株価
大日精化工業とは

大日精化工業株式会社は、顔料を起点に事業を拡大してきた化学メーカーであり、現在ではインキ、樹脂、機能性高分子材料まで幅広く手がけるBtoB型の素材企業である。本社は東京都中央区日本橋馬喰町に置き、1931年に顔料の国産化を目指して高橋義博により創業された。
創業以来、顔料技術を基盤に事業領域を拡大し、現在では無機・有機顔料および化工顔料、プラスチック用・繊維用着色剤、印刷インキやコーティング剤、合成皮革材料などのウレタン樹脂、天然物由来高分子、機能性付与材料、CCMシステムなどの製造・販売を行っている。特に合成樹脂向け着色剤では国内首位クラスの地位を持ち、安定した事業基盤を構築している。
同社の技術的な強みは、「有機無機合成・顔料処理技術」「分散加工技術」「樹脂合成技術」という3つのコア技術にある。これらを組み合わせることで、単なる着色にとどまらず、耐熱性、耐候性、意匠性、機能性を付与した高付加価値材料を開発しており、近年は高分子材料分野が成長領域となっている。
製品は幅広い分野で使用されており、輸送機器分野では自動車や輸送機器の内装・外装部材用の着色剤やコーティング剤、電気系統部材向け材料として採用されている。衣料品・服飾品分野では合成繊維用着色剤やウェアラブル製品向け樹脂、プリント材料を供給している。包装分野では紙やフィルム用印刷インキ、レトルトパウチ用インキ・接着剤、飲料容器用の着色剤などに展開している。
さらに、情報・電子分野では液晶カラーフィルタ用顔料やインクジェットプリンター用顔料、家電や情報端末の筐体向け着色剤を提供している。広告・出版分野では雑誌や広告、カレンダー、美術書向けの印刷インキを手がけ、化粧品・トイレタリー分野ではファンデーションやスキンケア用品向け材料、プラスチック容器用着色剤を供給している。建材・設備、産業資材分野でも建築塗料用顔料や化粧合板、床材、テント、建設資材向けの着色剤やコーティング剤を展開している。
全体として大日精化工業は、顔料という基盤技術を核に、インキ、樹脂、機能性高分子へと事業を高度化させてきた企業である。景気の影響を受けやすい分野も含む一方で、合成樹脂着色剤の高いシェアと高付加価値材料の育成により、安定性と成長性の両立を目指す中堅化学メーカーとして位置づけられる。
大日精化工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 138,491 | 4,920 | 5,613 | 6,343 | 342.0 | 45 |
| 連22.3 | 121,933 | 7,446 | 8,315 | 6,166 | 333.7 | 80 |
| 連23.3 | 122,005 | 2,635 | 3,373 | 2,007 | 108.6 | 80 |
| 連24.3 | 119,824 | 4,550 | 5,003 | 3,660 | 208.0 | 110特 |
| 連25.3 | 124,760 | 7,004 | 7,764 | 10,289 | 599.6 | 156特 |
| 連26.3予 | 126,000 | 7,500 | 8,500 | 7,100 | 415.9 | 174特 |
| 連27.3予 | 130,000 | 8,000 | 9,000 | 7,300 | 427.7 | 200特 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 3,002 | -2,195 | -3,836 |
| 連24.3 | 9,020 | -1,445 | -10,209 |
| 連25.3 | 4,165 | 1,415 | -7,000 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.1% | 1.7% | 1.0% | — | — |
| 2024 | 3.7% | 3.1% | 1.8% | — | — |
| 2025 | 5.6% | 8.0% | 5.2% | 17.0倍/11.8倍 | 0.53倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
大日精化工業について、まず業績の推移を見ると、売上高は2024年3月期で約1,198億、2025年3月期で約1,247億、2026年3月期予想で約1,260億と、緩やかながら着実な増収基調にある。大きな成長ではないものの、事業規模は安定しており、基盤の強さがうかがえる。
営業利益は2024年が約45億、2025年が約70億と大きく改善し、2026年予想では約75億と増益が続く見通しである。経常利益も2024年の約50億から2025年は約77億へと拡大し、2026年予想では約85億とさらなる増加が見込まれている。純利益については2024年が約36億、2025年が約102億と大きく跳ね上がっているが、この年は一時的な要因の影響も大きく、2026年予想では約71億と落ち着く見通しとなっている。それでも2024年以前と比べれば高い水準を維持している。
収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年が2.1%、2024年が3.7%、2025年には5.6%まで改善しており、体質が明確に良くなっている。ROEも2023年の1.7%から2025年には8.0%まで上昇しており、資本効率の改善が顕著である。ROAも1.0%から5.2%まで上昇しており、資産を使って利益を生み出す力が強まっていることが読み取れる。
株価指標については、2025年実績ベースでPERは高値平均17.0倍、安値平均11.8倍となっており、収益回復を織り込みつつも評価はまだレンジ内にとどまっている。一方、PBRは0.5倍台と1倍を大きく下回っており、資産価値に対して市場評価はかなり低い水準にある。
以上を総合すると、大日精化工業は売上規模は安定的で大きな成長はないものの、利益率と資本効率がこの2〜3年で大きく改善している局面にある。特に営業利益率、ROE、ROAが揃って上向いている点は評価でき、事業の質が一段階引き上げられていることを示している。
一方で、市場評価はPBR0.5倍台にとどまり、収益改善が十分に株価へ反映されているとは言い難い。PERも成長株としては高くなく、むしろ回復途上企業としては妥当からやや割安寄りの水準にある。提示された数値だけで判断する限り、大日精化工業は急成長株ではないが、収益体質の改善が進む中で評価が追いついていない銘柄と位置づけられる。短期的な値動きよりも、利益率改善と割安是正を期待しつつ中期で保有するスタンスに向いた銘柄であり、現時点ではやや前向き寄りの投資判断が妥当といえる。
配当目的とかどうなの?
大日精化工業を配当目的で見ると、結論から言えば「水準としては十分魅力的だが、安定配当株というより業績連動型の高配当株」という評価になる。まず利回り水準を見ると、予想配当利回りは2026年3月期で約4.32%、2027年3月期で約4.97%と、東証全体で見ても高い部類に入る。インフラ株や通信株と並べても見劣りしない水準であり、配当目的で検討する理由は十分にある。
一方で、過去の業績と配当の動きを見ると注意点もはっきりしている。大日精化工業は、23年に利益が大きく落ち込み、25年には純利益が一時的に大きく跳ねるなど、業績の振れ幅が比較的大きい。配当も特別配当を含めて厚く出す年がある一方で、常に同じペースで積み上げていくタイプではない。つまり、業績が良い局面では高配当を期待できるが、市況が悪化すれば調整される可能性がある。
現在の配当利回りの高さは、利益回復と積極的な株主還元姿勢が重なった結果と考えられる。営業利益率やROEが改善していることから、足元の配当余力は確かに高いが、インフラ型企業のように景気に左右されにくい安定配当とは性格が異なる。
そのため、配当目的としての向き不向きを整理すると、大日精化工業は「安定配当株」ではなく、「業績回復局面で利回りを取りに行く高配当株」と言える。配当水準を固定的に期待するよりも、業績や市況を確認しながら付き合う投資スタイルが向いている。
結論として、大日精化工業は配当利回りの水準そのものは非常に魅力的であり、配当目的として十分に検討対象になる。ただし、配当の安定性を最重視する投資家よりも、業績改善と高還元を同時に狙う投資家向けの銘柄であり、景気循環を理解した上で中期的に保有するという位置づけが最もしっくりくる。
今後の値動き予想!!(5年間)
大日精化工業の株価について、現在値4,020円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。前提として、大日精化工業は顔料や着色剤を基盤にインキ、樹脂、機能性高分子など事業を多角化しており、近年は営業利益率・ROE・ROAが改善基調にある。配当利回りも比較的高く、市況改善と利益効率向上が評価される局面では株価の上昇余地がある。
良い場合のシナリオでは、化学品・高分子材料の需要が世界的に堅調に推移し、特に高付加価値素材や機能性材料分野の採用が拡大する展開を想定する。営業利益率が5%台後半〜6%台に安定し、ROEも8%前後で推移する中で、利益水準が拡大する。市場評価が見直されPERが15〜17倍程度、PBRが0.8倍〜1倍近くまで改善する。この場合、配当利回りと評価倍率の引き上げが両立し、株価は5年後に5,000円から6,000円程度まで上昇する可能性がある。業績改善と評価是正が同時進行する強気シナリオである。
中間のシナリオでは、着色剤・顔料・機能性材料の需要は緩やかに推移し、売上・利益は大きな増加を見せないものの堅調な水準を保つケースを想定する。営業利益率は5%前後、ROEは6〜7%程度で安定し、PERは11〜14倍、PBRは0.6〜0.8倍程度で推移する。この場合、株価は現在値付近を中心に上下し、5年後の水準は3,500円から4,800円程度となる可能性が高い。比較的高い配当利回りが下支えとなり、大幅な下振れは避けられるが、大きな上昇余地も限定的な中庸な展開となる。
悪い場合のシナリオでは、世界的な景気後退が長期化し、化学品・機能材料の需要が弱含む展開となる。営業利益率が4%台前半に低下し、ROE・ROAも低迷、評価倍率が市場全体の慎重姿勢によってPER7〜9倍、PBR0.4倍〜0.6倍まで縮小する。この場合、株価は調整色を強め、5年後には2,500円から3,200円程度まで下落する可能性がある。配当利回りは相対的に高く見えるが、株価下落リスクが配当を上回る局面となる。
総合すると、現在株価4,020円を起点とした大日精化工業の5年間の値動きは、良い場合で5,000円から6,000円前後、中間で3,500円から4,800円、悪い場合で2,500円から3,200円といったレンジが想定される。高配当利回りという魅力はあるものの、評価倍率の変動と業績の市況依存性が株価の方向性を大きく左右する銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月19日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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