株価
不二製油とは

不二製油株式会社は、大阪府泉佐野市に本社を置く食品素材メーカーであり、植物性油脂・製菓素材・大豆たん白といった分野で国内外に強固な事業基盤を持っている企業である。もともとは不二製油グループ本社として持株会社体制をとっていたが、その後商号を変更し、現在の形となっている。
1990年代には健康食品市場へ参入し、「soyafarm(ソヤファーム)」ブランドを立ち上げ、豆乳などの健康系製品を展開してきた。同社は「油脂事業」「製菓・製パン素材事業」「大豆たん白事業」という3つの柱を中心に、グローバルで食品企業向けの素材供給を行っている。特にチョコレート用油脂や機能性油脂では国内外で高い技術力を持ち、製菓メーカーやベーカリー向けに不可欠な素材を提供している。
大豆関連事業では、大豆たん白、大豆ペプチド、水溶性大豆多糖類など、多様な大豆由来素材を展開しており、大豆を新たなタンパク源として活用する「大豆ルネサンス」という取り組みを掲げている。これは、世界的な人口増加や環境問題を背景に、大豆を持続可能な食素材として位置づけ、技術革新によって新たな価値を生み出すことを目的とした長期戦略である。
不二製油が世界で初めて開発した独自技術「USS製法(Ultra Soy Separation)」は、大豆を卵や牛乳のように分離する特許技術であり、これによって「低脂肪豆乳」と「豆乳クリーム」という新素材が誕生した。これらは動物性原料より低カロリーで、風味のクセが少なく、多様な食品と相性が良いことから、和・洋を問わず幅広いメニュー開発に利用されている。泡立て可能な低脂肪豆乳や、乳製品では出せない旨味をもつ豆乳クリームなど、植物性食品の可能性を広げる革新的素材として注目されている。
また1980年代には、ティラミスブームの背景から、マスカルポーネチーズの代替素材として植物性クリームを使った「マスカポーネ」を開発。従来のマスカルポーネに比べ価格が約3分の1、保存期間は2倍以上と、業務用食品市場に大きく貢献した。このように不二製油は植物性油脂や大豆素材の分野で長年にわたり技術革新を続けており、食品業界におけるソリューション企業としての役割を担っている。
同社はこれらの技術力を背景に世界規模で事業を展開しており、アジア・欧州・北米などに拠点を持ち、グローバルな食品メーカーに向けた素材供給を行っている。植物性たん白質や代替食品が注目される市場環境において、不二製油は先端技術と独自素材を武器に、今後も需要拡大が期待されるプレイヤーである。
不二製油 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期(単位百万) | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 557,410 | 10,940 | 9,690 | 6,126 | 71.3 | 52 |
| 連24.3 | 564,087 | 18,213 | 16,791 | 6,524 | 75.9 | 52 |
| 連25.3 | 671,211 | 9,895 | 5,304 | 2,230 | 26.0 | 52 |
| 連26.3予 | 803,000 | 30,000 | 27,000 | 18,900 | 219.5 | 52 |
| 連27.3予 | 850,000 | 33,000 | 30,000 | 21,000 | 243.8 | 52 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 7,594 | -16,487 | 9,804 |
| 2024 | 48,242 | 8,803 | -50,007 |
| 2025 | -50,631 | -21,738 | 114,931 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.9% | 3.0% | 1.3% | ― | ― |
| 2024 | 3.2% | 2.8% | 1.3% | ― | ― |
| 2025 | 1.4% | 1.0% | 0.3% | 70.8倍 / 45.1倍 | 1.38倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
不二製油の直近3年の業績を見ると、まず目立つのは利益の不安定さだ。2024年(連24.3)は営業利益182億、純利益65億と一定の利益水準を保っていたが、翌2025年(連25.3)では営業利益98億、純利益22億へと急激に減少している。売上は5640億から6712億へと伸びているにもかかわらず利益が落ちている点から、原材料高やエネルギーコストの上昇、チョコレート用油脂や大豆関連素材といった主要事業の採算悪化、さらにグローバル展開による固定費増加など複数の要因が重なった可能性が高い。
特に2025年のEPS26.0円という数値は利益水準の低さを象徴しており、ROE1.0%、ROA0.3%という資本効率の悪さにつながっている。株主資本を十分に活かせていない状態で、収益構造に明らかな課題があることが読み取れる。この状態では市場から高い評価を得るのは難しく、投資妙味も限定的にならざるを得ない。
一方で2026年(26.3予)は営業利益300億、純利益189億という大幅な回復を会社側が見込んでいる。EPS219.5円という値も飛躍的な改善で、もしこの予想が実現すれば評価は大きく変わる。ただし実績の流れと比較すると、ここまでの改善は非常に急で、計画の実現性がどこまであるのか慎重に見極める必要がある。特に大豆たん白、チョコレート用油脂、グローバル生産体制など、同社のコア事業が本当に利益体質を改善できるかが鍵となる。
2025年のPERが高値平均70.8倍、安値平均45.1倍と極端に跳ね上がっているのは、利益が落ち込んだことで株価とのバランスが崩れているためで、実態としては業績悪化が割高感を生んでいる構造だ。PBR1.38倍も、利益が薄い状況を踏まえると割安とは言いにくい。市場がこの状態をどこまで織り込むかで、この銘柄の評価は大きく変わる。
総合すると、不二製油は大豆たん白やUSS製法による新素材など将来性のある技術を複数持つ一方で、現状は利益が安定せず、収益のボラティリティが大きい企業だと言える。大豆ルネサンス構想のような中長期テーマは魅力的だが、短期的には業績の浮き沈みが激しく、成長株としてもディフェンシブ株としても位置付けが難しい状態にある。2025年の弱い利益をどう評価するか、そして2026年以降の業績改善がどこまで現実的なのかが投資判断の最大のポイントになるだろう。
配当目的とかどうなの?
不二製油を配当目的で考える場合、結論としては配当投資にはあまり向いていないと言わざるを得ない。予想配当利回り(2026・2027年度)は1.47%と、日本株の平均利回りである2%前後を下回っており、高配当株として一般的に求められる3〜4%台には遠く及ばない。そのため、利回りだけで判断すれば投資妙味は小さい。
さらに問題なのは、業績が不安定であることから配当の信頼性も高いとは言いにくい点だ。直近では利益が大きく落ち込み、EPSが26.0円まで急減した時期もある。それにもかかわらず配当52円を維持している状態は、見方によっては業績に対して配当が過大になっている可能性を示し、将来の減配リスクを完全には否定できない。会社側は2026年に利益が大幅に回復する計画を示しているものの、その改善幅が非常に大きいため、どこまで現実的か慎重に見極める必要がある。
配当金自体は長期的に安定しているように見えるが、利益が不安定な状況が続けば、今後も同じペースで増配できるとは限らない。営業利益率の低さやROEの低水準を考えると、配当性向が上昇しやすい構造でもあり、持続性という観点でも注意が必要になる。
総合すると、不二製油は配当利回りが低く、業績のブレが大きく、配当の安全性も高いとまでは言い切れないため、安定したインカムを得る目的には向かない企業と言える。一方で、大豆たん白やUSS製法といった独自技術を持ち、中長期の成長テーマを抱える企業でもあるため、配当ではなく技術革新や事業変革への期待で保有するタイプの銘柄に近い。
今後の値動き予想!!(5年間)
不二製油の今後5年間の株価を考えるうえで重要なのは、業績の振れ幅の大きさと、2026年以降に計画されている大幅な利益回復がどこまで実行されるかという点である。現在の株価3,533円は、2025年時点の利益が大きく落ち込んでいる状況を反映しており、投資家の評価も慎重になっている。ただし、会社計画どおりに2026年の営業利益や純利益が改善すれば株価評価は変わる可能性がある。
良い場合は、2026年に予定している利益回復計画が順調に進み、大豆たん白やチョコレート用油脂など不二製油の強みとなる素材ビジネスが世界的に需要を伸ばすパターンだ。これに加えて原材料価格の落ち着きや生産効率の改善が重なれば、市場は「収益力が戻った企業」として見直しを進める可能性がある。このシナリオでは株価は安定的に上昇し、5年後には4,500〜5,200円程度まで戻る余地が考えられる。
中間の場合は、売上は伸びても利益改善がゆるやかで、会社計画ほどの回復には届かないケースだ。不二製油は構造的にコスト上昇の影響を受けやすく、原材料の変動や設備投資負担が重くのしかかる時期が続く可能性もある。この場合、株価は大幅には動かず、3,300〜4,000円のレンジで推移し、現在値近辺でのもみ合いが続く見通しとなる。事業のテーマ性は評価されるものの、決定的な業績改善が見えるまでは上値が重い状態が続く。
悪い場合は、2026年の利益回復計画が実現せず、コスト高や海外事業の不振、大豆素材市場の競争激化が重なるケースだ。利益の低迷が続けば投資家の見放し売りが進み、株価は割高感だけが残る展開になる。その場合、株価は2,600〜3,000円程度まで下落する可能性があり、長期の保有でもリターンが出にくいシナリオとなる。特に直近の業績悪化を織り込んだまま回復が遅れる場合、下値不安が意識されやすい。
総合的に見ると、不二製油の5年後の株価は「2026年の業績回復が本当に実現するかどうか」で大きく分かれる。強い技術テーマを持ちながらも収益の波が大きい企業であるため、上昇余地も下落リスクも共に存在する。成長期待を信じるか、収益の安定性を欠く点を警戒するかで、投資判断は大きく変わってくるだろう。
この記事の最終更新日:2025年12月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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