリ「TIPSTAR」との二本柱でサービス展開し、若年層からライト層に向けたスポーツベッティング分野を強化した。また競馬情報で圧倒的シェアを持つ「netkeiba.com」を運営するネットドリーマーズを買収し、2020年には競輪情報サイト「netkeirin.com」もオープンするなど、“競技×情報×投票”という三位一体のプラットフォームを構築している。
さらに、スポーツチームの経営にも踏み込み、J1サッカーの「FC東京」やプロバスケットボールB1の「千葉ジェッツふなばし」を傘下に収めている。これらを統合したスポーツ事業を、モンストやmixiに並ぶ第3の柱へ育成する方針を掲げており、プロスポーツビジネス・メディア・投票サービスを包括的に展開している点は国内でも非常に稀有なモデルである。また、千葉市に建設された屋内競輪場「TIPSTAR DOME CHIBA(旧・千葉JPFドーム)」では、新競輪競技「PIST6(ピストシックス)」の運営をJPFとの合弁で実施しており、“新しいスポーツの創出”という領域にも踏み出している。
このほか、コミュニティ発のサービスとしては、家族向け写真共有アプリ「家族アルバム みてね」など、安心・安全なコミュニケーションサービスも強化しており、ゲーム・スポーツに続く新たな収益源としての成長期待がかけられている。mixi時代から培ったコミュニティ運営ノウハウを軸に、生活に寄り添うプロダクト群を展開している点はMIXIらしさの象徴ともいえる。
このようにMIXIは、SNS企業という旧来のイメージからは大きく変貌し、「ゲーム × スポーツ × コミュニティ」を柱とした多角的なIT・エンタメ企業へと進化している。モンストで築いた巨大収益基盤を活かしつつ、スポーツIP、投票サービス、メディア事業、コミュニティアプリ、さらには新規エンタメ領域まで手を広げ、収益構造の安定化と将来性の確保を図る姿が特徴的である。
MIXI 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 146,867 | 24,820 | 18,250 | 5,161 | 70.9 | 110 |
| 連24.3 | 146,868 | 19,177 | 15,669 | 7,082 | 99.7 | 110 |
| 連25.3 | 154,847 | 26,600 | 26,511 | 17,601 | 255.4 | 120 |
| 連26.3予 | 155,000 | 20,000 | 19,000 | 13,000 | 193.0 | 120 |
| 連27.3予 | 156,000 | 21,000 | 20,000 | 13,700 | 203.4 | 120 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 15,751 | -7,350 | -8,326 |
| 2024 | 9,181 | -6,852 | -15,730 |
| 2025 | 27,476 | -14,490 | -10,378 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 16.8% | 2.8% | 2.3% | – | – |
| 2024 | 13.0% | 4.0% | 3.4% | – | – |
| 2025 | 17.1% | 9.8% | 7.8% | 28.3倍/19.9倍 | 1.10倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
MIXIの業績を過去3年と26.3期予想まで並べて見ると、まず売上は1,468億円 → 1,468億円 → 1,548億円 → 1,550億円(予想)と、エンタメ企業にしては非常に安定した推移をしており、売上のブレは小さい。一方で利益面はモンストのイベント・コラボ施策や広告宣伝費の調整、スポーツ事業の投資負担などで上下はあるが、大局的には「利益は出せる体質が続いている」ことが分かる。
営業利益を見ると、248億円 → 191億円 → 266億円 → 200億円(予想)となっており、24.3期の落ち込みの後に25.3期で一気に回復、26.3期予想は控えめだが200億円規模を維持している。経常利益も182億円 → 156億円 → 265億円 → 190億円と同じように反発しており、ゲーム事業の収益力がまだ十分残っていることが確認できる。
特に25.3期の純利益は176億円と跳ねており、EPSが255円という高水準まで上昇している。これは投資家心理にとって非常にプラスだが、26.3期は130億円(EPS193円)とやや保守的なガイダンスとなっている。それでもEPS190円台というのは十分に高いレベルであり、株主還元を維持できる利益余力は大きい。
指標面を見ると、25.3期の営業利益率は映像・ゲーム企業としては優秀な水準で、利益率の改善が続いてきたことが分かる。ROEも9%台に乗っており、資本効率は過去より明確に改善している。ROAも7%超と、総資産に対しても十分利益を生み出せる状態となっている。
PERは高値平均28倍・安値平均19倍、PBRは1.1倍で、これは“利益体質が安定しているにもかかわらず過度に評価されていない”という位置にある。ゲームに依存した企業に見えるが、スポーツ・投票サービス・コミュニティの収益構造が年々広がっているため、企業の価値は以前より拡張している。
総合すると、MIXIはモンスト依存度が高いという古いイメージとは裏腹に、利益体質をしっかり確保しながら新規事業やスポーツ投資を続けられるだけの財務力とキャッシュを持つ安定型企業となっている。業績の上下はあるが、落ち込んだ年でも黒字を維持できるほどの体力があり、直近は純利益・EPSともに高水準。PBR1.1倍という株価水準を考えても、割高感はほとんどなく、中期視点では「安定収益+やや成長」タイプの銘柄として評価できる。
爆発的成長を狙うタイプではないものの、利益とキャッシュフローの強さ、株主還元の安定性を重視する投資家にとっては、比較的手堅い投資対象といえる。
配当目的とかどうなの?
MIXIの配当利回りは、26.3期・27.3期ともに4.14%が見込まれており、東証プライム銘柄の中でも上位に入る“高配当水準”となっている。ゲーム・エンタメ企業としては珍しく、配当政策が安定している点が大きな特徴で、利益が上下する年でも120円配当を維持する方針が継続されている。EPSが190〜200円前後あるため、配当性向としても60%程度に収まり、無理のない範囲で高配当を続けられる財務体力がある。
MIXIは純現金が潤沢で、有利子負債も少なく、キャッシュフローも比較的安定しているため、「業績に連動して減配するリスクが低い」という点は配当狙いの投資家にとって大きな安心材料になる。ゲーム会社特有の“ヒットタイトルへの依存による業績のブレ”は一定程度あるものの、近年はスポーツ事業・投票サービス(チャリロト、TIPSTAR)・コミュニティアプリなど、収益源が多角化してきており、配当の継続性はむしろ高まっている。
配当利回り4%超、かつキャッシュリッチで安定配当を維持している企業は多くないため、「高配当+比較的低リスク」を求める投資家には相性が良い銘柄といえる。特に現在の株価水準がPER・PBRともに割安圏で推移していることを考えると、株価が大きく下落しにくい構造があり、インカムゲイン目的で中長期保有する戦略が取りやすい。爆発的に株価が伸びるタイプではないが、毎年安定した配当を取りつつ、業績次第でゆるやかな株価上昇も期待できる“配当寄りのバリュー銘柄”として見れば十分魅力的な位置にある。
今後の値動き予想!!(5年間)
MIXIの現在値2,897円を基準に今後5年間の株価を考える場合、同社特有の「ゲーム依存と事業多角化の両立」「高配当で下値が固まりやすい構造」「モンストIPの持続性」「スポーツ・投票サービス事業の成長角度」という4つの軸が将来を左右する。23〜25年の業績推移を見ると、売上は1,460〜1,550億円で非常に安定しており、モンストの収益貢献が依然として強いことが分かる。利益は年によって波はあるものの、25.3期には経常利益265億円、純利益176億円まで一気に伸びており、EPSも255円と高い水準を実現した。投資家が最も警戒する“ヒット依存の業績崩壊リスク”についても、現状の数字を見る限り「ゲーム事業はまだ収益源として十分な力を維持している」というのが実態である。
また、投資家にとって評価すべき点は、MIXIが近年積極的に進めている「事業の多角化」である。チャリロトやTIPSTARを中心とした投票サービス事業は、ギャンブル市場のオンライン化という構造変化を追い風に伸長しており、モンストのように巨大な規模にはならなくとも、安定的なストック収益に育ってきている。さらに、競馬情報ポータル「netkeiba」、競輪情報サイト「netkeirin」、プロスポーツチーム(FC東京、千葉ジェッツ)の運営など、いわば“スポーツ × メディア × 投票”を統合した独自のエコシステムを形成しており、ゲーム企業から「総合エンタメプラットフォーム企業」へ進化しつつある。この収益分散構造は、株価の下値を固くする役割を強く持つ。
こうした前提を踏まえると、今後5年間の株価は次の3パターンに分かれてくる。
【良い場合】
モンストIPが一定の人気を維持しつつ、新規タイトルやコラボ施策が成功し、ゲーム収益が再び上向くパターン。また、スポーツ事業や投票サービス事業が広告・コンテンツ収入と組み合わさって成長し、EPSが200円前後で安定、ROEが8〜10%台に乗る展開が理想形である。この場合、市場から「安定収益+成長性」の両方を評価されて、PERが20〜22倍まで戻り、PBRも1.4倍前後に切り上がる可能性がある。5年後の株価は3,800〜4,500円が十分に視野に入り、配当を受け取りながら資産価値の上昇も期待できるシナリオになる。
【中間の場合】
主力ゲーム事業は大きくは落ち込まないが、新たに急成長する領域も見込めず、全体として“横ばい〜微増”に留まるケース。EPSは170〜200円の間で推移し、PBRも1.1倍前後に張り付く可能性が高い。スポーツ・投票サービスは黒字を維持するものの、爆発的成長には至らず、企業全体の利益を押し上げるほどにはならない。この場合、株価は現在値付近の2,800〜3,200円を行き来する可能性が高く、高配当(4%前後)が下値を支えながら、キャピタルゲインよりインカムゲインで報われるタイプの安定シナリオとなる。
【悪い場合】
ゲーム事業の収益が想定より落ち込み、モンストのアクティブ率や課金が低下する一方、新規タイトルの成功確率も高くない状況が続くパターン。加えて、スポーツ・投票事業の伸びが鈍化し、営業利益率が低下、EPSが150円割れとなる可能性もある。市場から「成長性の欠如」と見なされ、PBRが1倍を割り、0.8〜0.9倍付近に沈むリスクが出てくる。この場合、株価は2,200〜2,500円まで下落する恐れがある。ただし、MIXIはキャッシュリッチで財務が健全なため、極端な崩落は起こりにくく、2,000円割れのような展開は想定しづらい。
【総括】
MIXIは、過去の “モンスト一本企業” というイメージとはすでに異なり、スポーツや投票サービスなど複数の収益源を持つ「安定型のエンタメ企業」に変わってきている。そのため、株価のボラティリティは比較的低く、下値が非常に固い。一方で、強力な成長材料が出れば市場評価が一気に回復する余地も残されており“守りが強いが攻める余力は残る”という興味深い銘柄である。現在の株価水準であれば、長期のインカムゲイン目的にも、復活期待を込めた中期保有にも適した位置にあるといえる。
この記事の最終更新日:2025年11月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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