株価
関東電化工業とは

関東電化工業株式会社は、古河グループに属する化学メーカーで、曹達化学、フッ素化学、有機溶剤を基盤としながら、半導体・液晶向けの特殊ガスや二次電池向け材料など、高付加価値分野に強みを持つ企業である。古河系企業として長い歴史を持ち、素材系メーカーの中でも電子材料分野への展開を早くから進めてきた点が特徴である。
同社は1938年創業で、無機・有機化学の基礎技術を背景に事業を拡大してきた。現在では、汎用的な基礎化学品よりも、品質要求の厳しい精密化学品や電子材料への依存度が高まっている。特に半導体・液晶向けの特殊ガス分野では、デバイスの微細化や多層化に対応できる技術力を強みとしており、先端プロセスに不可欠な材料供給を担っている。近年は中国・韓国にも生産拠点を整備し、アジアの半導体・ディスプレイ産業の成長を取り込む体制を構築している。
事業は大きく基礎化学品事業、精密化学品事業、鉄系製品事業に分かれている。基礎化学品事業では、曹達化学やフッ素化学を中心とした無機製品、有機溶剤などの有機製品を製造・販売しており、安定した事業基盤を形成している。精密化学品事業では、半導体・液晶製造工程向けの特殊ガス製品を主力としており、同社の成長分野となっている。また、二次電池向けの電解質など電池材料分野にも取り組んでおり、エネルギー関連分野への展開も進めている。鉄系製品事業では、鉄鋼関連向けの化学製品など、特定用途に特化した製品を手掛けている。
主要事業所としては、本社を東京都千代田区丸の内に置き、渋川工場、総合開発センターを群馬県渋川市に構えるほか、水島工場を岡山県倉敷市に有している。研究開発と量産拠点を組み合わせた体制により、技術開発から製品供給までを一貫して行っている。関連会社には、関電興産、上備製作所、関東電化ファインテック、関東電化産業、群馬鉄工所などがあり、製造、加工、関連サービスまで含めたグループ体制を構築している。
全体として関東電化工業は、古河グループの一員として基礎化学の安定性を持ちながら、半導体・液晶向け特殊ガスや二次電池材料といった成長分野に軸足を移しつつある化学メーカーであり、電子産業の技術進化と連動した事業展開を行う点に特徴がある。
関東電化工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 51,927 | 5,668 | 5,582 | 3,605 | 62.7 | 14 |
| 連22.3 | 62,286 | 11,164 | 11,145 | 7,762 | 135.1 | 22 |
| 連23.3 | 78,675 | 12,947 | 13,679 | 9,382 | 163.3 | 33 |
| 連24.3 | 64,768 | -1,968 | -1,304 | -4,610 | -80.3 | 14 |
| 連25.3 | 62,351 | 4,272 | 4,507 | 3,248 | 56.5 | 17 |
| 連26.3予 | 64,500 | 3,300 | 3,500 | 1,700 | 29.6 | 18 |
| 連27.3予 | 70,000 | 7,000 | 7,000 | 5,200 | 90.7 | 18〜26 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 7,291 | -16,627 | 4,424 |
| 2024年3月期 | 11,208 | -10,554 | 1,780 |
| 2025年3月期 | 13,085 | -14,081 | -4,722 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 16.4 | 13.9 | 7.1 | – | – |
| 2024年3月期 | -3.1 | -7.3 | -3.7 | – | – |
| 2025年3月期 | 6.8 | 4.9 | 2.6 | 9.1〜13.3 | 0.88 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、関東電化工業は一度大きく崩れた後の回復途上にある企業であることが数字からはっきり分かる。2024年3月期は売上高647億に対し、営業利益はマイナス19億、経常利益はマイナス13億、純利益はマイナス46億と赤字決算に陥っている。営業利益率はマイナス3.1%、ROEはマイナス7.3%、ROAはマイナス3.7%で、収益性・資本効率ともに大きく悪化していた年だった。
一方、2025年3月期は売上高623億とやや減少したものの、営業利益42億、経常利益45億、純利益32億と黒字に回復している。営業利益率は6.8%まで戻り、ROEも4.9%、ROAも2.6%とプラスに転じている。ただし、2023年3月期の営業利益率16.4%、ROE13.9%、ROA7.1%と比べると、回復はまだ途上であり、完全に元の収益力を取り戻したとは言い切れない水準である。
2026年3月期の会社予想を見ると、売上高645億、営業利益33億、経常利益35億、純利益17億と、利益水準は2025年からむしろ減少する想定になっている。EPSも2025年の56円から29円程度へ低下する見込みで、回復基調が直線的に続く前提ではないことが読み取れる。
バリュエーション面では、2025年実績PERは安値平均9.1倍、高値平均13.3倍と低水準にあり、PBRも0.8倍と1倍を下回っている。これは、業績回復がまだ不安定であることを市場が強く意識している評価水準だと言える。収益性指標もROEが5%未満にとどまっており、PBRが1倍を割れていること自体は理論的にも違和感はない。
これらを総合すると、関東電化工業は「最悪期は脱したが、完全回復にはまだ距離がある企業」という位置づけになる。2024年の赤字という実績が評価の重しとなっており、2025年の黒字回復だけでは市場の信頼を完全には取り戻せていない。一方で、PER9〜13倍、PBR0.8倍という水準は、業績がさらに安定すれば見直される余地も残している。
投資判断としては、現時点では積極的に強気になれる段階ではなく、回復確認型の銘柄と考えるのが妥当である。業績が再び悪化すれば下値余地もあるが、黒字定着と利益率の改善が続けば、評価修正による株価上昇の余地もある。上記数値だけで判断するなら、関東電化工業は「割安に見えるが、回復途上ゆえ慎重に見るべき中立寄りの銘柄」という結論になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点だけで見ると、関東電化工業は正直かなり微妙な位置づけになる。まず利回りだが、連26.3、連27.3ともに予想配当利回りは1.76%と、株式投資としては低い水準にある。高配当銘柄と呼べる水準ではなく、インカム目的で選ぶ理由は弱い。銀行預金や債券と比べても、株価変動リスクを取ってまで優先したい利回りとは言い難い。
業績とのバランスを見ると、2024年3月期は大幅赤字だったにもかかわらず配当は維持されており、2025年3月期も黒字回復後に増配ではなく17円程度にとどまっている。これは、配当よりも事業の立て直しや内部留保を優先している姿勢を示している。2026年、2027年も配当は18円前後が見込まれているが、利益水準に対して配当性向は高くなく、積極的な株主還元を期待する局面ではない。
キャッシュフロー面を踏まえても、投資キャッシュフローが大きくマイナスで推移しており、設備投資負担が重い。その中で配当を大きく増やす余力は限られていると考えるのが自然だ。今後、半導体・電池向け材料の需要が回復し、利益が安定して積み上がるようになれば増配余地は出てくるが、それはまだ先の話になる。
結論として、関東電化工業は配当目的には向かない銘柄である。インカムゲインを狙うなら他により利回りの高い選択肢があり、この銘柄を選ぶ理由は乏しい。あくまで業績回復や事業の立て直しによる株価の戻りを狙うタイプの銘柄であり、配当はおまけ程度と割り切って考えるのが現実的だと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
関東電化工業は、古河グループに属する化学メーカーで、基礎化学品を土台にしながら、半導体・液晶向けの特殊ガスや二次電池向け材料など、先端分野向けの精密化学品を主力とする企業である。曹達化学やフッ素化学、有機溶剤といった従来型の化学製品に加え、半導体の微細化・多層化に対応した特殊ガス分野に強みを持ち、中国や韓国にも生産拠点を整備するなど、アジアの電子産業需要を取り込む体制を構築している。一方で、事業構成は市況変動の影響を受けやすく、業績の振れ幅が大きい点が特徴でもある。現在の株価1,020円前後を起点に、今後5年間の値動きをシナリオ別に考える。
良い場合のシナリオでは、半導体・電池関連向けの需要が回復し、特殊ガス事業が再び高収益化する展開を想定する。営業利益率は8〜10%程度まで改善し、ROEも7%前後まで回復することで、業績の安定感が市場に評価される。赤字転落の懸念が後退すれば、PERは12〜15倍、PBRも1倍前後まで見直される可能性がある。この場合、株価は緩やかに水準を切り上げ、5年後には900円から1,200円程度まで回復する展開が考えられる。業績正常化を前提としたやや強気のシナリオである。
中間のシナリオでは、業績は黒字を維持するものの、利益率の改善は限定的で、回復が緩やかに進むケースを想定する。営業利益率は5〜8%程度、ROEは4〜6%前後にとどまり、市場評価も大きくは変わらない。この場合、PERは9〜12倍、PBRは0.8〜1.0倍程度で推移し、株価は現在水準を下回る場面も交えながら推移する。5年後の株価水準は500円から800円程度に収まる可能性が高く、値上がり益は限定的だが、回復期待を織り込んだ現実的なシナリオといえる。
悪い場合のシナリオでは、半導体市況の回復が遅れ、価格競争やコスト増の影響で利益率が再び低迷するケースを想定する。営業利益率は5%を下回り、ROEやROAも低水準にとどまることで、市場の評価は一段と慎重になる。PERは一桁台、PBRも0.6〜0.7倍程度まで低下する可能性があり、この場合、株価は現在値1,020円から下落し、5年後には300円から600円程度まで調整する展開も想定される。
総合すると、現在株価1,020円を起点とした関東電化工業の5年間の値動きは、良い場合で900円から1,200円前後、中間で500円から800円、悪い場合で300円から600円といったレンジが想定される。高成長株として大きな値上がりを狙う銘柄ではなく、業績回復の確度を見極めながら評価修正を待つタイプの銘柄であり、インカムゲインよりも回復局面での株価戻りを狙う中長期投資向けの位置づけといえる。
この記事の最終更新日:2025年12月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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