株価
井村屋グループとは

井村屋グループ株式会社は、三重県津市に本社を置く老舗食品メーカーグループの持株会社であり、傘下に菓子メーカー「井村屋」など多くの事業会社を持つ。1896年(明治29年)の創業以来、小豆を中心とした和菓子や冷菓の分野で独自の地位を築いてきた企業で、現在は東京証券取引所プライム市場に上場している。企業スローガンは「おいしい!の笑顔をつくる」。
井村屋グループの中核となるのは、羊羹・和菓子・中華まん・冷菓・加工食品など幅広いカテゴリーに及ぶ食品事業である。とりわけ、代表的な商品として知られる「あずきバー」は、その独特の固さとシンプルな原材料で全国的な人気を誇るロングセラー商品となっている。冷菓分野では「あずきバー」のほか、「やわもちアイス」シリーズ、「宇治金時バー」、「焼いもアイス」、たい焼アイス、抹茶つぶあん最中、ボール形アイスの「メロンボール」「スイカボール」「モモボール」など、多様なラインナップを展開。どれも小豆や和の素材を活かした商品開発が特徴であり、日本の冷菓市場を牽引してきた存在と言える。
菓子・和菓子の領域では、水ようかんや片手で食べられる小型ようかん、長期保存が可能な「えいようかん」、航空自衛隊との共同開発による「JASDF羊羹」、スポーツ向け補給食として作られた「スポーツようかん」といった機能性も備えた商品が多く、伝統的和菓子から現代のニーズまで幅広く対応している。さらに「きんつば」「カステラ」「ワンプッシュゼリー」など、ファミリー層向け定番商品も多数揃えている。
このほか、中華まんの分野ではコンビニ向け製品の委託製造から家庭用商品の販売まで一貫して行っており、肉まん・あんまん・カレーまん・ピザまんなどバリエーションも豊富である。食品分野でも、氷みつ、ゆであずき、お赤飯の素、豆ごはんの素など、家庭料理を支える加工食品や調味料を提供。日配食品として豆腐や大豆加工食品も扱っており、冷菓・和菓子だけでなく大豆製品・調味料など多角化にも力を入れている。
飲料では、機能性飲料「めぐるる」などを展開。商品の多くに小豆を原料として使っていることから、同社は「あずき文化」を積極的にブランディングしており、毎月1日を「あずきの日」、7月1日を「あずきバーの日」として制定し、日本記念日協会の認定も受けている。こうした記念日の設定は、井村屋ならではの独自文化の発信とファン層拡大の取り組みとして知られている。
企業マークとして1990年に制定された「アイアイマーク」は、imuraya の頭文字「i」を母と子に見立て、“母と子の絆”を表現したデザインで、井村屋の企業姿勢である「人と人とのつながり」「愛情・慈しみの心」を象徴している。商品開発にも「生活のそばにある優しい味」「親しみやすさ」が重視されており、これは長年支持されてきた理由のひとつでもある。
近年では、国内事業にとどまらず海外展開も積極的に進めており、マレーシア、中国などアジア圏への進出を強化している。特にアジアでのあずき商品の人気を背景に、東南アジア地域での冷菓・和菓子展開を拡大中である。原料の小豆相場の影響を受けやすいという課題もあるが、調達・原料管理の最適化を図りつつ事業の安定化に取り組んでいる。
総じて井村屋グループは、冷菓・和菓子・中華まんといった伝統的なカテゴリーを軸にしながら、大豆製品や調味料、飲料など事業の多角化を進め、さらに海外進出にも意欲的な総合食品メーカーである。長年培われた“小豆文化”をベースに、食文化の価値を広げ続けている企業といえる。
井村屋グループ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 44,685 | 1,992 | 2,284 | 1,611 | 123.2 | 28 |
| 2024.3 | 48,222 | 2,537 | 2,904 | 1,930 | 147.6 | 31 |
| 2025.3 | 51,121 | 3,005 | 3,169 | 2,198 | 168.3 | 36 |
| 2026.3(予) | 53,300 | 3,400 | 3,550 | 2,500 | 195.4 | 36 |
| 2027.3(予) | 55,800 | 3,600 | 3,750 | 2,600 | 203.2 | 36〜40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 2,452 | -2,374 | 398 |
| 2024 | 2,671 | -3,545 | 457 |
| 2025 | 6,068 | -1,833 | -4,083 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.4% | 8.6% | 4.7% | – | – |
| 2024 | 5.2% | 9.1% | 5.0% | – | – |
| 2025 | 5.8% | 9.9% | 5.9% | 15.3〜17.6倍 | 1.40倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
井村屋グループの直近の業績推移を見ると、売上は2023年の446億円から2026年予想の533億円まで緩やかに増加しており、食品メーカーとして安定した成長を続けている。営業利益も順調で、2023年の19億円から2026年予想では34億円と着実に積み上がっており、経常利益も22億円から35億円へ増えている。純利益も16億円から25億円と堅調な伸びを続けており、利益率の改善も着実である。
営業利益率は2023年が4%台、2024年に5%台、2025年には5%後半と年々改善しており、小豆相場や原材料価格の影響を受けやすい体質の中でもコストコントロールがうまく働いていることがうかがえる。ROEも9%前後、ROAは5%前後と、食品メーカーとして標準以上の資本効率を維持しており、企業としての財務健全性や収益性は比較的高い部類に入る。
株価指標を見ると、2025年度の実績PERが15〜17倍程度、PBRが1.40倍となっており、割高感は比較的少なく、成長性を考慮すれば妥当な水準といえる。急成長株のように爆発的な上昇を期待するタイプではないが、売上と利益が安定して伸びるディフェンシブな食品株としては評価しやすいバリュー寄りの位置にある。
井村屋グループは強いブランドを持つ冷菓「あずきバー」や「やわもちアイス」の安定した収益力を背景に、和菓子・中華まん・加工食品まで広い事業領域を持ち、地域の食文化にも根ざしたビジネスモデルが強みになっている。また、マレーシアなど海外展開が進んでおり、国内市場が成熟する中でも成長余地を持つ点はポジティブである。原材料の小豆相場など外部環境には左右されるものの、毎年利益を積み上げる体質ができており、食品株としての安定感は高い。
総合すると、井村屋グループは売上成長・利益成長・財務の安定性が揃った企業で、中長期の安定投資に向いた銘柄といえる。成長率は大きくないが堅実で、ディフェンシブ性やブランドの強さも評価点である。大きな株価上昇を狙うより、長期でじっくり保有し、安定した業績と適度な株主還元を享受するタイプの投資に適していると判断できる。
配当目的とかどうなの?
井村屋グループの配当利回りを見ると、2026年3月期と2027年3月期の予想利回りはいずれも1.40%となっており、数字だけを見ると配当目的の投資としてはやや物足りない水準である。食品業界には2〜3%台の配当利回りを出している企業も多いため、それらと比較すると井村屋は利回り面だけで投資するタイプの銘柄ではないという印象が強い。もちろん、低利回りだからといって企業が弱いというわけではなく、むしろ井村屋は業績の伸びが安定しているうえに財務体質も健全で、自己資本比率も高く、減配リスクが非常に小さいという意味では安心感のある企業といえる。
実際、売上と利益は年々着実に積み上げる傾向にあり、経営の安定性は高い。ブランド力のある「あずきバー」や「やわもちアイス」など、息の長い主力商品がしっかり収益を支えており、さらに中華まんや和菓子、調味料、大豆製品など多角化にも成功している。こうした事業基盤の強さがあるため、配当が急に減らされたり、極端に変動したりする心配は少なく、配当の安全性という点では非常に評価できる。
ただし、配当目的で投資する場合は、「利回りでしっかり稼ぎたい」という人にとっては1.40%という数値は魅力的とは言えず、優先順位は下がる。むしろ井村屋は、安定業績とブランド力を背景にした「守りの銘柄」として長期保有し、緩やかな増配と着実な利益成長を期待しながら持ち続けるスタイルが向いている。派手さはないが、コツコツと利益と配当を積み上げていくタイプの企業で、配当利回りではなく企業の長期的な安定性を重視する投資家に向いた銘柄という位置づけになるだろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
井村屋グループの株価は現在2,558円前後だが、この企業の特徴を踏まえると、今後5年間の株価推移は「急騰はしないが大きく崩れにくい」という、典型的なディフェンシブ株としての動きが中心になると考えられる。井村屋はあずきバーややわもちアイスといった圧倒的なブランド力を持つロングセラー商品を多数抱えており、天候・トレンドの影響を受けやすいアイス市場の中でも、長年安定した販売数を維持してきた。また、冷菓だけでなく羊羹、中華まん、豆製品、調味料、加工食品など多角化が進み、特に中華まんや加工食品はスーパー・コンビニ・業務用など幅広い販路を持つ。そのため、収益構造は年々安定化しており、売上も440億円台から550億円近くまで緩やかに増加している。
さらに最近では、マレーシアを中心とした東南アジア市場への進出も進み、和菓子文化・あずき文化の浸透を狙った海外展開がテーマになっている。海外事業はまだ利益インパクトこそ大きくないが、中長期では新たな成長源になる可能性を秘めている。企業としての財務体質も健全で自己資本比率が高く、減配リスクは極めて小さい。この安定感こそが井村屋の株価を支える要因であり、長期投資における安心材料となっている。
こうした特徴を踏まえて5年間の株価を考えると、まず「良い場合」には、冷菓や中華まんを中心とした主力事業が順調に売上を伸ばし、原材料価格も比較的安定した状態が続くシナリオが想定される。特に、やわもちアイスのシリーズ化強化や、地域限定フレーバー、新パッケージ戦略などが成功すればブランド価値がさらに高まる。海外での販売が軌道に乗れば売上と利益も上振れし、株価は5年後に3,300〜3,600円程度まで上昇する可能性がある。ディフェンシブ株としてはかなり良い伸びと言える。
「中間」のシナリオでは、現状の業績がそのまま無難に続いていく形で、売上は増えるが利益成長はゆるやか、株価もそれに合わせてゆったり動くような展開が想定される。食品メーカーらしく、派手さはないがコツコツ積み上げる形となり、株価は2,700〜3,000円程度のレンジで推移する可能性が高い。この場合、配当も安定的に増配されるため、長期の保有と親和性が高く、投資家が安心して持ち続けられる銘柄となる。
一方で「悪い場合」には、最大のリスク要因である原料の小豆価格や砂糖・乳製品などのコスト高が続き、営業利益率が押し下げられるシナリオが考えられる。また、冷菓市場は競争が激しく、天候に売上が左右される側面もあるため、冷夏が続くと主力の売上が伸び悩む可能性もある。こうした外部環境の逆風が重なると、株価は2,100〜2,300円程度まで下落する可能性があり、場合によっては2,000円割れを試す場面も出てくる。ただし、井村屋は財務が非常に健全で赤字化しにくい企業であるため、リスクが大きくても極端な暴落には至りにくいという特徴もある。
総合すると、井村屋グループは急速に成長する企業ではないが、安定性が高く、ブランド力が強く、食品メーカーとしての基礎体力も十分にある企業である。株価は大きな跳ね上がりは望みづらいが、大きな下落も起きにくい「中庸で堅実な値動き」が基本線となる。長期で考えれば、安定企業を手堅く積み上げたいタイプの投資家に向いた銘柄で、5年間の株価シナリオも緩やかな右肩上がりが中心になると考えられる。
この記事の最終更新日:2025年11月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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