株価
ラクーンホールディングスとは

株式会社ラクーンホールディングスは、東京都に本社を置き、企業同士の取引をオンライン化する仕組みを提供するBtoBインフラ運営企業である。主力サービスは卸仕入れサイト「スーパーデリバリー」で、アパレル・雑貨・インテリアなど数多くのメーカーと全国の小売店を結びつけるECプラットフォームとして機能している。従来は展示会や営業担当者を介して行われていた仕入れ業務をネット上で常時成立させることで、選定・在庫・取引スピードの効率化を実現しており、AIによるレコメンド機能によってリピート注文の底上げを図っている。単なる商品売買ではなく、小売店の「仕入れ習慣そのもの」を置き換えるモデルで、継続利用が収益に直結する点が特徴である。
グループ会社は機能ごとに役割が分かれており、ラクーンコマースはスーパーデリバリーに加え、受発注管理をクラウド化する「COREC(コレック)」を提供し、FAXや紙伝票で行われてきたBtoBオペレーションをオンラインで一元管理できるようにしている。単に商品を流すだけでなく、受発注・在庫・伝票管理といった企業間業務そのものをデジタルに書き換える立ち位置にある。
さらに収益の第二の柱としてラクーンフィナンシャルがあり、企業間後払い決済「Paid(ペイド)」や売掛債権保証サービス「T&G保証」「URIHO」を提供している。Paidは与信・請求・回収・保証まで一括代行するため、企業側は相手先の信用状況を気にせず取引できる。未回収は100%保証されるため、取引の心理的ハードルを下げ、スーパーデリバリーの流通と相互補完関係を築く。URIHOは年商5億以下の中小企業向けで、ネット完結・低コストという特性から利用裾野が広がりやすい。ラクーンレントは法人向け家賃保証を展開し、貸し手側の家賃滞納リスクも吸収する。EC・決済・保証・家賃という複数の取引課題を横断的に支援する構造を持ち、「企業間取引のリスクを肩代わりする存在」としての立ち位置が強くなっている。
ビジネスの肝は、単なるECプラットフォーム業者ではなく、企業間取引の裏側を支える金融インフラでもある点だ。商品流通を押さえつつ、信用取引や債権保証を自前で提供できる企業は多くなく、ラクーンは流通と金融の両輪で収益を確保している。EC面ではAIによる提案精度向上が購買回数を増やし、金融面では保証サービスの普及が解約率を抑え長期収益につながる。さらに中小企業のデジタル化が進むほど、オンライン取引と保証ニーズは拡大しやすい。今後はM&Aや業務提携でサービスを横方向に拡張し、国内のBtoBインフラとしてより深く浸透していく可能性が高い。
簡潔に言うなら、ラクーンHDは「BtoB流通と信用を扱う企業」であり、小売・卸・企業間決済における不安とアナログを取り除く存在である。スーパーデリバリーで取引を生み、Paidと保証でリスクを吸収し、CORECで業務を効率化し、賃貸保証で周辺領域まで押さえる。この積み上げ型のモデルが収益成長の源で、取引量が増えるほど強くなる仕組みを持つ。流通の裏側に入り込む企業だからこそ、一度定着すると離脱が起きにくく、サービスの拡張が企業価値そのものに直結していく。
ラクーンホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.4 | 5,320 | 1,193 | 1,225 | 668 | 30.3 | 18 |
| 連24.4 | 5,808 | 566 | 535 | 325 | 15.2 | 14 |
| 連25.4 | 6,098 | 1,254 | 1,397 | 836 | 39.6 | 22 |
| 連26.4予 | 6,740 | 1,410 | 1,400 | 900 | 44.3 | 22 |
| 連27.4予 | 7,000 | 1,500 | 1,500 | 970 | 47.7 | 22〜23 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 1,122 | -165 | -862 |
| 2024 | 660 | -524 | -950 |
| 2025 | 1,049 | -344 | -988 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 22.4% | 12.5% | 4.4% | – | – |
| 2024 | 9.7% | 6.8% | 2.1% | – | – |
| 2025 | 20.5% | 18.9% | 5.1% | 47.2倍(高値) / 23.9倍(安値) | 2.73倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ラクーンホールディングスの決算数値を見ると、2024年度は売上580億に対し営業利益5億と細く、営業利益率も9.7%まで落ち込んでいたが、翌2025年度には営業利益12億・純利益8億まで回復し、利益率も20.5%へ戻っている。さらにROE18.9%、ROA5.1%という数値からは、資本効率が再び高まっており、利益創出力が失われたわけではなく、一時的な減速後に立て直した形が読み取れる。2026年予想でも売上674億、純利益9億と増益が続くため、事業の縮小ではなく、回復が単発ではない可能性があることも伺える。
ただし株価面に視点を移すと評価は容易ではない。2025年のPERは高値47倍・安値23倍という非常に広い範囲で推移しており、収益に対して市場がつける評価が上下に大きく振れる銘柄だということが分かる。利益成長が続けば高いPERを許容するが、成長が鈍ると即座に評価縮小が起こりやすい。ここに市場からの期待が強く、同時にボラティリティも高いという性質が表れている。またPBR2.7倍は、資産価値よりも成長期待で買われている状況を示し、利益がつまずけば割高感だけが残りやすい。裏返せば、成長が続く限りは現在の評価が維持される余地がある。
総じてこの企業は、安全なバリュー投資対象ではなく、利益成長を前提とした成長株として扱われる性質が強い。投資判断では、成長が今後も続くかの見極めが最も重要であり、2024→2025の回復は前向きだが、それが継続するかは次の決算に委ねられている。利益が伸びるなら現在の株価評価は正当化され、上値余地も生まれる。一方で成長が止まればPERの高さが一気に重荷となり、下方向への調整リスクも大きい。
結論としては、回復と成長は見えているが評価はすでに織り込まれているため、守りではなく攻めのスタンスで向き合う銘柄と言える。安定や割安性を求める投資ではなく、「成長が続くかで結果が変わる銘柄」。伸び続けるなら上へ、止まれば下へ、判断の基軸はただ一つ、成長が継続するかどうかである。
配当目的とかどうなの?
配当目的で考えると、この銘柄は率直に言えば「配当だけで選ぶタイプではない」。予想配当利回り(2026・2027年度)は3.63%で、決して低くはないが高配当株と呼べるほど突出しているわけでもない。配当が安定して支払われていること、今後も同程度が続く見込みである点は安心材料だが、利回り水準だけで魅力が際立つかと言えば判断は分かれるところだ。
むしろこの会社の特徴は、利益が伸びると株価が素直に反応しやすく、評価が上向きやすいという点にある。PERが高くも安くも振れる背景には、利益成長を織り込む局面と、期待が剥がれる局面の差が大きいという性質がある。つまり、買うのであれば「配当で守りながらホールドする」より、「利益成長が続くなら配当が上乗せされてリターンがまとまってくる」というイメージのほうが現実に近い。
配当だけを重視する投資家には物足りないかもしれないが、収益が伸びたときには株価上昇と配当の二つが重なって効いてくる余地はある。逆に成長が止まれば、利回り3%台では株価の下落を十分に打ち消せない可能性も高く、そこは注意しておく必要がある。
まとめると、この銘柄は「配当で買う」より「成長が続けば配当が利回りとして効いてくる」タイプだ。配当を主目的に置くなら他に候補がある一方、成長と合わせて狙うのであれば十分に保有する理由が成立する。配当はあくまで副次的で、伸び続ければ結果的に効いてくる、そんなイメージで構えるのが現実的だと思う。
今後の値動き予想!!(5年間)
ラクーンホールディングスの株価606円を出発点にして5年先の姿を考えると、今の業績水準や市場の評価レンジから見て、株価の未来は一本の直線ではなく大きく三つに分かれていくと解釈できる。現状は成長が続けば上がり、止まれば下がるという中間地点に位置しており、強気にも慎重にも読み取れる位置にある。
利益率は回復しつつあり評価も再び伸びる余地を持っている一方で、成長が続く保証はなく期待が剥落すれば素直に押し下げられる可能性もある。つまり今の株価は、成長が継続するかどうかを市場がまだ確信しきれていない段階にあり、これからの決算次第で明確に上向くか、横で停滞するか、あるいは下に振れてしまうかが分岐していく地点と言える。
まず最も明るい未来は、今後も利益が伸び続け、営業利益率が20%前後で保たれるケースだ。この会社は利益が伸びると市場の評価が素直に高まる特徴があるため、成長が続けばPERは再び高水準を許容しやすい。仮に業績が積み上がり、それに市場の期待が重なれば株価は800〜1,100円、勢いが続けば1,200円に届くラインも見えてくる。急騰株のような爆発力はないものの、利益と評価が噛み合ったときの伸びは無視できない。
一方で現実的な中間の未来では、利益は伸びても波があり、営業利益率は10〜15%あたりで落ち着く。この場合、市場は極端な評価も過小評価もせず、PER15〜25倍程度の範囲でバランスを取る可能性がある。株価も650〜850円で上下しながら進み、劇的な値上がりよりも一定の落ち着きを持った推移になる。投資リターンの源泉は配当と緩やかな株価の積み上げで、スピード感はないが長く持つほどじわじわ効いてくるタイプだと言える。
そして悪い未来では、利益成長が止まり、営業利益率が10%を割り込むような展開が懸念される。この場合、市場の評価は萎み、PERは10〜15倍に縮みやすくなる。そうなると株価は500〜550円が現実的なラインとなり、業績の伸び悩みが続けば450円を割るケースも想定される。評価が戻らない限り、配当利回り3%台では下落圧力を吸収する力としては弱い。
まとめると、成長が継続すれば上、横ばいならそのまま、伸びが途切れれば下がる。株価606円という現在地は、どちらの方向にも動ける位置にあり、未来の決め手は利益が積み上がるかどうかになる。高配当で守る銘柄というより、業績の伸びと評価で結果が変わる銘柄なので、投資家としては「伸びると判断するなら持つ、止まると思うなら距離をとる」が素直な向き合い方だと思う。静かに上がる未来もあれば、横で止まる未来もあるし、評価が剥がれれば下へも振れる。結論としては、数字が未来を決める銘柄であり、その見極めが利益に直結するタイプだといえる。
この記事の最終更新日:2025年12月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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