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パソナグループ(2168)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

パソナグループとは

株式会社パソナグループは、東京都港区南青山に本社を置く、日本有数の総合人材サービス企業であり、人材派遣会社「パソナ」を中心に数多くのグループ企業を束ねる持株会社である。1976年の創業以来、人材派遣の先駆的存在として業界を牽引してきた企業で、現在は国内人材サービス業界の大手として業界3位の規模を誇っている。「社会の問題点を解決する」という創業理念を掲げ、多様な働き方を支える支援、人材育成、雇用創出、地域活性化など、社会課題に向き合う事業展開を進めている。

事業の中核となるのは、人材派遣を中心としたエキスパートソリューション、企業の間接業務を代行するBPOソリューション、正社員紹介・再就職支援を行うキャリアソリューションなどで、幅広い人材サービスを提供している。特にBPO分野では、官公庁・自治体・企業の事務処理、窓口業務、コールセンター運営、バックオフィス支援など多様な業務を受託しており、企業や行政の業務効率化を支える重要な役割を担っている。

一方で、子育て支援、教育、介護といったライフソリューション事業も展開しており、保育サービス、介護支援、教育プログラムなど「働く人の生活」を支える領域にも事業範囲を広げている。近年は一部福利厚生関連子会社を売却するなど事業再構築を進め、成長分野や社会課題の解決に直結する領域へ経営資源を重点配分している。

また、地方創生にも強く注力しており、淡路島を中心に本社機能の移転やイベント・観光事業の創出、地域雇用の拡大などを推進している。行政・企業との協働により、地域に新しい産業・雇用を生み出すことを目指した取り組みは注目を集めている。グローバルソリューションとしては海外でも人材サービスを展開しており、外国人材の活用や海外拠点との連携支援も行っている。

パソナグループは、多様な働き方を可能にする社会づくりを目標に掲げ、女性、シニア、若年層、外国人材など、多様なバックグラウンドを持つ人材の活躍をサポートしている。人材派遣業の枠を超え、社会課題に寄り添った幅広いサービスを展開する総合人材企業としての存在感を確立しており、日本の雇用・労働市場を支える重要な企業として位置づけられている。

パソナグループ 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高 営業利益 経常利益 純利益 一株益(EPS) 配当
2021.5 334,540 19,940 20,379 6,784 173.4 30
2022.5 366,096 22,083 22,496 8,621 220.2 35(特別)
2023.5 372,579 14,377 15,366 6,099 155.7 35
2024.5 356,733 6,794 7,152 95,891 2,448 75(特別)
2025.5 309,240 -1,237 -460 -8,658 -221.8 75(特別)
2026.5予 330,000 2,500 2,800 500 13.2 75(特別)
2027.5予 340,000 3,000 3,300 1,650 43.5 75(特別)

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF 投資CF 財務CF
2023 5,961 -12,502 -2,292
2024 7,397 94,252 -12,879
2025 4,327 -47,600 -15,055

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

決算期 営業利益率 ROE ROA PER(高値平均/安値平均) PBR
2023 3.8% 11.2% 2.2%
2024 1.9% 64.5% 31.8%
2025 -0.5% -6.5% -3.3% 14.2倍/11.0倍 0.55倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

パソナグループは、人材派遣業界の大手でありながら、ここ数年で事業ポートフォリオが大きく変化している企業である。かつての主力だった福利厚生事業や一部の安定収益事業を売却し、地方創生や観光事業、淡路島への本社移転など、従来の人材ビジネスとは異なる方向へ経営の軸足を動かしてきた。この再構築が功を奏していないわけではないが、収益性への影響が一時的に大きく出ているのは確かで、数字にもはっきり表れている。

まず、本業の収益動向を見ると、2023年から2025年にかけて営業利益が大きく低下している。2023年の営業利益は144億円だったものが、2024年には67億円に半減し、2025年にはついに営業赤字に転落した。これはBPOの採算悪化や人件費の増加が影響しているうえ、淡路島関連の地方創生事業がまだ本格的に収益を生んでいないことも背景にある。一方で売上高は依然として3,000億円規模を維持しており、企業基盤そのものが崩れているわけではない。ただし本業の利益率が低く、営業利益率は2023年の3.8%から2025年にはマイナスに落ち込んでいるため、企業体質の改善にはまだ時間がかかるように見える。

財務指標を見ると、2024年は特殊要因により純利益が958億円まで跳ね上がり、ROEは64%、ROAは31%という異常値になっている。これは一部事業売却の特別利益によるものであり、本業の実力とは全く別物である。投資判断を誤らないためにも、この数字をそのまま評価には使えない。実力値は2023〜2025年の低下傾向で見るべきで、2025年のROEが-6.5%、ROAが-3.3%という点は本業が厳しい環境に置かれていることを示している。

一方で、株価指標を見ると、2025年のPERは11〜14倍、PBRは0.55倍と非常に割安である。特にPBR0.5倍台は人材派遣業界の大手としてはかなり低い部類で、資産価値に対して株価が著しく抑えられている状況だと言える。この割安感が単なる「業績悪化による値下がり」なのか、それとも「本業の反転が期待される局面」での安値なのかで評価は大きく変わる。現状はまだ業績の底打ちがはっきりしていないため、割安感だけで強気にはなりづらいが、改善余地がある領域が多いことも事実である。

特にBPO事業は安定収益が期待できる領域であり、自治体業務のデジタル化や民間の効率化ニーズの高まりを考えると、中長期では収益回復につながる可能性がある。また、淡路島で展開している観光・クリエイティブ事業は、短期的には投資負担が大きいものの、地域ブランドとしての浸透が進めば新たな収益源になる可能性もある。ただしこれらは「投資先行型」であり、収益化には時間がかかることを理解したうえで評価する必要がある。

総合的に見ると、パソナグループは現在「事業の再構築期」にあり、本業の利益が落ち込む一方で、未来の成長領域に向けた投資を積極的に行っている段階だと言える。短期的な利益の落ち込みを嫌気した売りが株価に出ているが、PBR0.5倍台という水準は、もし収益回復が見えれば一気に買われる可能性も秘めている。ただし現段階では改善の確証がまだ弱く、投資判断としては短期ではリスクが高く、長期では改善シナリオに賭ける「中立〜やや弱気」あたりが妥当だろう。

淡路島プロジェクト・地方創生・BPO強化といった複数の成長ドライバーが将来的に数字に反映されるかどうかが、今後の最大のポイントとなる。積極的に攻めるよりも、業績の底打ちを確認した後のエントリーの方が安全度が高い銘柄といえる。

配当目的とかどうなの?

パソナグループの配当利回りは、予想で3.92%(26.5期・27.5期)と、現在の日本株全体の平均(約2%前後)と比べれば比較的高めの利回りになっている。ただし、この配当利回りが「安定したインカムゲインとして魅力的か」という点については慎重に判断する必要がある。

まず押さえておきたいのは、パソナの利益構造がここ数年で急激に揺れているという事実である。2025年には本業の利益が赤字(営業利益 -12億、経常 -4億、純利益 -86億)に落ち込み、会社としては厳しい収益環境にある。それにもかかわらず特別配当を含めて75円という水準を維持しているのは、ある意味「株主還元を無理にでも守っている」状態とも言える。

つまり現在の利回り3.9%は、一見するとインカム目的として魅力に見えるが、企業の稼ぐ力と比べると配当負担がやや重く、将来の維持性については不安要素を含んでいる。

また、パソナは近年、淡路島を中心とした地方創生事業に多額の投資を行っているため、内部留保を積み増したり、本業の利益を安定化させたりする余力が十分とは言い難い状況にある。これが収益改善に結びつけば問題はないが、投資負担が続いた場合、将来的には配当維持が厳しくなるリスクもある。

一方で、パソナは株主還元を重視する傾向が強く、過去にも安定的な配当を続けてきた実績がある。事業ポートフォリオの見直しが進み、本業収益が戻れば、現状の利回りは魅力的に転じる可能性もある。特にBPO事業はマーケットが拡大しており、構造改革が進めば利益が回復する余地は十分ある。

総合すると、「今のパソナを配当だけを目的に買う」のはややリスクがあるが、事業再構築が成功し、利益が回復するシナリオを見込むのであれば、中長期の配当狙いとしては検討余地がある。現時点では、安定インカム株というより「回復期待株型の配当銘柄」と表現した方が適切で、配当そのものの魅力はあるが、配当の安全度はやや不安定というのが正直な評価となる。

今後の値動き予想!!(5年間)

パソナグループの株価は現在1,912円だが、ここから5年先を見据える場合、事業構造の大きな転換期にあることを踏まえて考える必要がある。近年、同社は人材派遣やBPOという本来の収益源に加え、淡路島を中心とした地方創生事業や観光事業に大きく経営資源を投じている。これらの取り組みは将来的な成長を狙うものである一方、短期的には利益を圧迫しており、2025年に営業赤字を計上する結果にもつながっている。株価が割安水準(PBR0.5倍前後)に沈んでいるのは、こうした収益の不安定さを市場が慎重に見ているためと言える。

良い場合のシナリオでは、BPO事業の採算が改善し、自治体向け業務や企業のバックオフィス支援が伸びて、本来の利益体質が戻ってくる。さらに淡路島の観光・施設運営事業が黒字化し始めれば、これまで収益を圧迫していた新規事業がプラスに転じる。市場がそれを評価し、PBRが1倍に近づくような局面になれば、株価は3,200〜3,800円台まで見直される可能性が高い。人材業界自体は中長期的に一定の需要があり、景気回復局面では派遣需要も戻るため、上昇の素地は十分にある。

中間的なシナリオでは、本業の利益がゆっくりと戻り、派遣とBPOが「黒字だが成長は鈍い」状態で推移する。淡路島関連の事業は黒字化までは進まなくても、赤字幅が縮小し、企業全体の収益は安定方向に向かう。市場は極端に悲観することもなく、かといって強く評価する動きも弱く、株価は2,200〜2,700円のあたりで落ち着くと考えられる。5年で緩やかにリターンを重ねていくイメージで、配当利回り3.9%の水準は中長期の下支えとして一定の効果がある。

悪い場合のシナリオでは、地方創生や観光事業が思ったように収益化せず、投資負担だけが重く残るケースだ。本業のBPOも利益改善が進まず、採算の悪さが長期化すれば、市場は「この会社は収益を安定させる力が弱い」と判断し、評価水準はさらに低くなる。PBRが0.4倍まで沈む可能性があり、その場合、株価は1,300〜1,600円台まで下落する見通しとなる。配当を維持しても、業績悪化が続けば市場からはリスクの高い銘柄として扱われやすい。

総合すると、パソナは今、成長を目指して事業を組み替えている最中で、株価は割安だが不安定さも残るタイミングにある。良い方向に転べば株価は大きく見直される余地があり、悪い場合は長期低迷のリスクを抱える。現在の株価はその狭間に位置しており、今後の方向性を決めるのは本業回復のスピードと淡路島を中心とした新規事業の収益化だと言える。5年スパンで見れば上にも下にも大きく振れる可能性があるため、値上がり益を狙う場合は慎重な観察が求められる一方、長期で業績改善を見込む投資家にとっては割安な水準で拾える局面とも言える。

この記事の最終更新日:2025年11月29日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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