株価
ロック・フィールドとは

株式会社ロック・フィールドは、神戸市東灘区を拠点とする惣菜メーカーであり、全国のデパ地下で見かける「RF1」や「神戸コロッケ」を展開することで知られている。特にRF1はサラダ系惣菜ブランドとしては代名詞的存在で、彩りの良いデリカテッセンを店頭に並べ、食のライフスタイルが多様化した現代において“家で作る手間を省きつつ品質の高い総菜を楽しむ”という価値を提供している。神戸コロッケは惣菜の中でも馴染み深いコロッケをブランド化し成功した稀有な例であり、単なる揚げ物ではなく「買いに行く目的となる商品」に変えた点はこの企業の企画力の象徴と言える。こうして百貨店の地下食品売り場を中心に全国330拠点へ広がっており、惣菜市場の中でもグレードの高い領域を担うポジションを確立している。
生産体制の面でも特徴がある。静岡ファクトリーパークは安藤忠雄が設計した工場で、風車発電を導入し工場排水をビオトープに循環させるなど環境配慮型の設備を持ち、工場というより一つの機能的な施設デザインに近い存在になっている。建設段階では従業員分の柿の木を植え、後に緑化優良工場として表彰されるなど、環境への投資は単なるPRではなく企業文化として根付いている。神戸ファクトリーも同氏設計で、工場敷地内に保育施設を備え、従業員の労働環境と暮らしを重視する運営が続く。保育と食育を合わせた取り組みは、企業が食品メーカーであることと結びついており、「健康と食を担う企業としての倫理」を体現しているとみることもできる。
ビジネスの中心は惣菜という毎日消費されるリアルな生活市場であり、景気循環の影響を食品そのものほど大きく受けない。スーパーの廉価総菜とは違う高品質帯を狙うため価格競争に巻き込まれにくく、ブランドで選ばれる分、粗利の確保がしやすいという強みもある。一方で人件費や仕込み労力の負担は大きく、特に物価上昇や物流コストの影響は避けにくい。デパ地下立地の比率が高いため店舗運営コストも一定水準でかかり、効率化だけでは利益を大きく伸ばしにくい構造も持つ。それでもブランドの訴求力が強い分、季節行事や贈答需要も取り込めるため、単なる惣菜製造会社ではなく「食のプレミアム体験を提供するサービス業」に近いポジションに立つ。
ロック・フィールドは事業そのものが堅く、急拡大よりも“安定しながら質で勝負する企業”として成長してきた。サラダを主力に惣菜の高級帯で強い地位を築き、出店場所の多くが百貨店地下というブランド空気を保つ立地であることは、売上だけでなく企業イメージの維持にもつながっている。工場・店舗・ブランド・働き方・環境配慮と多面的に価値を積み上げている会社で、総菜分野の中では独自性が非常に強い。
ロック・フィールド 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.4 | 43,762 | 1,107 | 1,271 | 1,165 | 43.8 | 20 |
| 連22.4 | 47,119 | 2,155 | 2,185 | 1,380 | 51.9 | 40 記念 |
| 連23.4 | 49,970 | 1,500 | 1,564 | 1,078 | 40.6 | 22 |
| 連24.4 | 51,357 | 1,738 | 1,785 | 1,252 | 47.2 | 23 |
| 連25.4 | 51,184 | 1,242 | 1,301 | 329 | 12.6 | 23 |
| 連26.4予 | 53,500 | 1,410 | 1,450 | 930 | 35.6 | 24 |
| 連27.4予 | 55,000 | 1,600 | 1,640 | 1,050 | 40.2 | 24〜25 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 2,213 | -1,078 | -1,836 |
| 2024 | 3,565 | -1,244 | -1,983 |
| 2025 | 2,027 | -1,403 | -1,192 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 3.0% | 3.6% | 2.9% | — | — |
| 2024 | 3.3% | 4.2% | 3.4% | — | — |
| 2025 | 2.4% | 1.1% | 0.9% | PER 高値69.2倍 / 安値57.8倍 | PBR 1.20倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ロック・フィールドの業績推移を見ると、売上は513億、511億、535億と横ばいから小幅な増加で事業自体は安定して継続しているものの、利益面に関しては良いとは言い難い。営業利益は17億から12億へ落ち、翌期予想で14億に戻るものの過去水準には届いていない。純利益は12億→3億→9億と推移し、ここ数年は利益の変動幅が大きく、安定的な稼ぐ力がまだ定着していないのが数値に表れている。営業利益率も3.0%から3.3%と一旦改善した後に2.4%に低下しており、全体として収益率が薄く、価格転嫁やコスト改善がうまく利益に結びついていない状況が伺える。
特に資本効率の低下は投資家目線では無視できない変化で、ROEは3.6%→4.2%→1.1%、ROAは2.9%→3.4%→0.9%と急減速している。この数字から分かるのは、事業規模は維持されているが資本を利益に変換できておらず、企業としての回転力が弱まっているということだ。ROE1%台は市場評価を押し上げる力になりにくく、今のままでは株価の上昇を正当化する材料には乏しい。
その一方で株価水準を示すPERは57.8倍〜69.2倍と非常に高く、利益に対して株が割高に買われている状態にある。つまり収益力が追いつかない中で株価だけが先行している形で、買い手側には明確なリスクがあるということになる。PBRは1.2倍と過度に割高ではないが、PERの高さを見ると現状の利益水準では説明力が弱く、成長期待と実態の乖離が残っている印象が強い。
数字だけで判断すると、この銘柄は「安定した売上に対して利益が伸びず資本効率も低下し、株価は収益の割に高い」という位置付けになる。上昇余地を語るには利益率反転という条件が必要で、営業利益率が持続的に3%後半〜4%、ROEが5%以上まで戻るなどの改善が数字で確認できて初めて株価上昇が現実味を帯びてくる。現時点での買いは攻めというより期待賭けに近く、どちらかと言えば様子見や押し目待ちのスタンスが数字的には合理的だと言える。
つまりロック・フィールドは、売上が安定していて事業の土台はあるが、利益が薄く資本効率が悪いので株価に勢いが出る構造ではない。成長株として買うには説得力が弱く、バリュー株として見るにもPERが重い。今の段階は持つ理由より見送る理由の方がやや強く、改善の兆しを確認しながら慎重に向き合うべき銘柄というのが数字から導ける結論になる。
配当目的とかどうなの?
ロック・フィールドの予想配当利回りは1.82%で、これは食品銘柄として特別低いわけではないが、高配当と言える水準でもない。銀行預金よりは当然良いが、株式投資として収益源を配当一本に頼るにはやや物足りず、保有する明確な魅力が強く出るほどの数値ではない。しかも直近の利益推移を見れば、営業利益は安定しておらず、純利益も年度ごとの振れ幅が大きいため、今後も安定配当が続く保証を強く感じられる構造とは言い切れない。売上の土台はしっかりしているものの、利益の波が大きい銘柄ということで、配当狙いの投資としては安心感より引っかかりが残るタイプに見える。
利回り1.8%というのは、株価が高ければ利回りが下がり、株価が落ちれば利回りが上がる水準であり、将来市場が悲観に傾いたときに買った方が投資効率は良くなりやすい。現状はPERがかなり高めで、利益に対して株価が割高に評価されている状況なので、今この利回りで飛びつく理由は薄い。配当利回りだけで見れば「今買って配当で増やす」というよりも「下がった時に拾えば悪くない」程度であり、配当を主目的とした長期保有には少し弱い数字と言える。
配当株として魅力が生まれるのは、利益が安定しROEが改善し、ある程度増配余力が見込める時期が来てからだろう。現時点ではまだ「お金を置いておくだけで増える銘柄」というよりも「ブランドは強いが収益は細い会社」という位置づけが強く、配当で持つなら安全よりも忍耐を先に要求される。配当を目的とするなら、利回りがもう少し厚くなる水準、例えば株価が下がって利回りが2.3〜2.8%近辺に近づいてからの方が心理的にも投資としても納得しやすい選択になる。
結論として、配当目的で今すぐ買いたい銘柄かと言われれば、その答えはやや慎重寄りになる。利回りはあるが強くはなく、利益の安定度も高くないため、配当で戦うより改善を見ながら入口を探した方が合理的に感じられる。持つこと自体は可能だが、積極的な配当株というより、まだ確信を持つには早い段階にいる企業という評価で落ち着く。
今後の値動き予想!!(5年間)
ロック・フィールドの株価が今後5年間でどう動くかを考えると、現在の1,314円という水準は、決して割安とは言えないまま横ばい利益で評価が維持されている状態に近い。収益性が高くない企業をマーケットが強く買い上げる理由は今は乏しいが、一方でブランド力や食品という生活密着の需要基盤があるため大崩れしづらいという底強さも持つ。つまり、この銘柄の将来は「利益が戻るか戻らないか」で姿を変えやすく、その分だけ株価の行き先にも複数の筋書きが描ける。
良い未来を描くなら、店舗オペレーション改善や原材料・物流コストの最適化、惣菜需要の堅調継続などが重なり営業利益率が3.5%前後へ回復し、ROEも4〜6%台に戻る展開だ。この場合は市場評価が自然と切り替わり、積極的に買われずとも株価が徐々に見直されていく。食品小売は劇的な成長はしにくいが、反転に気付いた資金がじわじわと入れば5年スパンで1,600〜2,000円台を狙えるレンジになる。急騰よりも緩やかな右肩上がりという形が現実的で、配当を受け取りつつ静かに資産が増えていくようなイメージがしっくりくる。
一方で業績が大きく悪化しないものの、改善も限定的な現実的な中間シナリオでは、売上は伸びても利益率は2〜3%台で固まり、ROEも2〜4%あたりでもたつくような展開が想定される。そうなると株価は大きな方向性をつかめず、1,200〜1,450円前後のレンジで上下しながら、良くも悪くも「値動きの穏やかな銘柄」になるだろう。保有しても急な資産成長は見込みにくいが、食品ブランドとしての安定感が大きな下値を支える。持って退屈、けれど安心もある──そんな位置付けのまま時間が過ぎていきやすい。
そして悪い未来は、コスト改善が進まず利益率が2%割れ、ROEも1%台で定着してしまうケースだ。「ブランドはあるのにもうからない会社」という評価が広がると、市場は次第に期待を剥がしていく。急落よりもゆっくりと値を削るほうが食品銘柄らしい動きで、5年で1,000〜1,150円、状況次第では900円台を見せる場面も考えられる。惣菜ブランドは強くても利益が伴わなければ株は買われない。この企業に限らず、小売・食品の典型的な評価軸がそのまま当てはまる未来だ。
総じてロック・フィールドは「利益を戻せば評価が戻る」「戻らなければ横ばいか下落」という非常に分かりやすい分岐点にいる銘柄で、今はちょうどその岐路の手前に立っているような状態に見える。食品という底堅い土台があるため、悲観一色にも強気一色にもなりにくい。その曖昧さが、投資家にとっては判断を試される局面でもある。結局のところ、利益率の改善が数字で確認できたタイミングが、一番納得して買える瞬間に近い。今はまだ、「未来が少し揺れている株」という表現が程よい落としどころになる。
この記事の最終更新日:2025年12月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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