株価
WDBホールディングスとは

WDBホールディングス株式会社は、「人材サービス事業」「CRO事業」「プラットフォーム事業」「その他事業」の4事業を中心に展開するWDBグループの持株会社である。創業者であり現社長の中野敏光が1985年に兵庫県姫路市で立ち上げた株式会社ワークデーターバンクを前身とし、研究職分野の派遣サービスを中心に事業を拡大してきた。その後、2002年にWDB株式会社へ社名変更し、2006年にジャスダック上場、2008年に東証二部へ市場変更、2013年には東証一部に指定された。現在は2022年の市場再編を経て東京証券取引所プライム市場に上場している。
2011年には持株会社制に移行し、WDBホールディングス株式会社がグループ全体の経営管理を担う体制となり、研究職派遣などの人材サービスは新設のWDB株式会社へ承継された。WDBは研究関連の派遣領域における国内最大手の企業であり、理学系研究職派遣の分野では「研究職で働く3人に1人がWDBグループ」というほど高いシェアを持っている。顧客は独立行政法人・国立大学などの公的研究機関から、大手メーカー・医薬品企業などまで幅広い。今後は顧客満足とスタッフ満足の両立を目指し、研究職市場のさらなる開拓を進めていく方針である。
CRO事業では、医薬品・医薬部外品の基礎研究から臨床試験以降の開発業務まで、幅広い工程を支援する研究受託サービスを提供している。グループ会社のWDBココ株式会社(東証グロース市場 7079 上場)、コーブリッジ、Oy Medfiles Ltd.などがこの分野を担い、国内外でサービスを拡大している。医薬開発分野では品質管理レベルの高さが求められるが、WDBグループは研究分野で培った専門性を活かし、CRO業界の既存の枠にとらわれない価値創造を目指している。
プラットフォーム事業では、スマートフォン時代の人材サービスのデジタル化ニーズに応えるべく、独自のインターネットサービスを展開している。グループ会社のネゾット株式会社が中心となり、人材派遣の発注・契約・管理をウェブで完結できる仕組みを構築している。代表的サービスとして、派遣サービスの依頼や労務管理を一元化できる「doconico(ドコニコ)」、複数派遣会社の契約・勤怠・請求管理ができる「ドコ1(ドコワン)」があり、AI(ChatGPT)も活用しながら利便性を高めている。直感的な操作性とペーパーレス化に強みがあり、企業の人材管理業務を効率化する独自のプラットフォームとして利用が広がっている。
その他事業では、これまでに築いた企業ネットワークや研究者コミュニティを活かし、M&A・事業承継支援や事業再生支援を行っている。また、WDB独歩株式会社などによる障がい者雇用促進の取り組み、データ入力・清掃業務など、社会的課題解決に寄与する活動も事業として展開している。
WDBホールディングス全体としては、理学系研究職や研究補助職の派遣で国内首位の地位を確立しつつ、医薬開発受託(CRO)、研究系プラットフォーム、事業承継支援など、研究・医薬・人材領域を中心に事業ドメインを広げている。研究開発や医薬品開発といった専門性の高い市場に強いことが大きな特徴であり、これまでの人材派遣の枠を超えた多角化を進めながら、「新しいスタンダードを創る」という企業姿勢を持って取り組んでいる。
WDBホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 47,602 | 5,508 | 5,614 | 3,540 | 179.8 | 51.5 |
| 連24.3 | 49,297 | 5,468 | 5,505 | 3,548 | 180.7 | 72.5 |
| 連25.3 | 51,136 | 5,068 | 5,095 | 3,051 | 155.4 | 62.5 |
| 連26.3予 | 51,100 | 4,200 | 4,300 | 2,400 | 122.2 | 62.5 |
| 連27.3予 | 52,000 | 4,600 | 4,700 | 2,600 | 132.4 | 62.5 |
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 3,553 | -337 | -1,307 |
| 2024 | 4,494 | -713 | -1,240 |
| 2025 | 4,367 | -3,334 | -1,419 |
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 11.5% | 12.8% | 9.7% | ― | ― |
| 2024 | 11.0% | 11.8% | 8.9% | ― | ― |
| 2025 | 9.9% | 9.5% | 7.3% | 高値平均 14.7倍 / 安値平均 10.3倍 | 0.95倍 |
投資判断
WDBホールディングスの直近の業績を見ると、売上は緩やかに伸びているものの、利益は減少傾向がはっきりと出てきている。研究職派遣とCRO(医薬品開発受託)を主力とする企業だけに、景気とはやや独立した専門領域で安定的に需要はあるが、利益率の低下は無視できないポイントである。
営業利益は54億→50億→42億へ減少し、営業利益率も低下傾向にある。ROEも低下しており、企業としての収益効率が悪化していることが分かる。研究職派遣の人件費増加、CRO事業における案件獲得競争、教育コストの増加など、利益を押し下げる要因が複数絡んでいると考えられる。
ただし、売上規模は堅調で、研究職の需要は底堅く、長期的に見れば理系人材市場は成長が続く領域である。そのため、業績が一気に崩れるようなリスクは小さい一方、短期的な利益改善には時間がかかる可能性がある。その意味では、成長企業というよりは「安定した基盤を持つ人材企業」という位置づけに近くなってきている。
PERについては2025年の安値平均が10倍台と割安感があり、PBRが1倍を割れている点も見逃せない。市場は利益減少を織り込みながらも「資産価値+安定需要」を評価しており、悲観一色ではない。もし利益が底打ちし、CROや人材派遣部門で改善の兆しが見えれば、株価の見直しが入る余地は十分にある。
配当は62円と利回りは比較的高く、利益が減っても一定の株主還元を維持している点は投資家にとってプラス。ただし、EPSが下がる中で配当を維持しているため、将来の増配余地はそれほど大きくない。
総合すると、WDBホールディングスは「利益が落ちてきている局面」であり、成長期待で買う銘柄ではないが、安定した研究職需要と高い専門性で底堅いビジネス基盤を持っている。割安水準で配当を取りながら、中期的に業績回復を待つ投資スタイルは十分成立する。一方、目先は利益率低下が続く可能性があるため、短期の値動きにはあまり期待しすぎない方が良い銘柄である。
配当目的とかどうなの?
WDBホールディングスを配当目的で検討する場合、まず目につくのは「利回りの高さ」と「配当の安定性」である。予想配当利回り(2026・2027年度)は3.94%と人材サービス企業としては比較的高く、東証プライム市場の平均と比べても十分に魅力的な水準にある。配当性向も過度に高くはないため、今後も配当が大きく減るリスクは小さいと考えられる。
同社は売上規模が安定しやすい研究職派遣を中心としており、景気の影響を受けにくい構造を持っている。製薬企業や化学メーカー、国立研究機関や官公庁など、比較的安定した案件が多いため、急激に売上が下振れして配当が不安定になるような事態は起こりにくい。医薬品開発支援(CRO)も一定の需要が続くため、経営基盤としては安定度が高い。
しかし注意すべき点もある。利益がここ数年やや減少傾向にあるため、増配余地は以前ほど期待できない。EPSが180円から155円、さらに予想では122円まで落ちていることを踏まえると、配当維持のための余裕度は徐々に小さくなってきている。今後も長期安定配当を維持できるとはいえ、増配よりも「現状維持が基本方針」になる可能性が高い。
とはいえ、PBR0.95倍という水準は、資産価値から見ても割安感があるため、株価下落のクッションとして働きやすい。配当利回り3.9%と合わせれば、配当を受け取りながら中期の株価回復を待つ投資戦略には向いている。特に、保守的で安定性を重視する投資家にとっては魅力が大きい。
総合すると、WDBホールディングスは「成長株ではなく安定配当を取る銘柄」として適している。配当が急減するリスクはそれほど高くなく、長期保有で3〜4%台の利回りを確保しながら、業績の底打ちやCRO事業の回復による株価再評価を待つという投資スタイルが合う会社である。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価1,583円を基準に5年間の株価推移を考えると、重要なポイントは同社のビジネスモデルが「理学系研究職の派遣とCRO(医薬品開発受託)」という専門職領域に強く依存している点である。需要そのものは景気に左右されにくく安定しているものの、近年は利益率の低下が続いており、市場評価がやや慎重になっている。今後の株価は、利益率が底を打つかどうか、CRO事業の回復、研究職派遣の単価改善が鍵を握る。
良い場合のシナリオでは、研究職派遣の需要が再び強まり、派遣単価の改善や稼働率の上昇により営業利益が増加に転じる。CRO事業でも新規案件が増え、医薬品開発の旺盛な需要が再び収益を押し上げる形になれば、利益率は10%に戻る可能性がある。この場合、市場評価も改善し、PBRは1.2〜1.5倍、PERも13〜16倍程度まで見直され、株価は5年で2,000〜2,400円程度を目指す動きとなる。特にCRO事業が勢いを取り戻すと、業績と株価のどちらも回復力が高まる。
中間の場合は、売上は横ばい〜微増で推移するが、利益の伸びが限定的で営業利益率が9%前後にとどまるケースである。研究職派遣の需要は底堅いものの、派遣単価や稼働率の伸びが鈍化し、CROも競争激化で利益率が以前のように戻らない。この状態では市場からの評価はPBR1.0〜1.1倍、PERは10〜13倍の範囲に収まり、株価は1,600〜1,900円のレンジで推移する。現在の株価から見ると大きくは上がらないが、下値も限定的で安定した値動きとなる。
悪い場合のシナリオでは、利益率の低下がさらに進み、CRO事業での案件獲得の遅れや研究職派遣の採用コスト増加が業績を圧迫する。営業利益が40億円を割り込む水準まで落ち込む場合、市場評価はより保守的となり、PBR0.7〜0.9倍、PER8〜10倍程度まで低下する可能性がある。この場合、株価は1,200〜1,400円まで下落する余地がある。ただし、同社の事業基盤は安定しているため、長期的に業績が崩壊する可能性は低く、大幅な下落というよりはじわじわと評価が縮むイメージに近い。
総合すると、現在の株価1,583円は「割高でも割安でもない水準」であり、業績の底打ちと利益率改善が確認されれば上値を追いやすい位置にある。一方で、利益率低下が続く限りは中間シナリオ〜やや弱めのレンジでの推移になる可能性が高い。配当利回りが約4%と高めであるため、株価が横ばいでも配当リターンを取りながら中期の業績回復を待つ投資戦略は比較的取りやすい銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す