株価
セントラル硝子とは

セントラル硝子株式会社は、東京都千代田区に本社を置くガラス製品および化学品メーカーで、設立の経緯から証券市場では化学セクターに分類されている。国内のガラスメーカーでは3位の位置づけにあり、フランスの大手ガラス・建材メーカーであるサンゴバンと提携関係を持つ。
同社は1936年10月10日、資本金750万円で宇部曹達工業として設立された。創業の背景には、当時東見初炭鉱社長で後に宇部興産取締役・宇部市長を務めた国吉信義が、宇部興産取締役であった中安閑一からソーダ工業の会社設立を勧められたことがある。当時の宇部興産は硫安やセメントの需要急増に対応するため多忙で、ソーダ工業まで手掛ける余力がなかったことから、国吉に白羽の矢が立った。
1949年には株式を東京・大阪両証券取引所に上場。1958年には宇部曹達工業の出資により旧セントラル硝子が設立され、翌年から大阪府堺市で透明板ガラスの生産を開始した。1963年には宇部曹達工業が旧セントラル硝子を吸収合併し、社名をセントラル硝子株式会社に変更している。2003年にはセントラル化学を吸収合併し、化学分野を中心に事業基盤を拡大してきた。
事業はガラス事業と化成品事業の二本柱だが、収益面では化成品事業への依存度が高い構造となっている。ガラス事業では建築用ガラスや自動車用ガラスを展開してきたものの、自動車向けについては海外事業が赤字となったことから撤退を進め、現在は国内市場に専念する方針を取っている。ガラス分野では断熱性や安全性など機能性を重視した製品を手がけている。
一方、化成品事業ではフッ素化学を中心とした高付加価値製品を展開しており、半導体製造工程向けの高純度薬品や、電池材料など先端分野向け製品が収益の柱となっている。これらの化成品分野が、同社の利益を支える中核事業となっている。
生産拠点としては、山口県宇部市の宇部工場、三重県松阪市の松阪工場および堺製造所、大阪府堺市、神奈川県川崎市の川崎製造所などを有している。また、宇部工場の軟式野球部は全国でもトップクラスの強豪として知られている。なお、2018年には同社製の強化ガラスおよび耐熱強化ガラスの一部で、ヒートソーク処理を実施しないまま出荷していたことが判明したが、同社は当該製品が破損した場合に代替ガラスを提供するなどの対応を行っている。
セントラル硝子 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 190,673 | 4,064 | 4,749 | 1,230 | 30.4 | 75 |
| 連22.3 | 206,184 | 7,262 | 11,936 | -39,844 | -984.6 | 75 |
| 連23.3 | 169,309 | 16,757 | 19,637 | 42,494 | 1,222 | 115 |
| 連24.3 | 160,339 | 14,526 | 16,269 | 12,478 | 503.6 | 159 |
| 連25.3 | 144,233 | 10,629 | 12,164 | 5,678 | 229.1 | 170 |
| 連26.3予 | 142,400 | 7,000 | 7,800 | 5,500 | 221.8 | 170 |
| 連27.3予 | 155,000 | 10,000 | 10,500 | 7,200 | 290.4 | 170 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 16,599 | 19,958 | -47,039 |
| 連24.3 | 22,236 | -3,338 | -15,971 |
| 連25.3 | 23,587 | -4,244 | -17,567 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 9.8 | 41.0 | 19.2 | ― | ― |
| 2024 | 9.0 | 10.8 | 5.8 | ― | ― |
| 2025 | 7.3 | 4.8 | 2.7 | 高値平均 11.8 安値平均 8.5 |
0.72 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず売上高の推移を見ると、2024年3月期が約1603億円、2025年3月期が約1442億円、2026年3月期予想が約1424億円となっており、3期連続で減少している。事業規模そのものは大きいものの、トップラインは明確に縮小局面に入っていることが分かる。
利益面では、営業利益が2024年3月期で約145億円、2025年3月期で約106億円、2026年3月期予想で約70億円と大きく落ち込んでいる。経常利益も2024年3月期が約162億円、2025年3月期が約121億円、2026年3月期予想が約78億円と同様の傾向で、純利益も2024年3月期の約124億円から2025年3月期は約56億円、2026年3月期予想は約55億円まで低下している。利益水準はこの2年でほぼ半減しており、会社側も当面は回復より調整が続く前提で計画を立てているように見える。
収益性を示す営業利益率は、2023年が9.8%、2024年が9.0%、2025年が7.3%と年々低下している。かつては二桁に近い水準だったが、直近では7%台まで落ちており、化成品に利益を依存する構造の中でも稼ぐ力は弱まっている。
資本効率を見ると、ROEは2023年の41.0%から2024年に10.8%、2025年には4.8%まで低下している。ROAも2023年の19.2%から2024年に5.8%、2025年には2.7%と大きく下がっている。2023年の数値は一時的な特殊要因によるものと考えるのが自然で、直近の水準を見る限りでは、資本を使って十分なリターンを生み出せている状態とは言い難い。
一方で市場評価を見ると、2025年時点の実績PERは高値平均で11.8倍、安値平均で8.5倍、PBRは0.7倍となっている。利益成長が鈍化し、資本効率も低下している企業としては、かなり低い評価が付けられている水準であり、株価はすでに悪材料を相当程度織り込んでいると考えられる。以上を総合すると、売上、利益、利益率、ROE、ROAのすべてが悪化方向にあり、成長株として積極的に買う局面ではない。一方で、PBRが1倍を大きく下回り、PERも一桁後半から10倍前後という水準にあるため、割高感はなく、むしろ資産価値重視で見れば割安な部類に入る。
結論としては、現時点では強気に買いに行く局面ではなく、業績の底打ちや収益性の改善が確認できるまでは様子見が妥当と考える。ただし、業績悪化が一巡し、利益水準が安定する兆しが見えれば、割安株として再評価される余地は残っているため、長期目線での監視対象としては意味のある銘柄だと判断する。
配当目的とかどうなの?
まず配当水準を見ると、連26.3、連27.3ともに予想配当利回りは5.0%とされており、日本株全体で見ればかなり高めの水準に入る。銀行預金や債券と比較すれば明確に魅力的で、インカム目的の投資家が目を向ける利回りであることは間違いない。
一方で、その裏付けとなる利益水準を見ると少し注意が必要になる。純利益は2024年3月期で約124億円あったものの、2025年3月期には約56億円まで減少し、2026年3月期予想でも約55億円と横ばいが想定されている。利益が伸びていない中で、配当は170円程度を維持する前提になっており、利益成長によって配当を増やしている形ではない。
EPSは2024年が約503円、2025年が約229円、2026年予想が約221円と大きく低下している。これに対して配当は159円から170円へとむしろ増加しており、配当性向はかなり高まっていると考えられる。今後さらに利益が落ち込む局面があれば、配当維持は簡単ではなくなる。
ただし、キャッシュフローを見ると営業キャッシュフローは安定して黒字で、直近では200億円超の水準を維持している。財務キャッシュフローは大きなマイナスが続いており、配当や借入返済を積極的に行ってきたことがうかがえる。少なくとも短期的には、資金繰りの面で配当がすぐに危うくなる状況ではない。
バリュエーションの面では、PBRが0.7倍台と低く、株価自体が抑え込まれているため、結果として配当利回りが5%という高水準になっている側面もある。これは「配当が強いから高利回り」ではなく、「業績不安で株価が低いから高利回り」でもある点は意識しておく必要がある。
総合すると、セントラル硝子は配当目的として一定の魅力はあるが、安心して長期保有する高配当株とは言い切れない。短期的には5%前後の利回りを享受できる可能性が高い一方で、利益の回復が伴わなければ、将来的に減配リスクが浮上する余地もある。結論としては、成長を期待せず、配当をもらいながら様子を見るタイプの投資には向いているが、配当の安定性を最重視する投資家にとってはややリスクを伴う銘柄と言える。高配当という数字だけで飛びつくより、業績が下げ止まるかどうかを見極めながら付き合う銘柄、という位置づけが妥当だと思う。
今後の値動き予想!!(5年間)
セントラル硝子は、ガラス事業と化成品事業を展開する化学メーカーで、近年は化成品事業への利益依存度が高い構造となっている。国内ガラスメーカーでは3位の位置づけにあり、フランスのサンゴバンと提携関係を持つ。自動車向けガラスでは海外事業から撤退し、現在は国内に専念するなど事業の選別を進めている。一方で、化成品分野ではフッ素化学を中心とした製品を手掛けており、半導体や電池関連向けなど先端分野への供給が収益の柱となっている。
直近の業績を見ると、売上高は1400億円台まで縮小し、営業利益は2024年3月期の約145億円から2025年3月期は約106億円、2026年3月期予想では約70億円まで減少する見通しとなっている。営業利益率も2023年の9.8%から2025年には7.3%まで低下しており、収益性は明確に悪化している。ROEやROAも直近では低水準にとどまり、成長力や資本効率の面では評価しにくい状況にある。一方で、PBRは0.7倍台、PERも8〜11倍程度と市場評価はすでに低位に抑えられている。現在の株価は3,400円前後で、配当利回りは5%程度と高水準にある。この価格帯を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、化成品事業が底堅く推移し、半導体や電池関連向けの需要回復が進むことで利益率が持ち直す展開を想定する。営業利益は再び100億円規模まで回復し、営業利益率も8%前後まで改善する。ROEも一桁後半まで戻り、業績悪化懸念が後退することで市場評価が見直される。PBRは1倍近辺まで回復し、PERも10倍前後で安定する。この場合、割安修正と配当評価が進み、株価は緩やかに上昇し、5年後には4,800円から5,500円程度まで上昇する展開が考えられる。高配当を維持しながら業績が安定する場合の強気シナリオである。
中間のシナリオでは、化成品事業は底堅いものの大きな成長はなく、ガラス事業も低水準で横ばいが続くケースを想定する。営業利益は70〜90億円程度で推移し、営業利益率は7%前後、ROEは5%前後にとどまる。配当は維持され、高利回りの魅力は継続するが、成長期待が乏しいため市場評価は大きく変わらない。この場合、株価は現在値3,400円を中心に上下しながら推移し、5年後の水準は3,600円から4,200円程度に収まる可能性が高い。配当を受け取りながら長期保有する、現実的なシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、化成品分野の市況悪化や価格競争の激化により利益水準がさらに低下するケースを想定する。営業利益は50億円台まで落ち込み、営業利益率も6%を下回る。ROEやROAは低迷が続き、配当維持に対する不安が意識されることで市場評価は一段と慎重になる。PBRは0.6倍前後まで低下し、PERも一桁台前半にとどまる。この場合、株価は調整色を強め、現在値3,400円から下落し、5年後には2,500円から3,000円程度まで下げる展開も想定される。
総合すると、現在株価3,400円を起点としたセントラル硝子の5年間の値動きは、良い場合で4,800円から5,500円前後、中間で3,600円から4,200円、悪い場合で2,500円から3,000円といったレンジが想定される。成長株として大きな値上がりを狙う銘柄ではないが、高配当と割安水準を背景に、インカムゲインを重視しつつ業績の下げ止まりを待つ中長期投資向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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