株価
ケンコーマヨネーズとは

ケンコーマヨネーズ株式会社は、東京都杉並区に本社を置きながらも、発祥の地が神戸である関係から登記上の本店は神戸市灘区にあり、企業文化としても関東と関西の両方をルーツとして持つ珍しい食品メーカーである。名前の通りマヨネーズが代表商品だが、実際の事業は調味料に留まらず、ドレッシング、タマゴ加工品、総菜、長期保存サラダなどへ幅を広げており、今では業務用食品メーカーとして確固たる存在感を持っている。外食チェーン、給食センター、パンメーカー、惣菜市場など供給先は広く、日本マクドナルド向けのハンバーガー用マヨネーズを提供していることは業務用領域での信頼性を象徴する実例の一つと言える。
この会社の特徴は、一般向けの家庭用商品よりも、業務用サプライに強く根を張っている点にある。学校給食で古くから採用されてきた経緯もあり、食の安全性・品質管理への信頼がそのままブランドの柱になっている。また、スーパー惣菜向けのサラダやドレッシング、コンビニの総菜、ベーカリー向けフィリングなど、消費者が日々手にしている多くの加工食品にケンコー製品が使われている。家庭で目立つ商品はそれほど多くないが、実は外食や中食を通じて日常的に口にしている比率が高いという、裏方型の大手食品メーカーである。
事業は主に、マヨネーズ・ドレッシングなどの調味料、長期保存可能なサラダ製品、卵加工品、スーパーや外食向けの惣菜・調理品の四本柱で成り立ち、調味料メーカーというより「サラダと卵と惣菜の総合供給会社」としての色合いが強い。とくに日持ちするサラダ製品は同社ならではの技術領域であり、物流効率と店舗オペレーションを大きく改善するため、小売企業にとっても価値が高い商材位置づけになっている。マヨネーズのような汎用商品だけでなく、業務用向けの機能食品領域で存在感を持つところが、長年市場に根付いた理由でもある。
関連会社は全国に広く展開しており、北海道から九州まで加工・供給拠点を分散して持っている。ライラック・フーズ、ダイエットクック白老、関東ダイエットクック、関西ダイエットクック、サラダカフェ、九州ダイエットクックなど、いずれも惣菜・加工卵・サラダ製造を担う生産網として動いており、これにより食品メーカーとして生命線となる配送距離・鮮度・供給スピードを確保している。業務用が中心のためBtoC企業のような派手さはないが、外食産業がある限り需要は続くという底堅いビジネスであり、市場変化に左右されづらい安定性が強みになっている。
一方でマヨネーズやドレッシングは油・卵・酢など原材料価格の影響を受けやすく、物流コストや人件費の変動も収益を揺らす要因になる。業務用は価格競争にもなりやすく、品質と保存性で差を付け続けない限り利幅が削られる可能性がある。つまり「需要はあるが利益は確保し続けなければならない」という構造で、食品業界の典型的な課題を抱える企業でもある。ただそれでも、惣菜・卵加工・調味料と複数の柱で収益源を持っている点はリスク分散として有効で、一本倒れしない柔らかい体質が企業の安定感につながっている。
総じて、ケンコーマヨネーズは家庭の食卓よりも流通・外食現場に深く根付いた企業であり、日常の見えないところで人々の食を支える存在だといえる。普段意識しないうちに我々の食生活の中に溶け込んでいる食品メーカーで、派手なブランド露出は少なくても、社会生活ではなくてはならない役割を担っている。
ケンコーマヨネーズ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 82,363 | 105 | 169 | 485 | 29.9 | 17 |
| 連24.3 | 88,724 | 2,949 | 3,099 | 2,735 | 169.9 | 30 |
| 連25.3 | 91,703 | 4,845 | 4,999 | 3,503 | 221.6 | 43 |
| 連26.3予 | 95,500 | 4,800 | 4,970 | 3,220 | 215.5 | 47 |
| 連27.3予 | 99,400 | 5,000 | 5,200 | 3,370 | 225.6 | 47〜50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 3,526 | -856 | -2,822 |
| 2024 | 5,957 | -239 | -2,277 |
| 2025 | 4,594 | -1,062 | -3,531 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 0.1% | 1.3% | 0.7% | — | — |
| 2024 | 3.3% | 7.0% | 4.0% | — | — |
| 2025 | 5.2% | 8.7% | 5.4% | PER 高値12.3倍 / 安値7.4倍 | PBR 0.71倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ケンコーマヨネーズは、直近の業績推移を見る限り、大きな成長カーブを描く企業ではないものの、営業利益率やROEの改善が数字としてはっきり現れており、数年前の低収益体質を抜け出しつつある段階に見える。売上は887億→917億→955億と安定して積み上がっており、景気や流通環境に強く左右されない食品メーカーらしい持続性が感じられる。特に注目すべきは営業利益率の上昇で、わずか0.1%から3.3%、そして5.2%まで持ち直し、ようやく「利益を出せる体質」に戻り始めている。ROEも1.3%から7.0%、さらに8.7%へと改善し、企業が資本を収益に変換する効率が向上している点は評価できる。
純利益は27億→35億→32億と波はあるものの、底固く推移しており、大崩れしない事業性が裏付けられている。食品企業は大幅成長を描きづらいが、その分需要がなくなることもなく、下値リスクが限定されやすい。ケンコーマヨネーズもそのタイプで、倒れにくさと緩やかな利益改善がセットで続いているように見える。
そして投資の視点で最も大きな材料は株価評価の割安さで、PERが7.4〜12.3倍、PBR0.7倍という水準は、収益が維持される前提で市場がまだ十分に価値を織り込んでいないことを示す。成長期待が高い銘柄ならPER20倍超えも珍しくない中で、この水準は控えめであり、見直し買いが入る余地は確かに残っている。利益率の改善が今後も続けば「資産価値に対して安すぎる状態」と判断され、株価が妥当水準へ戻る形で上昇する展開も考えられる。
ただし期待しすぎは禁物で、急伸を狙う銘柄ではなく、歩幅の小さい成長を続けながら評価が後から追いかけてくるような投資イメージがしっくりくる。食品メーカーという業種特性から高い伸び率は望みにくく、それでも収益改善が続けば「持っている間にじわりと価値が増える株」になり得る。今の数字だけを見るなら、割高リスクよりも割安の余地が勝っており、腰を据えるタイプの投資家には拾う対象になりやすい。
つまりケンコーマヨネーズは派手さはないが、配当と緩やかな成長を合わせてじっくり育てる銘柄。利益率がもう一段高まれば評価のモードが変わり、株価の見直し余地もより鮮明になる。今はまさに改善途中のバリュー株として、静かに注目しておきたい位置にある。
配当目的とかどうなの?
ケンコーマヨネーズの予想配当利回りは26.3期2.41%、27.3期2.47%と、決して高配当とは言えないが、食品メーカーらしい安定感のある水準になっている。銀行預金の何倍もあるという意味で悪くはないが、配当を主目的に投資するなら飛びつきたくなるほどの利回りでもなく、やや中途半端な位置にある。ただしこの企業は直近で利益率とROEが改善しており、収益が回復フェーズに入っているという状況を踏まえると、「低めではあるが増配の余地が残されている配当」と見ることもできる。
今の利回り2.4%前後は、株価が大きく上がらなくてもホールドの理由にはなりうるが、配当が主役になるほどの強さはない。むしろこの銘柄の魅力は「配当で守り、業績改善でじわっと株価が上がれば追加のリターンが見込める」という二階建ての可能性にある。配当単体で戦う株ではなく、業績改善+割安評価が追い風になりうる銘柄、という見方が現実的だ。
収益性の改善が本当に継続し、ROEが8〜10%に定着し、営業利益率が5%台からさらに伸びるような数字が見え始めた時、配当政策の余力も広がり、利回りは2.8〜3.2%程度まで自然と伸びる可能性がある。そこまで行けば「配当で持つ理由が強まる株」へ変わる土台も整う。逆に改善が止まり、利益が再び細るなら、配当維持はできても増配期待はしぼみ、利回りは“並み”のまま動かなくなる。
つまり現状は、配当収入だけを目的に買う株というより、収益回復の恩恵も込みで長期保有を前提に拾うタイプ。毎年安定して配当を受けながら、業績の上向きによって評価がじわっと上乗せされれば、配当+株価で年合計5%前後の総合リターンも十分狙える。派手さはなくても折れにくい、穏やかな成長と利回りが共存している銘柄と言える。結論として、利率だけを見ると「配当投資としてはそこそこ」。しかし業績改善が進む限り、中長期の配当育成株として期待を持って見られる位置にある。
今後の値動き予想!!(5年間)
ケンコーマヨネーズの現在株価は1,943円。業績は一度落ち込んだ時期から回復し、営業利益率は0.1%→3.3%→5.2%と改善、ROEも1.3%→7.0%→8.7%へと持ち直した。数字が示す通り、かつての低収益体制を脱して利益が出せる企業へ戻りつつある。その一方で評価指標はまだ控えめで、PER7〜12倍・PBR0.7倍という数値は、企業価値が市場に完全に織り込まれていない、いわゆる「まだ買われ切っていない株」という位置にある。ここから先の株価は、業績がこのまま上向くのか、横ばいになるのか、または再び鈍化するのかによって姿を大きく変える。
まず良いケースでは、利益率の改善が継続し、ROEが安定して8〜10%台に乗り、今の回復が「一時的」ではなく「持続的」と判断される未来である。食品メーカーは派手に伸びる業界ではないが、緩やかでも継続性のある利益改善は市場が最も評価しやすい条件の一つだ。そうなれば株価はじわじわと切り上げ、5年で2,400〜2,900円、場合によっては業績と配当が積み上がることで3,000円が見えてくることもある。時間はかかるが、評価が追いつく形でゆっくり成長していくイメージだ。
次に中間シナリオでは、売上が伸びても利益率が大幅に伸びず、ROEも6〜8%で止まるようなケース。本業は安定して売れているが、強い収益改善には至らないという未来だ。この場合、株価は上にも下にも走らず1,750〜2,200円あたりを中心にボックス推移しやすい。下がりづらいが劇的にも上げない、「持っていて安心だが退屈」という典型的なディフェンシブ銘柄の動きになる。配当利回りは2.4%前後で安定する可能性が高く、配当+横ばい株価で実質インカム銘柄のような位置付けになる。
悪い未来は、原価高や人件費増で収益が削られ、せっかく回復した利益率が再び鈍化するケース。ROEが5%以下に落ちると投資妙味は急に弱まり、割安水準のまま放置されやすい。食品は需要こそ底堅いが、利益を出せなければ株価は魅力を持たない。この場合は5年で1,500〜1,700円までの調整も視野に入る。暴落ではなくジリ下げのパターンが現実的だが、投資家から見ると「改善が止まった途端に評価も止まる」銘柄であることを意味する。
まとめると、ケンコーマヨネーズは景気に左右されにくい食品という土台と、業績改善の芽という希望を両方持つ一方で、成長スピードはそこまで早くない。長期で見るなら上も下も急な動きにはなりづらく、改善が続くなら評価がじわりと追いついていく、止まるなら横ばいか緩い下げに向かうという道筋が現実的だ。今の株価1,943円はまさにその分岐点に近い位置で、強く買われているわけでも安売りされているわけでもない。あとは企業側が利益という答えを積み上げられるかどうか、それが株価の行き先を決める。
この記事の最終更新日:2025年12月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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