株価
ホットランドホールディングスとは

築地銀だこは、創業者の佐瀬守男が1997年に群馬県のアピタ笠懸店で始めた小さなたこ焼き店からスタートし、今では国内外に展開する大規模チェーンへ成長した。最初は関西でもない群馬でたこ焼きを商売にすること自体が珍しかったが、冷凍ではなく冷蔵タコを使い、実演販売スタイルのオープンキッチンで焼き上げるライブ感が注目され、さらに外はパリッと、中はトロッと、タコはプリッという独自の焼き加減が受け、日本中のショッピングセンターや商店街から次々に出店依頼が来るほど勢いよく拡大していった。
その背景には南部鉄の鉄板を使い、敢えて表面をザラつかせ油が馴染むようにしたり、北京ダックの調理方法からヒントを得て焼いた後に油を回しかける独特の製法があったりと、細部まで徹底したこだわりがある。タコは世界中から厳選して仕入れ、青のりすら生地用とトッピング用で種類を変え、舟形の容器も余計な油を吸う白樺素材にするなど、一舟のたこ焼きを仕上げるためだけに多くの工夫が積み重ねられている。
会社の拡大とともに事業内容は銀だこに留まらず、たい焼きの「銀のあん」、揚げ物・居酒屋系業態、アイスクリームのCOLD STONE CREAMERY、コーヒー業態、キッシュ業態など幅広く展開された時期もあり、多ブランド戦略によって売上の柱を複数持とうとする意図が感じられる。ただしすべてが成功したわけではなく、コーヒービーン&ティーリーフ事業は一時的に閉店・縮小を経て姿を変え、逆に「キッシュヨロイヅカ」のように共同事業や買収を経てブランド育成に繋げた例もある。
2011年には東日本大震災の被災地である石巻でトレーラー商店街を開設し、復興支援1000日プロジェクトや地元雇用、大学との提携まで進め、単なる飲食企業を超えた社会的な役割も果たそうとした。のちに拠点は東京に戻るが、その経験が企業理念の一部によく馴染んでいる。
上場後はより大きな外食グループを目指し、2014年にマザーズへ、翌年東証一部へ進み、M&Aや新規ブランド開発のスピードを強めた。そして2025年4月には持株会社制へ移行し、ホットランドホールディングスとして事業管理を強化、築地銀だこはホットランド東日本とホットランド西日本の2社運営体制へ変わった。スピード感のある出店や海外店舗の増加、商品開発力を維持するための体制ともいえる。近年ではコシダカHDと提携し、カラオケ施設への冷凍銀だこ提供や海外共同事業の可能性が広がり、MLBロサンゼルス・ドジャースとの契約も発表され、ブランドを世界規模で認知させる布石にも思える。
築地銀だこの強みは、ただのたこ焼きでなく“焼きのパフォーマンス性”と“職人の熱量”を商品の一部として売っているところにある。機械化が進んでも手焼きにこだわり、湿度や粉の状態を見て焼き時間を微調整する人間の感覚を捨てない。チェーン店でありながら、均質すぎない「手作りの揺らぎ」が香ばしさや出来たての魅力を残す。ハイボール酒場のように夜は飲食業態に切り替える柔軟さ、4個入りや限定フレーバーなどのローカル戦略、海外向けメニューの調整など、多くの工夫を繰り返しながら銀だこは単なる日本のファストフードではなく、エンタメ性を含む“体験型の粉ものブランド”として拡張され続けている。
ホットランドホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連20.12 | 28,732 | 1,132 | 1,204 | -1,138 | -52.9 | 0 |
| 連21.12 | 29,678 | 970 | 3,603 | 2,079 | 96.6 | 7 (記念) |
| 連22.12 | 32,163 | 1,744 | 2,608 | 1,358 | 62.9 | 7 |
| 連23.12 | 38,710 | 2,235 | 2,635 | 1,021 | 47.2 | 10 |
| 連24.12 | 46,126 | 2,545 | 3,444 | 1,849 | 87.0 | 13 |
| 連25.12予 | 52,600 | 2,200 | 1,800 | 500 | 23.5 | 13 |
| 連26.12予 | 60,300 | 2,650 | 2,600 | 1,600 | 75.3 | 13〜15 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 2,896 | -1,835 | -909 |
| 2023 | 2,938 | -2,684 | -740 |
| 2024 | 3,953 | -3,761 | 645 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.7% | 9.9% | 4.3% | – | – |
| 2024 | 5.5% | 15.6% | 6.4% | 実績PER 高値33.6倍 / 安値22.7倍 | 3.94倍 |
| 2025(予) | 4.0% | 3.6% | 1.5% | 105.97倍 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ホットランドHDは数字を見る限り、売上推移はとても整っていて、387億から461億、526億、そして603億へと階段を上るように伸びている。主力の築地銀だこを軸に店舗拡大や海外展開がうまくいっていることが数字に表れていて、外食としては比較的きれいな成長線を描いている。ただ、売上が伸び続けている一方で利益を見ると24年までは順調に増えているが25年で一度ガクッと落ち込んでしまう。営業利益は25年予想で22億、純利益はわずか5億と前年の18億に比べて三分の一以下に縮む格好になっており、EPSも87円から23円へ急降下する。この落差はかなり大きくて、単純に数字だけ並べると成長に陰りが出たようにも見えてしまう。売上だけ伸びても利益が伴わないのはコスト上昇か先行投資、または採算の低い店舗展開が混ざっている可能性がある。飲食企業は値上げと客単価維持のバランスが非常に繊細で、利益率低下は現場で何かが重くなっているサインにも思える。
ただし26年には営業利益が26億、純利益も16億と回復する見込みが出ていて、EPSも75円と持ち直す。この数字だけを信じるなら25年は一過性の利益調整期に過ぎず、会社としては規模拡大のステージに入り、そのための手間やコスト負担を先に飲み込んでいる可能性がある。成長株の典型パターンで、売上曲線が綺麗に右肩上がりを描く場合、その裏では商品開発・海外展開・新業態試験・仕入れ強化など、利益率を削る投資フェーズが発生しやすい。銀だこは設備と食材品質のこだわりが強く、作業工程は手作業性が残るため生産効率が伸びにくい。原材料費の高騰や人件費の上昇が業績を押し込んでいる可能性は考慮すべきで、もしそれを吸収できるだけの価格転嫁や回転率向上が難しいなら、利益率の伸び悩みは今後も続くリスクになる。
一方でROEとROAで見ると24年の数値が際立って高く、ROE15.6%、ROA6.4%と資本効率が非常に良かった時期があり、おそらくこの頃の株価は評価が高かっただろう。しかし25年はROE3.6%、ROA1.5%まで落ち込み、数字上では急失速だ。つまり期待感だけで買うと割高を掴む可能性がある銘柄であり、成長トレンドが続くかどうかは利益の戻り方次第になる。実際に26年に数字が戻るなら再評価の余地があるが、事前に株価が織り込むと美味しい水準は短命になることが多い。
結局この銘柄は、売上拡張期と利益調整期を行き来しながら少しずつ事業を広げるタイプで、いま25年予想を経て反発の兆しが見え始めている段階。もし自分が投資家なら、割高で買うより利益の谷が見えて底固まったタイミングを待つ。EPSが再び70円を越えてくる26年近辺で実績が伴ったことを確認するか、逆に25年の業績悪化で市場が過度に悲観した安値が来たときに拾うのが一番美味しい。長く持つなら損益の波を許容し、銀だこブランドの強さと海外展開の伸び代を信じて資金を置くスタンス。短期で利益を抜く銘柄ではなく、調整を飲んで持ち続ける覚悟が必要な銘柄という印象になる。
配当目的とかどうなの?
配当目当てでホットランドHDを考えるなら、正直に言って現段階ではメリットは大きくない。予想配当利回りは連25.12・連26.12ともに0.61%と低水準で、いわゆる配当株として期待される2〜3%ラインは大きく下回っている。つまり配当を受け取るために資金を置く意味はほぼなく、キャピタルゲイン狙い(値上がり期待)のほうが性質に合っている銘柄と言える。
利回り0.61%は、銀行預金よりは高いが、リスクと拘束年数を考えると旨味は薄い数字。しかも連25年予想では利益が落ち込みEPSも低下しているが配当は据え置き、これは配当性向が一時的に上がっている可能性があり、利益成長よりも配当を維持した形にも見える。ただ、ここが逆に強みで、業績が一度落ちても配当を切ってこなかったなら、会社として株主還元を完全には軽視していないとも読める。とはいえ利回りが低い以上、配当を目的に長期保有するという選択肢はやはり優先度が低い。
もし配当視点で買うとしたら、それは利回りが1.5〜2%付く株価水準まで下がった時、つまり株価が調整したときが初めて検討ラインになる。今の水準で配当狙いで買う理由は薄く、買うとすれば「銀だこのブランド力と海外展開余地に賭ける成長投資」としての立ち位置になる。配当を目的に買う銘柄ではなく、「値上がるならOK、配当はおまけ程度」と考えるのが現実的な距離感だと思う。
今後の値動き予想!!(5年間)
ホットランドHDの株価は現在2,109円。ここから5年後を考えると、伸びるか沈むかは売上よりも利益体質の改善力にかかっている。売上は過去から未来予測にかけてきれいに右肩上がりで387→461→526→603億と増えているが、利益は波があり、純利益は18億の年もあれば5億まで落ち込む年もある。EPSも87円から23円へ急落し、翌年再び75円へ戻る見込みという上下動を見せている。つまりこの銘柄は拡大期と調整期を交互に動くような企業体質で、企業規模が大きくなりながらも収益化速度が一定ではないという特徴を持っている。銀だこブランド自体は強く、国内外の出店余地もあるが、食材コスト・人件費・海外進出の投資、店舗あたりの収益効率と回転数、原材料調達の安定性など、外食特有の課題を背負いながら大きくなっているため、数字が素直に横一直線に伸びるフェーズではない。
未来が大きく上向くパターン、いわば良いシナリオでは、海外展開の拡大・冷凍銀だこやフードコート業態がうまく浸透し、利益率が改善しEPSが安定的に70〜100円ゾーンに落ち着く。そうなると市場は成長株として再評価し、PER20〜30倍が意識されて株価は4,000〜6,000円に乗る可能性もあり、5年で株価が2〜3倍程度になる未来が見える。アジア地域の店舗網拡大、EC販売の強化、業務効率化が形になれば外食チェーンとしてはかなり明るい未来になる。銀だこはブランド認知が強く、看板商品がひとつであるがゆえ調理・オペレーションの標準化が可能なため、海外でスケールし始めると跳ね方は大きい銘柄でもある。
一方で現実的な中間ラインでは、売上は伸びるが利益率改善がゆっくりでEPSは40〜70円程度にとどまり、PER15〜22倍程度で評価される状態が続く。この場合株価は2,400〜3,500円あたりを揺れながら緩やかに上向き、5年トータルで1.2〜1.6倍くらいの上昇に落ち着く。派手さはないが堅実な伸び方で、配当利回りは0.6%と低いためインカムではなく純粋な中長期の成長期待で保有する銘柄になる。企業が体力を付けるまでの時間を一緒に歩く持ち方で、買って持っているという感覚より、育つのを待つという感覚が近い。
悪い場合は、利益の回復が遅れたり、原材料コストや人件費の重さが解消せずEPSが20〜40円の低位で固まるパターン。こうなるとPERは市場から10〜15倍程度の渋い評価となり、株価は1,200〜1,900円あたりで停滞、現値2,109円からは下方向のリスク。成長期待が剥がれた状態では市場の視線は鈍く、戻りは遅くなる。銀だこのブランドは強くても、株としての魅力は配当も低く成長性も評価されず、長く資金が寝かされる可能性がある。
結局のところ未来は三本の線に収束する。利益が戻れば化ける可能性はあるが、戻らなければ愛着だけでは買えない銘柄。買うなら25年の利益低下局面での調整が来たところ、または26年の復活が確定してからでも全然遅くない。銀だこは安定より波とスピードで伸びる会社で、投資家に求められるのは「焦らず、慌てず、数字で判断する姿勢」。現値2,109円は高くも安くもなく、未来の利益がどちらに転ぶかで評価が決まる中間点。攻める投資なら期待で買い、慎重なら決算で確認してから買う、その差で戦い方が変わる銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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