株価
トーメンデバイスとは

株式会社トーメンデバイスは、東京都中央区に本社を置く豊田通商グループの電子デバイス専門商社であり、特にサムスン電子製半導体を日本市場へ供給する主要代理店として独自のポジションを築いている。1992年に当時のトーメン(現在の豊田通商)、トーメンエレクトロニクス(現・ネクスティ エレクトロニクス)、そしてサムスン電子ジャパン(現・日本サムスン)の三社が共同出資して設立された経緯から、創業時から「サムスン専業」の専門商社として発展してきた。一般的な半導体商社が複数メーカーを扱う中、同社はサムスングループ製の半導体に特化することで、製品知識の深さや供給網の強さ、技術サポート体制の厚みといった面で高い専門性を確立している。
同社が取り扱う主力商材は、DRAMやNAND型フラッシュメモリーを中心としたメモリー製品で、スマートフォン、PC、サーバー、車載制御ユニットなど、幅広い分野に欠かせない重要部材である。近年はデータセンター向けの需要が増加しているため、メモリー市況の動向が同社業績に大きな影響を与える構造となっている。メモリーの供給不足や市況の急変が発生した際には、いかに製品を確保し顧客に提供できるかが商社としての競争力を左右する。同社は豊田通商グループの調達ネットワークやサムスンとの緊密な関係構築を背景に、商品供給リスクの低減と安定供給の維持に注力している。
また、エレクトロニクス産業の大きな潮流として、自動車の電装化・電子化が急速に進んでおり、車載向け電子部品の需要が増大している。これまでスマートフォン市場を中心に成長してきたメモリー需要は、今後は車載・産業機器分野へも裾野が拡がると見込まれている。トーメンデバイスもこうした変化を長期的なビジネスチャンスととらえ、車載向けの半導体や有機EL部品、コンデンサーなどのラインアップ強化を進めている。車載半導体市場はスマホ市場ほど急激な価格変動が起こりにくく、取引期間も比較的長期にわたることが多いため、同社の収益安定化に寄与する分野として重要性が高まっている。
さらに、半導体供給は国際政治・地政学リスクの影響を受けやすく、調達先の分散化がメーカー各社の重要課題となっているなかで、サムスン電子の安定供給力と、日本市場に精通したトーメンデバイスの販売力の組み合わせは強みとして機能している。サムスン製メモリーは世界シェアも高く、技術面でも最先端の位置にあり、その市場存在感は極めて大きい。トーメンデバイスはこうした有力メーカーの製品を日本企業に届ける“橋渡し役”として、設計支援、技術サポート、市場分析などの付加価値サービスも提供している。
同社の特徴として、豊田通商グループ傘下という強固なバックボーンがある点も挙げられる。大手総合商社の資本力とグローバルネットワークは、半導体市場の不確実性が高まる局面において、調達・販売の安定性にプラスに働く。また、グループ内のネクスティ エレクトロニクスが多様な海外半導体メーカーを扱うのに対し、トーメンデバイスはサムスン専業という明確な役割分担を持つことで、広範なラインアップと深い専門性を両立させている。この両社がグループ内で補完関係を築いている点は、豊田通商グループ全体としての半導体事業の強みと言える。
総じてトーメンデバイスは、サムスン電子製品に特化したユニークな商社として、高い専門性と安定供給能力を背景に日本のエレクトロニクス産業を支える存在となっている。メモリー市況の波に左右されやすい一方で、自動車の電装化や産業機器分野の拡大が追い風となり、中長期的には安定した収益基盤を形成していくことが期待されている。
トーメンデバイス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 417,621 | 12,230 | 6,589 | 4,906 | 721.4 | 300 |
| 連24.3 | 370,676 | 9,480 | 6,203 | 2,096 | 308.2 | 200 |
| 連25.3 | 421,671 | 10,169 | 7,377 | 5,588 | 821.7 | 300 |
| 連26.3予 | 400,000 | 8,800 | 6,500 | 4,800 | 705.8 | 260 |
| 連27.3予 | 423,000 | 9,300 | 7,000 | 5,100 | 749.9 | 275〜300 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -4,961 | -263 | 8,584 |
| 2024 | 4,425 | 494 | 2,904 |
| 2025 | 9,210 | -21 | -16,853 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.9% | 11.3% | 4.5% | ― | ― |
| 2024 | 2.5% | 4.6% | 1.6% | ― | ― |
| 2025 | 2.4% | ― | 4.9% | 14.2倍 / 9.5倍 | 1.52倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、売上は連23.3で4176億、連24.3で3706億と一度落ち込んだものの、連25.3では4216億に回復している。予想値でも連26.3で4000億、連27.3で4230億と推移し、上下はあるものの中期的にはおおむね安定している。半導体商社として、市況に左右されながらも一定の売上規模を維持できている点が特徴だ。
利益面を見ると、営業利益は122億 → 94億 → 101億 → 88億 → 93億という推移で、こちらは売上に比べて変動幅が大きい。利益率を見ても営業利益率が2.9% → 2.5% → 2.4%と年々低下しており、商社としての粗利が圧迫されていることが伺える。経常利益・純利益も同様の推移で、純利益は49億 → 20億 → 55億 → 48億 → 51億となっており、年度ごとの変動が大きい。利益のブレが大きい企業は予測が難しく、市場から高い評価を得にくいという特徴がある。
ROEを見ると、11.3% → 4.6% →(25年はデータなし)となっており、直近では大幅に低下している。ROAも4.5% → 1.6% → 4.9%と動きが大きく、効率性が安定していない。特に24年のROE・ROA急落は利益の急減と連動しており、その翌年は回復傾向を見せているものの、企業として利益構造が安定しているとは言い難い。
一方で株価指標を見ると、2025年のPERは高値平均で14.2倍、安値平均で9.5倍、PBRは1.52倍となっている。PER10倍前後で推移していることから、極端な割安・割高水準ではなく、“標準的評価” に近い位置で取引されていると考えられる。PBR1.52倍は一定の成長期待を織り込んでいる水準であり、純資産に対してそこまで放置されていないことを意味する。
財務的には配当も変動が大きく、300円 → 200円 → 300円 → 260円 → 275〜300円と振れている。配当を安定的に増やす企業とは異なり、業績に応じて調整する方針と見られるため、安定配当目的の投資家には向きにくい面がある。
総合的に見ると、この企業は売上規模は大きく、メモリー市況に連動しながらも一定の回復力を持つものの、利益が大きく上下しやすく、利益率・ROEとも安定しないため、市場から高い評価を受けにくい体質になっている。PERは概ね10倍前後、PBRは1.5倍前後で推移していることから、株価が大きく割安という状況ではなく、むしろ収益の変動性を考えると割安感は薄い。
投資判断としては、短期的な利益変動を許容し、市況回復局面で収益が跳ねるタイミングを狙う投資には向くが、長期で安定した収益や配当を期待する投資には向きにくい。利益率の低下傾向やROEの急落など、採算性の課題も見られるため、中長期で強気に買い増すタイプの銘柄ではない。むしろ市況に合わせて波乗りをする“循環型の半導体商社銘柄”として扱うのが現実的で、安定志向の投資家よりはタイミング重視の投資家に適した銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
まず予想配当利回りを見ると、連26.3で2.57%、連27.3でも同じく2.57%となっており、利回りとしては“平均よりやや高めだが高配当株とまでは言えない” 水準に収まっている。日本株全体の平均利回りが2%前半であることを考えると、確かに低くはないが、3〜4%台の本格的高配当銘柄と比較すると見劣りする。配当利回りだけで選ぶような投資方針の場合、この銘柄は“中途半端” な位置づけになりやすい。
一方で配当の推移を見ると、300円 → 200円 → 300円 → 260円 → 275〜300円と変動が大きく、安定配当型ではなく“利益に合わせて調整する銘柄” という性格がはっきり出ている。業績が好調な年には300円まで払えるものの、利益が急落した年には200円まで落ち込んでいる点から、配当の安定性は高くない。配当目的の投資では「長期的に配当が増えていくか」「減配リスクが小さいか」などが重要になるが、ここだけを見るとトーメンデバイスは必ずしも安定志向の投資家向きとは言えない。
利益率を合わせて見ると、営業利益率が 2.9% → 2.5% → 2.4% と年々低下しており、収益性が弱い傾向がある。収益性の低下は配当余力にも影響し、将来の増配を強気に期待するのは難しい。ROEも11.3%から4.6%まで落ち込み、翌年はデータなしという状況で、安定した高収益体質とは言いにくい。ROAも年度によって大きく揺れ動いており、安定的に利益を出して株主還元を続けるタイプではなく“市況に連動して利益が上下する循環型企業”であることが強く示されている。
このように、配当利回り自体は2.5%台と悪くはないが、配当の安定性・増配の継続性という視点で見ると評価は下がる。長期で「毎年確実に配当を積み上げたい」という投資スタイルには向いておらず、市況回復で利益が跳ねたタイミングで配当も伸びる、という短期~中期の“波乗り型配当銘柄”として捉える方が現実的である。
結論として、トーメンデバイスは「配当目的としてギリギリ成立するが、安定配当銘柄とは言い難い」。利回りはそこそこあるものの、配当が大きく上下しやすい点と利益率低下傾向を考えると、配当目的だけで長期保有するには不安が残る銘柄である。むしろ、業績が好調なタイミングで保有し、配当と株価の両取りを狙うタイプの“景気循環型の半導体商社”として扱うほうが向いていると言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
トーメンデバイスの現在値11650円を起点として、今後5年間の株価を予想すると、この企業特有の“半導体商社としての市況連動性”がそのまま株価に跳ね返ってくる構造がはっきりと見えてくる。売上は4176億→3706億→4216億と上下し、予想でも4000億→4230億と変動があるように、業績は毎年滑らかな右肩上がりではなく、市況の波に合わせて大きく揺れるタイプの企業であることが特徴だ。特に営業利益は122億→94億→101億、営業利益率も2.9%→2.5%→2.4%と低下傾向を示し、ROEも11.3%から4.6%まで急落している点から、利益率や収益効率の面では非常に安定性が低い。純利益が49億→20億→55億→48億→51億と極端に振れる構造は、そのまま株価のボラティリティに反映されやすい。
PERは2025年で高値平均14.2倍、安値平均9.5倍、PBRは1.52倍という水準を見ても、同社の株価は“業績に素直に反応し、上にも下にも振れやすい”性質を持っていることがわかる。割安放置のままという状況ではないが、安定した評価を得ているとも言い難い位置にある。これらの特徴を総合すると、今後5年間の株価は、市況・利益率・ROEの変動に対して非常に敏感な動きをする可能性が高く、良い場合・悪い場合・中間の場合で結果が大きく異なる。
良い場合
メモリー市況が複数年にわたって上向き、価格上昇局面が続き、売上が4000〜4200億のレンジを維持しつつ営業利益が90〜110億程度を安定して確保できる展開。ROEが再び10%前後まで戻るような形になれば、PERが14〜16倍程度まで買われ、PBRも1.7〜2.0倍に近づく。こうなれば株価は13500〜15000円程度まで上昇する可能性があり、サイクルのピークと重なれば15500円を一時的に超える場面も考えられる。半導体市況が強い数年間があれば、その間はこの株も素直に強くなり、業績の回復とともに市場の評価も上振れしやすい。
中間の場合
市況が強すぎず弱すぎず、売上は4000〜4300億付近で推移し、営業利益も80〜100億の間で揺れながらなんとか安定を保つ展開。営業利益率が2.4%前後で横ばいとなり、ROEも6〜8%程度の“平均的な利益体質”に落ち着くケース。この場合は市場評価も大きく変わらず、PERは10〜13倍、PBRは1.3〜1.6倍あたりに収まりやすい。株価は11000〜13000円のレンジに留まり、現在値11650円から大幅に離れずに推移する典型的なボックス相場になりやすい。上値の重さと下値の堅さが同時に存在し、退屈ではあるが急落も起きにくいタイプの動きになる。
悪い場合
メモリー市況が下降局面に入り、DRAMやフラッシュメモリーの価格下落が長期化し、売上が4000億を割れ込むような状況が続くケース。営業利益は80億を下回り、ROEが5%以下に低下するような展開では、市場の評価も一気に冷え込み、PERは10倍を割り込み、PBRも1倍近くまで下落する可能性がある。そうなると株価は9000〜10500円程度まで下降します。最悪の場合は9000円割れを視野に入れざるを得ない。ただし市況次第で回復する余地もあるため、底値が長期的に固定されるわけではないものの、下落期間は苦しい時間帯になる。
総合すると、トーメンデバイスは“成長株”ではなく“市況に合わせて波を描く循環株”であり、業績の上下がそのまま株価にも現れる。現在の11650円は、良い場合には上昇の余地が残っており、悪い場合には下振れリスクがあるという中間的な位置で、どちらにも振れやすい不安定さがある。長期の安定配当目的として保有するには利回りも低く、配当の安定性も強くないため向いていないが、市況に合わせた売買で値幅を取りたい投資家にとっては扱いやすい銘柄といえる。5年間の姿はサイクルに大きく左右され、上昇すれば15000円近く、停滞すれば11000円前後、悪化すれば10000円割れという明確な三段構造で動く可能性が高い。
この記事の最終更新日:2025年12月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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