株価
パルグループホールディングスとは

株式会社パルグループホールディングスは、大阪市中央区に本社を置く持株会社であり、アパレル事業と生活雑貨事業を中心とした複合的なライフスタイル企業グループを形成している。東証プライム市場に上場しており、グループ全体としては衣料品・雑貨の企画から製造、販売までを多面的に展開する。中核会社である株式会社パルが長年培ってきたアパレル企画力を軸に、トレンドに敏感な若年女性向けファッションから、日常生活に寄り添う雑貨、インテリア、生活関連商品まで幅広い商品ラインを構築している。
パルグループの特色は、オリジナルブランドを多数抱える点にあり、『チャオパニック(CIAOPANIC)』『カスタネ(Kastane)』『ディスコート(Discoat)』といった若者に人気のブランドに加え、メンズ・レディース・ユニセックスを含む約50ものブランドを展開している。こうした豊富なブランド構成は、流行の変化が早いアパレル市場においてリスクを分散しつつ、各顧客層のニーズに柔軟に対応できる強みとなっている。
特に注目すべきは、低価格雑貨ブランド「3COINS(スリーコインズ)」の成長である。300円均一という分かりやすい価格設定でありながら、生活雑貨からインテリア、モバイルアクセサリー、キッチン用品、収納グッズなど多彩な商品を扱い、高いデザイン性と実用性を兼ね備えた商品ラインナップで幅広い層から支持を得ている。アパレル事業が景気やトレンドに左右されやすいのに対し、「3COINS」は日常消費に根差した業態であり、景気変動に強い収益柱として同社の業績を安定化させている。また、店舗数の拡大や新業態の導入も積極的で、グループ全体の成長ドライバーとなっている。
事業モデルとしてはSPA(製造小売)方式を採用しており、企画・デザインから製造、物流、販売までを一貫して管理している。これにより、トレンドの変化に素早く対応できるだけでなく、在庫最適化によるリスク管理が可能で、アパレル企業としての競争力を高めている。さらに、EC販売にも力を入れており、自社ECサイトと複数の外部モールを組み合わせるオムニチャネル戦略を推進していることで、オンラインと実店舗の双方で顧客接点を拡大し、時代の変化に合わせた販売体制を構築している。
グループ会社も多岐にわたり、株式会社パルをはじめ、若年女性向けブランド「one after another NICE CLAUP」を展開する株式会社ナイスクラップ(旧JASDAQ上場企業)、スタイリング事業を行う株式会社マグスタイル、店舗運営を支える人材サービスを行う株式会社クレセントスタッフ、リゾート運営などを行う株式会社フリーゲート白浜など、アパレル・雑貨・サービスを横断する多彩な企業が集まっている。これらのグループ企業がそれぞれの専門性を持ちながら連携することで、同社は単なるアパレル企業ではなく、広義のライフスタイル企業としての存在感を高めている。
総合的に見ると、パルグループホールディングスはアパレル市場の変動リスクを抱えつつも、多ブランド戦略や生活雑貨事業による安定収益基盤、そしてSPAモデルによる効率的な運営体制を武器に、持続的な成長を目指す企業である。特に「3COINS」の存在感は年々増しており、グループ全体の事業バランスを大きく支える柱へと成長している点が特徴的である。
パルグループホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(一株益) | 配当(一株当り) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.2 | 164,482 | 15,822 | 16,061 | 9,955 | 56.7 | 18.8(記念) |
| 2024.2 | 192,544 | 18,605 | 18,839 | 12,845 | 73.7 | 25 |
| 2025.2 | 207,825 | 23,656 | 23,929 | 11,848 | 68.2 | 30 |
| 2026.2(予) | 235,000 | 28,100 | 28,100 | 18,000 | 103.7 | 30〜35 |
| 2027.2(予) | 255,000 | 30,500 | 30,500 | 19,500 | 112.3 | 30〜35 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.2 | 17,029 | -2,599 | -2,835 |
| 2024.2 | 13,460 | -4,404 | -5,672 |
| 2025.2 | 22,038 | 792 | -4,364 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 9.6% | 18.0% | 8.8% | - | - |
| 2024 | 9.6% | 20.2% | 10.1% | - | - |
| 2025 | 11.3% | 16.7% | 8.0% |
高値平均:19.3倍 安値平均:9.0倍 |
4.95倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
パルグループの業績を見ると、売上・営業利益・経常利益はいずれも毎年増加しており、規模の拡大が継続していることが分かる。特に営業利益は、2024年の186億から2026年予想では281億まで伸びており、利益成長の勢いが非常に強い。営業利益率は9.6%から11.3%へ改善しており、アパレル企業としては高水準の利益率を維持できている。アパレル・雑貨業界は利益率が低くなりやすいが、10%前後の利益率を安定して出せている点は大きな強みで、事業の効率性が高い企業であることが数値から読み取れる。
ROEは16〜20%台で推移しており、株主資本を非常に効率よく使っている。一般的にROE10%以上で優良企業とされるが、パルはその基準を大きく上回っている。ROAも8〜10%台と高く、資産効率の高さは継続的な強みと言える。これらの指標は、事業の構造自体が高収益であり、少ない資産でしっかり利益を生む“優良企業のパターン”であることを示している。
純利益は2024年128億から2025年118億とやや下がるものの、2026年予想では180億へ急回復する見込みとなっており、利益の伸びに踊り場はあるものの中期的には上向きが続く。EPSも2026年に103まで伸びるため、企業としての稼ぐ力は強い状態が維持されると考えられる。
バリュエーションを見ると、PERは2025年の変動レンジが9〜19倍と幅広い。安値平均の9倍という水準は明らかに割安圏であり、実績値としてこうした評価を受ける局面があったということは、市場が時期によって大きく評価を変えやすい銘柄であるとも言える。一方で高値平均の19倍という水準でも決して過度な割高ではなく、成長企業として許容される範囲に収まっている。PBR4.95倍は高めだが、高収益企業では珍しくないバリュエーションである。
総合的に見ると、パルグループは数値だけで判断すれば「高収益で安定的に成長している優良企業」であり、特に営業利益率・ROE・ROAの高さが顕著である。利益の伸びも堅調で、2026年には再び純利益が大幅に増える予想となっているため、将来のEPS拡大に対して市場が再評価する可能性が高い。PERレンジから見れば、割安で放置される可能性もあるが、業績トレンドを考えると中長期では評価が高まりやすい銘柄と言える。
結論として、与えられた数値だけから判断すると、パルグループは収益性・効率性ともに優れており、成長性も十分で、投資対象として魅力がある企業である。企業規模の拡大と高い利益率が両立しているため、中長期の株価上昇が期待できるタイプで、業績に対してPERが落ち着く局面があれば買い場になりやすいと考えられる。
配当目的とかどうなの?
パルグループを配当目的で保有するという視点で見ると、まず目につくのは配当利回り(2026・2027年度)が1.40%という水準にとどまっている点である。この利回りは、日本株全体の平均である2%前後と比べると低く、配当収入を主目的とした投資家にとっては決して魅力的な数字ではない。特に、高配当株を志向する投資家の多くが目安としている3〜4%台には遠く及ばず、配当狙いだけでこの銘柄を選ぶ理由は薄い。
ただし、利回りだけで判断するのは早計で、パルグループの場合、成長投資と利益成長を重視する経営方針が数値にも表れている。EPSは2026年に103、2027年に112と伸びが見込まれており、企業としての稼ぐ力が拡大しているのは間違いない。配当も30〜35円へと増加傾向にあるが、その割に利回りが伸びないのは、株価が高めに評価されていることも一因だ。PBRが4.95倍という水準からも分かる通り、市場は同社を“高収益かつ成長力のある企業”として評価しているため、配当より成長期待を株価に反映している。
そうなると、パルグループは「配当収入を得るために持つ株」ではなく、「業績成長と株価上昇を期待して持つ株」に分類される。 ROEが16〜20%という非常に高い水準で推移している企業は、利益の内部留保を使って事業を拡大し、その過程で株価を押し上げるという“成長企業の典型的なリターン構造”を持っている。つまり、配当として還元するより、再投資によって企業価値を高めたほうが株主の利益になるという考え方だ。
このため、利回りが低いからといって投資価値がないというわけではなく、「配当ではなく株価上昇を狙うべき銘柄」という位置付けになる。現に利益率は改善し続け、営業利益率も10%超まで伸びているため、収益力の底上げが中長期的な株価の支えとなる可能性は高い。
結論として、パルグループは配当目的の投資には向いていないが、業績成長と株価の上昇を期待する中長期投資には適した企業である。配当金でリターンを得たいなら他に候補は多く存在するが、成長企業として見れば十分に魅力がある銘柄と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価2,136円を基準に、パルグループHDの今後5年間の株価がどのように動く可能性があるかを考えていくと、まず目につくのは、同社の利益成長が非常に安定している点である。売上は毎年着実に伸び、営業利益率も9〜11%というアパレル・雑貨業界では高水準の収益性を維持している。ROEも16〜20%台と高い資本効率を示しており、企業としての成長力が利益数値に素直に反映されている。
このような企業は、株価が急落するリスクが比較的低く、中期で見ると緩やかに上昇しやすい傾向がある。ただ一方で、PBRが4.95倍と高く評価されていることから、過度な割安感はなく、株価が勢いよく跳ね上がるには新しい成長要因や市場の期待値上昇が必要になる。こうした背景を踏まえると、5年間の株価推移は大きく「良い場合」「中間」「悪い場合」の3つのパターンで考えることができる。
良い場合は、3COINSを中心とした雑貨事業が引き続き高い成長を続け、アパレル事業も安定して利益を生む状態が継続するケースである。営業利益率が11%台からさらに改善し、純利益も2026年の180億を超えるような伸びを見せれば、市場は再び成長企業として同社を評価し、PERも15〜20倍程度の高い評価を維持する可能性がある。この場合、5年後の株価は3,000円前後、状況がさらに良ければ3,200円台に乗ることもありえる。大きく爆発するというよりも、利益成長を反映して堅実に株価が押し上げられていくイメージに近い。
中間の場合は、おそらく最も現実的で、業績は順調ではあるものの利益率の伸びが鈍化し、売上は増えても評価は横ばいになるパターンである。EPSは伸びるが、PERは10〜13倍程度に落ち着き、株価は業績の成長幅ほどは動かない。この場合、株価は2,100〜2,500円の範囲で推移し、5年後も現在値と近い位置か、やや上の水準で落ち着く可能性が高い。安定感はあるが、株価のインパクトは小さい。
悪い場合は、アパレル市場の不振や消費低迷の影響で利益率が悪化し、成長期待が剥落するケースである。営業利益率が10%を下回り続け、純利益も伸び悩むような状況になると、市場はパルを“成長株”ではなく一般的な小売企業として評価し始め、PERは8〜10倍程度まで低下する可能性がある。この場合、株価は1,600〜1,900円あたりまで下落するリスクがある。急激な崩れというより、じわじわと評価が下がっていくイメージに近い。
総合すると、パルグループは成長性の高さから大崩れのリスクは小さく、むしろ中長期では安定して株価が押し上げられるタイプの企業であると言える。ただし、株価が跳ねるには新しい市場拡大や更なる利益率改善といった“追加の材料”が必要になる。現在の2,136円という株価は、控えめに見ても適正水準に近く、下値も限定的であるため、長期で持つ分には十分検討できる銘柄という印象だ。
この記事の最終更新日:2025年12月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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