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キオクシアホールディングスとは

キオクシア株式会社は東京都港区芝浦に本社を置き、NAND型フラッシュメモリを中心とした半導体製品を製造する企業であり、旧東芝メモリをルーツとして誕生した会社である。親会社はキオクシアホールディングス株式会社で、東芝から半導体メモリ部門を切り出し、独立・社名変更を経て現在の体制になった。NANDフラッシュメモリはスマートフォン、PC、SSD、データセンター、車載機器などあらゆるデジタル機器に使われ、現代情報社会に不可欠な半導体部品のひとつである。半導体メーカー売上ランキングでは2017年に世界8位に位置しており、日本企業として数少ないグローバル半導体プレイヤーの一角を占める存在でもある。
フラッシュメモリの開発では長い歴史を持ち、1980年にNOR型、1986年にNAND型フラッシュメモリを発明した背景は世界的にも有名だ。世界の記憶領域を技術的に押し広げてきた企業の一つであり、サムスン・SK hynix・Micronと並ぶ重要なポジションにいる。東芝時代には技術流出の教訓から国内開発にこだわり、サンディスクと組んで大量生産体制を築き、2006〜2008年には世界シェア2位を確保したこともある。現在では自社ブランド「TransMemory」「EXCERIA」シリーズでUSB・SDカード・SSDも展開し、コンシューマー向けからサーバ向けストレージまで幅広い製品を供給している。
キオクシアの事業を支える中心は三重県四日市市の巨大製造拠点で、これは世界最大規模のフラッシュメモリ工場のひとつとも言われる。敷地面積は東京ドーム14個分に相当し、従業員は関連企業含め1万人規模。ここで最新世代の3D-NAND「BiCS FLASH」が量産されており、1日数十億件の製造データをAIが解析し品質と歩留まりを高めている。拡張フェーズは今も続き、第1棟から第7棟まで増築を重ね、需要の波に合わせて規模を拡大し続けてきた。サーバ向けSSDやAI領域で求められる高速・大容量メモリの需要が高まるほど、この四日市工場の存在価値は大きくなる。
もう一つの柱は2020年量産を開始した岩手県北上市の新拠点で、ここでは218層の第8世代3D NANDを生産し、AI時代に向けた次世代メモリ供給体制の増強役を担う。免震設計・省エネ設備・自動化ライン・AI解析工程が導入され、より高度な量産工場として成長余地を残した拠点となっている。東芝がかつて最初にNANDフラッシュを量産した地が岩手であったことを思えば、技術の原点が再び北に戻り育っているとも言える。
キオクシアという社名には「記憶に価値を与える企業でありたい」という意思が込められており、その語源は日本語の「記憶(Kioku)」とギリシャ語の「価値(axia)」の合成語。ネーミング大賞で受賞したことも象徴的で、企業のブランド設計も単なる製造業を超えた色を持ちつつある。キャッチコピーは「記憶で世界をおもしろくする」。ストレージは表に見えないが生活を支える縁の下の力持ちであり、その発展の中心に立とうとする意志が読み取れる。
全体としてキオクシアは、スマホ、クラウド、データセンター、AI、自動車の電子化、IoTといった世界のデータ消費拡大に直結する製品をつくる企業であるため、需要は構造的に増えやすい。ただし半導体市場は景気・在庫サイクル・価格変動の影響を受けやすく、業績の波が大きくなることもある。つまり未来余地は大きい代わりにボラティリティも持つ業種であり、大容量化競争や製造技術の歩留まりは企業競争力を左右する焦点となる。
まとめれば、キオクシアはNANDフラッシュを源流とし世界市場で競う数少ない日本の半導体メーカーであり、四日市と北上という巨大工場を軸に3D NAND技術を量産する世界的供給者。AI時代のデータ拡張とともに市場規模は拡大し得るが、競争激化・投資負担・価格変動といった半導体特有のリスクも抱える。静かだが巨大な産業の中心に存在し、記憶そのものを形にする企業といえる。
キオクシアホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.3 | 1,526,495 | 216,228 | 154,356 | 105,921 | 204.7 | 0 |
| 2023.3 | 1,282,101 | -99,015 | -186,443 | -138,141 | -266.9 | 0 |
| 2024.3 | 1,076,584 | -252,698 | -343,330 | -243,728 | -471.0 | 0 |
| 2025.3 | 1,706,460 | 451,748 | 370,669 | 272,315 | 520.0 | 0 |
| 2026.3予 | 1,500,000 | 220,000 | 140,000 | 95,000 | 176.1 | 0 |
| 2027.3予 | 1,650,000 | 350,000 | 270,000 | 150,000 | 278.0 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 339,104 | -498,564 | -50,787 |
| 2024.3 | 195,111 | -274,853 | 3,238 |
| 2025.3 | 476,416 | -173,011 | -322,679 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | -7.8% | -21.0% | -4.7% | — | — |
| 2024 | -23.5% | -54.3% | -8.6% | — | — |
| 2025 | 26.4% | 36.9% | 9.3% | 6.3〜2.8倍 | 6.15倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
キオクシアは、数字だけで見ると非常に荒い収益カーブを描く会社である。2024年3月期の売上は約1兆0765億円、営業利益は-2526億、純損失は-2437億と大赤字で、営業利益率-23.5%、ROE-54%、ROA-8.6%と企業価値を削るほどの痛手を負っていた。しかし翌25.3期には売上が約1兆7064億円まで跳ね上がり、営業利益4517億、純利益2723億と劇的に反転し、営業利益率26.4%、ROE36.9%という極めて高い収益性まで回復している。わずか1年で赤字企業から利益率トップ級の水準に切り替わっており、市況(NAND価格)の波に極めて敏感であることが数字から読み取れる。
さらに26.3期予想では営業利益2200億、純利益950億まで減速とされており、25年の利益はサイクルのピークだった可能性もある。PER2.8〜6.3倍と割安に見えるのは「利益が続けば」の前提が付く数字であり、もし継続性を失えばPBR6.15倍だけが残り、評価リスクが表面化する。配当0円で株主還元のクッションが無い点も、下落局面で耐久性を弱くする。
つまりキオクシアは数字が示す通り、波を読む投資家向けの銘柄である。NAND相場が強気に振れれば利回りは爆発的に伸び、サイクルが冷え込めば利益は一気に崩れる。25年型の利益が2年3年と続けば株価は大きく再評価されるが、単発であれば急落余地も同じくらいある。安定配当・堅実成長とは性質が全く違い、利益率の波そのものが勝負の銘柄だといえる。
要するにキオクシアは、業績が上に振れれば莫大な利益を生む可能性がある一方、下に振れれば深く沈むリスクも抱えている銘柄で、安定して勝ち続けるタイプではなく、大きく取れる時に一気に利益を狙う性質が強い。勝ちやすさよりもリターン幅が魅力の株であり、その極端な振れ幅こそが数字に表れたキオクシアという企業の本質だと言える。
配当目的とかどうなの?
キオクシアは26.3期・27.3期ともに配当利回りが0.00%となっており、現時点では株主に現金を返すという思想よりも、利益を内部に留めて事業投資へ回す方針が明確に見える企業だ。一般的な配当株は、保有しているだけで現金が積み上がり、長期で持てば持つほど利回りが効いてくるが、キオクシアはその真逆の性質を持つ。成長と競争を優先し、設備投資・研究開発・次世代メモリの量産能力強化へ資金を投じることで、市況が好転したときに利益を一気に取りに行くモデルになっている。配当で報われる銘柄ではなく、株価の値動きで勝ちを取りに行く銘柄だということが分かる。
そもそもキオクシアはNANDフラッシュという市況依存度の高い製品を扱い、価格が崩れれば赤字が深く、回復すれば劇的に黒字化するというサイクル型の体質を持っている。赤字の年に配当を約束すれば企業体力が削られ、次の上昇局面に向けた投資余力が減るため、無配という選択は短期的には魅力が無くても、企業としては理にかなっているとも言える。数字の振れ幅が大きい企業ほど、配当より成長投資を優先するのは珍しくない。
ただ、その代償としてキオクシアには「保有し続ける理由が配当では作れない」という現実がある。利回り0%の株は、持ち続けても年々価値が積み上がるわけではなく、株価が下落すれば配当で埋めることもできない。つまり保有を正当化する根拠は株価上昇=キャピタルゲインのみであり、投資家側にも市況の波を読む覚悟が必要になる。一方で、成長局面の波に乗れるなら、配当に回さなかった内部留保が次の利益爆発の源になる。ある意味、「配当を出さないことでレバレッジを維持している株」とも言える。
結論として、キオクシアは配当目的で持つ銘柄ではない。安定配当を求める投資家にとって魅力は限りなくゼロに近く、むしろ不向きだと断言できる。だが利益の波が立つタイミングで仕込めれば、配当株よりはるかに大きな伸びを狙える余地がある。長期で安心して持ち続ける銘柄ではなく、波と循環を読み、上昇局面で取りにいく銘柄。守りではなく攻めの投資先。数字が示す通り、キオクシアは配当でなく値動きで勝負するタイプの企業だ。
今後の値動き予想!!(5年間)
キオクシアの現在株価は9,330円。過去の数字が示しているように、キオクシアは半導体メモリ市況によって利益が大きく上下するタイプの企業であり、26.3期は黒字幅が半減すると予想されている点からも、株価の将来は業績の持続性によって大きく分かれる。投資の本質は「25年型の利益が続くかどうか」に集約される。
もし良い未来をたどるなら、25年の高収益体質(営業利益率20%超級、ROE20〜30%台)が維持され、26年の減速予想を跳ね返す形で再び利益が伸びる経路となる。NAND価格が強気で推移し、サーバ・AI領域でデータ需要が増え続けるなら、利益の再拡大と共に株価は再評価され、PERは10〜15倍まで見直されてもおかしくない。その場合、株価は5年で15,000〜20,000円台に乗る可能性があり、市場が「キオクシアは利益を継続して出せる企業だ」と確信した瞬間に大きく跳ねる未来が想像できる。半導体市況が強く反発するなら、それ以上の世界もあり得る。
一方で中間シナリオは、利益の上下を繰り返しながらも最悪の赤字には戻らず、黒字と調整を行き来する未来だ。営業利益2,000〜3,500億あたりで揺れ、収益率は15%前後で安定、成長余力はありつつも爆発力には欠ける。競合の動きや価格環境に左右されながらも、企業としては生き残るが圧倒的な強さには届かないケース。株価は穏やかな上下を繰り返しながら、5年後には11,500〜14,000円程度で推移するイメージになる。配当が無い分、保有の旨味は上昇益次第で決まり、長期ホールドの魅力は悪くないが劇的でもない立ち位置になる。
悪い未来に振れた場合は、25年の黒字が一過性となり、26〜27年以降に再び利益がしぼみ、NAND価格や需給が頭打ちになる展開だ。営業利益は1,000億前後、純利益も細り、ROEやROAが低下すれば市場評価は急速に冷え込む。配当がないため下支え要素がなく、PBR6倍台という高さが逆に重荷となり、PERも機能しなくなる。失望売りが続けば株価が半減してもおかしくなく、5年後に6,000〜8,000円台へ沈む未来すら想定される。サイクルが悪い方向に転べば、数字の揺れ幅がそのまま株価の揺れ幅になる。
まとめるなら、キオクシアは未来が広く開けている一方で、足元は期待と不安が同居した位置にいる。9,330円という現在地は高くも安くもなく、市況と決算が未来を決める局面。良い場合は倍狙い、中間では堅めの成長、悪い場合は下落の可能性。勝ちやすい株ではないが、勝ったときの伸び幅は大きい。数字が示す通り、キオクシアは波に乗れるかどうかがすべての銘柄だと思う。
この記事の最終更新日:2025年12月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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