株価
綿半ホールディングスとは

綿半ホールディングスは、1598年創業という非常に長い歴史を持つ老舗で、元々は綿屋として始まり、その後金物店、そして現在のホームセンターと建設・貿易へと形を変えながら存続してきた企業である。代々の当主が名乗った「綿屋半三郎」という名前が「綿半」という屋号に残り、時代が変わっても事業を柔軟に変化させながら400年以上続いていることは、この企業のタフさと適応力を象徴している。本社は東京新宿だが、登記上本店は長野県飯田市に置かれ、地盤はあくまで長野。そこから全国へ店舗や事業を広げるスタイルで成長している。
グループの中心はホームセンター事業だが、単なる生活雑貨の小売ではなく、食品も全店で扱い、一部店舗では生鮮まで扱うという強い生活密着型の業態が特徴である。東京資本でありながら地方密着型の小売が主軸という珍しい構造を持ち、地域生活に根付いた売上を安定的に積み上げている。加えて、建設事業も会社の柱となっており、建築・土木工事から鉄骨製作、屋根外装リニューアル、立体駐車場の施工まで手掛ける綿半ソリューションズがグループ内で存在感を持つ。小売と建設の二軸で収益源を持つため、景気に左右されにくいバランスの取れた企業体質が形成されている。
さらに貿易部門も動いており、綿半トレーディングは医薬品や化粧品の原料輸入、研究所を持った新薬開発など、単なる商社ではなく研究機能まで備えている点が面白い。小売だけでも建設だけでも終わらず、メーカーと商社も含んだ複合型の展開は、老舗でありながら現代的な事業多角化だと言える。ひとつの市場が停滞しても別の柱が支える構造になっているため、長いスパンで見たとき業績の波が比較的安定しやすい。
つまり綿半HDは、長野という地盤を軸にしながら、ホームセンター(生活消費)、建設(土台とインフラ)、貿易・医薬(将来性と研究)という異なる時間軸の事業を重ねることで、成長と安定の両立を狙う企業と言える。伝統企業でありながら時代ごとに事業を変えてきた柔軟性を持ち、現代では小売と建設を両輪に、地域密着と技術系事業を併せ持つ独特の企業構造を築いている。歴史の長さと業態の広さ、生活に根ざした事業体質が融合している点は、数字以上に企業の色を示す特徴だと感じられる。
綿半ホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 134,299 | 2,402 | 3,057 | 1,653 | 83.2 | 22 |
| 連24.3 | 128,072 | 2,822 | 3,237 | 1,854 | 93.1 | 23 |
| 連25.3 | 133,594 | 3,501 | 3,812 | 2,077 | 104.6 | 29 |
| 連26.3予 | 139,000 | 3,840 | 4,000 | 2,300 | 118.6 | 30 |
| 連27.3予 | 140,000 | 3,900 | 4,100 | 2,350 | 121.2 | 30〜32 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | -3,653 | -3,956 | 6,163 |
| 2024 | 12,467 | -2,170 | -9,484 |
| 2025 | -2,877 | -1,828 | 4,860 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.7% | 7.7% | 1.9% | – | – |
| 2024 | 2.2% | 8.1% | 2.3% | – | – |
| 2025 | 2.6% | 8.9% | 2.6% | 14.4〜17.8倍 | 1.15倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
業績は売上が1280億→1335億→1390億と緩やかに伸び、営業利益も28億→35億→38億と改善している。利益成長は加速ではなく着実な積み上げ型で、小売+建設という事業性を考えると無理のない堅い伸び方に見える。営業利益率が1.7%→2.2%→2.6%と少しずつ改善しているのは好材料だが、利益率そのものはまだ低く、劇的な収益拡大というより効率改善フェーズにある印象。ROEは7.7%→8.1%→8.9%と緩やかに改善しており、資本効率は平均クラスをじわじわ上回りつつある。ROAも2.6%まで上がり資産運用効率が徐々に向上している。
一方で株価指標を見るとPER14.4〜17.8倍、PBR1.1倍で、過度な期待を織り込んだ水準ではなくバリュエーションは中間的。高すぎず安すぎず、今の利益成長ペースに大体見合う水準で価格が形成されている。成長期待で吊り上げられすぎているわけでもなく、業績が予想ラインに収まる限り極端な下振れリスクも小さめ。一方で利益率の大幅拡大が見えないため、ここからの株価上昇は利益とEPSの積み上がり次第で、爆発的な株価成長というより滑らかな右肩イメージになる。
総合すると、綿半HDは派手さはないが数字は安定し、利益がじわりと伸び、ROEとROAも向上しているため、堅実な中期成長株として評価できる。バリューでもグロースでも極端に偏らず中庸で、投資判断としては守りが効く一方、大勝ちを狙う銘柄ではない。着実な業績積み上げを評価する長期保有には向くが、スピード感ある値上がりや高インカムを求める投資には向きにくい。数字が示すのは「大崩れしにくく、小さく伸びる企業」という姿だと読み取れる。
配当目的とかどうなの?
綿半ホールディングスの配当利回りは、連26.3・連27.3ともに2.08%でほぼ横ばい。数字だけを見ると高配当と言えるラインではなく、配当金を収入源として狙う投資には少し物足りない水準。ただ、増配の流れは続いており、22円→23円→29円→30円見通しと、毎年少しずつだが株主還元が強化されてきているのは安心感がある。EPSも伸びており、利益が増えているからこそ増配できている構造なので、無理な還元ではなく健全な配当姿勢といえる。
一方で、利回りだけで選ぶなら他に3〜4%台の銘柄も多く、配当だけを目的にこの銘柄を選ぶメリットは限定的。あくまで本命は安定した経営と緩やかな業績成長で、配当はそのオマケとして積み重なっていくイメージに近い。長く持って小さく育つタイプの企業で、配当も同じリズムでじわっと伸びていく。派手ではないが、着実な積み上げが好きな人には向いている。
まとめると、綿半HDは「配当で稼ぐ株」ではなく、「堅実な会社に乗り、値上がりと配当をセットで拾う株」。利回りは高くないものの成長性があって、増配姿勢も継続的。腰を据えてじっくり長期で持つ投資スタイルとは相性が良い。ただし、配当重視一本で考えると優先度はそこまで高くない、そんなバランスの銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
綿半ホールディングスの株価1,438円から5年先を考えると、未来は大きく3つに割れる。どのルートに向かうかを決めるのは、利益率がどこまで改善できるか、EPSが継続的に伸びるか、そして市場がそれをどう評価するかという三つの要素。会社自体は安定性が高いが爆発的な成長企業ではないため、結果は数字の積み上げに比例して素直に分岐していく。
良い未来に向かう場合は、ホームセンターと建設の両輪がうまく回り、営業利益率が現在の2%台前半から2%台後半、できれば3%台に近づいてくることが前提になる。売上だけでなく利益が増えているという明確な形が見えれば、EPSも順調に増え、市場評価は自然と高まる。その場合はPERが今より高めで維持され、株価は時間をかけながら上昇していき、5年後には1,900〜2,400円程度を狙える可能性がある。スピード感ある上昇ではなく階段を一段ずつのぼるような伸び方で、配当も積み重なり、総合的なリターンが心地よく膨らんでいく。
中間シナリオでは、数字は伸びるが勢いはそこまで強くない。営業利益率は少し改善しても大きな壁は破れず、ROEも8%前後で落ち着く。市場は期待しすぎず、失望もしないという静かで実直な評価を続けるため、株価も大きく跳ねず崩れず、1,500〜1,800円の帯にゆっくりと収まるような動きになる。長く持てば配当と緩い値上がりでリターンは取れるが、劇的な変化は期待しにくい。老舗企業らしい堅実さがそのまま株価に現れていく未来と言える。
悪い方向に向かう場合は、売上はあっても利益率が改善しない、あるいは伸び悩む状態が続き、EPSの成長が止まるパターンだ。建設の案件が細る、消費の弱さが続く、物流コストが重いなど、小さな負荷がいくつも積み上がると市場評価がじわじわ低下し、PERも縮小する。そうなると株価は値を削りながら推移し、1,100〜1,300円のレンジまで戻る可能性が見えてくる。ただ急成長企業ではない分、悪い局面になっても暴落しにくいバランス型の体質があるため、ゆっくり沈むという形が現実的だろう。
つまり綿半の未来ははっきりしている。利益を強く伸ばせば株価は追随し、伸びなければ横ばい、停滞すれば調整する。大きく跳ねる可能性よりも、静かに育つ未来と、静かに沈む未来のどちらに寄るかが焦点で、今の株価はちょうどその分岐点に立っているようにも見える。数字の積み上げと評価がかみ合えば前向きな展開が生まれ、かみ合わなければ穏やかさの中で値動きは重くなる。投資家にとっては、焦らず成長を見守るか、それとも確信が持てるまで待つかという判断が問われる局面と言える。
この記事の最終更新日:2025年12月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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