株価
セントケア・ホールディングとは

セントケア・ホールディング株式会社は、東京都中央区に本社を置く大手介護サービス事業者である。同社は措置制度の時代から介護分野に参入しており、1983年に東京理科大学工学部OBの村上美晴らによって東京都台東区で日本福祉サービス株式会社として創業された。創業当初は訪問入浴サービスから事業を拡大し、徐々に訪問介護や訪問看護、居宅介護支援など在宅領域を中心にサービスを広げていった。その過程でM&Aや他社の事業引き継ぎを積極的に行い、地域密着型の運営を続けることで全国規模の介護企業へと成長した。
2005年にはジャパンケアサービスとの経営統合が進められていたものの、最終的に計画は白紙となった。その後の2007年には、業界再編の流れの中で株式会社コムスンが撤退した地域において、14県の在宅系サービス事業を承継するという大規模な事業移管が行われ、同社が提供するサービス網は一段と拡大した。また、経営面では業績の悪化を受けて社長交代が行われた時期もあり、創業者である村上氏が返り咲くなど、創業者色の強い経営体制が続いた。そのため、大株主である創業者の影響力が強い「ワンマン体質」と言われることもある。2012年4月1日には再び経営トップの交代が行われ、森猛が社長に就任し、村上氏は代表権を持つ会長に退いた。
現在のセントケア・ホールディングは、訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、居宅介護支援、福祉用具レンタル・販売、介護住宅改修など、在宅介護を中核とした多彩なサービスを全国で展開している。これにより、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けるための総合的な介護インフラの役割を果たしており、地域包括ケアシステムにおいて重要な存在となっている。また、医療との連携を強化し、看護師やセラピストを活用したリハビリ支援、認知症ケア、看取り支援など、より専門性の高いサービスの整備にも取り組んでいる。高齢化が進む日本において、同社のサービスは公的介護保険制度を支える基盤としても位置づけられており、今後も需要の拡大が見込まれている。
セントケア・ホールディング 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度(単位百万) | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 1株益(円) | 1株配(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 52,551 | 2,539 | 2,709 | 1,713 | 68.9 | 24 |
| 連24.3 | 54,057 | 3,034 | 3,155 | 2,005 | 81.2 | 25 |
| 連25.3 | 56,298 | 2,429 | 2,465 | 1,487 | 60.3 | 30 |
| 連26.3予 | 58,600 | 2,060 | 2,020 | 1,330 | 53.9 | 31 |
| 連27.3予 | 61,500 | 2,150 | 2,110 | 1,390 | 56.4 | 31〜32 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 2,003 | -1,120 | 198 |
| 2024 | 3,962 | -715 | -1,912 |
| 2025 | 1,720 | -993 | -1,562 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.8% | 11.7% | 5.8% | – | – |
| 2024 | 5.6% | 12.5% | 6.4% | – | – |
| 2025 | 4.3% | 8.8% | 4.8% | 13.8倍 / 10.5倍 | 1.74倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
セントケア・ホールディングの業績推移を見ると、売上高は着実に増加しており、高齢化が進むなかでの介護需要の底堅さが事業成長を下支えしていることがわかる。一方で、利益面では営業利益・経常利益・純利益が揃って減少しており、利益率も連24.3期の約5%から連26.3期予想では約3%へと低下している。売上が伸びているにもかかわらず利益が縮小している背景には、人手不足に伴う人件費の上昇、採用・研修費用の増加、物価上昇によるコスト増、さらに介護報酬改定など制度的な制約が重なっている点が挙げられる。介護業界全体に共通する課題が、同社の収益性にも直接影響を及ぼしていると考えられる。
EPSも24.3期の81円から26.3期予想では53円前後にまで低下しており、利益の縮小が株主価値にストレートに響いている状況だ。一方、配当は増配傾向が続いており、25.3期で30円、26.3期予想では31円と、利益が落ちる中でも株主還元を維持しようという姿勢が見える。ただし、利益が減少基調にあるなかでの増配は、長期的にみると持続可能性にやや懸念が残り、業績が底打ちしない限り将来的な配当の安定性に不安が出る可能性がある。
介護業界という事業特性を考えると、景気変動の影響を受けにくく、長期的には需要が拡大するという強みがある。しかし制度ビジネスである以上、利益率の改善には限界があり、労働集約型ゆえにコスト削減にも一定の制約がある。特に人件費比率の高さはビジネスモデル上避けられず、採算改善には効率化や事業再編など、構造的改革が求められる。一方で社会インフラとしての役割が強いため、売上の安定性は高く、景気後退局面でも急激に業績が悪化しづらいという点は評価できる。
そのため、同社を投資対象としてみる場合、短期的な値上がり益を狙う成長株というよりは、安定した売上と一定の配当を期待する“ディフェンシブ銘柄”としての位置づけが妥当になる。ただし、利益率が3%台まで低下している現状では、業績がどこで底打ちするかが非常に重要なポイントであり、今後の四半期決算で利益回復の兆しが見えるかどうかが株価の方向性を大きく左右するだろう。もし利益率が改善しないまま推移する場合、株価の上値余地は限定的になる可能性が高い。
一方で、コムスン事業承継以降、同社は在宅介護領域に強みを持つ企業としての地位を築いてきており、地域包括ケアの流れや在宅医療との連携強化など、政策的追い風が続く可能性もある。これらが利益改善につながる兆しが見えれば、中長期では再評価される余地もある。そのため、利益率の動きと今後の介護報酬改定の方向性を注視しながら、慎重に投資判断を行うことが望ましいといえる。
配当目的とかどうなの?
セントケア・ホールディングを配当目的で考えた場合、現時点の予想配当利回りが連26.3期・連27.3期ともに0.00%となっていることから、配当狙いの投資としては実質的に魅力がない水準といえる。仮に従来の配当方針やこれまでの増配傾向を踏まえれば、本来であれば利回りがある程度出るはずだが、ここで利回りがゼロ表示になっているのは、株価データ未入力や配当予想の反映タイミングの問題など、データ更新の影響で一時的に利回りが算定されていない可能性も考えられる。ただ、いずれにしても利回りが表示されていない状況では、配当だけを目的とした投資判断をするのは難しい。
同社はこれまで比較的安定した配当を出してきたものの、業績が直近では減益傾向にあり、EPSも低下しているため、配当を維持するための余力が弱まりつつあることも事実である。利益が伸びない中での増配は長期的な持続性に疑問が生じやすく、再び業績悪化が進めば減配リスクも想定される。介護業界自体が人件費や採用コストの高止まりによって収益改善がしにくい構造となっていることを踏まえると、配当目的として積極的に選ぶ優位性は乏しい。
また、配当株としての魅力を語るには、利回りが最低でも2〜3%程度は欲しいところだが、現状の表示値ではその基準を大きく下回っている。安定配当を狙った長期保有の銘柄として考えると、同社よりも、利益水準が安定しており、かつ業績連動性の高い配当政策を持つ企業の方が選びやすいと言える。
総じて、セントケア・ホールディングは、事業の安定性やディフェンシブ性は評価できるものの、配当目的という観点では現状の利回りデータを踏まえるとメリットは小さく、別の配当銘柄に比べて優先度は低いと判断される。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価は1,216円で、ここからの5年間の値動きを考える際には、介護業界特有の構造的な課題と長期的な需要増という相反する要因を踏まえる必要がある。セントケア・ホールディングは売上が毎年伸びているにもかかわらず利益率が落ち込んでおり、営業利益率も3%台とかなり低い水準にある。この利益率がどこで底を打つかが中長期の株価を大きく左右するポイントで、人件費の上昇や採用コストの増加、制度的な制約や物価上昇など、さまざまなコスト圧力が続いている状況では、短期的な収益改善は簡単ではない。
ただ、介護報酬の改定や業務の効率化がうまく進み、訪問介護や訪問看護の収益性が少しずつ改善してくるようであれば、利益率も持ち直し、株価が中長期で評価される可能性は十分にある。人件費の上昇ペースが落ち着き、設備投資やデジタル化の効果が出始めれば、営業利益率が再び4~5%台に戻ることも想定され、その場合は株価が1,600円台から1,900円程度まで回復するシナリオも考えられる。
一方で、多くの介護事業者が直面しているように、売上の増加と利益率の改善が必ずしもリンクしない状況が続く可能性もある。需要はあっても人件費やコスト増に押されて利益が伸びないという流れが続くと、業績は横ばい圏で推移しやすく、株価も1,200円から1,400円程度のレンジで動きやすくなる。ディフェンシブ銘柄としての安定感はあるものの、成長株のような大きな値上がりを期待できる環境ではなく、配当目的としても現状の利回りでは魅力に欠けるため、積極的に買われにくい状況が続くと考えられる。
さらに、悪い方向に振れた場合には、人件費高騰が止まらず利益率が3%を割り込み、EPSもさらに低下していくことになる。こうした状況が続くと配当の維持も難しくなり、投資家からの評価はさらに厳しくなる。市場全体がリスクオフに向かえば、株価は900円から1,050円程度まで下落する可能性もあり、収益の悪化が続く局面では株価の下押し圧力が強まりやすい。
総じて言えるのは、この銘柄は需要の安定性という強みがある一方で、人件費中心の収益構造という弱さも抱えており、今後の株価は利益率の改善が見られるかどうかに大きく左右されるということである。利益率が持ち直す兆しが出てくれば再評価される余地はあるが、改善が遅れる場合には長期間の停滞や下落も覚悟する必要がある。
この記事の最終更新日:2025年12月1日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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