株価
セーレンとは

セーレン株式会社は、福井県福井市に本社を置く日本の大手繊維メーカーで、自動車用シート材では国内有数の供給企業であり、エアバッグ素材の製造でも大きな存在感を持つ。衣料分野ではスポーツ用途を中心にOEM生産に強みを持ち、さらに独自技術を活用した化粧品事業も育成している。企業としての核は繊維品の染色加工であり、各種繊維製品の企画・製造・販売、繊維製品の輸出入、電子制御機器・電子部品の設計・製造および販売、倉庫業など幅広い事業を展開している。
近年では多品種・小ロット生産の需要に対応するため、同社が独自開発したデジタルプロダクションシステム「ビスコテックス」を活用し、企画から製造・販売まで一貫して行える体制を構築したことで、従来のファッション衣料だけでなく、自動車内装資材、土木建築資材、エレクトロニクス資材などへ事業領域を拡大している。社名は創業時の事業である「精練」に由来し、染色加工を軸に発展してきたが、その後カネボウの繊維事業を継承して「KBセーレン」を設立し、原糸製造にも進出している。
事業所は福井本社(福井市毛矢1丁目10-1)を中心に、東京本社(東京都港区南青山1丁目1-1 新青山ビル)、大阪支社(大阪市北区梅田3-3-10 梅田ダイビル)、名古屋支店(名駅4丁目 名古屋クロスコートタワー16階)、広島営業所、豊田営業所、厚木営業所など全国に拠点を構えている。連結子会社には、KBセーレン(大阪市北区・登記本店は福井県鯖江市)、セーレン商事(福井市)、ナゴヤセーレン(名古屋市)、セーレンケーピー(福井市)、米国のSeiren U.S.A. Corporation、Viscotec Automotive Products LLC、中国では世聯汽車内飾有限公司および世聯電子有限公司、国内のセーレン電子などがあり、国内外に広い事業基盤を持つ。
同社は自動車内装材、エアバッグ、産業資材、衣料用高機能素材、エレクトロニクス素材、生活・環境関連資材、医療向け素材など、多岐にわたる製品群を展開しており、繊維メーカーでありながら化粧品開発を行うなど、独自技術を活かした事業多角化を進めている。染色加工で培った技術とデジタル生産システムを武器に、素材開発から製品供給まで一貫したビジネスモデルを構築し、国内外市場に向けて幅広い産業分野で存在感を高めている。
セーレン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 132,364 | 12,831 | 15,345 | 11,023 | 205.4 | 46 |
| 連24.3 | 141,915 | 14,068 | 16,214 | 12,156 | 226.5 | 53 |
| 連25.3 | 159,653 | 17,865 | 19,277 | 13,887 | 242.3 | 68 |
| 連26.3予 | 168,000 | 20,000 | 20,600 | 14,900 | 253.5 | 76 |
| 連27.3予 | 190,000 | 22,500 | 23,000 | 16,600 | 282.4 | 76〜84 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 12,943 | -9,614 | -7,009 |
| 2024 | 13,489 | -5,279 | -7,048 |
| 2025 | 20,538 | -11,810 | -7,802 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 9.6% | 10.5% | 6.5% | – | – |
| 2024 | 9.9% | 9.8% | 6.4% | – | – |
| 2025 | 11.1% | 9.7% | 6.9% | 12.4倍 / 8.9倍 | 1.28倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
セーレンの業績を24.3期から26.3期予想まで確認すると、売上は1419億円、1596億円、1680億円と堅実に積み上がっており、急成長ではないものの継続的な拡大が見られる。営業利益は140億円、178億円、200億円と伸びており、営業利益率も9.6%、9.9%、11.1%と改善傾向が続いていることから、収益体質は安定して強くなっている。経常利益も162億円、192億円、206億円と着実に向上しており、純利益も121億円、138億円、149億円と堅調に積み上がっている。繊維メーカーとしては利益率が比較的高く、景気変動が大きい素材産業の中では良好な収益構造を維持している姿が確認できる。
ROEは10.5%、9.8%、9.7%とほぼ横ばいで推移しており、10%前後を安定して維持している点は評価できる。資本効率が高騰していない一方で、大きく悪化もしておらず、成熟企業らしい安定したレンジに収まっている。ROAも6.5%、6.4%、6.9%と小幅に推移しており、総資産を使った稼ぐ力も安定圏にある。利益率の改善が進んでいることを踏まえると、企業全体としての効率は少しずつ良くなっていると言える。
一方で、株価バリュエーションを示すPERとPBRを見てみると、2025年の実績PERは高値平均12.4倍、安値平均8.9倍で、割高感の強い水準ではなく、むしろ素材メーカーとしては妥当なレンジにある。PBRも1.2倍台と過熱感はなく、株価が本質価値から極端に乖離している状態ではない。このことから、同社は「業績の安定と利益率の改善を市場がある程度織り込んだ価格帯」で取引されていると考えられる。
総合すると、セーレンは売上・利益ともに堅実な伸びを続け、利益率も改善しつつあることから、成熟企業として安定した投資対象である一方、急激な成長ストーリーは描きにくい。ROEが横ばいで推移している点からも、企業成長のアクセルは強く踏まれていないものの、堅さと安定感のある収益構造が株価を支えている。PER・PBRともに落ち着いた評価で、割高ではなく、過度に割安でもない“適正〜やや割安寄り”の水準と判断できる。
したがって、提示された数値だけで判断すると、長期的に安定成長を目指す投資家には悪くない選択肢であり、急騰を狙う銘柄ではないが、利益率改善が続く限りは株価の底堅さが期待できる。繊維系企業としては収益水準が比較的高く、堅実な増益基調を評価する投資家に向くタイプの銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
セーレンを配当目的で考える場合、予想配当利回りが26.3期で2.38%、27.3期も同じく2.38%という数字は、決して高配当株とは言えないが、東証プライム全体の平均である2%前後と比較すれば「平均よりやや高い位置」にある。極端に利回りが高いわけではないが、低利回りで有名な成長株や循環色の強い素材株の中では、比較的安定したインカムが期待できる部類に入る。配当性向が極端に低いわけでもなく、業績がじわじわ成長している点も考慮すると、企業側が無理して配当を出しているという印象はなく、財務バランスの中でほどよい水準を保っている。
セーレンは爆発的な成長を狙うタイプではなく、収益が堅調に積み上がる“安定型”の企業に近い。そのため、景気敏感株のように配当が大きく揺れる心配も比較的少ない。営業利益率が改善しており、利益の着実な伸びが続いている限り、減配リスクは低めと見ることができる。また、PBRが1.2倍前後、PERも10倍前後の落ち着いた水準にあるため、株価が割高すぎて利回りが低く見えるということもない。むしろ株価位置と配当とのバランスがとれた“地味だが安定感のある銘柄”として扱いやすい。
ただし、いわゆる高配当株として3〜5%以上の利回りを求める投資家からすると、2.3%台は物足りない水準であることも事実。もし「配当収入そのものを大きく取りたい」あるいは「配当再投資で利回りを積み上げたい」という目的であれば、他により高利回りの選択肢は多い。一方で、配当と業績の安定性をバランスよく重視するタイプの投資家にとっては、セーレンは“安心して保有しやすい中配当株”として位置付けられる。
結論として、セーレンは配当目的だけで選ぶ銘柄ではないが、安定した業績に裏付けられた2.3%台の利回りは悪くなく、「大きく増やす」というよりは「安定して受け取る」タイプのインカム銘柄として評価できる。高配当株の強烈な魅力には欠けるものの、安定成長と配当の両立を求める場合には十分に候補に入る銘柄と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価3,190円から今後5年間を見据えると、セーレンは大きく成長するタイプの企業ではないものの、売上と利益を堅実に積み上げてきた歴史があり、繊維メーカーとしては利益率が比較的高い点が特徴になっている。営業利益率は9%台後半から11%台へ改善しており、ROAやROEも大きな変動がなく安定した水準を維持しているため、企業としての基盤は非常にしっかりしている。株価の変動は、派手な成長よりも「業績の安定性」「利益率の改善」「市場センチメント」によって左右されやすく、急落しにくいが急騰もしにくい、ミドルリスク・ミドルリターン型の銘柄になりやすい。
良いシナリオでは、自動車向けシート材・エアバッグなどの車両資材分野が堅調に推移し、加えて独自技術を活かした高付加価値素材や化粧品事業が徐々に育っていく未来を想定する。営業利益率が11%台からさらに12%前後へと伸び、ROEも10%を安定的に維持することができれば、市場は「安定して利益が伸びる企業」と評価しやすくなる。PERは現在の10倍前後から12〜14倍程度へ切り上がる余地があり、業績拡大も重ねれば株価は3,190円から3,800〜4,300円程度に到達する可能性がある。5年スパンで見れば、4,500円台に触れる場面も十分考えられ、ゆっくりと株価が右肩上がりになる展開となりやすい。
中間シナリオでは、本業は安定するものの大幅な伸びはなく、営業利益率も10〜11%の範囲で横ばいに推移する未来を想定する。この場合、市場の評価は過度に高まることもなく、かといって大きく崩れることもない。PERは9〜11倍あたりで落ち着き、株価は3,190円から3,300〜3,600円程度の範囲でじわじわ動く展開となる。売上は増えても劇的な利益成長がないため、急速な株価上昇は期待しづらいが、安定した資産を保有したい投資家には比較的扱いやすい値動きとなる。配当利回りも2%台後半を維持するため、配当を受け取りながら“静かに持ち続ける銘柄”としての性格が強い。
悪いシナリオでは、世界的な自動車需要の変動や原材料高、エネルギーコストの上昇によって利益が圧迫され、営業利益率が再び9%台前半に押し戻される状況を想定する。ROEも8%を割り込む水準になれば市場の評価が下がり、PERは8倍を下回る可能性が出てくる。そうなると株価は3,190円から2,600〜2,900円付近への調整が現実的となり、外部環境が悪化した場面では2,400円台まで下がるケースも考えられる。ただしセーレンは財務基盤が比較的強く、事業が崩壊するリスクは小さいため、悲観シナリオでも長期的には下げ止まりやすく、逆張りの買い場になる場面もあり得る。
結局のところ、セーレンの株価は「大きく伸びるより、どれだけ安定して稼ぎ続けられるか」で評価が決まりやすい。爆発的な成長を期待するタイプの銘柄ではないが、その分値動きも比較的穏やかで、配当も2%台後半と堅実である。3,190円という現在値は、上にも下にも寄り道しながら緩やかに動く中間地点にあり、焦って判断する必要はない。決算ごとに営業利益率とROEの推移を確認し、伸びが続くなら持ち続け、鈍化が見えたら一度距離を置くというスタンスが最も現実的な向き合い方となる。
この記事の最終更新日:2025年12月11日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す