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くら寿司(2695)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

くら寿司とは

くら寿司株式会社は、大阪府堺市中区に本社を置く、大手回転寿司チェーン企業であり、東証プライム市場に上場する外食大手である。主力業態「無添くら寿司」は、日本全国47都道府県すべてに店舗網を構え、2024年7月時点で国内551店舗を直営展開している。関西および関東を軸としたロードサイド型出店を中心に規模を拡大し、回転寿司市場では業界上位の「2位級」のポジションにある。

同社は「無添くら寿司」のほか、近畿圏で和食レストラン「無添蔵」や鮮魚小売併設型の「くら天然魚市場」を展開しており、寿司以外のカテゴリーでもブランドを広げている。寿司以外のラーメン・丼物・デザートなどのサイドメニューにも積極的で、これらは付加価値商品として100円寿司の価格維持にも寄与してきた。

海外事業も積極的で、2014年に台湾へ進出し、2025年5月末時点で59店舗を展開。2020年には台湾子会社がタイペイエクスチェンジに株式上場し、2022年度には約160億円の売上を計上している。アメリカではカリフォルニアを起点に全土へ展開を進め、2025年5月末時点で76店舗を展開するまでに成長した。中国本土には2023年に上海へ進出し3店舗まで増加したものの、外部環境の変化を理由に2025年に撤退を決定し順次閉店している。海外では米国と台湾が収益柱となり、両地域で上場子会社を持つことが特徴である。

くら寿司は創業当初から「食の戦前回帰」を理念に掲げ、食品添加物を極力排除する姿勢を示してきた。同社独自の概念である「無添」は登録商標であり、四大添加物(化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料)を一切使用しない方針を表す。店名「無添くら寿司」やPRキャラクター「回転むてん丸」にもこの哲学が反映されている。ただし、四大添加物以外の添加物については使用の有無を公表しておらず、専門家の一部からは「誤認を招く可能性がある」との批判も存在する。

一方で、くら寿司の最大の強みは店舗運営の徹底したIT化と自動化にある。寿司に装着されているカバー「鮮度くん」にはQRコードが付与され、製造からの経過時間を自動管理し、一定時間を超えた寿司は自動廃棄される仕組みが確立している。1999年の鮮度管理システム導入以降、タッチパネル注文、直線レーン、自動皿回収、自動精算システムなどを次々と実装し、現在では受付から着席、注文、皿カウント、会計に至るまで店員を介さない「スマートレストラン」化を進めている。全店舗には本部と連携する店舗支援システムが導入され、遠隔から店舗状況の把握と運営サポートが可能となっている。これら一連の技術は50件以上の特許で保護されている。

さらに、AIカメラを活用した不正防止システムも導入されており、「鮮度くん」に付されたQRコードをAIが認識し、皿の戻し行為などの不正が検知された場合はスタッフがテーブルへ駆けつける仕組みを備えている。

提供価格は基本の2貫115円(税込)に加え、1貫皿(実質230円商品)も展開。わさびは全品わさび抜きとし、テーブル備え付けで自由に使用する方式を採用している。また、1999年から導入されている皿投入による自動回収システムと、2000年開始の5皿で抽選ができる「びっくらポン!」は同社の象徴的な仕組みとなっている。

以上のように、くら寿司は「無添」理念による独自のブランディングと、圧倒的なIT活用による効率経営を武器に国内外で事業拡大を続ける企業であり、海外子会社が上場する外食チェーンとしても特色を持つ。

くら寿司 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益(EPS) 一株配当
2020.10 135,835 350 1,135 -262 -6.7 20
2021.10 147,592 -2,678 3,174 1,901 48.0 20
2022.10 183,053 -1,113 2,457 744 18.8 20
2023.10 211,405 2,456 2,882 863 21.7 20
2024.10 234,950 5,699 6,224 3,226 81.2 40(記念)
2025.10(予) 243,000 6,000 6,200 4,100 103.2 20
2026.10(予) 252,000 6,500 6,700 4,400 110.7 20〜30

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

年度 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2022.10 9,944 -12,105 -4,696
2023.10 13,727 -14,544 5,495
2024.10 18,363 -10,346 -4,008

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER PBR
2023 1.1% 1.5% 0.6%
2024 2.4% 5.7% 2.3% PER高値平均:151.2倍
PER安値平均:107.8倍
2.12倍
2025(予) 2.4% 7.2% 2.9% 33.53倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

くら寿司の直近の業績推移を見ると、まず特徴として挙げられるのが、売上規模の拡大に対して収益面がようやく追いつきつつあるという点である。2023年10月期の売上は2114億円、営業利益は24億円、純利益は8億円という水準で、売上規模に比して利益の薄さが際立っていたが、2024年10月期には営業利益が約56億円へと倍以上に伸び、純利益も32億円へ急回復している。外食産業はコスト増に弱いビジネスモデルだが、くら寿司の場合は省人化・効率化が先行的に導入されてきたこともあり、他社に比べて利益回復が早く出た格好だ。

予想値を見ると、2025年は営業利益60億円、純利益41億円と増益基調が続き、2026年には営業利益65億円、純利益44億円が見込まれている。絶対額としては急成長とは言い難いものの、安定的な増収増益が続くモデルを築きつつある。営業利益率を見ると、2023年1.1%、2024年2.4%、2025年も2.4%と改善した水準で維持されており、利益体質の改善が継続していることが読み取れる。まだ食品・外食企業の優良ラインとされる5%には遠いが、2023年の段階ではほぼ利益が取れていなかったことを考えれば、一定の進展は評価できる。

自己資本利益率(ROE)は2023年1.5%から2024年には5.7%、2025年には7.2%と改善が進み、資本効率が着実に向上している。ROAも0.6%→2.3%→2.9%と流れは同様で、効率化や店舗運営の改善が数値として表れ始めている。ただし、一般的に10%以上のROEが“優良企業の目安”とされることを踏まえると、まだ改善余地が広く残っていると言える。収益基盤は安定化の途上にあるが、飛び抜けて高収益な構造になったわけではない。

一方でバリュエーションを見ると、2024年のPER高値平均は151倍、安値平均でも108倍という極めて割高な水準で推移していた。市場が「成長企業」として高い期待を織り込んでいたことがうかがえる。しかし、2025年予想PERは33.5倍と、EPSの伸びによって見かけ上は大幅に割高感が後退している。これは売られたというより、利益成長が追いついてバリュエーションが常識的な範囲へ落ち着いたと考えるべきだろう。PBRは2.12倍と、同業他社と比べても高すぎるわけではなく、割安とも言い難い中庸な水準である。

総合的に見ると、くら寿司は2023年時点では利益率が低迷し、収益の不安が大きい企業であったが、2024年の利益改善によって企業体質が大きく変わり始めた局面にある。さらに2025年・2026年の利益予想を見る限り、外食産業の中では比較的安定した成長軌道に乗っている印象である。ただし、営業利益率が2%台にとどまり、ROEも7%程度であるため、高収益企業というより「安定成長を志向する中堅グロース」という位置付けに見える。高いバリュエーションを正当化するほどの収益性にはまだ達していない点が、投資判断における最大の注意点となる。

結果として、短期目線では積極的に買う魅力は薄いが、中長期では収益改善トレンドと海外店舗展開の効果が業績に反映されていけば、株価が見直される可能性がある銘柄と言える。PERが30倍台で落ち着き、収益が拡大するのであれば、長期保有を前提とした投資対象としては悪くない位置にある。ただし、外食特有の原価上昇リスク・人件費の圧力・景気変動の影響なども残るため、急成長銘柄というより“安定成長株として押し目で拾うタイプ”の企業であると判断する。

配当目的とかどうなの?

くら寿司を配当目的で保有するという観点で見ると、まず真っ先に気になるのが配当利回りの低さである。予想配当利回りは2025年・2026年ともに0.60%という水準にとどまり、これは市場平均を大きく下回るだけでなく、配当投資を前提とする投資家にとってほとんど魅力を感じられない数字と言える。一般に、安定した配当を目的として銘柄を選ぶ場合、最低でも1.5〜2.0%程度、理想を言えば3%前後が目安とされるが、くら寿司はその基準からほど遠い位置にある。

また、くら寿司の配当政策はもともと積極的ではなく、増配姿勢が強い企業でもない。2024年に記念配当があったものの、それは一時的なイベントであり、通常の配当水準は20円台に固定されがちで、利益が伸びても大幅な増配にはつながりにくい。企業としては、配当よりも出店や設備投資、店舗オペレーションの自動化といった“成長に向けた再投資”を優先する方針が明確であり、これが長期的な収益成長には寄与するものの、配当狙いの投資家には直接的なメリットにならない。

さらに、利回りが低い理由は配当額が小さいだけではなく、株価が比較的高めに評価されてきた点にもある。2024年のPERは最大で150倍を超えるなど、かつては市場の期待値が大きく、株価が高止まりしたことで利回りが押し下げられた。現在は予想PERが33倍まで落ち着き、株価が利益成長に多少追いついたとはいえ、それでも利回りは依然として0.60%止まりであり、配当利回りを軸に投資を判断するタイプの銘柄ではないことは明白である。

こうした点を踏まえると、くら寿司は配当を受け取りながら資産を増やす「インカムゲイン狙い」の投資には適しておらず、むしろ企業としての成長性を期待し、株価の値上がり益を獲りにいく「キャピタルゲイン狙い」のほうが向いていると言える。実際、海外展開の拡大や利益率改善の流れが今後も続けば、将来的に配当余力が高まる可能性はあるが、現時点で配当目的で保有して安定したリターンを得ることを期待するのは難しい。

配当利回りが0.60%という数字は、配当投資家にとってはほぼ検討対象から外れる水準であり、くら寿司は収益成長を優先し続ける段階にある企業であることを示している。したがって、この銘柄を選ぶ理由が「配当目的」であるなら、他の選択肢を探す方が合理的だと言える。

今後の値動き予想!!(5年間)

くら寿司の現在の株価3,320円という水準を起点にして、ここから先の5年間がどのように動いていくかを考えると、まず目につくのは企業としての成長余力が依然として存在しながらも、その利益率の低さが評価を割り切れない形で残っているという点である。売上は順調に伸びているにもかかわらず、営業利益率は2〜3%台と外食企業の中でも高収益型と言えるほどではなく、企業規模の大きさに比べて利益がやや控えめな構造になっていることから、株価が爆発的に上昇するイメージは描きにくい。一方で、海外事業、特に米国と台湾の店舗展開がまだ拡大途中であり、国内に比べて成長余地が残されていることを踏まえると、長期的には収益改善に向かう可能性も十分ある。

良い方向に転べば、米国の出店余地は大きく、既存店売上の成長に加えて自動化投資によるコスト削減が本格的に利益に寄与し始める。営業利益率が現在の2%台から4%台へと改善し、ROEも10%近くまで向上するような状況になれば、投資家は再び“成長株”として扱い、PER30〜35倍あたりの高めの評価を維持する可能性はある。そうしたストーリーで動いていく場合、株価はゆっくりと上昇し、5年後には4,500〜5,000円台に乗ることもありえる。急騰ではなく、じわじわと評価が高まっていくイメージに近い。

ただ、もっと現実的なシナリオとしては、売上は伸びても利益率の大幅改善まではいかず、海外事業も順調だが期待ほどの爆発力はなく、EPSの伸びも年3〜5%の堅実なペースに落ち着くパターンがある。こうした状況では、くら寿司は“安定成長株”としての立ち位置に収まり、過度な期待もなければ過度な失望もなく、市場の評価は落ち着いたものになる。PERは25〜30倍程度に収まりやすく、株価は現在の3,320円を中心に大きくは動かず、むしろ3,300〜3,800円の範囲で推移する可能性が高い。長期保有には安心感があるものの、大きな値上がり益を期待するには物足りない水準といえる。

反対に、悪い方向へ転ぶ場合も考えておく必要がある。原材料価格の上昇や人件費のさらなる増加を店舗の効率化だけでは吸収しきれず、営業利益率が伸び悩み、海外事業の伸びも期待ほどにはならないケースだ。こうなると投資家はくら寿司を成長株として評価することをやめ、一般的な外食企業としてのPER20倍前後に落ち着かせようとするだろう。このシナリオでは、株価は利益の成長よりも「割高度の低下」によって押し下げられる形になり、2,200〜2,800円あたりまで水準を切り下げる可能性が出てくる。外食産業特有の景気敏感性や、消費動向の鈍化が影響すれば、株価は想像以上に重たく感じられる時期も出てくるだろう。

こうして3つの道筋を比べると、くら寿司の5年後は、劇的な伸びというよりも「利益率の改善ペース次第で伸び幅が決まる」企業であることが見えてくる。利益率が上がれば株価は自然とついてくるし、伸びなければ今の水準を中心に横ばいになり、悪ければゆっくりと下落するという形だ。特に海外事業の進捗が株価を動かす最大の要因で、国内だけでは限界がある。だからこそ、くら寿司を5年というスパンで見るなら、海外展開が順調に収益貢献していくのか、店舗オペレーションの自動化がどこまで利益率を押し上げられるか、その2点が最終的な株価の方向性を決めることになる。

この記事の最終更新日:2025年12月3日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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