株価
JPホールディングスとは

株式会社JPホールディングスは東京都港区港南に本社を構える持株会社で、子育て支援事業を中核としたグループ運営を行っている企業である。事業展開の中心となるのは保育所や学童クラブ、児童館などの施設運営で、アスクの名称で関東地方を中心に広く保育施設を展開してきた。2017年3月時点では保育所172施設、学童クラブ63施設、児童館10施設を運営し、現在では認可保育園、認可外保育園、認定こども園、企業主導型保育など多様な形態で事業領域を広げている。
運営方針として365日開園・年中無休を基本とし、延長保育、休日保育、一時預かり、病児に対する軽度対応など柔軟なサービス体制を整え、共働き家庭の増加と多様化する保育ニーズに応える仕組みを築いている。さらに給食には特栽米や秋田県産あきたこまちを使用し、園児が育てた野菜をメニューに取り入れるなど、食育にも積極的に取り組んでいるほか、リトミック、英会話、体操、ダンスといった幼児教育プログラムも導入し、単なる預かりではなく「育ち」を支える保育を志向している点が特徴である。
企業のルーツは創業者・山口洋がアミューズメント施設で行っていたワゴンサービス事業に遡り、従業員向けの託児所設置をきっかけに保育分野へ参入した。その後徐々に保育事業へ軸足を移し、2010年には飲食関連事業の子会社を売却して完全に子育て支援事業に事業特化した。また日本郵政グループと提携し、各地の大規模郵便局内スペースに認可保育園を設置するスキームを構築、2015年にはさいたま中央郵便局敷地内に認可保育園を開設し、公的インフラと民間保育の連携モデルを形成したことでも注目された。
一方で経営面では創業者辞任後の路線対立があり、2017年には山口が臨時株主総会を求め取締役解任を要求する事態にまで発展したが、総会では否決となり、現経営体制の継続が決まった歴史がある。企業の支配関係としては2021年に学研ホールディングスの持分法適用関連会社となり、2023年には学研保有株がすべてダスキンに譲渡されたことで現在はダスキンが持分法適用親会社となっている。
現在のJPホールディングスは保育所運営に加えて給食提供、教材企画、幼児教育プログラムの開発、人材派遣、さらには保育を軸とした不動産活用など、子どもと家族を取り巻く環境全体に関わる事業を多角的に展開しており、子育て支援のプラットフォーム企業として幅を持ち始めている。施設数の拡大とサービス品質の両立、少子化時代における保育価値の再定義、行政と連携した社会インフラとしての役割など、事業の方向性は「預かる」から「育てる」へ、さらに「地域を支える」サービスへと進化していると言える。
JPホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 35,507 | 3,667 | 3,745 | 2,698 | 31.2 | 6 記 |
| 連24.3 | 37,856 | 4,584 | 4,523 | 2,929 | 34.4 | 8 |
| 連25.3 | 41,147 | 5,809 | 5,858 | 3,920 | 45.9 | 12 |
| 連26.3予 | 44,200 | 5,800 | 5,850 | 3,800 | 44.4 | 12〜13 |
| 連27.3予 | 48,000 | 6,200 | 6,250 | 4,060 | 47.4 | 12〜14 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 2,735 | 411 | -1,112 |
| 2024 | 5,598 | -6 | -3,978 |
| 2025 | 4,205 | -162 | -4,243 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 10.3% | 19.8% | 7.5% | ー | ー |
| 2024 | 12.1% | 18.1% | 7.9% | ー | ー |
| 2025 | 14.1% | 20.0% | 10.4% | PER 高値平均 15.3倍 / 安値平均 8.1倍 | PBR 2.77倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
JPホールディングスは直近の売上推移を見ると、378億→411億→442億予と増加傾向にあり、営業利益も45億→58億→58億予と推移している。経常利益も45億→58億→58億予とほぼ同様に伸びており、純利益は29億→39億→38億予で一度伸びた後にやや後退している。EPSは34円→45円→44円予と推移しており、利益と同じく成長は見られるが直近はわずかに鈍化している。配当は8円→12円→12〜13円予で増配傾向が確認でき、利益に伴った還元姿勢が見て取れる。
収益性面では営業利益率が10%→12%→14%、ROEは19%→18%→20%、ROAは7%→7%→10%と改善方向で、特に営業利益率の上昇が目立つ。利益率改善が続き、ROE20%付近まで伸びていることは資本効率の高さを示し、収益体質は年々強くなっていると評価できる。ROAも10%に到達しつつあり、自己資本だけでなく総資産全体で見ても稼ぐ力が高まっていることが分かる。
株価水準を示すPERは2025実績で高値平均15倍、安値平均8倍、PBRは2.7倍程度。PBR2倍台後半は割安とは言えず、ある程度成長を織り込んだ評価水準と考えられる。もし利益成長が鈍化するならPER8倍側に寄り株価下落余地が出る一方、利益率やROEが維持・成長すれば15倍レンジが意識され値上余地が残る。その意味で株価変動の鍵は今後の利益率維持とEPS成長の継続にある。
総合的に見ると、売上・利益・利益率は改善傾向で、増配も続いている点から中期的には評価しやすい企業。ROEと営業利益率の推移は優秀で、効率性と収益性が伸びている。ただし純利益とEPSは直近で伸びが鈍り、PBR2.7倍は楽観視されている可能性もあるため、今後の利益確保が停滞するとバリュエーション調整が起きやすい。結論としては、現状は成長と効率改善が揃った評価しやすい銘柄で、中長期視点では継続成長前提なら保有に向く。ただしPERレンジの下限が8倍付近にある点を踏まえ、利益が伸び悩んだ場合の下振れリスクには注意が必要と判断できる。
配当目的とかどうなの?
配当利回り(2026・2027年度)が1.82%という水準を見ると、はっきり言って高配当株としての魅力は大きくない。利回りだけを軸に銘柄を選ぶ投資スタイルなら、同程度のリスクで2.5%〜3%以上を狙える銘柄が市場には多数あるため、JPホールディングスを「配当収入目的の主力銘柄」として選ぶ理由は弱い。インカム狙い一本で買うなら物足りない数字であり、配当を受け取って安定的に利益を得るタイプの投資家には向きにくい水準といえる。
一方で、直近の配当は増加傾向が見え、利益率・ROE・ROAの改善も確認されていることから、利益成長さえ続けば将来の配当引き上げは十分に期待できる。現状は利回りが低くても、成長に伴った増配が続けば長期保有で利回り・評価益の両方が改善していく可能性がある。つまりこの銘柄は「いま配当で儲けるタイプ」ではなく「業績成長による将来の配当拡大を狙うタイプ」として見る方が理に合っている。
まとめると、現時点の1.82%利回りで配当狙いに寄せるのは弱い。ただし利益率がさらに改善し、EPSと配当が伸び続ける前提なら、未来の利回り向上と株価成長でトータルリターンを狙う投資としては検討できる。インカム単体では魅力低め、成長+増配の将来性込みなら持つ理由が出てくる、そんな立ち位置の銘柄と判断できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価659円のJPホールディングスが今後5年間でどのような値動きを描くかを想定すると、まず前提として同社は保育・学童といった社会的需要が底堅い領域を主軸としているため、景気変動で大きく落ち込みにくい性質を持っている一方で、急成長型というよりは積み上げ型の業績進展をしていく企業と考えられる。売上や利益が右肩で積み上がり、営業利益率が10→12→14%と伸びてきた背景にあるコストコントロールや運営効率化が継続できれば中期的な利益成長は維持されやすく、EPS成長と増配が続くことで投資家の評価レンジが切り上がる未来も十分に想像できる。
最も良いシナリオでは、利益率改善が継続しROE20%前後を維持、保育園・学童クラブの拡張や新業態の展開が進み、事業基盤の規模が拡大しながら利益が伴う状態が続く。この場合、投資家は単なるディフェンシブ銘柄ではなく成長性も併せ持つ企業として評価し、バリュエーションは現在より高水準に定着する可能性があります。5年後には株価が900円から1100円程度と今より1.3〜1.6倍レンジまで上昇していても不思議ではなく、キャピタルゲイン・配当・双方を取りに行く優等生銘柄というポジションになりうる。特に教育・保育は国策領域に近いもので、補助金制度や自治体委託などの制度との相性が良い点が追い風になれば、相場環境に左右されにくい持続成長が株価評価につながるだろう。
中間のケースでは、売上と利益は伸び続けるもののそのペースは緩やかで、EPSや配当も少しずつは伸びるが派手な伸び方にはならず、投資家の評価も大きくは変わらない。市場は安心感あるが強い期待を寄せるほどではなく、PER・PBRは現在に近い水準で落ち着き、株価は650〜800円と今と大きく変わらないゾーンで推移するだろう。この場合長期的な派手な成長は望みづらいが、事業の安定性から急落しにくい下値の強さが特徴になり、株価は大きく動かない代わりに持ち続ける安心感が価値になるタイプの銘柄となる。配当も1.8%前後なら高配当とは言えないが、安定企業で「減らない安心」を重視する投資家には合う。
悪いケースでは、運営コスト上昇や労働負担の強まり、待機児童減少などによる需給変化が利益を圧迫し、ROEや利益率が低下することで市場評価が縮小する可能性がある。保育分野は人員確保が難しく、賃金上昇が利益率を削るリスクが常にあるため、費用管理に失敗すると収益の鈍化は想定より早く訪れる。この場合株価は5年後には500〜550円のゾーンに留まる可能性があり、PBR2.7倍という評価は割高と見なされ修正されるリスクがある。配当も伸び悩み、利回りが相対的な魅力を失えば資金が他に流れやすく、長期保有でも旨味が薄い展開になりやすい。
まとめると、659円という株価は成長期待も織り込みつつある位置で、向こう5年は利益率改善と増配が続けば上方向に素直に反応しやすいが、伸びが鈍ると横ばい〜調整に向かいやすい。つまりこの銘柄の未来の鍵は「利益率の維持」「人材コスト負担に耐えられるか」「教育価値で差別化できるか」の3点であり、これらが揃えば株価は順調に上を目指し、崩れれば鈍化がすぐ株価に反映される。良い未来・中間・悪い未来がそれぞれ現実的に存在する銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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