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さくらインターネットとは

さくらインターネット株式会社(SAKURA internet Inc.)は、大阪府大阪市北区に本社を置く、ホスティングサーバを中心としたデータセンターおよびインターネットサービス事業を行う企業である。日本のインターネット黎明期から事業を展開してきた独立系データセンター事業者であり、現在はクラウドサービスを主軸とするインターネットインフラ企業として事業を拡大している。
同社は「高品質かつコストパフォーマンスに優れたサービスの提供」を経営理念の一つに掲げ、同業他社と比べて安価な料金体系と高い信頼性を強みとしてきた。国内最大級となる総計1.61Tbpsのバックボーン回線を保有し、日本のインターネット草創期から培ってきた技術力と運用実績により、個人から法人、官公庁まで幅広い顧客層に利用されている。近年は製造業や官公庁向けの実績も増えており、国産クラウド需要の高まりを追い風に存在感を高めている。
サービス面では、価格破壊の先駆者として知られ、かつて高価格帯だったレンタルサーバーを大幅に低価格化したことで、多くの個人ユーザーやスタートアップ企業の支持を集めた。mixi、GREE、2ちゃんねる、はてな、ニコニコ動画など、日本の主要ITサービスの立ち上げ期に利用された実績もあり、スタートアップ支援のインフラとしての歴史を持つ。
データセンター事業では、自社で設備を保有・運営し、高い耐災害性とセキュリティを備えている。震度7相当の耐震設計に加え、無停電電源装置や自家発電設備を備え、災害時の継続運用にも力を入れている。過去には設備トラブルや自然災害による障害も経験しているが、これらを通じて運用体制や設備の強化を進めてきた。セキュリティ面では、カードキー認証による厳格な入退室管理を全拠点で実施している。
事業内容は、データセンターおよびハウジングサービス、専用サーバやレンタルサーバなどのホスティング事業、VPSや仮想基盤、クラウドサービス「さくらのクラウド」を中核とするインフラ提供が中心である。加えて、ドメインや周辺インターネットサービス、技術情報を発信するオンラインメディア「さくらのナレッジ」「さくマガ」なども展開している。組織運営面では、東京一極集中を避ける経営方針を採り、フルリモート勤務を可能とする柔軟な働き方を推進している。本社への出社を必須とせず、経営陣も地方在住で業務を行うなど、分散型の組織運営を特徴としている。
全体としてさくらインターネットは、独立系データセンター事業者としての高い技術力とコスト競争力を基盤に、国産クラウド・インフラ企業としての立ち位置を確立している。安定したインフラ運営とクラウド分野での成長を両立させる、中長期視点で注目される企業である。
さくらインターネット 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 20,622 | 1,093 | 965 | 666 | 18.3 | 3.5 |
| 連24.3 | 21,826 | 884 | 764 | 651 | 18.3 | 3.5 |
| 連25.3 | 31,412 | 4,145 | 4,060 | 2,937 | 75.2 | 4 |
| 連26.3予 | 36,500 | 350 | 400 | 200 | 5.0 | 5 |
| 連27.3予 | 43,000 | 2,500 | 2,500 | 1,800 | 45.0 | 5〜6 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 3,963 | -606 | -3,999 |
| 24.3 | 2,884 | -2,025 | -410 |
| 25.3 | 5,787 | -8,323 | 26,763 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.3 | 7.9 | 2.5 | — | — |
| 2024 | 4.0 | 7.1 | 2.1 | — | — |
| 2025 | 13.1 | 9.7 | 3.6 | 242.9(高) / 29.8(安) | 4.11 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
さくらインターネットについて、営業利益、経常利益、純利益および各種指標から投資判断を行う。まず業績推移を見ると、24.3期の営業利益は8.8億円、経常利益は7.6億円、純利益は6.5億円であり、利益水準は小さいながらも黒字を確保している。25.3期には営業利益41.4億円、経常利益40.6億円、純利益29.3億円と利益が急拡大しており、この年は業績が一時的に大きく跳ねた局面であることが分かる。一方で26.3期予想では営業利益3.5億円、経常利益4.0億円、純利益2.0億円と大幅な減益見通しとなっており、利益水準は再び低水準に戻る計画である。利益の振れ幅が極めて大きい点が、この企業の最大の特徴である。
収益性指標を見ると、営業利益率は2023年5.3%、2024年4.0%と低水準で推移した後、2025年には13.1%まで急上昇している。ROEは7.9%、7.1%から9.7%へ、ROAも2.5%、2.1%から3.6%へ改善しており、25.3期は収益性が大きく改善した年である。ただし、26.3期予想の利益水準を見る限り、この高い収益性が安定的に定着したと判断するには無理があり、一過性の要因による変動と見るのが妥当である。
バリュエーション面では、2025年の実績PERは高値平均242.9倍、安値平均29.8倍と極端に幅が広く、市場評価が非常に不安定であることが分かる。PBRは4.1倍と高水準であり、利益規模や業績の安定性を考慮すると、評価はかなり先行している状態にある。
これらを総合すると、さくらインターネットは25.3期に突出した利益を計上した実績はあるものの、26.3期予想では再び低収益に戻る見通しであり、業績の再現性や安定性には大きな課題が残る。営業利益率・ROE・ROAは改善しているものの、絶対水準はまだ高いとは言えず、PBR4倍超、PERも安値ベースで30倍近いことから、指標面での割安感は乏しい。
結論として、現在の数値だけで判断すると、さくらインターネットは「成長期待が先行し、値動きが荒くなりやすい銘柄」であり、安定的な投資や配当目的には向かない。業績が安定して20億円超の利益水準を継続できる見通しが立たない限り、本命の長期投資先というよりは、業績変動を許容できる投資家向けの銘柄と評価される。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点でさくらインターネットを見ると、結論から言えば配当目的にはほぼ向かないという評価になる。26.3期、27.3期ともに予想配当利回りは0.16%と極めて低水準であり、インカムゲインを狙う投資としては魅力に欠ける。株価に対する配当水準はごく小さく、定期的な配当収入を期待する銘柄とは言えない。
同社は25.3期に大きく利益を伸ばした実績はあるものの、26.3期予想では利益が大きく減少する見通しとなっており、配当余力自体も安定しているとは言い難い。実際、配当利回りが0.16%にとどまっていることからも、会社のスタンスは株主還元よりも成長投資や事業拡大を優先していることがうかがえる。
また、PBRは4倍超、PERも安値ベースで30倍近い水準で推移しており、株価は将来成長期待を強く織り込んでいる状態にある。この評価水準では、配当が株価の下支えになる効果はほぼ期待できず、株価変動リスクを配当で吸収することは難しい。
総合すると、さくらインターネットは配当を目的に保有する銘柄ではなく、将来の業績成長やテーマ性を期待して保有する銘柄である。配当目的であれば、利回り2~4%以上の安定配当銘柄を選択した方が合理的であり、同社はあくまで値上がり益や事業成長を重視する投資家向けの銘柄と判断される。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価3,020.0円を起点に今後5年間を見据えると、さくらインターネットは業績の振れが非常に大きく、株価もその変動に強く反応しやすい銘柄である。国内独立系データセンター事業者として一定のブランド力と技術基盤を持ち、国産クラウドや官公庁・研究機関向け需要といったテーマ性もある一方で、利益水準の安定性という点ではまだ課題が多い。配当利回りは0.16%と極めて低く、株価はほぼ純粋に成長期待と業績変動によって動く構造になっている。
良い場合のシナリオでは、25.3期に記録した高い営業利益率(13%台)が一過性に終わらず、クラウド・データセンター関連の需要拡大が継続するケースを想定する。国産クラウド需要やデータ主権への関心が高まり、官公庁・大企業向け案件が安定的に積み上がれば、売上成長とともに利益水準も回復してくる。営業利益が20~30億円規模で安定し、ROEも10%前後まで改善すれば、市場はさくらインターネットを「成長インフラ銘柄」として評価し続ける可能性がある。この場合、PERは20~25倍程度が許容され、5年後の株価は4,000~4,800円程度まで上昇する余地がある。さらにテーマ性が強まり、業績の再現性が確認されれば、5,000円近辺を意識する展開も否定できない。
中間のシナリオでは、業績は黒字を維持するものの、25.3期ほどの利益水準には戻らず、利益の上下動が続くケースを想定する。クラウドやデータセンター事業は拡大するが、設備投資やコスト増の影響で営業利益率は一桁台後半にとどまり、ROEも10%未満で推移する。この場合、市場の評価は次第に落ち着き、PERは15倍前後に収れんする可能性が高い。株価は現在値3,020.0円を中心に上下し、5年後の水準は2,700~3,300円程度のレンジに収まると考えられる。大きな値上がりは期待しにくいが、テーマ性があるため急落もしにくい、方向感に欠ける展開となる。
悪い場合のシナリオでは、26.3期予想どおり低利益が続き、25.3期の好業績が一過性だったとの見方が強まるケースを想定する。営業利益が数億円規模にとどまり、ROEやROAも低水準のまま推移すれば、業績の再現性に対する市場の信頼は大きく低下する。この場合、成長期待が剥落し、PERは10倍前後まで切り下がる可能性がある。配当利回りが極めて低いため下支えは弱く、株価は3,020.0円から1,800~2,300円程度まで下落する展開が考えられる。事業自体が不安定というよりは、期待先行で膨らんだ評価が剥がれる形での調整となる。
総合すると、現在値3,020.0円を起点としたさくらインターネットの今後5年間の値動きは、良い場合で4,000~4,800円前後、中間で2,700~3,300円、悪い場合で1,800~2,300円といったレンジが想定される。安定配当や堅実な資産形成を目的とする銘柄ではなく、業績回復の持続性や国産クラウドというテーマがどこまで評価され続けるかを見極めながら向き合う必要がある銘柄である。中長期でも値動きの荒さを許容でき、成長期待とリスクの両方を理解した投資家向けの銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2025年12月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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