株価
三菱ガス化学とは

三菱ガス化学株式会社は、基礎化学品および機能化学品を幅広く手がける日本の総合化学メーカーであり、三菱グループの中核企業の一つである。本社を東京都千代田区に置き、三菱金曜会および三菱広報委員会の会員企業として、グループ内で重要な位置を占めている。
同社は日本海側に天然ガスの自社鉱区を保有し、これを原料としたメタノール、アンモニア誘導品、キシレン誘導品などの基礎化学品を生産しているほか、サウジアラビアやベネズエラなど海外において、メタノールを合弁方式で生産するなど、グローバルな資源・生産体制を構築している。基礎化学分野では安定した原料調達力と規模を強みとしている。
一方で、機能化学品分野にも強みを持ち、過酸化水素、エンジニアリングプラスチック、電子材料など高付加価値製品を多数展開している。エンジニアリングプラスチックでは、5大汎用エンプラのうち4種類を自社技術で製造しており、特にDVDやCD向け材料であるポリカーボネートでは世界トップシェアを誇る。加えて、自動車部品向けのポリアセタールや、家電・OA機器向けのポリフェニレンエーテルなど、産業用途で高い競争力を持つ製品群を有している。
また、食品の鮮度保持に用いられる脱酸素剤「エージレス」を世界に先駆けて商品化した企業としても知られており、特殊機能材分野ではプリント基板用材料や半導体・スマートフォン向け材料など、エレクトロニクス分野への展開を進めている。これらの分野では安定成長と高い技術力を背景に、長期的な需要が見込まれている。
事業拠点としては、本社のほか、東京開発センター、複数の研究所、新潟工場などを有し、研究開発から生産まで一貫した体制を構築している。グループ全体では100社を超える子会社・関連会社を抱え、国内外に広がる事業ネットワークを形成している。
総合すると、三菱ガス化学は、天然ガスを起点とする基礎化学品の安定収益と、エンジニアリングプラスチックや電子材料、特殊機能材といった高付加価値分野を両輪とする事業構造を持つ化学メーカーである。資源・基礎化学から先端材料までをカバーする事業の幅広さと、海外展開を含む安定した基盤を背景に、景気変動への耐性と中長期的な成長余地を併せ持つ企業として位置づけられる。
三菱ガス化学 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 595,718 | 44,510 | 50,240 | 36,070 | 173.4 | 70 |
| 連22.3 | 705,656 | 55,360 | 74,152 | 48,295 | 232.2 | 80 |
| 連23.3 | 781,211 | 49,030 | 69,764 | 49,085 | 239.1 | 80 |
| 連24.3 | 813,417 | 47,337 | 46,040 | 38,818 | 191.0 | 80 |
| 連25.3 | 773,591 | 50,851 | 60,316 | 45,544 | 228.9 | 95 |
| 連26.3予 | 730,000 | 44,000 | 50,000 | -17,000 | -87.3 | 100 |
| 連27.3予 | 790,000 | 51,000 | 55,000 | 38,500 | 197.4 | 100〜110 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 55,222 | -64,071 | 7,996 |
| 2024.3 | 73,473 | -76,172 | -40,689 |
| 2025.3 | 75,440 | -90,994 | 4,707 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 6.2 | 8.0 | 4.7 | ― | ― |
| 2024.3 | 5.8 | 5.9 | 3.6 | ― | ― |
| 2025.3 | 6.5 | 6.8 | 4.0 | 8.9〜12.7 | 0.86 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
三菱ガス化学の直近業績を見ると、売上高は2024年3月期で約8,134億、2025年3月期で約7,735億、2026年3月期予想で約7,300億と、ピークアウト後にやや縮小する見通しとなっている。売上規模は依然として大きいものの、成長局面というよりは調整・安定局面に入っている印象が強い。
営業利益は2024年が約473億、2025年が約508億と堅調に推移しているが、2026年予想では約440億へ減少する見込みとなっている。経常利益も2024年約460億、2025年約603億と一時的に伸びた後、2026年予想では約500億へ低下する見通しであり、利益水準は高いものの、拡大基調が続く状況ではない。
純利益については、2024年が約388億、2025年が約455億と安定している一方、2026年3月期予想では約▲170億と赤字見通しとなっている点が最大の注意点である。これは一過性要因が含まれる可能性が高いものの、短期的には業績のブレが意識されやすい局面といえる。
収益性指標を見ると、営業利益率は2023年6.2%、2024年5.8%、2025年6.5%と6%前後で安定しており、大型総合化学メーカーとしては比較的良好な水準を維持している。ROEは8.0%から5.9%、6.8%と低下後に持ち直しているが、資本効率が高い企業とまでは言えない。ROAも4.7%から3.6%、4.0%と中程度の水準にとどまっている。
株価指標を見ると、2025年実績PERは8.9倍から12.7倍のレンジにあり、市場は同社の成長性を強く評価しているわけではない。PBRも0.8倍台と1倍を下回っており、資産価値に対して株価は慎重に評価されている状態である。割高感はなく、むしろ成熟企業として低めの評価水準にある。
以上を総合すると、三菱ガス化学は高成長を期待する銘柄ではなく、売上・利益ともに安定を重視する段階にある企業といえる。営業利益率は比較的安定しており、基礎化学品と機能化学品を併せ持つ事業構造の強さは評価できるが、ROEやROAは中程度で、資本効率を強みとする企業ではない。
提示された数値だけで判断する限り、この銘柄は短期的な成長期待で買うタイプではなく、業績の安定性と割安な評価水準を前提に中長期で保有する銘柄と位置づけられる。一方で、2026年予想の赤字見通しが示すように、業績変動リスクは無視できず、過度に強気になる局面でもない。結論としては、積極的に攻める銘柄ではないが、割安感を意識しながら慎重に付き合う安定型の投資対象といえる。
配当目的とかどうなの?
三菱ガス化学を配当目的で見ると、結論としては「十分に配当目的に耐える銘柄」と評価できる。まず数値面では、予想配当利回りが2026年3月期、2027年3月期ともに3.53%と、配当目的として一つの目安とされる3%を明確に上回っている。化学セクターの中でも、この水準の利回りを安定的に出せる企業は多くなく、インカムゲインを重視する投資家にとっては魅力的な水準である。
業績面を見ると、売上や営業利益は大きな成長こそ期待しにくいものの、営業利益率は6%前後で安定しており、キャッシュフロー創出力も高い。2026年3月期に一時的な純損失予想が出ている点は気になるが、営業利益や経常利益は黒字を維持しており、本業が大きく崩れているわけではない。この点から、配当原資そのものが急激に細るリスクは限定的と考えられる。
株価指標面では、PERが9倍から13倍程度、PBRが0.8倍台と低めで、市場は同社を成長株としてではなく成熟・安定企業として評価している。これは裏を返せば、株価上昇によるキャピタルゲインは限定的でも、配当利回りが相対的に高く維持されやすい構造にあることを意味する。
また、三菱ガス化学は過去の配当実績を見ても、業績が多少変動しても配当水準を大きく落とさない姿勢が見られ、株主還元を一定程度重視している企業といえる。26.3期、27.3期ともに同水準の利回りが想定されている点からも、配当の安定性を意識した方針がうかがえる。
以上を踏まえると、三菱ガス化学は高配当株とまでは言えないものの、「安定配当を目的に中長期で保有する銘柄」としては十分に適している。大きな成長を期待する銘柄ではないが、比較的高めの配当利回りと割安な株価水準を背景に、インカムゲインを重視する投資家にとっては堅実な選択肢となる銘柄である。
今後の値動き予想!!(5年間)
三菱ガス化学の株価について、現在値2,828円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。三菱ガス化学は、基礎化学品と機能化学品を併せ持つ総合化学メーカーであり、成長性は高くないものの、安定した収益基盤と比較的高い配当利回りを特徴とする成熟企業である。市場では成長株というよりも、インカム重視の安定株として評価されている。
良い場合のシナリオでは、半導体・電子材料向けや機能化学品分野が堅調に推移し、資源価格の安定も追い風となる展開を想定する。一時的な損失要因が解消され、営業利益率は6%台後半で安定、ROEも7%前後まで回復する。市場評価はやや改善し、PERは12〜14倍、PBRは1倍近辺まで見直される。この場合、配当を維持しながら評価修正が進み、株価は緩やかに上昇し、5年後には3,500円から4,200円程度まで上昇する可能性がある。配当と株価の両立を期待できる強気シナリオである。
中間のシナリオでは、化学市況は横ばい圏で推移し、売上・利益ともに大きな成長も悪化もなく安定するケースを想定する。営業利益率は6%前後、ROEは6%台で推移し、配当は現在水準を維持する。市場評価はPER10〜12倍、PBR0.7〜0.9倍程度にとどまり、株価は現在値を中心に上下する。この場合、5年後の株価水準は2,700円から3,300円程度となり、配当を受け取りながら保有する堅実なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、世界景気の減速や化学市況の悪化が長期化し、基礎化学品の収益性が低下する展開を想定する。利益率は5%台前半まで低下し、ROEも5%を下回る水準にとどまる。市場評価は一段と慎重になり、PERは8〜9倍、PBRは0.6倍前後まで低下する。この場合、株価は調整色を強め、5年後には2,000円から2,400円程度まで下落する可能性がある。配当利回りは高く見えるものの、株価下落リスクが意識される局面である。
総合すると、現在株価2,828円を起点とした三菱ガス化学の5年間の値動きは、良い場合で3,500円から4,200円前後、中間で2,700円から3,300円、悪い場合で2,000円から2,400円といったレンジが想定される。高成長株ではないが、配当を軸に中長期で保有し、緩やかな評価修正を狙う投資に向いた銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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