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多木化学(4025)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

多木化学とは

多木化学は、1885年創業という非常に長い歴史を持つ化学メーカーであり、日本で初めて人造肥料を開発した先駆的な企業として知られている。本社は兵庫県加古川市にあり、肥料を祖業としながら、現在では化学品事業や不動産事業も併せ持つ複合型の事業構造を築いている。肥料・水処理薬剤の大手メーカーで、日本肥料アンモニア協会にも参加しており、農業分野と社会インフラ分野の両方で重要な役割を担ってきた企業である。

肥料分野では、「しき島」「タキポリン」「マグホス」などの複合肥料ブランドを展開しており、全国の特約販売店網を通じて安定した販売基盤を持っている。農業用途に加え、園芸用や土壌改良材など関連分野にも幅広く製品を展開しており、日産化学や三菱ケミカルと並ぶ国内有数の肥料メーカーの一角を占めている。国内農業市場は成熟しているものの、長年にわたる実績と信頼から、一定の需要と市場地位を維持している。

化学品分野では、水処理薬剤を中心とした無機化学品を得意としている。特にポリ塩化アルミニウム(PAC)は主力製品であり、国内シェアは約40%と最大手クラスで、世界的にもトップレベルの競争力を持つとされている。上下水道や産業排水処理といった社会インフラに直結する用途が中心であるため、景気変動の影響を受けにくく、安定した需要が見込める事業となっている。

また、多木化学は兵庫県加古川市別府地区を中心に広大な土地を保有しており、商業施設や建物の賃貸を行う不動産事業も展開している。この不動産事業はストック型収益として全社の業績安定に大きく寄与しており、肥料・化学品と並ぶ重要な収益源となっている。製造業でありながら、不動産による安定収入を持つ点は同社の大きな特徴といえる。

近年は新規分野として、バカマツタケの人工栽培・事業化にも取り組んでいる。農業やバイオ分野で培ってきた技術や知見を活かし、高付加価値分野への展開を目指す取り組みであり、将来的な成長の芽として位置づけられている。現時点では研究開発・事業化の段階だが、既存事業とは異なる収益源として注目されている。

歴史的には、1944年に住友化学工業とともに住友精化の設立に関与した経緯があり、本社工場と同住所に住友精化が立地している。また、過去には能登半島で人造肥料の原料となるリン鉱石の採掘を行っていた時期もあり、資源から化学へと展開してきた企業でもある。二本の鍬の柄を重ねた神代鍬のマークは同社の登録商標で、農村部では今も看板などで見かけることがある。

拠点としては、本社・本社工場を中心に、千葉工場、九州工場、研究所、東京・仙台・名古屋・大阪など全国に営業拠点を構えている。関連会社には、肥料製造・販売、物流、建材、商事などを担う企業があり、グループとして農業、化学、物流、不動産までを幅広くカバーする体制を整えている。

全体として多木化学は、1885年創業の肥料メーカーとしての伝統を基盤に、水処理薬剤という社会インフラ分野での高い競争力、不動産による安定収益、さらにバカマツタケ事業といった新規分野への挑戦を組み合わせた、堅実で独自色の強い企業である。急成長を狙うタイプではないが、長期的な安定性とニッチ分野での強みを重視する企業として位置づけられる。

多木化学 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) EPS(一株益・円) 配当金(一株・円)
22.12期 35,846 2,751 3,144 2,056 237.5 50(記)
23.12期 34,852 912 1,337 1,356 156.9 50(記)
24.12期 38,916 2,668 3,161 2,299 271.4 55(記)
25.12期予 41,600 3,150 3,800 3,200 383.4 75(特)
26.12期予 43,000 3,300 3,950 3,350 401.3 75〜80

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2022年12月期 1,444 -1,083 -543
2023年12月期 1,620 -1,640 -1,169
2024年12月期 4,343 -1,613 -352

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER PBR
2023年12月期 2.6% 4.0% 2.6%
2024年12月期 6.8% 6.0% 3.9% 14.6~21.8倍 0.78倍
2025年12月期(予) 7.5% 8.4% 5.4% 11.36倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績の推移を見ると、23.12期は売上高348億円、営業利益9億円、経常利益13億円、純利益13億円という水準だった。営業利益は1桁億円にとどまり、利益率も低く、この時点では収益力がかなり弱い状態にあったことが分かる。24.12期になると状況は大きく改善する。売上高は389億円に増加し、営業利益は26億円、経常利益31億円、純利益22億円まで回復している。営業利益が約3倍に増えており、単なる売上増だけでなく、利益構造そのものが改善した年といえる。

25.12期予では、売上高416億円、営業利益31億円、経常利益38億円、純利益32億円と、増収増益が続く前提になっている。さらに26.12期予でも売上高430億円、営業利益33億円、純利益33億円と、伸びは緩やかだが増益基調が継続する想定であり、少なくとも数値上は回復が一過性ではなく、安定化しつつある流れが見て取れる。

次に収益性を見ると、営業利益率は2023年の2.6%から2024年に6.8%、2025年には7.5%まで上昇している。3年連続で明確に改善しており、低収益体質からの脱却が進んでいると判断できる。7%台の営業利益率は突出して高い水準ではないものの、同社の過去水準を考えると、質的な変化といえる。資本効率も同様に改善している。ROEは4.0%から6.0%、8.4%へと段階的に上昇しており、株主資本を使った稼ぐ力は着実に回復している。ROAも2.6%から3.9%、5.4%へと改善しており、資産全体を使った収益力も強まっている。いずれもまだ高水準とは言えないが、方向性としては明確に良化している。

次に評価水準を見ると、24年時点の実績PERは14.6倍から21.8倍のレンジにあり、利益回復初期としてはやや評価が割れていた。一方、PBRは0.7倍と1倍を下回っており、収益性の改善を十分に織り込んでいるとは言いにくい水準にある。25年予想PERは11.3倍まで低下しており、利益成長が前提であれば、評価はむしろ割安寄りと見ることができる。

これらを総合すると、23年は明確な低収益局面だったが、24年に大きく立て直し、25年以降も増益が続く前提となっている。営業利益率、ROE、ROAはいずれも改善基調にあり、企業体質は確実に良くなっている。一方で、PBRは1倍割れ、PERも来期予想で11倍台と、市場評価はまだ慎重で、業績改善が完全には反映されていない印象がある。

提示された数値だけで判断するなら、この銘柄は業績回復の途中段階にあり、収益性の改善に対して評価が遅れている局面にあるといえる。すでに割安さだけで買う初動の段階は過ぎつつあるが、改善が続く前提では、中期的に評価修正が起きる余地は残っている。投資判断としては、急成長を狙う銘柄ではないものの、業績回復と収益性改善を背景に、数値面では前向きに検討できる状態にあり、全体としては中立よりやや強気寄りという評価になる。

配当目的とかどうなの?

配当目的という観点で多木化学を見ると、この銘柄ははっきりと「配当重視型ではない」と言えるタイプになる。予想配当利回りは25.12期、26.12期ともに1.95%と、数字だけを見ると日本株全体の平均よりやや低めで、高配当株を探している投資家の期待には届かない水準である。

この利回りであれば、配当収入を主目的にして保有する銘柄とは言いにくい。毎年のインカムゲインを積み上げたい人にとっては、他により適した選択肢が多く存在するはずだ。一方で、配当の安全性という点では不安は小さい。業績を見ると、23年の低収益局面から24年にかけて大きく回復し、25年、26年も増益が続く前提となっている。営業利益率、ROE、ROAはいずれも改善基調にあり、会社が無理をして配当を出している状況ではないことが分かる。

配当水準自体も、減配を繰り返すような不安定さはなく、利益の範囲内で慎重に設定されている印象が強い。ただし、利益が回復している割に利回りが2%を切っていることから、会社としては配当を積極的に増やして株主還元を前面に出すよりも、内部留保や事業基盤の強化を優先している段階だと考えられる。

そのため、この銘柄に対して配当だけを目的に投資するのは効率が良いとは言えない。配当は「もらえるが多くはない」という位置づけであり、主役ではなく脇役に近い。一方で、業績回復と収益性改善が続けば、将来的に配当余力が広がり、緩やかな増配が期待できる可能性はある。

総合すると、多木化学は高配当を狙うための銘柄ではなく、業績改善や収益性の回復による株価評価の見直しを主な狙いとし、その過程で安定した配当を受け取るタイプの銘柄である。配当目的だけで選ぶには物足りないが、成長と安定のバランスを重視する投資の中で補助的に配当を受け取りたい場合には、一定の納得感がある銘柄だといえる。

今後の値動き予想!!(5年間)

多木化学は、1885年創業という長い歴史を持つ肥料メーカーを起点とし、現在では肥料、水処理薬剤といった化学品に加え、不動産賃貸事業も手掛ける複合型の化学企業である。日本で初めて人造肥料を開発した先駆的な企業であり、農業分野では「しき島」「タキポリン」「マグホス」などの複合肥料を中心に、全国の特約店網を通じて安定した販売基盤を築いている。また、化学品分野では無機系水処理薬剤を得意とし、ポリ塩化アルミニウム(PAC)では国内トップクラスのシェアを持つ。さらに、兵庫県加古川市周辺に保有する土地を活用した商業施設賃貸などの不動産事業が、業績の安定を下支えしている。近年は新規分野としてバカマツタケの事業化にも取り組んでいる。現在値3,845円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、肥料事業が安定的に推移する中で、水処理薬剤の需要が堅調に拡大し、利益率の改善が定着する状況を想定する。不動産事業は引き続き安定収益を生み、全体として営業利益率は7%台を維持する。ROEやROAも改善基調が続き、市場からは堅実な回復企業として評価される。PBRは現在の1倍割れ水準から是正され、PERも12~15倍程度で落ち着く。この場合、現在価格3,845円から株価は徐々に切り上がり、5年後には5,500円から6,500円程度まで上昇する展開が考えられる。急成長ではないが、業績改善と評価修正が同時に進む強気シナリオである。

中間のシナリオでは、肥料・水処理薬剤ともに大きな環境変化はなく、売上高と利益は緩やかな増加にとどまるケースを想定する。営業利益率は6~7%台で安定し、ROEは6~8%程度に収まる。配当は維持されるものの、利回りは高くないため、配当目的の資金流入は限定的となる。この場合、市場評価は大きく変わらず、株価は現在価格3,845円を中心に推移しながら、5年後の水準は4,200円から4,600円程度に収まる可能性が高い。業績回復を確認しつつ、じっくり保有する現実的なシナリオといえる。

悪い場合のシナリオでは、原材料価格の上昇や肥料需要の低迷により、利益率の改善が止まるケースを想定する。営業利益率は5%台にとどまり、ROEやROAの改善も鈍化する。新規事業であるバカマツタケも収益化が遅れ、市場の評価は慎重になる。この場合、PBRは再び低位にとどまり、株価は調整局面に入り、現在価格3,845円から下落して、5年後には2,800円から3,200円程度まで下げる展開も考えられる。

総合すると、現在価格3,845円を起点とした多木化学の5年間の値動きは、良い場合で5,500円から6,500円前後、中間で4,200円から4,600円、悪い場合で2,800円から3,200円といったレンジが想定される。急激な成長や大きな値上がりを狙う銘柄ではないが、肥料と水処理薬剤という安定需要分野に、不動産収益を組み合わせた事業構造を持ち、業績改善が進めば評価修正の余地もある。値動きの安定性と中期的な改善を重視する投資家向けの銘柄だといえる。

この記事の最終更新日:2025年12月17日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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