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ワールド(3612)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

ワールドとは

株式会社ワールドは、日本を代表する総合アパレルメーカーの一角を占める企業であり、婦人服・紳士服・子供服・服飾雑貨・生活雑貨まで幅広い分野を手掛ける多ブランド展開型のアパレル企業である。東京証券取引所プライム市場に上場しており、本社は兵庫県神戸市中央区港島中町に、東京(青山)にもオフィスを構える。主力ブランドにはアンタイトル、インディヴィ、リフレクト、タケオキクチ、シューラルー、オペークドットクリップ、ピンクラテなどがあり、百貨店、ショッピングセンター、路面店、ECを通じて全国規模で展開している。

同社は1959年に神戸市で創業された。中小アパレルメーカー光商会に在籍していた木口衛と畑崎廣敏が独立し、当初は卸事業を中心にスタートしたが、日本発のトータルコーディネートブランドの開発に取り組み、単なる卸業者から企画・ブランド力を持つアパレルメーカーへと成長していった。神戸市にポートアイランドが誕生した際には現在の本社ビル群を建設し、ファッションタウンの中核的存在となったほか、寄附金をもとにワールド記念ホールが設立されるなど、地元神戸への貢献も長年続けてきた。阪神・淡路大震災時には支援活動も行い、地域密着型企業としての側面も持つ。

1990年代に入ると、それまでの卸中心のビジネスから転換し、SPAモデルを本格的に導入。企画から生産、物流、販売までを自社で一体的に管理する体制を構築し、多ブランド戦略を加速させた。多くのアパレル企業が1社1ブランド型であるのに対し、ワールドは創業当初から多ブランドを前提とした経営を行っており、年代・価格帯・ライフスタイルごとに細かくブランドを展開する戦略を採ってきた。この戦略により、百貨店向けからショッピングセンター向けまで幅広い顧客層を取り込むことに成功し、国内有数のアパレルグループへと成長した。

2005年には、経済のグローバル化による敵対的買収リスクを回避し、長期的な経営安定を図る目的からMBOを実施し、上場を廃止した。当時としては珍しい大規模なMBOであり、市場でも注目を集めた。その後は非上場企業として経営の自由度を高める一方、国内アパレル市場の成熟、消費環境の変化、ファストファッションの台頭などにより業績は徐々に低迷していった。

2010年代に入ると、消費増税や円安の影響、ユニクロをはじめとする低価格・高回転型ブランドの拡大により、従来型アパレルモデルの限界が顕在化。2015年には金融機関出身の上山健二が代表取締役社長に就任し、創業家主導からの転換が進められた。同年以降、不採算店舗の大量閉鎖、ブランド数の大幅削減、早期退職募集による人員整理など、痛みを伴う構造改革を断行し、収益体質の改善に取り組んだ。この時期に多くのブランドが終了・統廃合され、事業の選択と集中が進められた。

2018年には東京証券取引所へ再上場し、市場からの資金調達とガバナンス強化を背景に、新たな成長戦略を模索している。現在は従来のアパレル製造・販売にとどまらず、自社ECの強化や他社向けEC運営受託、販売代行、物流・店舗運営ノウハウの外販など、プラットフォーム型ビジネスへの転換を進めている。また、二次流通やリユース、販売代行といった循環型ビジネスにも取り組み、アパレル業界全体のインフラ提供企業としての位置付けを強めつつある。

ブランドポートフォリオはレディース、メンズ、ファミリー、雑貨、靴・アクセサリーなど多岐にわたり、加えてナルミヤ・インターナショナルなど子供服分野のグループ会社も抱える。これにより、少子化という逆風下でも一定の市場カバー力を維持している点が特徴である。一方で、国内市場依存度が高く、景気動向や消費マインドの影響を受けやすい構造は引き続き課題とされる。

総じてワールドは、長い歴史とブランド資産を持つ一方、構造改革とビジネスモデル転換の途上にある企業であり、安定配当を狙う投資対象というよりは、アパレル業界再編やプラットフォーム事業の進展が業績にどこまで寄与するかを見極める局面にある企業と言える。

ワールド 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高
(百万円)
営業利益
(百万円)
経常利益
(百万円)
純利益
(百万円)
一株益
(円)
一株配当
(円)
23.3 214,246 11,686 10,313 5,686 152.7 48
24.2(変) 202,342 12,004 11,186 6,764 187.4 56
25.2 225,658 16,796 15,506 11,105 319.2 80
26.2(予) 300,000 19,500 18,300 11,500 314.5 106
27.2(予) 330,000 21,500 20,100 12,900 352.7 106〜118

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF
(百万円)
投資CF
(百万円)
財務CF
(百万円)
2023 25,389 -4,379 -21,771
2024 27,459 -1,961 -25,500
2025 31,992 -10,262 -20,755

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROA ROE PER
(倍)
PBR
(倍)
2023 5.4% 2.2% 6.8%
2024 5.9% 2.8% 8.2%
2025 7.4% 4.0% 13.6% 6.8〜9.3 1.18

出典元:四季報オンライン

投資判断

ワールドは、24.2期から26.2期予想にかけて売上・利益ともに明確な拡大傾向にある。売上高は24.2期の2023億円から25.2期に2256億円へ増加し、26.2期予想では3000億円と大幅な成長が見込まれている。これに伴い、営業利益は24.2期の120億円から25.2期に167億円へ伸び、26.2期予想では195億円とさらに増加する計画となっている。経常利益も同様に111億円、155億円、183億円と一貫して増加しており、純利益についても67億円、111億円、115億円と高水準を維持している。

収益性を見ると、営業利益率は2023年の5.4%から2024年5.9%、2025年7.4%へと着実に改善しており、構造改革後の利益体質強化が数値に表れている。アパレル業界としては比較的高い水準まで上昇してきており、売上成長が利益に結びついている点は評価できる。

資本効率の面では、ROEが6.8%、8.2%、13.6%と急速に改善しており、特に直近では10%を大きく超えている。ROAも2.2%、2.8%、4.0%と上昇基調にあり、資産を使った利益創出力も明確に強まっている。ROEとROAが同時に改善していることから、レバレッジ依存ではなく事業収益力の向上による改善と判断できる。

バリュエーション面では、2025年の実績PERは高値平均9.3倍、安値平均6.8倍と1桁台にとどまっており、利益水準や成長率を考慮すると市場評価はまだ慎重である。PBRは1.18倍と、ROE13.6%を踏まえると過度に割高とは言えず、収益改善を織り込み切れていない水準と見られる。

以上の数値から判断すると、ワールドは売上成長、利益拡大、収益性改善、資本効率向上が同時に進行している局面にあり、数値面では明確な回復・成長フェーズに入っている。PER・PBRはいずれも控えめで、利益成長が継続する前提であれば、割安〜適正水準に位置する銘柄と判断できる。一方で、26.2期以降の利益成長が鈍化した場合には評価修正が起こりやすいため、今後も営業利益率とROEの維持・向上が投資判断の継続条件となる。総合すると、現時点のワールドは成長性と割安感のバランスが取れた中期向き銘柄であり、数値面だけを見れば前向きな投資判断が可能な水準にある。

配当目的とかどうなの?

配当目的という観点でワールドを見ると、「高配当株」ではないが、「成長を伴う安定配当株」としては十分に検討余地がある水準と言える。26.2期予想の配当利回りは3.68%、27.2期予想では4.05%と、国内株式全体で見れば中上位の利回り水準に入っている。特に、利益が拡大基調にある中で4%前後の利回りが見込める点は、単なる高配当狙いではなく、業績改善とセットで配当を受け取りたい投資家にとって評価しやすい。

これまで見てきた通り、営業利益は24.2期の120億円から25.2期に167億円、26.2期予想で195億円へと増加しており、営業利益率、ROE、ROAもすべて改善している。つまり、無理に配当を出している状態ではなく、利益の裏付けがある中での配当水準と判断できる。ROEが13.6%まで上昇している点を踏まえると、配当原資の創出力は十分にある。

一方で、利回り5%以上を安定的に狙うような「純粋な高配当株」と比較すると、ワールドの配当利回りはやや控えめであり、配当最優先の投資家にとっては物足りなさが残る可能性がある。また、アパレルという景気敏感業種である以上、業績が悪化すれば配当方針が見直されるリスクは常に存在する。

総合すると、ワールドは「配当だけを目的に長期保有する銘柄」というより、「業績回復・成長を享受しながら、年3.5〜4%程度の配当を受け取る銘柄」という位置付けが妥当である。利益成長が続く限り、今後の増配余地も期待できるため、インカムとキャピタルの両取りを狙う中期投資には向いているが、配当利回り最優先の投資家にはやや性格が異なる銘柄と言える。

今後の値動き予想!!(5年間)

現在の株価2,957円から今後5年間を見据えると、ワールドはアパレル業界の中ではすでに「復活局面」に入っている企業であり、かつての大量出店・多ブランド拡張による非効率体質から脱却し、収益性と資本効率を重視する経営へと明確に舵を切った段階にある。総合アパレルという景気敏感業種に属しながらも、構造改革によって利益率が改善し、ROE・ROAも着実に上昇している点が現在のワールドの最大の特徴と言える。

良いシナリオでは、構造改革後の収益モデルが定着し、26.2期以降も売上成長と利益率の両立が続くケースを想定する。営業利益率が8%前後まで上昇し、ROEも12〜15%水準を維持。ECやプラットフォーム事業、販売代行など非アパレル純粋型の収益が徐々に寄与し始めれば、景気変動耐性も高まる。この場合、市場の見方は「再生企業」から「安定成長企業」へと変わり、PERは10〜12倍程度まで評価修正されやすい。EPSの成長と評価見直しが同時に進めば、株価は2,957円から4,500〜5,500円程度までの上昇が視野に入り、5年スパンでは配当込みで年率10%前後のリターンも現実的となる。

中間シナリオでは、売上は堅調に推移するものの、利益率の改善は一巡し、営業利益率は7%前後で横ばいとなるケースを想定する。ROEは10〜12%で安定し、配当は緩やかな増配か横ばいで推移。市場評価は大きく変わらず、PERは8〜10倍程度にとどまる。この場合、株価は3,200〜3,800円程度のレンジで推移しやすく、急騰はしないものの下値も堅い。配当利回り3.5〜4%前後を受け取りながら、じわじわと株価が切り上がる「実務的に優秀な中期銘柄」という位置付けになる。

悪いシナリオでは、アパレル市況の悪化やコスト上昇、消費マインドの低迷によって売上成長が鈍化し、営業利益率が6%台まで低下するケースを想定する。ROEも10%を下回り、市場は再び慎重姿勢を強める。PERは6〜7倍程度まで低下し、評価は完全に配当重視型へ移行する。この場合、株価は2,200〜2,500円程度まで下落する可能性があり、地合い次第では一時的に2,000円前後まで調整する局面も想定される。ただし財務悪化や赤字転落を前提とする状況ではなく、下落局面では配当利回りが高まり、長期投資家の買い支えが入りやすい。

結局のところ、ワールドの株価を5年間で左右する最大の要因は、「改善した利益率とROEが一過性で終わらず、維持・拡大できるかどうか」に尽きる。良い場合は4,500〜5,500円、中間は3,200〜3,800円、悪い場合は2,200〜2,500円といったレンジが想定される。爆発的な成長株ではないが、業績が積み上がれば評価は自然とついてくるタイプであり、配当を受け取りながら業績の持続性を見極めて付き合う中期向きの再生アパレル株と言える。

この記事の最終更新日:2025年12月12日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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