株価
トーカロとは

トーカロ株式会社は、兵庫県神戸市中央区に本社を置き、溶射による表面改質・表面処理を主軸とした加工を行う企業で、日本の中でも高機能皮膜形成技術において存在感が大きい。JPX日経中小型株指数の構成銘柄にも採用されていることから、市場でも一定の評価と規模を持つ会社と位置付けられる。溶射とは金属・セラミック・樹脂などの粉末や線材を熱で溶かし高速で吹き付け皮膜を形成する技術で、摩耗・腐食・熱劣化を防ぎ素材寿命を伸ばすことができるため、ハイエンドな製造装置やインフラを支える縁の下の力持ちのような役割を担っている。
事業の中心は半導体・液晶(FPD)製造装置向け部品向けで、微細加工・高熱環境・薬品耐性など高度な要求が突きつけられる分野で強みを発揮する。また、鉄鋼設備、産業機械、発電用ガスタービン部材、電池関連部品など用途は広く、大量生産型というよりは「壊れては困る」「劣化すると止まる」ハイストレス環境向けの装置に多く採用される点が特徴的である。つまり、景気に左右される分野はありつつも、設備保全・部品寿命延長など、周期的に必ず需要が戻る領域にも浸透しており、産業の土台そのものに関わる加工会社といえる。
国内には神戸・明石・名古屋・千葉・宮城と主要製造地に工場やサービスセンターを構え、特に明石地区には複数の工場を集約し生産体制を強くしている。さらに研究所も自社で保有しており、新素材・新皮膜技術の開発力も高い。加えて、日本コーティングセンター、寺田工作所といったグループ企業を持ち、中国の広州・昆山にも現地法人を展開していることから、加工・供給体制は国内に閉じず国際市場も見据えている。海外工場の存在は、半導体・電子部品製造のサプライチェーンと距離を縮められる点で優位性となる。
溶射技術そのものも多層で、大気・減圧双方のプラズマ溶射、アーク溶射、高速フレーム溶射、粉末式・溶棒式・溶線式フレーム溶射、サスペンションプラズマ溶射、さらにSDC溶射と幅広い工法を選択できる。これは一社で複数のニーズに応えられる武器となり、試作開発から大量加工まで対応幅を持つため競争力につながる。要求仕様の違う顧客に対し一つの技術だけではなく選択肢を提示できる点は、価格競争より技術価値で勝負できる強みと読み取れる。
一方で課題としては、主力である半導体や電子部品向け需要は好不況の波が大きく、設備投資が冷え込む局面では業績が伸びにくくなる点が挙げられる。また溶射は設備と職人技の両立が求められる加工であるため、人材育成と生産ライン維持コストが一定発生する。ただし、逆に言えば参入障壁が高く、簡単に競合が増えない優位性とも裏表になる部分である。
総じてトーカロは、目に触れない工業の裏側で必要とされ続ける「素材を強くする会社」であり、半導体製造装置や産業設備の信頼性を支える縁の下の技術系メーカーといえる。工場・研究開発・海外展開・多技術ラインナップがそろった体制は成長ポテンシャルを秘めており、需要の波が来れば大きな追い風になる構造を持っている。
トーカロ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 48,144 | 10,558 | 11,003 | 7,350 | 120.8 | 50 |
| 連24.3 | 46,735 | 9,197 | 9,662 | 6,326 | 105.5 | 53 |
| 連25.3 | 54,231 | 12,271 | 12,561 | 8,052 | 135.5 | 68 |
| 連26.3予 | 57,000 | 13,000 | 13,000 | 8,330 | 140.1 | 70 |
| 連27.3予 | 60,000 | 14,000 | 14,000 | 8,900 | 149.7 | 74〜75 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 9,894 | -5,094 | -4,561 |
| 2024 | 7,877 | -4,634 | -3,241 |
| 2025 | 9,077 | -6,194 | -5,124 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 21.9% | 13.6% | 9.8% | – | – |
| 2024 | 19.6% | 11.4% | 8.1% | – | – |
| 2025 | 22.6% | 13.2% | 9.8% | 14.8〜10.5倍 | 2.08倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
トーカロは数字だけを眺めても、業績の流れが比較的素直に読める企業だといえる。売上は467億→542億→570億と増え続け、営業利益や純利益も右肩で伸びている。とくにEPSが毎年積み上がっているところを見ると、利益の厚みが少しずつ増していることが分かり、株主価値の成長が継続している印象になる。事業環境が大きく荒れない限り、成長が途切れるイメージは強くない。
収益面に目を向けると、営業利益率は約20%超の高水準で推移し、ROEやROAも製造業として十分に評価できる数値が出ている。25年に一度数値が落ちているものの、翌年でまた戻しているため、利益率のブレが大きくなく安定した稼ぎ方ができていると考えられる。効率良く利益を出せている企業という評価は妥当で、投資対象として安心感を与える。
一方で、株価評価に直接関わるPERは10〜14倍台と中庸で、高すぎず安すぎず、利益が伸びる前提なら評価余地がある。PBR2.08倍も、成長企業として許容されるバリュエーションで、まだ伸びる余白は残っている。利益が今後もしっかり積み上がるなら、株価の見直し余地を期待しやすい水準と見える。
総合してみると、業績が伸びていること、利益率が高いこと、指標に過度な割高感はないことを踏まえると、数字だけで見た場合は買いに前向きでも違和感がない銘柄だと感じられる。特に、利益とEPSの増加が止まらない限りは、長期でじわじわ価値が積み上がるタイプの投資先として見やすい。大きなギャンブルではなく、しっかり稼いで積み上がる、堅実な強さがある印象だ。
配当目的とかどうなの?
トーカロを配当目的で見る場合、予想利回りは連26.3で約3.19%、連27.3で約3.37%と、国内株の平均利回り(概ね2%前後)を明確に上回る水準になっている。利回りだけで判断すれば「高配当寄りの優良ライン」に位置し、配当収入を目的に長期で保有する選択にも十分現実味がある水準といえる。減配の兆候や不安定な推移が見られず、むしろ配当はじわりと増えているため、配当方針は緩やかに前向きな印象が強い。
さらに利益が安定して伸びている点を考えると、配当が特別に無理をして支払われているわけではなく、利益で裏付けられた自然な増配基調と見て良さそうだ。営業利益率やROEも高めで安定しており、企業が稼ぐ力を持っていることから、今の利回りが一時的で終わらず、今後も配当の持続性が期待しやすい。配当利回り3%台前半という位置づけは、”高すぎて危ない”でもなく、”低くて魅力に欠ける”でもない、ちょうど中間の安心寄りのゾーンと言える。
結論として、インカム狙いとしては十分検討に値する数値で、配当で安定したリターンを取りながら、業績次第では株価評価の上昇も狙える二段構えの投資が可能な銘柄といえる。ただし配当利回りは極端に高くないため、「配当だけを目的に保有する」というよりは「配当+成長のバランス型銘柄」として見た方が魅力が伝わる。配当をもらいながら長期でじわりと積み上げるスタイルと相性が良いタイプだ。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価2,194円のトーカロが今後5年間でどのような値動きを見せるかを想像すると、まず前提として同社は溶射による表面処理技術を中核とし、半導体・液晶装置、産業機械、鉄鋼設備、エネルギー関連など幅広い分野の部材に高機能皮膜を形成することで価値を提供している。
営業利益率は20%前後と高く、ROEやROAも安定して二桁付近を維持しやすい構造があるうえ、国内に複数の工場と研究開発拠点を持ち、さらに中国拠点も含めて供給体制を広げている。設備投資循環や半導体市場の波に影響される一方、参入障壁が高く代替されにくい技術であることから、業績が伸びると強く評価されやすい特徴を持つ企業である。この前提を踏まえると、今後の株価は需要環境・利益率・EPS成長の継続性に左右され、良い展開・中間的推移・停滞気味のケースの3つで見方が変わってくる。
まず良い場合は、半導体・液晶装置向けの高機能溶射需要が継続し、海外や自動車電装化、EV部材、パワー半導体周辺など新しい用途にも裾野が広がる展開。営業利益率20%台、ROE二桁を維持し、EPSが順調に積み上がる状態が続けば、市場評価は一段階上へ。PERが拡大しても違和感のない体質になれば5年後の株価は3,200〜4,000円が視野に入り、成長銘柄として再評価される可能性が高まる。利益成長 × 技術壁 × ニッチトップという組み合わせが市場で強く意識される未来だ。
中間シナリオでは、業績は増減しながらも右肩方向を維持し、営業利益率とROEは二桁かその近辺で安定。半導体需要は波があっても底堅く、産業機械やインフラ更新需要が支えとなり、極端な上振れも下振れも起きずに推移する。市場評価は中立〜やや良好で着地しやすく、5年後の株価は2,400〜3,000円あたりが現実的。配当利回り3%台が保有の支えとなり、値動きは派手でないが「積み上げながら時間を味方にする保有」が成立するラインだ。
悪い場合は、設備投資循環の谷が来て半導体向けが鈍化し、鉄鋼向けも盛り上がらず、利益が現状維持〜微減で停滞するケース。原材料やエネルギーコストが収益を圧迫すれば営業利益率は20%割れ、ROE一桁台もあり得る。技術は強くても需要サイクルに勝てず、成長ストーリーが一度途切れると市場は評価を下げやすく、株価は1,650〜1,950円のレンジまで下押しする可能性がある。配当は下値を支えるが、値上がり益を狙うには重い展開になる。安定だが伸びにくい、そんな少し地味な未来。
まとめると、トーカロの未来は「需要サイクル」と「利益率の維持」が最も重要な軸になることが分かる。半導体やEVなどの新領域まで需要が広がり、利益率20%前後・ROE二桁が続けば企業価値は伸びやすく、5年後は成長株として強い評価が戻る。一方で、伸びはしても波の中でゆっくり進む場合、株価も緩やかな推移となり、安定と積み上げがテーマとなる。反対に利益率が崩れると評価は縮みやすく、株価は配当で下支えされながらも伸びにくい未来が近い。
つまり、未来の分岐点は「利益率が守れるか」「EPSが積み上がるか」に集約でき、成長が続けば株価も視界が開けるが、止まれば安定銘柄寄りに落ち着く。トーカロは伸ばせば強いが、止まれば重い。成長と安定の両面を持ち、どちらへ振れるかが今後の5年を決める会社といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月10日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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