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ヤクルト本社(2267)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

ヤクルト本社とは

ヤクルト本社株式会社は、東京都港区の本社を中心に、国内外へ幅広く事業を展開する日本屈指のヘルスケア企業である。乳酸菌飲料メーカーとしては国内最大手であり、「ヤクルト」をはじめとする独自の乳酸菌飲料を軸に、食品、化粧品、医薬品領域へ事業を広げることで、健康を総合的に支える企業体制を築いている。マスコットキャラクター「ヤクルトマン」や「人も地球も健康に」というスローガンは、同社が創業以来追求してきた“腸から健康を支える”という理念を象徴している。

ヤクルトの企業としてのルーツは、創始者である医学博士・代田稔が1935年に発見した「乳酸菌 シロタ株」にある。この菌株は現在でも同社の中心技術であり、腸内環境改善を目的として世界中で研究・応用されている。科学的根拠に裏打ちされた健康素材として、シロタ株ブランドは国内だけでなく国際的にも高く評価されている。また、飲料分野だけでなく、医薬品や化粧品にまで応用されている点が、ヤクルト独自の強みになっている。

海外展開では早くから積極的に事業を進めており、現在はアジア、中南米、北米、欧州など39カ国・地域へ進出している。とくにインドネシア、メキシコ、ブラジルなど新興国では、「ヤクルトレディ」と呼ばれる販売員による訪問販売が浸透し、生活インフラの一部として根付いている。海外売上比率は4割に達し、「日本の健康文化を輸出する企業」として独自の地位を確立している。

商品ラインナップは非常に広く、主力である「ヤクルト」「ヤクルト400」「ヤクルト1000」などの乳酸菌飲料に加え、「ジョア」「ソフール」「ミルミル」などのヨーグルト製品、さらには機能性表示食品まで幅広く展開している。とくにヤクルト1000は社会的な注目を集め、ストレス軽減や睡眠の質向上の効果が注目され、一時期は供給が追いつかないほどの爆発的需要を記録した。このヒットは、ヤクルトのブランド力と研究開発力が結びついた成功例といえる。

さらに、ヤクルトは食品メーカーという枠を超えた医療分野への進出にも強みを持つ。抗がん剤などを中心とした医薬品事業は、国内外で評価が高く、同社の収益源として確立している。乳酸菌研究の延長として、免疫や腸内細菌に関連した医療領域への応用研究も積極的に進められている。

化粧品事業では、乳酸菌由来の保湿成分や美容成分を活用した「パラビオ」「リベシィ」シリーズを展開し、エイジングケア領域で独自の存在感を持つ。これらの化粧品は、ヤクルト中央研究所が長年蓄積してきた微生物研究を応用したもので、医薬品や食品と同じ「科学的根拠」を持つことが特長となっている。

社外活動にも積極的で、プロ野球「東京ヤクルトスワローズ」の親会社としてよく知られており、スポーツを通じた健康促進や社会貢献にも力を入れている。元スワローズ選手が社員として活躍する場を設けているほか、陸上競技部やBリーグ、Jリーグのスポンサー活動など、地域貢献も幅広く行っている。

総合すると、ヤクルト本社は“乳酸菌の会社”という枠を超え、食品・医薬・美容を横断した総合ヘルスケア企業として独自のポジションを築いている。創業から一貫して掲げる腸内細菌研究の蓄積が、飲料を超えて、医療、化粧品、国際市場へと大きく広がり、唯一無二の企業ブランドを形成している点が最大の特徴である。

ヤクルト本社 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度(単位百万) 売上高 営業利益 経常利益 純利益 一株益(EPS) 一株配当
連23.3* 483,071 66,068 77,970 50,641 162.1 45
連24.3* 503,079 63,399 79,300 51,006 164.5 55.5
連25.3 499,683 55,391 75,860 45,533 150.5 64
連26.3予 495,000 53,500 69,500 45,500 155.2 66
連27.3予 510,000 55,500 71,500 46,500 158.6 66〜68

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

年度(単位百万) 営業CF 投資CF 財務CF
2023 86,513 -19,024 -44,531
2024 70,702 -43,906 -39,541
2025 84,687 -61,020 -31,466

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER PBR
2023 13.6% 10.1% 6.7%
2024 12.6% 9.2% 6.1%
2025 11.0% 7.9% 5.2% 高値 28.3倍 / 安値 18.7倍 1.27倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

ヤクルト本社の直近3年の利益動向や指標を見ると、同社は成熟企業としての安定感はあるものの、積極的に成長している局面とは言いにくい状況がはっきりしている。まず売上は5030億円→4996億円→4950億円と横ばいから微減、営業利益も634億円→553億円→535億円と3年連続でじりじり下げており、営業利益率も13.6%→12.6%→11.0%と縮小傾向が続いている。ヤクルト1000を中心とした大ヒットはあったものの、ブームがピークアウトし、原材料費や販管費の増加が効いて、企業全体の収益性は一段落したように見える。ROEは10.1%→9.2%→7.9%、ROAも6.7%→6.1%→5.2%と着実に低下しており、企業が株主資本を使ってどれだけ利益を生み出しているかという効率は落ちている。

一方で、財務基盤とブランド力の強さはさすがで、世界39カ国に販売網を持ち、宅配モデルや健康価値訴求型の商品の強みは依然として他社には真似できない競争優位性となっている。ただ、その強さを利益成長に結びつけるフェーズから、安定維持のフェーズに移っている印象が強く、積極的な増益を期待するというよりは“安定企業として保有するかどうかが判断軸になる銘柄だといえる。

問題は株価バリュエーションで、2025年のPERは高値換算で28.3倍、安値換算でも18.7倍と、利益が伸びていないにも関わらず評価はそれなりに高く、PBRも1.27倍と割安感は薄い。今の業績トレンドと見比べると、決して「安くて買いやすい」という水準ではなく、むしろブランドプレミアムが株価に乗っている状態に近い。配当利回りも1.3〜1.5%程度と高くはなく、インカムゲイン目的で買う魅力もそこまで大きくない。

総合すると、ヤクルト本社は大きく業績が崩れる心配は少ない一方で、現状では成長性が強く見込めるわけでもなく、割安でも高配当でもない“中立寄りの安定銘柄”という評価が妥当。積極的に買い向かう局面というよりは、材料が出て実績に反映されるまで様子を見たい銘柄で、長期で安定性重視の投資家なら持っていても問題ないが、攻めの投資という観点では魅力が薄いタイミングといえる。

配当目的とかどうなの?

ヤクルト本社を配当目的で考えた場合、結論としては「悪くはないが、積極的に選ぶほどではない」という位置づけになる。予想配当利回り(2026・2027)は2.70%と一見すると悪くない水準だが、ヤクルトが元々“高配当を武器にする企業”ではない点を踏まえると、利回りだけで買うタイプの銘柄ではないことがわかる。企業としては利益に合わせて配当を動かすタイプで、安定して毎年必ず増配し続けるような高還元企業でもない。

また、現在のヤクルトは、ヤクルト1000のブームが一巡し、利益が横ばいやや減少傾向にあるため、今後の増配余力がどれほどあるかは読みにくい。利益が力強く伸びている状況ではないため、配当に回せる割合が大幅に増えるとも考えにくい。財務基盤は良好で減配リスクは低いが、大きく増えていく配当を期待できる状況ではないのが正直なところである。

さらに、株価自体が割高水準(PER18〜28倍、PBR1.27倍)で推移しているため、配当利回りが3%を超えるような“利回り妙味のある銘柄”でもない。どちらかといえばブランド力と世界展開の安定感に評価がついているタイプで、配当で株主を引きつける銘柄とは方向性が異なる。

こうした点を踏まえると、ヤクルトを配当目的で買うのは少し中途半端で、純粋にインカムゲインを狙いたい投資家にはあまり向いていない。むしろ「大きくは崩れない安定株を長く持っておく」というスタンスのほうが合っている。一方で、配当目的なら食品・日用品セクターのなかでも利回りが明確に高い銘柄、あるいは連続増配の実績が強い企業を選んだほうが効率は良い。ヤクルトは“安定しているが配当目的では優先度が高くない銘柄”というのが現状の評価になる。

今後の値動き予想!!(5年間)

ヤクルト本社の現在値2,444円を起点に5年間の株価推移を考えると、この企業特有のビジネス構造や市場環境を踏まえる必要がある。ヤクルトは世界39カ国に展開し、宅配チャネルという独自の強みを持つ一方、主力のヤクルト1000のブームが一段落した今、再び高い成長を描けるのかが株価の方向性を左右する。原材料高や人件費上昇、海外市場の競争激化といったコスト面の逆風もあり、利益率はじわじわ低下してきている。直近の営業利益率は13.6% → 11.0%へと下がっており、高収益体質とはいえ成長の勢いが落ちているのは事実だ。またROEが10%から7%台へ落ち込んでいる点も、株主資本の効率性が低下しているサインとして市場に意識されやすい。

良いケースでは、
ヤクルト1000や高付加価値商品が再び社会的ブーム級のヒットとなり、供給体制の強化とともに継続的な需要が生まれる。宅配網と量販店販売の両面が伸びることで売上・利益ともに上向き、営業利益率が再び13%前後まで回復する可能性がある。また海外展開、とくにアジア地域での販売拡大が進み、人口増加国でのブランド浸透が加速すれば、成長企業としての評価が戻り、PER20〜25倍で株価が評価されるシナリオも十分あり得る。新商品や新菌株による健康効果訴求が再び注目されれば、メディア露出や口コミで人気が広がり、業績・株価ともに上振れする。こうした場合、株価は3,600〜4,200円まで上昇する見込みがある。

最も現実的なシナリオがこの中間パターン。
売上はほぼ横ばいで推移し、ヤクルト1000の需要はピークほどではないものの一定の安定需要が続く。国内市場では横ばいながら、海外ではアジア・中南米を中心にじわじわ拡大、ただし大きな跳ねは期待できない。営業利益率は11〜12%程度で推移し、企業全体としては「高収益な成熟企業」という評価を維持する。PERは15〜18倍程度の水準に収まり、株価は2,500〜3,000円のレンジに収まりやすい。大きな上昇材料はないが下落もしにくく、安定したディフェンシブ銘柄として堅調に推移するパターンである。

悪材料が重なる場合には、株価は1,800〜2,200円程度まで下落する可能性がある。原材料価格や物流コストの上昇、ヤクルトレディの不足と人件費増加、競合の機能性飲料の台頭などが響き、営業利益率が10%を割り込み収益性がじりじり低下する。ヤクルト1000の需要減速が目立つようになれば、売上の伸び悩みとともに利益減少がさらに鮮明になり、市場からの評価が下がってPERは12〜14倍程度に縮小する展開が想定される。海外市場でも為替リスクや規制強化が影響し、成長期待が薄れると、株価は割安水準まで売られ、2,000円前後のラインまで調整する可能性がある。

まとめると、ヤクルトはブランド力と宅配網を背景に急落しにくいが、利益の伸びが鈍い現状では「強く上値を狙う銘柄」ではなく、「安定的に推移しやすい成熟ディフェンシブ株」という位置づけになる。上昇には新たなヒット商品や海外の成長加速が不可欠で、材料が出ない場合は中間シナリオが最も現実的といえる。

この記事の最終更新日:2025年11月30日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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