株価
サーラコーポレーションとは

株式会社サーラコーポレーションは、愛知県豊橋市に本社を構えるサーラグループの中核企業であり、グループ全体を統括する持株会社である。ルーツは1940年代まで遡るが、現在の持株会社体制は2002年5月1日に、ガステックサービス株式会社、株式会社中部、新協オートサービス株式会社(現・サーラカーズジャパン)の3社によって共同持株会社として設立されたことが始まりである。その後、2016年7月1日に当時上場していた中部瓦斯株式会社(現・サーラエナジー)とサーラ住宅株式会社を株式交換により完全子会社化し、エネルギー・住宅・建設を中心としたグループ運営を本格的に一体化させた。この統合によって、地域密着型の総合生活サービス企業としての基盤が一段と強化された。
社名の「サーラ(SALA)」は、「Space」「Art」「Living」「Amenity」の頭文字をとった造語であり、「生活空間をより美しく快適に」という同社グループの理念を象徴している。この名前が示す通り、同社の事業はガス供給などのインフラから住宅・建設、不動産、生活関連サービスまで幅広く、地域住民の暮らしに直結する分野が中心である。
主力事業は都市ガス・LPガス販売を中心としたエネルギー事業で、愛知県や静岡県を中心とした東海地域に強固な顧客基盤を持ち、家庭用・業務用の双方で高いシェアを誇る。ガス配管工事や保安・点検、ガス機器の販売・修理など関連サービスも含め、エネルギーインフラとして地域生活を支える重要な役割を担っている。また、環境負荷低減への取り組みとして、省エネ診断ツールを活用した最適なエネルギー利用の提案を強化しており、環境配慮商材の拡販を通じて顧客の省エネ・脱炭素化の支援にも取り組んでいる。
加えて、住宅・建設分野も同社グループの大きな柱である。サーラ住宅株式会社を中心として、新築戸建ての設計施工、分譲住宅の開発、リフォーム、外構工事など、住環境全般をカバーするサービスを提供している。建設事業では土木工事や施設建設なども行い、公共・民間の双方で地域社会のインフラ整備にも貢献している。さらに不動産開発、賃貸管理、宅地造成などにも注力しており、エネルギー供給と住まいの両面から地域の生活を支えるビジネスモデルを構築している。
また、サーラグループには自動車販売やメンテナンスを行うサーラカーズジャパン、介護サービス事業、ホテル・飲食事業など多様な生活関連サービスを展開する企業も含まれており、グループ全体として多角化が進んでいる点も特徴である。近年は、エネルギーの新分野として浜松市と豊橋市の2カ所で系統蓄電所(バーチャルパワープラント)の稼働を進めており、分散型エネルギー社会を見据えた取り組みを強化している。これにより電力システムの安定化に寄与しつつ、新たな収益機会の創出にも期待が高まっている。
総じてサーラコーポレーションは、エネルギー、住宅、建設、不動産、さらには生活関連サービスまで幅広い事業を展開することで、地域に密着した総合生活企業グループとして独自の地位を築いている。特に愛知・静岡エリアにおける強固な顧客基盤と、ガス供給を中心とした生活インフラの領域を押さえていることが安定的な収益の源泉となっている。さらに、環境配慮型商品の提案や系統蓄電所の稼働など、脱炭素社会に向けた施策も積極的に進めており、今後も地域密着型企業としての強みを生かしながら持続的な成長を目指している。
サーラコーポレーション 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.11 | 227,935 | 6,592 | 8,312 | 5,262 | 83.1 | 23 |
| 連22.11 | 234,848 | 6,891 | 8,601 | 5,682 | 89.1 | 26 |
| 連23.11 | 242,059 | 6,083 | 7,870 | 6,099 | 95.5 | 26 |
| 連24.11 | 240,498 | 6,308 | 8,193 | 5,249 | 81.9 | 30 |
| 連25.11予 | 263,000 | 7,200 | 7,700 | 5,100 | 79.4 | 32 |
| 連26.11予 | 278,000 | 7,700 | 8,200 | 5,450 | 84.9 | 34 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022 | 9,930 | -3,861 | -6,524 |
| 2023 | 5,762 | -5,621 | -1,366 |
| 2024 | 14,243 | -10,334 | -431 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.5% | 7.9% | 3.2% | – | – |
| 2024 | 2.6% | 6.2% | 2.5% | 9.6倍 / 7.3倍 | 0.79倍 |
| 2025 | 2.8% | 6.6% | 2.7% | 予想12.61倍 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
サーラコーポレーションの直近の業績データを見ると、同社は売上が安定的に推移する一方で、利益率が極めて薄い構造を長年維持していることがわかる。売上は連23.11で2420億円、連24.11で2404億円とほぼ横ばいながら、連25.11予で2630億円、連26.11予で2780億円と増加が続く見通しだ。売上規模そのものは大きく、地域インフラ企業として一定の安定性を持つことが伺える。しかし利益面を見ると、営業利益は60億円→63億円→72億円→77億円と増加しているものの、売上に対する営業利益率は 2.5%→2.6%→2.8%と極めて低く、事業構造として厚い利益を取りにくい典型的なエネルギー小売・地域インフラ企業の特徴が色濃く出ている。
加えて、ROEは 7.9%→6.2%→6.6% と推移しており、資本効率は日本企業平均(8~10%)を下回る水準にとどまっている。ROAも 3.2%→2.5%→2.7% と低く、総資産を多く抱えるビジネスモデルゆえに資産効率が高まりにくい特徴がある。これらの指標からすると、事業の安定性はあるものの、株主資本に対する利益の創出力は強くなく、市場が高い評価(高PER・高PBR)を与えにくいことが読み取れる。
実際にバリュエーション面を見ると、2024年のPERは高値平均で9.6倍、安値平均で7.3倍と低位で推移しており、PBRも0.79倍と1倍を割れたまま放置されている。これは市場が同社を「割安だが成長性が乏しい企業」として見ている証拠であり、バリュエーションの低さは期待の低さの裏返しでもある。ただし一方で、PBR1倍割れの企業は、長期的には解散価値(純資産)に対するディスカウントが発生している状態とも言えるため、資産価値重視の投資家には一定の魅力がある。また、安定的なキャッシュフローを背景に配当が継続的に増加している点は、ディフェンシブ銘柄としての魅力となりうる。
連23.11〜連26.11予の純利益の推移を見ると、60億円→52億円→51億円→54億円と振れ幅があるものの、利益水準は比較的安定している。しかし、営業利益・経常利益の改善に比べて純利益が低迷している点は、コスト構造や税負担、あるいは営業外損益などに課題を残している可能性を示唆している。また EPS も95円→81円→79円→84円と減少傾向で、これに伴って2025年のPERは12.6倍に上昇している。利益が伸びない中で株価が上昇するとPERは割高に見え始めるため、「割安感が薄れている局面」とも判断できる。
総合的に見ると、サーラコーポレーションは「安定しているが、成長力は強くない企業」であり、長期的な株価の大幅上昇は期待しにくい。一方で、地域密着型インフラ事業という特性から売上が大きく崩れるリスクは低く、配当も徐々に増加しているため、安定重視の長期投資家にとっては一定の価値を持つ銘柄といえる。PBRが1倍を大きく割れている現状、資産価値に対する市場評価が低すぎる可能性もあるため、今後ROEや利益率が改善すれば株価水準が切り上がる余地はある。ただし、その改善がすぐに起こる兆候は今回のデータからは見られないため、当面は「割安・高配当・低成長」の典型的なディフェンシブ株として位置づけるのが妥当だろう。
一方で、エネルギー事業は政策変更や燃料費の変動に影響されやすく、需給構造も変化しつつあるため、外部要因による利益のブレは一定程度考慮すべきである。また、電力・ガス自由化の進展による競争激化は、中期的には利益率をさらに圧迫する懸念もある。今後同社が市場からの評価を高めるには、利益率改善、資本効率の向上、成長事業への積極的投資などが求められる。
以上を踏まえると、現時点での投資判断は「大きく伸びる株ではないが、安定配当を求める長期投資家には向く」。一方で、成長株や株価上昇を狙う投資スタイルとは相性が悪い。市場の評価が低い分、下値リスクは限定的だが、上値も重い典型的なレンジ型銘柄とみられる。
配当目的とかどうなの?
サーラコーポレーションの配当を、配当利回り・利益水準・財務指標の推移と合わせて眺めると、この企業がどのような性格の“配当株”なのかが見えてくる。まず利回りについては、連25.11で2.99%、連26.11では3.27%が見込まれ、一般的な日本株の平均利回り(2%台前半)と比べれば明確に高い部類に入る。ただし3.5%~4.5%といった典型的な高配当銘柄の領域には届いておらず、あくまで「やや高めの安定配当」という位置づけである。利回り3%台というのは、景気にあまり左右されないインフラ系の企業としては十分に魅力的で、特に低金利環境が続く日本では、預金よりも確実性のある収益源になり得る。
一方で、配当の裏付けとなる利益面を見ると、営業利益率は2.5%、2.6%、2.8%とわずかに改善しているものの、依然として業界全体の中で高い水準とは言えない。ROE(7.9%→6.2%→6.6%)やROA(3.2%→2.5%→2.7%)も低く、資本効率や資産効率の観点からは洗練された企業とは言い難い。こうした低利益率・低ROE構造の企業は、利益成長力が弱く、配当を急激に伸ばすことが難しい傾向がある。それでも同社が配当を増やし続けているのは、安定的に売上を確保しやすい事業モデルに加えて、株主還元を重視した経営姿勢を持っているためと考えられる。
また、サーラはPBRが0.79倍と1倍を大きく割り込んでおり、純資産に対して株価が割安に放置されていることがわかる。本来、PBRが1倍を下回る企業は、成長期待が低い、もしくは資本効率が低いことが理由となるが、その一方で、割安株を好む長期投資家にとっては魅力的な水準ともいえる。資産価値に対してディスカウントされている状態で株を取得すれば、将来ROEが改善した際の株価上昇余地も生まれやすい。
配当金自体も、26円、30円、32円、34円と緩やかに増加しており、利益が伸び悩む中でも減配を避け、むしろ増配を続けている点は評価できる。EPSが95円から81円、79円、84円と下がり気味であるにもかかわらず配当を増やしている背景には、キャッシュフローの安定性や財務健全性が一定程度あると推測される。ただし、これは同時に、今後の増配余力が無限にあるわけではなく、収益力が改善しなければ、やがて配当成長は鈍化する可能性もあることを示している。
こうした諸指標をまとめて考えると、サーラコーポレーションは、「高成長株」ではなく、「安定配当を提供する低リスク・低成長のディフェンシブ銘柄」という性格が最も強い。配当利回りはそこそこ良く、事業基盤も地域インフラ系で安定しているため、大きく値下がりしにくいという安心感がある。一方で、株価が大きく伸びる可能性は低く、配当が急増するタイプでもない。したがって、積極的に値上がり益を狙う投資よりも、むしろ「長期的に毎年安定した配当を受け取りたい」という人に向いた銘柄と考えられる。配当目的のポートフォリオに組み込む“守りの銘柄”としては十分に機能するが、高利回りを求める投資家にはやや物足りない側面もある。
今後の値動き予想!!(5年間)
サーラコーポレーションの現在値1,070円を基準に、過去の実績データ・利益率の推移・ROE/ROA・PBR水準・配当利回りなどを総合して、今後5年間の株価がどのように動く可能性があるかを考えて行きます。サーラの株価を考える上でまず前提になるのは、同社が「大きく成長する企業ではない」という点である。
売上規模は2,400〜2,700億円と大きく、地域インフラとしての安定感があるものの、営業利益率は2%台後半と薄く、ROEも6%前後で推移している。こうした低利益率の事業モデルは、景気の影響を受けにくい一方で、市場が高い成長期待を株価に織り込むことも難しい。結果的に株価は長期的に大きく振れにくく、PBRも0.7~0.8倍程度で放置されがちだ。この “安定性は高いが評価が上がりにくい” という体質が、今後の株価を考える際の基本軸になる。
まず、良い場合を考えると、主に利益率の改善がテーマになる。営業利益率が現在の2.5〜2.8%から3%台に乗ってくるような展開があれば、ROEも8%近くまで上昇し、PBRが1倍近くまで評価される可能性が出てくる。エネルギー事業は燃料費の変動や政策の影響を受けやすいものの、電力・ガス需要が安定している地域では、顧客基盤を軸に緩やかな利益積み上げが可能だ。また、同社は配当を安定的に増やしており、この点が市場から徐々に評価され始めると、株価は1,300〜1,450円あたりまで見直される余地が生まれる。仮にインフラ関連企業が再評価されるマーケット環境が整えば、1,500円に乗せる局面も全く想像できないわけではない。
中間シナリオでは、現在の企業体質を大きく変えないまま業績が横ばいで推移していくケースを想定する。売上は微増、利益は上下しつつも大崩れはしない、ROEは6〜7%台を維持といったパターンである。こうした企業は株価が配当利回りの水準によって下支えされるため、株価も1,000〜1,200円あたりを中心に、狭いレンジの中で落ち着いた動きをしやすい。市場の注目が急に集まるような企業ではないため、材料がない限り急騰はしにくいが、その代わり安定性は高く、長期保有でじっくりと利回りを取りにいくには適している。インフラ系銘柄にありがちな “退屈だが安定した株価形成” を続ける可能性が最も高いシナリオだ。
悪い場合については、利益率の低さが逆風となる展開である。もし燃料価格の上昇や競争環境の悪化により利益が圧迫され、営業利益が減少し続けると、ROEは5%を割り込むリスクがある。この水準になると市場評価はさらに低下し、PBRが0.6倍台へ落ち込む可能性が出てくる。株価水準としては900〜1,000円あたりまでの調整が考えられ、長期的な上昇にもつながりにくくなる。安定企業ではあるものの、利益率が低いビジネスは外部環境の変化に弱い面があり、エネルギー価格の乱高下が続けば、地味に業績を削り取られる展開もあり得る。
全体を通してみると、サーラの株価は「配当と安定性によって支えられるタイプ」であり、5年間で倍になるような派手な動きは期待しにくいものの、3%台の利回りと安定した事業基盤があるため、大きく崩れにくい点が投資家にとって魅力となる。インカムゲインを中心に資産を増やしたい投資家には比較的相性がよい一方で、短期的な値上がり益や高成長を求めるスタイルには向かない。株価が大きく跳ね上がる場合は企業改革か利益率改善が必要だが、現状の数字を見る限りその確度は高くない。したがって、株価1,070円を起点とした5年後のイメージとしては、「良い場合は1,400円台、中間は1,100円前後、悪い場合は1,000円割れ」というのが現実的な見通しと言える。
この記事の最終更新日:2025年12月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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