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メディカル・データ・ビジョンとは

メディカル・データ・ビジョン株式会社は、東京都千代田区に本社を置く医療データ解析・提供を主力とする企業である。医療機関、製薬企業、保険関連事業者などを主な顧客とし、診療データやレセプトデータを活用した情報サービスを提供している。日本最大級の医療データベースを保有しており、医療分野におけるデータ利活用を通じて、医療の質向上と経営効率化を支援することを目的としている。
同社の主要事業は、医療情報統合システムの開発・製作・販売・保守、各種医療データの分析・調査・コンサルティング、医療機関向け経営コンサルティング、医療データの運用および提供サービス、ポータルサイトの企画・設計・開発・運営など、多岐にわたる。これらを通じて、病院経営支援から医療ビッグデータ活用までを一貫して手がけている。
医療機関向けサービスでは、病院経営分析を支援するクラウド型アプリケーション「MDV Act」を展開している。MDV Actは、病院経営に必要な指標を一覧表示できる無料の分析ツールであり、既存製品である「EVE」や「Medical Code」への分析の入り口として位置づけられている。分析に不慣れな利用者でも、外来や地域包括ケア病棟などを含む病院全体の経営課題や改善点を容易に把握でき、資料作成までを効率的に行うことが可能である。
さらに、「MDV Act Link」は、電子カルテや医事会計システムなどから生成されるリアルタイムデータを活用し、診療データの日次活用を可能にするシステムである。これまで1200病院を超える導入実績を通じて蓄積したノウハウをもとに、経営改善や業務効率化に資する機能を提供している。加えて、ユーザーの要望に応じて同社社員がデータ抽出を行うエージェントサービスも実装されており、医療現場ごとのニーズに柔軟に対応できる点が特徴である。
「Medical Code」は、DPCデータや電子レセプトデータといった標準フォーマットデータを活用し、病院原価計算や診療単価の向上などを支援する病院経営支援システムである。ユーザー登録数に制限がなく、院内での情報共有を促進し、職員の意識改革や改善行動につなげることで、経営改善を後押ししている。
また、製薬企業や研究機関向けには、日本最大規模の診療データベースを活用した各種分析サービスを提供している。顧客の要望に応じたオーダーメイドのレポート作成や、研究論文用データセットの提供に加え、患者数、処方量、処方日数などを簡単に集計できるWEB分析ツールも展開している。疾患や薬剤だけでなく、手術や検査といった実際の診療行為を起点とした多角的な分析が可能であり、医薬品開発や市場分析に活用されている。
さらに、医療データ活用を患者側にも広げる取り組みとして、オンライン診療プラットフォーム「オンラインドクターバンク」を展開している。患者はパソコンやスマートフォンを通じて病名や症状に応じた医師を検索し、診察を受けることができ、医師は患者の既往歴や受診歴を確認した上で診療を行うことが可能である。個人向けサービスとしては、健康管理サービス「カルテコ」を提供しており、本人だけでなく家族やペットを含めた健康管理を支援している。また、法人向けには従業員のメンタルヘルス対策ソリューション「カルテコworkwell」を展開し、勤怠管理システムと連携することで、健康経営の実現を支援している。
総じてメディカル・データ・ビジョンは、医療機関向け経営支援システムと医療ビッグデータの分析・提供を中核に、製薬企業支援、オンライン診療、個人向け健康管理まで幅広く事業を展開するデータヘルス企業である。医療という参入障壁の高い分野で、データの蓄積と分析ノウハウを強みに、医療の効率化と高度化を支える役割を担っている。
メディカル・データ・ビジョン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連20.12 | 4,579 | 1,146 | 1,148 | 700 | 17.7 | 3.6 |
| 連21.12 | 5,672 | 1,594 | 1,592 | 1,087 | 27.7 | 5.6 |
| 連22.12 | 6,104 | 1,758 | 1,750 | 870 | 22.8 | 6 |
| 連23.12 | 6,419 | 1,770 | 1,700 | 979 | 25.6 | 6.5 |
| 連24.12 | 5,906 | 3 | -509 | -791 | -20.7 | 6.5 |
| 連25.12予 | 9,000 | 2,600 | 2,500 | 1,650 | 43.6 | 9 |
| 連26.12予 | 10,000 | 2,900 | 2,800 | 1,800 | 47.5 | 9〜9.5 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 910 | -868 | -979 |
| 2023年12月期 | 1,616 | -437 | -225 |
| 2024年12月期 | -877 | -592 | -399 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年12月期 | 27.5% | 23.0% | 15.7% | ||
| 2024年12月期 | 0.0% | -25.6% | -16.7% | 高値平均 50.7 / 安値平均 29.7 | 6.11 |
| 2025年12月期 | 7.1% | 8.7% | 5.6% | 予想 68.95 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず売上高を見ると、23.12期は64億、24.12期は59億と一度縮小しているが、25.12期予では90億、26.12期予では100億と大きな回復と拡大が見込まれている。医療データ関連という成長余地のある分野に属している点を考えると、売上規模が一気に拡大する計画自体は魅力的に映る。ただし、直前期に売上が減少している事実から、成長の安定性という点ではまだ不透明さが残る。
利益面を見ると振れ幅の大きさが際立つ。営業利益は23.12期17億と高水準だったが、24.12期にはほぼ0億まで落ち込み、事実上利益が消失している。その後、25.12期予で26億、26.12期予で29億と急回復する想定だが、短期間でこれほど大きく変動している点は無視できない。経常利益も23.12期17億から24.12期に-5億へ急落し、純利益も9億の黒字から-7億の赤字へ転落している。25.12期以降は再び黒字に戻る計画だが、利益の再現性や安定性という面では強い不安が残る。
収益性を見ると、営業利益率は2023年27.5%と非常に高かったが、2024年は0.0%まで低下し、2025年も7.1%と完全な回復には至らない見込みである。高収益モデルを安定して維持できているとは言い難く、外部環境や事業構成の影響を強く受けやすい体質であることが数字から読み取れる。
資本効率も同様に不安定である。ROEは2023年23.0%と優秀だったが、2024年には-25.6%まで急落し、株主資本が大きく毀損している。2025年は8.7%まで回復する予想だが、過去の高水準には届かない。ROAも2023年15.7%から2024年-16.7%へ急低下し、2025年は5.6%と控えめな水準にとどまる。事業効率は回復する見込みではあるものの、以前の強さを取り戻したとは言えない。
バリュエーションを見ると、2024年の実績PERは高値平均50.7倍、安値平均29.7倍と非常に高く、PBRも6.1倍と強気な評価が付いている。業績が悪化した局面でも高いPBRが維持されていることから、市場は将来回復を前提に株価を評価していることが分かる。さらに2025年の予想PERは68.9倍と一段と高く、回復シナリオが崩れた場合の下振れリスクは大きい。
これらを総合すると、メディカル・データ・ビジョンは2023年には高収益・高効率の優良企業だったものの、2024年に業績が大きく崩れ、現在は回復途上にある銘柄といえる。売上と利益の回復が計画どおり進めば評価余地はあるが、利益の変動が激しく、PERやPBRも非常に高いため、少しの業績ブレでも株価が大きく調整する可能性がある。
この数値だけで判断するなら、メディカル・データ・ビジョンは安定成長株や安心して保有できる銘柄ではなく、回復が本物かどうかを見極める必要があるハイリスク型の回復期待銘柄である。投資判断としては慎重寄りで、積極的に買いに行く局面というよりは、業績の安定確認を待つ段階にあると考えられる。
配当目的とかどうなの?
メディカル・データ・ビジョンの予想配当利回りは25.12期、26.12期ともに1.94%と、全体相場や高配当銘柄と比べると低い水準にある。インカム目的で一般的に期待される3〜4%台には届いておらず、配当そのものの魅力は限定的といえる。
配当の裏付けとなる業績を見ると、23.12期は純利益9億の黒字だったが、24.12期には-7億の赤字に転落している。25.12期以降は純利益16億、26.12期18億と黒字回復を見込んでいるものの、直近で赤字を経験しており、利益の安定性はまだ十分とは言えない。営業キャッシュフローも2024年にマイナスとなっており、配当原資の面でも一時的に不安定だったことが分かる。
また、PERやPBRを見ると、回復期待を強く織り込んだ高い評価が付いており、株価水準は配当利回りを重視する投資家にとって有利な位置とは言いにくい。利回りが2%未満である以上、株価の下支えとして配当が大きく機能する構造でもない。
以上を総合すると、メディカル・データ・ビジョンは配当を主目的に保有する銘柄ではない。予想配当利回り1.94%は、成長株としては一定の還元姿勢を示しているものの、インカム狙いとしては明確に物足りない水準である。配当はあくまで補助的な位置づけであり、投資の主軸は業績回復と成長シナリオに置くべき銘柄といえる。結論として、配当目的だけでメディカル・データ・ビジョンを選ぶ合理性は低く、配当を重視する投資には不向きである。一方で、成長や回復を狙う投資の中で、わずかな配当を受け取るという位置づけであれば許容範囲、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の株価462.0円を起点に今後5年間を見据えると、メディカル・データ・ビジョンは医療データという将来性のある分野に属しながらも、直近で業績が大きく崩れた経緯を持つため、株価は回復期待と不信感が交錯しやすい局面にある銘柄といえる。テーマ性はあるが、業績の安定性が株価評価の最大の焦点となる。
良い場合のシナリオでは、25.12期以降の売上・利益回復が計画どおり進み、売上は100億規模へ拡大、営業利益も20億円台後半で安定するケースを想定する。営業利益率は7%前後、ROEも10%弱まで回復し、赤字期を脱したことが市場に明確に認識される。この場合、過度な期待が剥落しつつも、回復企業としての評価が定着し、PERは30倍前後に落ち着きやすい。利益水準の回復と評価の正常化が進めば、株価は段階的に見直され、5年後には800円〜1,000円程度まで上昇する展開が考えられる。
中間のシナリオでは、業績は黒字回復するものの、利益の伸びは限定的で、収益性も過去水準には戻らないケースを想定する。売上拡大は進むが、コスト増や競争激化により営業利益率は一桁台前半にとどまる。この場合、市場の評価は慎重となり、PERは20倍前後に収れんしやすい。株価は現在値を大きく上回ることも下回ることもなく推移し、5年後の水準としては550円〜650円程度が現実的なレンジとなる。
悪い場合のシナリオでは、回復計画が想定どおり進まず、利益が再び不安定化するケースを想定する。売上は伸びても利益が伴わず、営業利益率は低迷し、ROEも一桁台にとどまる。市場の期待が剥落すれば、PERは15倍以下まで低下しやすく、株価は業績不安を強く反映する。この場合、株価は一時的に350円前後まで下落し、その後も回復に時間がかかり、5年後でも350円〜450円程度にとどまる可能性がある。
総合すると、現在値462.0円を起点としたメディカル・データ・ビジョンの今後5年間の値動きは、良い場合で800円〜1,000円前後、中間で550円〜650円、悪い場合で350円〜450円といったレンジが想定される。成長テーマはあるものの、安定性に欠けるため、値動きは大きくなりやすい。投資する場合は、回復が本物かどうかを継続的に確認しながら臨む必要がある銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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