株価
アレンザホールディングスとは

アレンザホールディングスの成り立ちや事業構造を丁寧に見ていくと、この企業が「地域に根付きながら広域展開を続けてきたホームセンター・ペット事業の集合体」であり、さらにバローグループとの統合によってスケールと安定性を強めてきたことがよく分かる。もともとは福島のダイユーエイトと岡山のリックコーポレーションという、地域ごとに強いホームセンター同士が2016年に統合して誕生した会社で、東北と中四国という地理的に離れた拠点がひとつのグループにまとまり、広域展開の基盤が整えられた。その後、2019年にバローホールディングスと経営統合したことで、東海地方のホームセンターバローが加わり、事業エリアは東北から中四国まで一気につながる形になり、全国でも珍しい「広域ホームセンターネットワーク」を形成している。
現在のアレンザホールディングスは、本体が直接小売を行うのではなく、傘下の事業会社を通じて各地域で店舗を運営する体制をとっている。ダイユーエイトは福島を中心に東北で強く、タイムは中国・四国エリアで存在感があり、ホームセンターバローは東海エリアに根付いている。さらにペットショップの「アミーゴ」や「ジョーカー」が全国で事業を展開し、ペット関連市場の拡大をうまく取り込んでいる。ペット事業は来店頻度が高く、地域密着の基盤にもなりやすいため、ホームセンターとの相性が良く、グループ全体の収益構造を支える柱となりつつある。
アレンザの特徴は、派手な都市型ビジネスではなく、地域住民の生活に密着した「地に足のついたリテール」を積み重ねてきた点にある。工具や園芸、日用品など、景気に左右されにくい生活必需品を中心に扱うため、同業他社と比べても景気変動の影響を比較的受けにくい構造を持っている。また、バローグループに入ったことで、仕入れ・物流・システム統合の効率化が進み、単体企業ではできなかったスケールメリットを享受できるようになった。バローは東海地方で食品スーパーやドラッグストアも含めた巨大な流通網を持っているため、その物流網やIT基盤を共有できることはアレンザにとって大きな競争力になっている。
さらに、観光農園を運営するアグリ元気岡山など、ホームセンター以外の事業も取り込み、多角化の幅も広げている点が特徴的だ。農園事業は地域貢献としての側面もあり、ホームセンターとの相性が良い分野で、園芸需要の創出にも繋がる。こうした事業の幅広さは、単純な小売企業ではなく「地域生活総合グループ」としての成長余地を持っていることを示している。
全体として、アレンザホールディングスは、地方を中心とした実直な小売業をベースにしながら、バローグループとの統合で体力を増し、ホームセンターとペット事業を二本柱として安定した成長を目指す企業と言える。急激な成長を求める企業ではないが、生活密着型の業態を手堅く積み上げ、広域での存在感を強めてきた「地域密着+広域展開のハイブリッド型」のグループとして独自のポジションを築いている。
アレンザホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.2 | 149,191 | 5,393 | 5,917 | 2,707 | 89.8 | 38 |
| 連24.2 | 149,715 | 4,106 | 4,614 | 2,372 | 78.7 | 38 |
| 連25.2 | 153,345 | 3,509 | 3,953 | 2,088 | 69.4 | 38 |
| 連26.2予 | 155,000 | 3,750 | 4,250 | 2,200 | 73.3 | 38 |
| 連27.2予 | 157,000 | 3,900 | 4,400 | 2,300 | 76.6 | 38 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 5,263 | -5,787 | -356 |
| 2024 | 3,925 | -3,461 | -265 |
| 2025 | 7,172 | -4,409 | -2,419 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 3.6% | 9.5% | 3.2% | ― | ― |
| 2024 | 2.7% | 7.9% | 2.6% | ― | ― |
| 2025 | 2.2% | 6.8% | 2.3% | 14.7倍(高値) / 11.9倍(安値) | 1.05倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
アレンザホールディングスの数字を見る限り、売上は緩やかに増加しているものの、利益の伸びは見られずむしろ減少傾向にある。営業利益は41億→35億→37億と上下しながらも全体として力強さがなく、営業利益率は3.6%→2.7%→2.2%と年々低下している。これはホームセンター業界で特に厳しいコスト構造や競争環境の影響を受けていることを示しており、効率性の面で課題が強い印象を受ける。
純利益も23億→20億→22億と伸び悩んでおり、資本効率にも表れている。ROEは9.5%から6.8%まで下がっており、企業が株主資本を利益に変換する力が弱まっている。ROAも3.2%→2.3%まで低下しており、資産全体の効率性も悪化している。いずれも改善の兆しが数字には見えていない。
ただし、株価の評価指標を見ると、PERは11.9〜14.7倍、PBRは1.05倍と比較的落ち着いた水準にある。利益率が低下している企業としては割高ではなく、むしろ市場は「横ばい〜微減の企業として妥当な水準」で評価していると言える。大きな期待は織り込まれておらず、安定した地域密着型チェーンとして捉えられている。
配当は38円で安定しており、業績が大きく成長していないにもかかわらず据え置いている点は株主還元の姿勢としてプラス。ただし利益の減少傾向が続けば、今後の持続性は必ずしも強いとは言い切れない。
総合的に判断すると、アレンザホールディングスは成長株ではなく、防御的なディフェンシブ銘柄に近い。売上は安定しているが利益率の低下が続いており、効率改善が見られない限り株価の大幅上昇は期待しにくい。一方でPERやPBRが低めで配当も一定の水準を保っているため、値下がりリスクが比較的限定された横ばい銘柄としては機能する可能性がある。
つまり、数字だけを見ると「積極的に買って成長を狙う銘柄ではないが、安定性と配当を目的に大崩れしない株を持ちたい投資家」には一定の価値がある。ただし利益率の低下が続いている点はリスクであり、今後改善が見えない限り長期的な投資妙味は高いとは言えない。
配当目的とかどうなの?
アレンザホールディングスを配当目的で考える場合、まず目に入るのは予想配当利回り3.38%という数字で、これは日本株の平均利回り(約2%前後)と比べると明確に高い水準にある。ホームセンター業界は急成長を狙うタイプではなく、地域密着型で安定したビジネスモデルを持つため、一定の配当を維持する傾向があり、この会社も例外ではなく、ここ数年の配当をほぼ横ばいで安定的に出しているのは大きな安心材料と言える。
一方で、利益が伸びて配当が自然に増える「成長型の配当株」ではなく、どちらかといえば業績横ばいの中で配当を据え置いているタイプで、配当余力が大きく増えているわけではない。数字を見ると、営業利益は年々減少傾向にあり、純利益も横ばい、ROEやROAも低下している。つまり企業としての収益体質が強化されているわけではなく、むしろじわじわ弱まっている面がある。これを考えると「この利回りの高さは企業成長の裏付けがあって生まれたもの」ではなく、「株価が上がらず横ばいなため結果的に利回りが高く見えている」という可能性が高い。
しかし、PBRが1.05倍とほぼ純資産並みの水準で放置されていることを考えると、株価が割高に買われすぎているわけではないため、大きく下落しにくい“ディフェンシブ寄り”の特性を持っている。そのため、過度に成長を期待せず「安定した3%超の配当を受け取りながらじっくり保有する」というスタイルには向いている銘柄といえる。
まとめると、アレンザホールディングスは配当目的としては「悪くないが、積極的に増配を期待するタイプでもない」という評価になる。業績の成長性に不安はあるものの、安定的なビジネスと低めのバリュエーションによって配当の“持続性”はある程度確保されている。配当を主目的に選ぶのであれば、値上がり益ではなく安定利回り3%台を着実に受け取る銘柄として扱うのが現実的だろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
アレンザホールディングスの株価1,123円を基準にして今後5年間の値動きを考えると、この会社の特徴である「低成長・安定型ビジネス」と「高めの配当利回り」がそのまま将来予測にも反映される。業績そのものは大きく伸びるわけではなく、営業利益も純利益も横ばいに近い推移となっているため、株価は急上昇するタイプではない。一方でPBR1.05倍、PER11〜14倍という評価は過度に割高でも割安でもなく、数字はいずれも安定しており、大きく崩れにくい性質も持っている。これらの前提から、未来の株価は「業績の小幅変動」「配当の安定維持」「市場のリスク環境」の三つが軸になる。
【良い場合】
ホームセンター需要が安定し、インフレ環境でも価格転嫁ができ、利益率がわずかでも改善する方向に向かえば、市場はアレンザをディフェンシブ銘柄として再評価する可能性がある。この場合、PERは13〜15倍程度まで見直され、株価は1,300〜1,600円程度までじわじわ上昇する余地が出てくる。劇的な成長は見込みにくいが、配当を受け取りながら株価も緩やかに上がるため、長期投資としては意外と悪くない展開になる。5年スパンなら1,700円近くを試す可能性もありうる。
【中間の場合】
現在の業績推移が基本的に維持され、営業利益率も2〜3%台のまま横ばい、純利益も現状付近で落ち着くというシナリオでは、株価は大きく動かず、1,050〜1,250円のレンジで推移しやすい。安定した配当利回り3%超を受け取りつつ値動きは控えめで、株価のボラティリティが低い典型的なディフェンシブ銘柄として推移する姿が想定される。派手な値上がりは望みにくいが、安定した利回りを得たい投資家にはこの状態でも十分魅力がある。
【悪い場合】
利益率の低下が続き、仕入れコストや人件費の上昇に耐えきれず、純利益が減少すると市場は評価をさらに落とす可能性がある。PERが9〜10倍程度まで下がると、株価は900〜1,000円を割り込む可能性があり、景気後退局面では850円近くまで沈むことも考えられる。とはいえ、ホームセンター事業は生活必需寄りで急激に悪化しにくいため、大崩れはしにくいものの、成長が止まると株価が低空飛行になりやすい。
総合すると、アレンザホールディングスは大きな伸びを期待する銘柄ではなく、今後5年間の株価は「上下にゆっくり動く穏やかなカーブ」が基本になる。配当を受け取りつつ保有するのが前提で、値上がり益狙いでは物足りないが、資産の安定性を重視する投資家には扱いやすい銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月11日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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