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ケアネットとは

ケアネット株式会社は、東京都千代田区に本社を構える、医療関係者向けのデジタルプラットフォームサービスを提供する企業である。1996年に日本橋蛎殻町で創業し、当初は医療従事者向けに医薬品情報を届けるサイト運営からスタートした。創業当時から「医療×インターネット」を掲げ、医師が必要とする最前線の医療情報や医薬品情報をオンラインで提供する先駆的な企業として成長してきた。インターネット黎明期から医療情報のデジタル化に取り組んできた歴史を持ち、ITと医療の交差点に立つ企業と言える。
現在では、医師向け専門サイト「CareNet.com」を中核に、医薬品情報、疾患解説、治療ガイドライン、症例解説、オンライン講座、医療動画、医師向けニュースなど、多岐にわたる専門コンテンツを展開している。医師会員の基盤は年々拡大しており、国内の医師の相当数が同社のサービスに登録するなど、医療従事者向けの情報プラットフォームとして確固たる存在感を築いている。なかでも動画コンテンツやEラーニングなどは需要が高く、医師の学習スタイルの変化に対応したオンラインサービスとして強みを発揮している。
同社の主な収益源は製薬企業向けのデジタルマーケティング支援であり、医師会員基盤を活用したターゲティング広告、Web講演会(ウェビナー)の企画運営、コンテンツ制作支援、疾患啓発活動のサポート、アンケート調査(リサーチサービス)、さらにはオンラインMR(医薬情報担当者)サービスなど、医薬品プロモーションをデジタル側から支援する多様なサービスを展開している。近年、製薬企業の営業スタイルが大きく変わり、従来の「MRが医療機関を直接訪問するモデル」から「デジタルを活用した非対面型情報提供」へ移行が加速しているため、ケアネットのようなデジタルプロモーション企業の需要は高まり続けている。
2007年には東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)に上場し、上場後も医師会員ネットワークの拡大やデジタルサービスの高度化に取り組んできた。オンライン講演会の制作ノウハウや、医師の行動データを活用したマーケティングソリューションなどは、他社が容易に模倣できない強みであり、プラットフォームとしての競争優位性を確立している。
さらに2020年には東京海上ホールディングスと資本業務提携を締結し、医療データの活用や医療現場のリスク管理、保険領域の新規サービス創出など、医療と保険をつなぐ新しい価値創造にも取り組み始めている。これにより、従来の医療情報サービスに加え、医療・保険・データの三領域を掛け合わせた新しい事業機会が生まれており、今後の成長ドライバーとして期待されている。
現在のケアネットは、医療従事者向けメディア、製薬企業向けデジタルプロモーション、オンライン医療教育、医療データ活用ビジネスなど、多角的に事業を展開している。デジタル医療情報プラットフォームとしての存在感は強く、特に医師会員基盤と専門性の高いコンテンツ力は大きな強みである。医療情報のネット化がさらに進む中で、同社の事業領域は今後も継続的に拡大する可能性が高く、医療業界のデジタルトランスフォーメーションを支える重要なプレーヤーとして位置づけられている。
ケアネット 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益EPS(円) | 配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20.12* | 5,304 | 1,510 | 1,506 | 815 | 19.6 | 2 |
| 21.12 | 8,004 | 2,532 | 2,556 | 1,609 | 38.1 | 6 |
| 22.12 | 9,327 | 2,851 | 2,894 | 1,847 | 41.7 | 6 |
| 23.12 | 10,235 | 2,428 | 2,467 | 1,510 | 33.9 | 12 |
| 24.12 | 11,182 | 2,361 | 2,367 | 1,139 | 25.8 | 12 |
| 25.12(予) | 12,500 | 2,750 | 2,620 | 1,650 | 39.8 | 0 |
| 26.12(予) | 14,000 | 2,800 | 2,700 | 1,700 | 41.1 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 1,779 | -1,067 | -260 |
| 2023 | 1,722 | -431 | -287 |
| 2024 | 1,823 | -1,767 | -1,573 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 23.7% | 13.4% | 10.6% | – | – |
| 2024 | 21.1% | 10.2% | 8.0% | 38.6倍 / 17.1倍 | 4.39倍 |
| 2025 | 24.4% | 16.7% | 13.2% | 予想:28.12倍 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ケアネットの業績を見ると、売上は毎年増加しており、医療デジタル領域の需要の強さがそのまま数字に表れている。特に製薬企業のデジタルプロモーション需要が伸びていることで、オンライン講演会やWeb施策の案件が安定的に増えており、業績の基盤は非常に強い。売上は102億から111億、予想では125億まで伸びており、事業規模は着実に拡大している。
利益面では、23.12期の純利益が15億から24.12期には11億へと減少しているが、これはコスト増や投資負担の一時的な影響が大きく、事業に大きな問題があるわけではない。むしろ25.12期予想では純利益16億まで回復するとされており、利益率の改善とともに、再び成長軌道に乗りつつある状況が見て取れる。営業利益率も23%前後と高く、製薬業界におけるデジタル施策の必然性が高まっていることを背景に、利益の質は高い水準にある。
ROEやROAを見ると、24.12期に一度落ち込んでいるものの、25.12期予想ではROE16%台、ROA13%台と大きく改善が見込まれている。資本効率が高く、利益に対して無駄な資産を抱えていない構造であるため、今後も安定的に高いROEを維持しやすい企業だと言える。
一方で、株価評価を見るとPBRが4倍前後とかなり高い水準にあり、成長株としてのプレミアムが乗っている状態だ。PERも高値平均38倍と市場から強い成長期待を受けており、割安株ではない。25.12期予想でもPER28倍と決して低くはないため、株価上昇の余地は業績の上振れに強く依存する構造となっている。今後の株価がしっかり上昇するためには、売上と利益の継続的な成長を市場に示し続けることが必須となる。
配当面では注意が必要で、25.12期と26.12期の配当が「0円」となっており、配当狙いの投資とは相性が悪い時期に入っている。成長投資を優先しているとも考えられるが、株主還元を期待する投資家にとってはややマイナス要素になる。一方で内部留保を積み上げ、事業成長のための投資を進めるフェーズと捉えることもできるため、中長期での株価成長を狙うのであれば必ずしも悲観する必要はない。
総合すると、ケアネットは「成長性と収益性の高さを持つ医療デジタル企業」であり、売上・利益の拡大が続く限り株価も評価されやすいタイプの銘柄だ。ただしPBR4倍・PER30倍前後という高評価が続いているため、投資妙味は業績の上振れが前提となる。配当がゼロに転じた点をどう評価するかも投資家によって意見が分かれる部分で、安定配当を目的とする投資には向かず、成長目線で中期的な株価上昇を狙う投資家向けの銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
ケアネットを配当目的で考える場合、まず真っ先に確認すべきなのは、25.12期の配当予想が“-”で26.12期に至っては利回りが0.00%と、実質的に配当を出す予定がないという点である。これまで同社は12円前後の安定配当を続けてきたが、ここにきて急に配当をゼロにしたということは、経営としては当面の資金を内部にため込み、事業拡大や投資へと回す方針にシフトしたと見てよい。医療DXの市場は依然として成長余地が大きく、製薬企業のデジタルマーケティング需要も高いことから、成長投資を優先するという判断自体は理解できる動きである。
ただ、配当目的の投資という視点に限って言えば、配当が完全にゼロになったことで、ケアネットは“配当銘柄”とは言いにくい状況になっている。配当がない以上、株主還元を期待して投資するタイプの銘柄ではなく、値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う成長株に該当する。株価評価もPBR4倍台、PER予想28倍と、決して割安ではないため、株価上昇の余地は業績成長に依存する構造になってくる。
配当がゼロということは、短期的なインカムゲイン(配当収入)が完全に消える一方で、企業としては成長投資に舵を切ることで将来の収益拡大を狙っていると考えられる。医療系オンラインプラットフォームという事業の性質上、会員基盤やコンテンツ投資、技術投資は将来的な利益成長につながりやすく、企業側にとっては再成長のモメンタムを作りたいタイミングなのかもしれない。ただし、配当を期待する投資家にとっては魅力が大きく後退するのは事実で、配当利回りの観点からは明確に“魅力が低い銘柄”という評価になる。
まとめると、ケアネットは現在のところ、配当目的の投資とは相性が悪く、配当収入を重視するスタイルには向いていない。むしろ利益拡大と株価上昇を狙う成長株として捉える方が正しく、配当を期待するなら他の銘柄を選ぶべきだと言える。一方で、医療DXの波に乗る企業としての成長ポテンシャルは依然として高いため、値上がり益を狙うのであれば一定の魅力は残っている。あくまで“配当目的”という条件をつけた場合、現在のケアネットは選択肢から外れるのが妥当な判断になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価1,122円を起点に、ケアネットが今後5年間でどのような値動きをたどる可能性があるのかを考えると、まず前提として、この会社は医師向けの情報プラットフォームを運営し、製薬企業向けのデジタルプロモーションを主な収益源とする企業であるため、医療DXの流れや製薬業界のマーケティング投資の方向性に株価が強く影響を受ける構造になっている。売上は安定して増加傾向にあるものの、最近は投資負担などで利益がやや不安定になっており、業績の強さと市場評価が揺れ動きやすい局面にある。
まず良い場合のシナリオでは、製薬業界におけるデジタル化がさらに加速し、オンライン講演会やWeb施策、オンラインMRの需要が増加し続けるパターンが考えられる。ケアネットが持つ医師ネットワークやコンテンツ制作力は強みであり、これが追い風になれば売上は年10%前後の伸びを続け、利益率も改善して再び高い営業利益率を取り戻せる可能性がある。こうした業績回復が続けば市場からの評価も戻り、PERが25~30倍程度のレンジを取ることも十分あり得る。この場合、5年後の株価は1,800円から2,300円程度まで上昇する可能性があり、医療DXの拡大が強く働けば2,500円近くまで伸びるシナリオも想定できる。
中間のシナリオでは、売上の増加は続くものの、利益の伸びが限定的で、安定成長はしているものの爆発力には欠ける状態が続く。製薬企業のデジタル施策は一定の需要があるものの、各社の広告費やプロモーション費に波があり、利益率が伸び悩む形だ。こうしたとき市場からの評価は落ち着き、PERは15〜20倍程度に収まりやすい。株価は1,300円から1,600円あたりを中心に推移し、大きく下落するわけではないが、大幅な上昇も期待しにくい。ケアネットは医療に特化した安定型ビジネスであるため、底堅さはあるが派手な値動きにはなりにくい銘柄と言える。
悪い場合のシナリオでは、製薬業界の広告投資が縮小し、Web講演会やオンラインプロモーションの費用が見直されるパターンが考えられる。医療業界の景気は比較的安定しているが、製薬企業の収益状況によってプロモーション費用が抑制されることは珍しくなく、その影響を受けやすいのがケアネットの特徴でもある。さらに利益率の低下や配当ゼロが続くことで市場からの成長評価が薄れ、PERも10倍前後まで圧縮される可能性がある。この場合、株価は900円から1,050円あたりまで下落するシナリオが現実味を帯び、場合によっては800円台まで落ち込むリスクも否定できない。
総合すると、ケアネットは医療DXというテーマ性のある分野で着実に成長している企業だが、最近の利益のブレや配当ゼロの方針変更によって、市場からの評価が揺れやすいタイミングにある。中長期では医療情報のデジタル化が進むため成長余地は依然として大きいものの、短期では製薬業界の投資状況に左右されやすく、株価が安定しにくい側面も持っている。配当でのリターンは期待できないため、値上がり益を狙う成長投資として向いている銘柄であり、業績が再び明確に上向く局面では株価もしっかり評価されていく可能性がある。
この記事の最終更新日:2025年11月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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