株価
大黒天物産とは

大黒天物産株式会社は、岡山県倉敷市に本社を置く小売業・総合食品卸売業である。東証プライムに上場しており、「ラ・ムー」「ディオ」などのディスカウントストアを主軸として事業を展開している。小売事業では24時間営業と低価格販売(EDLP)が特徴で、ディスカウントコンビニや100円ショップ業態も持つ。
創業は1986年(昭和61年)6月、大賀昭司が前身の有限会社倉敷きのしんを設立し、加工食品卸売を開始したことに始まる。問屋と小売の流通構造に疑問を持ち、「より安く消費者へ商品を届けられる仕組み」を追求し、1990年に小売へ参入、1993年に大黒天物産株式会社を設立した。
企業理念は「生活の中で大きな割合を占める食費を下げ、余裕を社会へ回し豊かさを広げること」であり、生産・製造・物流・販売・店舗開発まで自社・グループで一貫管理する製造小売戦略(SPF)を採用する。PB「D-PRICE」商品は1,000種類以上、自社農場・牧場・食品工場・物流センターを自前で持ち、コストの徹底削減を行う。上場以降22期連続増収、店舗数は約230店舗(子会社含む)、将来目標は2035年700店舗とし中部・関東展開を進める。社名は「大黒天のように人々へ福を与える企業」を由来とする。他企業の大黒屋・大黒食品工業などとは資本関係を持たない。
2025年7月時点の出店エリアは26府県。中国地方を中心に、近畿・四国(高知除く)・中部(北陸含む)・九州北部まで拡大している。大型ディスカウントのラ・ムーはピンク色の外観とLAMUロゴが特徴で、全国に158店舗(2025年9月時点)。ディオは大規模メガディスカウント業態で全国44店舗。ディオマートとザ・大黒天は低コスト小規模店舗で展開。店内併設ファストフード「パクパク」では100円たこ焼き・ソフトクリームを販売。100円ショップ「バリュー100」はワッツと共同運営。
店舗の特徴として、価格訴求型の商品約5,000アイテムに絞り込み、PB比率を高め低価格を維持する。大型モニターで自社PBやイベント告知・レシピを放映。棚卸しも店舗閉鎖せず営業継続。多くが24時間無休だが正月のみ休み。決済は現金と独自の大黒天Payのみ(子会社運営店舗では一部クレカ等利用可)。大黒天Payはポケペイアプリを通じて利用する。
大黒天物産 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.5 | 221,551 | 8,599 | 8,827 | 5,518 | 396.2 | 29 |
| 連22.5 | 224,150 | 8,540 | 8,923 | 5,617 | 403.3 | 29 |
| 連23.5 | 242,243 | 4,497 | 4,844 | 3,116 | 223.7 | 29 |
| 連24.5 | 270,077 | 9,352 | 9,543 | 6,306 | 452.6 | 33 |
| 連25.5 | 292,940 | 9,812 | 10,088 | 6,774 | 486.0 | 39(特別含) |
| 連26.5予 | 316,000 | 10,300 | 10,400 | 6,900 | 498.2 | 35〜39 |
| 連27.5予 | 335,000 | 11,000 | 11,100 | 7,300 | 527.1 | 39〜42 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 7,610 | -17,889 | 9,370 |
| 2024 | 21,408 | -13,030 | -4,985 |
| 2025 | 11,438 | -16,766 | 1,793 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.8% | 6.3% | 3.2% | — | — |
| 2024 | 3.4% | 11.3% | 6.0% | — | — |
| 2025 | 3.3% | 11.1% | 5.8% | PER 高値平均 24.7倍 / 安値平均 13.5倍 | PBR 1.34倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
大黒天物産のここ数年の数字を素直に追っていくと、売上は2700億 → 2929億 → 3160億(予想)と、毎年しっかり積み上げており、食品小売としてはかなり綺麗な右肩上がりだと感じる。営業利益も93億 → 98億 → 103億と増えていて、経常利益もほぼ同じように伸びている。純利益も63億 → 67億 → 69億と微増だが、減速というよりは着実に利益が太っていく型に見える。爆発的というより堅実。派手さはないが、崩れもない。
利益率に目を向けると、営業利益率は1.8% → 3.4% → 3.3%。2023年の低さと比べると改善して戻りの形を保っている。食品ディスカウントという薄利市場で3%台を維持できているのは頑張っている方で、構造的に利益を削られやすい業態でこの水準なら「無理していない利益」だと読める。ROEは6.3% → 11.3% → 11.1%、ROAは3.2% → 6.0% → 5.8%。どちらも2024年をピークにやや落ち着きつつも高い状態を維持していて、企業の体質が2023年に比べて強くなっている印象がある。特にROE11%台は資本を効率的に回して利益を出している証拠で、投資対象として評価しやすい。
次に株価評価面を少し考える。2025年のPERが13.5〜24.7倍、PBR1.3倍という数字を見ると、割高・過熱というほどでもなく、逆に割安と断言できるほど低くもない。ちょうど市場が今の収益状態をそれなりに評価して価格をつけている印象。もしこの企業に期待して買うなら、高値PER24倍付近より、低いPER13倍〜17倍あたりの水準に近づいたときの方が、妙味は取りやすいと感じる。PBR1.3倍というのも、低成長の成熟企業なら割高と言いたくなるが、売上と利益が毎年伸びているこの会社なら、そこまで重い数字ではない。
総じて、この数値の並びから見えてくるのは「無理なく伸びている会社」という空気だ。売上も利益も連続で積み上げ、資本効率が改善し、収益性が悪化している場面もなく、財務的には比較的安定している。一方で、営業利益や純利益の成長率は爆発的ではなく、順調ではあるが劇的なサプライズはまだ見えない。つまり、短期で急騰を拾いに行く銘柄ではなく、時間を味方にじっくり持つタイプ。ディスカウント業態という特性上、物価や物流、人件費が増えた年には数字が揺れる可能性もあるが、それでもこの三年間の推移を見る限り、安定成長型の強さを感じる。
もし自分がこの数字だけを頼りに投資を判断するなら、「押した場面・PERが中間より下に寄った場面で拾って、成長が続く限り長く持つ」という考え方が自然に浮かぶ。過度な期待で高い位置で掴むより、淡々と安くなった時に買い、利益が積み重なるのを待つ。派手な花火ではなく、焚き火のようにじっくり温まる銘柄という位置づけだと思う。
配当目的とかどうなの?
大黒天物産の配当利回りは、予想で0.58%、その次の期でも0.65%とされている。これだけを見ると、配当狙いの投資としてはやや物足りないという印象になる。市場平均や一般的な高配当株が2〜4%を狙えることを踏まえると、0%台という利回りはインカム目的で買う銘柄の条件としては弱く、配当収入を軸に資産を大きく増やすタイプの銘柄ではないと素直に感じる。
ただし、低配当だから悪いという単純な話でもなく、むしろ会社として利益を内部に蓄え、設備投資や出店拡大に回しているとも読める。成長に資金を使う企業は、総じて配当利回りが低めになりやすい。その代わりに売上や利益が伸び、株価の上昇で利益を得る「キャピタルゲイン型」のリターンを期待する投資になる。数字の流れを見る限り、大黒天物産はまさにそちらのタイプの会社だろう。
配当だけを基準に判断すれば、候補としては優先順位は高くならない。配当で年々受け取る現金収入を軸にする投資家にとっては満足感が薄く、生活を支えるような役割を求めるなら他を選ぶ方が現実的だと思う。一方で、配当が低い=将来の伸びしろや投資余力が残っているとも考えられる。出店が継続し、利益が増え続ければ、将来的に配当が増える可能性もある。今はまだ育てる段階で、果実を配る段階ではない、そんな印象だ。
つまり、大黒天物産は今の状態だけで言えば「配当目的で持つ株ではない」。だが、長期で成長し、利益が積み上がり、余裕が出てきた頃に配当が育つ可能性はある。今は配当を求めず、企業が太っていくのを眺めながら株価で回収するタイプ。毎年の受け取り額よりも、数年先に大きな評価益で答えを取りに行く銘柄だと考えた方がしっくりくる。
今後の値動き予想!!(5年間)
大黒天物産の株価は現在5,960円。ここから5年間の値動きを考える時、まず前提になるのは企業の成長ペースだ。売上はこの3年で2700億→2929億→3160億(予)、利益もゆるやかに増えており、ROEは11%前後と資本効率も悪くない。営業利益率は高くはないが3%前後で安定し、ディスカウント業態の中では崩れていない水準。つまり「急成長はしないが崩れにくい会社」であり、株価もこの気質に近い動きをする可能性が高い。
良いシナリオを描くなら、店舗数拡大と物流効率改善が着実に収益へと転換され、利益率が少しでも押し上がり続けた場合だ。投資回収が進み、ROEが12〜14%程度まで改善すれば、市場からの評価が高まりPERは20倍前後を許容されてもおかしくない。その場合、5,960円の株価は5年後に8,000〜10,000円台へと乗せる可能性が出てくる。成長スピードが今より少し早まり、PB商品の浸透や低コスト体制が評価されれば、1万円越えは現実的なラインになる。
中間のシナリオはより現実的で、多くの投資家が想像しやすい未来でもある。売上と利益は伸び続けるが劇的ではなく、ROE10〜12%ほどをキープ。営業利益率は3%台前半で横ばい、PERは現在の評価帯である13〜17倍を行き来する。この世界線では株価は6,500〜7,500円前後。持っていて損はないが、資産を一気に増やすほどの力にはならない。しかし、安定感と時間を味方にできる銘柄という位置付けは揺らがない。
悪いケースを挙げるなら、コスト上昇と競争強化が収益を削り取る展開だ。物流費・原価・人件費が高止まりし、利益率が2%台へ戻すと市場の期待値は下がり、PERは10〜13倍程度へ圧縮される可能性がある。すると株価は4,500〜5,500円のレンジへ沈む可能性がある。ディスカウント市場は薄利である以上、環境次第で利幅が削られるリスクは常にある。ただ、利益がマイナスへ崩れる兆候は現時点ではなく、底抜けというより「伸びない期間が続く」というイメージに近い。
総じて、大黒天物産の未来は「荒波は少ないが、風任せにもなる銘柄」。上へ伸びる余地は確かにあるが、それは爆発力ではなく積み重ねの結果として現れるもの。焦って追うより、業績と評価が下がった時に静かに拾い、長く持って熟成させるほうが向いているかもしれない。配当ではなく成長で取りに行くタイプ。5年間をどう待てるか、それが投資家の側に問われる銘柄でもある。
この記事の最終更新日:2025年12月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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