株価
カワチ薬品とは

株式会社カワチ薬品は、栃木県小山市に本社を構えるドラッグストアチェーンで、東証プライム市場に上場する大手小売企業である。カワチ薬品の特徴としてまず挙げられるのは、国内ドラッグストアの一般的な店舗規模を大きく超える、600〜1,000坪の広大な郊外型「メガ・ドラッグストア」戦略だ。業界平均が150坪前後であることを考えると、同社の店舗は圧倒的に大型であり、その広い売り場を活かして、医薬品・化粧品・日用品・ヘルス&ビューティケア用品・軽家電・インテリア雑貨・育児用品・一般食品など、生鮮品以外のほぼすべての生活必需品を一括して提供している。食品の売上比率が45%(2005年度)と業界平均の約3倍に達している点は特に際立っており、「日用品と食品を一度に買えるドラッグストア」という独自のポジションを確立している。
栃木県を基盤に北関東エリアで存在感を高め、現在では北海道・東海北陸を除く東日本全域に展開している。1店舗あたりの平均年商は業界平均の約4倍に達し、これは大型化による効率の高さと、食品・生活用品をまとめ買いできる利便性が支持されている証拠でもある。
事業拡大の中で、2001年にサンドラッグと業務提携を結び、自社の弱い首都圏エリアを補完するネットワークを形成した。また、2006年に茨城県の倉持薬局を買収し、2014年には吸収合併。これにより茨城県でのドミナント戦略が強化され、地域密着度が大きく向上した。同じ2014年には青森県を中心とする横浜ファーマシーを完全子会社化し、東北地方への店舗展開を加速。こうしたM&Aを絡めた地盤強化は、他のドラッグストアチェーンと競合が激化する中で、地域密着に強い安定的なビジネスモデルを支える土台となっている。
カワチ薬品の経営理念「善の発想」と「自主独立」は、創業時から受け継がれる精神であり、デメリットをメリットとして捉える姿勢と、社員一人ひとりが主体的に考えて行動する文化づくりにつながっている。社内では役職を「経営職」、パート従業員を「パートナー社員」と呼ぶなど、理念を日常の組織運営にまで反映させている点も特徴的だ。
同社の強みは、食品比率の高さから生まれる集客力と、郊外ロードサイド型の大型店に特化した戦略である。ドラッグストア業界は近年、調剤薬局併設や都市部小型店、物流最適化など多様なモデルに分かれて競争が激化しているが、カワチ薬品は「大型店×食品×生活総合型」という独自のスタイルを貫き、他社とは異なる市場で優位性を築いている。特に地方では、広い駐車場を持つ大型店はファミリー層の強い支持を得やすく、まとめ買いニーズにもマッチしているため、不況耐性が高いという強みもある。
総じてカワチ薬品は、医薬品を核としつつも食品・生活雑貨を幅広く扱う“地域密着型の生活総合ストア”として成長し続けている企業であり、ドラッグストアという枠組みにとどまらない総合小売業としての存在感を強めていると言える。
カワチ薬品 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期(単位百万) | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 281,871 | 6,611 | 7,672 | 4,177 | 187.1 | 50 |
| 連24.3 | 285,960 | 7,601 | 8,609 | 4,713 | 211.0 | 80 |
| 連25.3 | 287,816 | 7,461 | 8,340 | 4,884 | 218.7 | 80 |
| 連26.3予 | 290,000 | 7,100 | 8,000 | 4,500 | 201.5 | 80 |
| 連27.3予 | 292,000 | 7,300 | 8,200 | 4,900 | 219.4 | 80 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 9,817 | -5,840 | -4,485 |
| 2024 | 6,402 | -5,291 | -3,937 |
| 2025 | 7,481 | -4,515 | -1,915 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.3% | 3.8% | 2.1% | ― | ― |
| 2024 | 2.6% | 4.2% | 2.4% | ― | ― |
| 2025 | 2.5% | 4.2% | 2.4% | 13.3倍 / 10.6倍 | 0.57倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
カワチ薬品の業績を見ると、まず売上は2859億 → 2878億 → 2900億と緩やかに増加しており、安定した底堅い事業規模を維持していることが分かる。大きく伸びるわけではないが、減少もしておらず、地域密着型のディフェンシブ企業らしい売上推移となっている。
一方、営業利益は76億 → 74億 → 71億と、わずかに減少している。経常利益も86億 → 83億 → 80億と同様の流れで、事業規模が横ばいの中、利益面ではやや下方向の圧力がかかっている状態だと読み取れる。純利益も47億 → 48億 → 45億と安定はしているが成長は見られず、横ばいに近い動きになっている。
EPSは211円 → 218円 → 201円となっており、2025年で一度伸びたものの、2026年予想では再び低下している。配当は3年連続80円で一定しているため、利益成長が鈍る中でも配当を維持している点は株主還元の姿勢として評価できる。しかし、EPSが落ちている中で配当を一定に保つということは、今後の利益次第では配当性向が高まりすぎるリスクがあることも示唆している。
また、営業利益・経常利益・純利益がいずれも「横ばいか微減」になっていることから、利益率の改善や大きな成長エンジンが見えにくい状況だと分かる。売上は増えているのに利益が減っているのは、コストが重くなっているか、食品比率の高さから粗利が伸びない構造的な要因がある可能性がある。
総合すると、書かれている数値だけから判断できるのは、成長企業ではなく安定企業であるということだ。売上が崩れず、利益も大きくブレていないので倒れにくい一方で、利益の伸びが乏しいため株価を強く押し上げる材料にはなりにくい。EPSが直近で落ちている点も、伸びの鈍さを示している。
したがって、カワチ薬品は「大きく伸びないが、大きく崩れもしない」ディフェンシブ寄りの銘柄という位置付けになる。利益成長を狙う積極的な投資というより、地域密着型の安定事業に価値を見出して長期保有するタイプの企業だと言える。
配当目的とかどうなの?
カワチ薬品を配当目的で考える場合、まず目につくのは予想配当利回りが 2026年で3.36%、翌2027年で2.68%という点で、これは日本株としては決して低くない水準だ。特に3%を超える利回りが出る2026年は、配当を重視する投資家にとって十分魅力的に映るタイミングでもある。ただし、その後の利回りが2.68%へ下がることを考えると、長期的にずっと高利回りが続くタイプの株ではないという印象も残る。
業績の推移を見ると売上は安定しているものの、利益は76億→74億→71億、純利益も47億→48億→45億と伸びきらず、横ばいに近い状態が続いている。そんな中で配当は3期連続で80円のまま据え置かれており、利益成長が伴っていないにもかかわらず一定の配当を維持している点は評価もできる一方、配当が利益をやや上回り気味になるリスクも感じさせる構造だ。業績が大きく崩れれば減配の可能性も出てくるため、配当が「絶対に安全」とまでは言い切れない部分がある。
ただし、カワチ薬品は食品を多く扱う大型ロードサイド型のドラッグストアで、景気に左右されにくい業態を持っている。客数が激減するような変動も比較的小さく、売上基盤がしっかりしているため、極端な業績悪化で配当が急に不安定になるタイプではない。そういった意味では、安定感のある生活関連銘柄として、一定の配当を出し続ける姿勢はある程度期待できる。
全体として、カワチ薬品は「高利回り株として積極的に狙うタイプではないが、安定した生活必需系ビジネスを背景に、ほどよく配当を受け取りたい人には向いた銘柄」と言える。大きく増配していくイメージではないものの、安定配当を長く受け取るという観点では悪くなく、配当で大きく稼ぐというよりも、堅実なインカムをじっくり得るタイプの企業という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
カワチ薬品の株価が現在2,975円という前提で、これから5年間の株価を考えると、最も重要なポイントは「同社が安定性に優れる一方で、大きな成長ドライバーを持ちにくい」という事業構造そのものにある。食品比率が非常に高く、生活必需品を扱うディフェンシブ企業であるため、景気に左右されにくい強みがある反面、ドラッグストア業界全体に広がる競争環境の厳しさや価格競争、物流費・人件費の高まりといった逆風を受けやすい側面もある。そのため株価は激しく動かず、比較的落ち着いた推移になる傾向が強い。
良い場合のシナリオでは、カワチ薬品の大型ロードサイド型店舗という強みがさらに発揮され、食品の高い取り扱い比率が安定した客数・売上につながる展開だ。特に今後は人件費高騰に対応した効率化や物流の最適化、仕入れ改善などで利益率がわずかでも上昇すれば、市場は「低収益からの脱却」として評価しやすい。ドラッグストア業界では売上規模よりも利益率改善が株価に反映されやすいため、営業利益が増加基調に転じれば株価がじわじわと持ち上がる可能性がある。大きな急騰こそ見込みにくいが、堅実な評価の積み上げが続き、5年後には3,300〜3,700円と、今より数百円上の水準を期待できる。
中間のシナリオでは、これまでと同様に売上は微増、利益は70億前後の小幅な上下を繰り返す状態だ。これは最も現実的なイメージで、カワチ薬品らしい“堅実・安定・急激な変化なし”という企業体質が続く姿である。食品中心のラインナップは景気に強いが、同時に収益性の改善が難しく、ドラッグストア競合の攻勢も続くため利益率は大きく変わらない。こうした状況では株価が大きく動く理由も乏しく、結果として5年後は2,800〜3,100円と、ほぼ今と同じゾーンで推移する公算が大きい。資産株としては扱いやすい反面、値上がり益を求める投資家には少し物足りない。
悪い場合のシナリオでは、物流費や仕入れ価格、人件費などのコスト上昇に押しつぶされ、営業利益が70億を割り込むような展開だ。ドラッグストアはディスカウント業態との競争が激化しており、食品比率が高い企業ほど価格競争の影響を受けやすい。もし値上げが後手に回れば利益が想定以上に圧迫され、株価はじわじわと下値を探ることになる。ディフェンシブ性はあるものの、成長性が薄い企業は市場が厳しく評価しがちで、5年後は2,300〜2,600円まで沈む可能性も否定できない。
総合すると、カワチ薬品の株価は「上にも下にも大きく動きにくい」という性格が極めて強い。大型店戦略と食品需要の安定性に支えられ大崩れしにくいが、収益構造そのものに大きな成長性を見いだしにくく、長期的な株価上昇も限定的になる傾向がある。「安定・守り」の投資には向くが、「成長・値上がり益」を狙う投資には向きにくい銘柄と言えるだろう。
この記事の最終更新日:2025年12月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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