株価
あらたとは

株式会社あらたは、日本全国の生活必需品流通を支える中核的な日用品卸売企業であり、東京都江東区に本社を構えているものの、その起源は1913年、北海道釧路市で創業した「丸文橋本商店(ダイカ)」にまでさかのぼる。現在の「あらた」は2002年、ダイカ・伊藤伊・サンビックといった複数の地方卸が統合したことで誕生した企業で、卸売業界の中では比較的新しい存在でありながら、後発ならではの機動力と構造改革のスピードを強みに急速に事業規模を拡大してきた。業界最大手PALTACと並び、国内日用品流通の柱として確固たる地位を築いている。
同社が取り扱う商品ジャンルは非常に幅広く、P&Gやユニリーバ、パナソニック、ソニー、金鳥(大日本除虫菊)、フマキラー、ライオンなど国内外の大手メーカーの商品をほぼ網羅している。生活の中で使われる洗剤・台所用品・紙製品・ヘアケア・化粧品・オーラルケア・防虫用品・衛生用品・ペット用品に至るまで、暮らしに必要な日用品のほとんどを取り扱い、これらを全国のドラッグストア、スーパーマーケット、ホームセンター、協同組合、コンビニエンスストアなどへ安定供給している。
主要な取引先としては、ツルハ、コスモス薬品、イオングループ、DCM、ライフ、オークワ、イズミヤ、コープこうべ、ダイエーといった全国有数の量販チェーンが名前を連ね、まさに日本の生活インフラを支える重要な卸売会社と言える。規模の大きさだけでなく、取引先の質と広がりの面でも業界トップクラスのネットワークを構築しているのがあらたの強みである。
さらに同社は「物流の効率化」「情報提供」「販売提案」の3つの軸で付加価値を高める戦略を打ち出しており、単なる卸売ではなく“市場の最適化を担う企業”として機能している。全国に配置された大規模物流センターを活用し、自動化・共同配送によって小売業者の在庫負担を軽減したり、メーカーから小売へと流れる販売データを分析・提供したりすることで、川上・川下双方にメリットをもたらす仕組みを構築している。また、単品提案や棚割り設計といった店舗改善策の支援、さらにはメーカーと協働したマーケティング企画なども手掛け、小売の売場づくりにも深く関わっている点は大きな特徴である。
加えて、自社のプライベートブランド(PB)商品の開発にも注力し、メーカー品に加えて独自商品をラインナップに加えることで、小売業との関係性を強化するとともに、独自性と利益率改善を図っている。生活必需品は景気に左右されにくいという特性から、同社の事業は安定性が高く、卸売業界の中でも成長性と安定性を両立している稀有な存在となっている。
総じて、あらたは全国規模の流通網、高いデータ活用力、メーカー・小売双方との密接な連携力を武器に、生活必需品の供給を支える不可欠な企業として進化を続けている。伝統ある地域卸の統合によって生まれた新しい形の卸売会社が、現代の流通改革をリードする立場へと成長した代表例とも言えるだろう。
あらた 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(一株益) | 配当(一株当り) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 891,600 | 12,812 | 13,680 | 8,223 | 240.8 | 68 |
| 2024.3 | 944,149 | 14,508 | 15,341 | 10,322 | 303.0 | 92.5 |
| 2025.3 | 986,212 | 14,989 | 15,617 | 10,358 | 309.6 | 102 |
| 2026.3(予) | 1,020,000 | 16,000 | 16,700 | 10,900 | 326.0 | 112 |
| 2027.3(予) | 1,050,000 | 16,500 | 17,200 | 11,200 | 334.9 | 112〜116 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 10,969 | -4,281 | -3,311 |
| 2024 | 14,059 | -5,305 | -4,556 |
| 2025 | 9,775 | -6,363 | -7,977 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.4% | 8.0% | 2.8% | - | - |
| 2024 | 1.5% | 9.4% | 3.2% | - | - |
| 2025 | 1.5% | 8.8% | 3.3% | 高値10.9倍/安値7.6倍 | 0.84倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
あらたは、卸売業という業態の特性もあり、もともと爆発的に利益が伸びるタイプの企業ではないが、そのぶん業績のブレが小さく、非常に安定感のある会社という印象が強い。今回提示された数値だけを見ると、売上は毎年着実に伸びており、9441億 → 9862億 → 1兆200億 と、きれいに右肩上がり。営業利益や経常利益も同様に少しずつ増えている形で、急成長ではないものの、堅実な成長を続けていることがわかる。純利益は100億円前後で安定しており、企業規模と業態を考えると十分な堅さを持っている。
営業利益率は 1.4% → 1.5% → 1.5% と非常に低く見えるが、これは卸売業の構造的な特徴であり、この数字だけで弱いと判断する必要はない。むしろ売上規模が大きいため、小さな改善でも利益額が大きく動く点が特徴。ROEも 8%台後半〜9%台という水準で、卸売としては十分に高い数字であり、資本効率の面では問題なく、むしろ優秀といえるレベル。ROAも 3%前後で、こちらも卸の平均的なレンジに収まっており、過不足を感じさせない。
注目すべきは株価指標で、PERは高値水準でも10倍台前半、安値平均では7倍台とかなり割安に放置されている点。PBRも0.84倍で、純資産を下回る水準。つまり、市場からの期待値は高くなく、バリュー株としての性質がより濃い銘柄になっている。これは裏を返せば、急成長を織り込んだ株価ではないため、悪材料に対して比較的値崩れしにくいタイプともいえる。
全体として、あらたは“成長株”というよりも“堅実な生活必需品関連の安定銘柄”というポジション。景気の影響を受けにくい日用品卸という強みがあり、不況時にも売上が極端に落ちないことから、ポートフォリオの防御力を高める役割を持ちやすい。一方で、株価の急騰を狙うようなタイプではないため、大きな値上がり益よりも、安定性や割安性、継続的な利益成長をじっくり評価する投資家向けの銘柄といえる。全体として“堅実で固い、長期保有に向いた低ボラティリティのバリュー株”という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
あらたを配当目的で見た場合、この銘柄はかなり扱いやすく、長期保有との相性が良いタイプだといえる。まず目につくのは、予想配当利回りが連26.3・連27.3ともに 3.69% と比較的高い水準で安定している点だ。日本株の中で安定銘柄が出す利回りとしては上位に入る部類で、特に不況に強い日用品卸という業態を考えると、途切れにくく持続性が高い配当として評価できる。
あらたは売上が毎年着実に伸びており、純利益もだいたい100億円前後で安定しているため、業績が大きく落ち込んで配当が削られるリスクは比較的小さい。日用品は景気が悪くなっても需要が大きく減らないため、配当目的の投資家にとっては「とにかく強固な土台を持つ企業」という印象が強い。また、利益の伸びは派手ではないが、そのぶん業績のブレが少なく、企業側も毎年増配を継続してきている。92円 → 102円 → 112円 という流れは、無理のない範囲で株主還元を続けていく意志を感じさせる。
株価指標の面でも、PBR 0.84倍、PER 7〜10倍台という明確な割安水準にあるため、配当利回りが自然と高くなりやすく、価格面でも下値が固い傾向がある。高配当株の中には「業績悪化で株価が落ち利回りだけ高く見えている」ものもあるが、あらたの場合は利益が安定しているので、その手の“罠”とは違う。堅実な業績 × 割安評価 × 継続的な配当、という配当投資家にとって理想的な条件がそろっている。
総じて、あらたは短期で大きく値上がりを狙う銘柄ではないが、その代わり、配当をコツコツ積み上げていく長期投資ではかなり魅力が高い。株価の上下が比較的穏やかで、業績も景気に左右されにくく、配当利回りも高めに安定しているため、「安心して持って配当を受け取るタイプの銘柄」という位置づけになる。免疫力の強いディフェンシブ銘柄であり、長期の資産形成に向いている配当株といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
あらたの現在値3,035円を起点に、今後5年間の株価推移を考えると、この企業の特徴である「超ディフェンシブ性」「割安放置されやすい体質」「業績の安定感」がそのまま将来像にも反映されることになる。もともと日用品卸は景気に左右されにくく、売上はほぼ右肩上がり、利益も大きくは伸びないが下がりにくい。そのため、急騰するような成長性はない一方、暴落局面でも比較的強く、株価が大きく崩れにくい。そんな特性を踏まえると、あらたの5年後の株価は、広がりはあるものの比較的穏やかな範囲に収まりやすい。
良い場合は、業績が堅調に推移し、特に純利益が毎年100億円超を維持しながら微増していくケースが考えられる。物流効率化やメーカーとの協業が進み、卸売業としての付加価値が高まり、株主還元の姿勢が評価されると、現在の割安圏(PER7〜10倍、PBR0.84倍前後)から適正水準である PER10〜12倍、PBR1倍前後まで評価が戻る可能性がある。この場合、株価は3,600〜4,200円程度までじわじわ上昇していくイメージで、急騰はしないものの堅実な上昇が見込まれる。
中間の場合は、現在の評価がほぼそのまま続くケース。業績は横ばい〜微増程度で、卸売全体の利益率が構造的に低いまま変わらず、マーケットから“地味な優良企業”として扱われる状況が続く。配当利回りやバリュー性で一定の支持を保つものの、強い買い材料も出てこないため、株価は2,900〜3,300円の範囲で推移しやすく、現在とほとんど変わらない水準にとどまる可能性が高い。こうした横ばい推移はディフェンシブ銘柄ではよくあるパターンで、値上がり益よりも配当がリターンの中心になる。
悪い場合は、原材料や物流コストの上昇が利益を圧迫し、純利益が100億円を割り込むような展開。とはいえ日用品卸は不況でも売上が崩れにくく、極端な業績悪化は起きづらい。そのため、株価が暴落するというよりは、市場の期待がさらに薄まり、PBRが0.7倍前後まで評価が落ちるパターンが考えられる。そうなると株価は2,300〜2,700円程度まで下押しするが、総じて下値は強く、大きく割り込むようなイメージは薄い。
全体を通して見ると、あらたは「急上昇はしないが、大きく崩れもしない」というディフェンシブ株の典型である。優位性は圧倒的な安定感と配当利回りの高さであり、逆に弱点は株価が動きづらいこと。長期投資としては“株価で大きな利益を狙う銘柄”ではなく“配当を受け取りつつ、暴落にも耐えられる安心感を買う銘柄”という位置づけが最もハマる。じっくりと時間を味方につけるタイプの投資家に向いており、5年間の値動きを見ても、これまでの企業体質から大きな冒険をする可能性は極めて低い銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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