株価
東京応化工業とは

東京応化工業株式会社は、半導体製造工程で使用されるフォトレジストを中核製品とする日本の化学材料メーカーであり、同分野では世界首位級のシェアを持つことで知られている。フォトレジストは半導体の回路形成に不可欠な感光性樹脂であり、微細化が進む先端半導体ほど材料の性能が製品品質を左右する重要な要素となる。東京応化工業はこの分野で長年にわたり研究開発を積み重ね、世界の主要半導体メーカーやファウンドリから高い評価を受けてきた。
同社の事業の中心は半導体製造分野であり、最先端ロジック半導体やメモリ半導体向けのフォトレジストをはじめ、各種プロセス材料や高純度化学薬品を提供している。半導体の微細化が進むにつれて、露光技術や材料特性への要求は年々高度化しており、東京応化工業はこうした要求に応えることで、単なる素材供給にとどまらない技術パートナーとしての地位を確立している。
また、前工程だけでなく、半導体パッケージやMEMS製造分野、3次元実装分野など後工程や次世代実装技術向けの材料開発にも力を入れている。これにより、半導体製造の幅広い工程をカバーできる事業構造を持ち、特定工程への依存度を下げると同時に、顧客との取引関係をより強固なものとしている。
液晶ディスプレイ製造分野でも、フォトレジストや関連化学薬品を提供しており、テレビやスマートフォン、各種表示デバイス向けの材料として安定した需要を取り込んでいる。ディスプレイ市場は成熟しつつあるものの、高精細化や用途の多様化に対応した材料ニーズは引き続き存在しており、同社はここでも高付加価値型の製品展開を行っている。
さらに、東京応化工業は化学薬品や製造関連装置の分野にも展開している点が特徴である。材料と装置の両方を手がけることで、顧客の製造プロセス全体を理解し、工程最適化や歩留まり改善に貢献できる体制を整えている。これは材料専業メーカーとの差別化要因となっており、長期的な取引関係の構築につながっている。
国内の事業拠点としては、本社を神奈川県川崎市に置き、相模事業所や湘南事業所をはじめ、郡山工場、宇都宮工場、熊谷工場、御殿場工場、阿蘇工場など全国各地に研究開発・生産拠点を展開している。研究開発から量産までを国内で一貫して行える体制は、品質管理や技術流出リスクの低減という面でも強みとなっている。
総合すると、東京応化工業は、半導体製造に不可欠なフォトレジストを軸に、前工程から後工程、ディスプレイ、新規分野まで幅広く事業を展開する高付加価値型の電子材料メーカーである。半導体の微細化・高性能化という長期的な産業トレンドを追い風に、景気変動の影響を受けつつも、技術力を背景とした競争優位性を維持してきた企業であり、今後も先端半導体分野を中心に存在感を発揮し続ける可能性が高い。
東京応化工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 175,434 | 30,181 | 30,966 | 19,693 | 163.2 | 53.3 |
| 連23.12 | 162,270 | 22,706 | 24,260 | 12,712 | 105.1 | 56 |
| 連24.12 | 200,966 | 33,090 | 34,554 | 22,683 | 187.3 | 63 |
| 連25.12予 | 232,000 | 43,000 | 44,000 | 28,000 | 233.6 | 70〜75 |
| 連26.12予 | 260,000 | 48,000 | 49,000 | 31,000 | 258.6 | 70〜85 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 18,991 | -12,383 | -8,610 |
| 2023.12 | 17,210 | -9,378 | -7,376 |
| 2024.12 | 30,146 | -2,733 | -15,424 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 13.9 | 6.9 | 5.0 | — | — |
| 2024 | 16.4 | 11.3 | 8.0 | 15.1〜24.7 | 3.16 |
| 2025 | 18.5 | 13.9 | 9.9 | 予想25.64 | — |
出典元:四季報オンライン
投資判断
東京応化工業の業績推移を見ると、売上高は2023年12月期が約1,622億円、2024年12月期が約2,009億円、2025年12月期予想で約2,320億円、2026年12月期予想では約2,600億円と、明確な増収トレンドにある。半導体市況の回復と先端プロセス向け材料需要の拡大を背景に、事業規模が一段と拡大していることが分かる。
利益面では、営業利益が2023年の約227億円から2024年は約330億円へ急回復し、2025年予想で約430億円、2026年予想で約480億円と、売上以上のペースで伸びている。経常利益も2023年の約242億円から2024年は約345億円、2025年予想で約440億円、2026年予想で約490億円と順調に拡大しており、本業・財務面ともに収益力が強化されている。純利益も2023年の約127億円から2024年は約226億円、2025年予想で約280億円、2026年予想で約310億円と大幅な増益基調にある。
収益性を見ると、営業利益率は2023年の13.9%から2024年は16.4%、2025年は18.5%へと急速に改善しており、半導体材料メーカーの中でも非常に高い水準に達しつつある。ROEも2023年6.9%、2024年11.3%、2025年13.9%と大きく上昇しており、利益成長がそのまま資本効率の改善につながっている。ROAも5.0%から8.0%、9.9%へと上昇しており、資産を使った稼ぐ力も明確に強まっている。
一方、株価指標を見ると、2024年実績PERは安値平均で15.1倍、高値平均で24.7倍とレンジが広く、2025年予想PERは25.6倍と高水準である。PBRも3.1倍と、すでに市場は高い成長性を織り込んでいる状態にある。収益性や成長性は申し分ないが、バリュエーション面では割安感はなく、業績成長が続くことを前提とした評価である。
以上を総合すると、東京応化工業は売上・利益ともに高成長局面にあり、営業利益率、ROE、ROAの改善も顕著で、企業の質は急速に高まっている。一方で、PER25倍前後、PBR3倍超という評価水準から見ると、すでに「優良であること」は株価にかなり反映されており、今後は業績が想定どおり伸び続けなければ株価が正当化されにくい局面に入っている。
提示された数値だけで判断するなら、東京応化工業は業績面では文句のない成長企業だが、投資判断としては「割安に買う銘柄」ではなく、「高成長が続くことを信じて保有する成長株」という位置づけになる。強気に新規で飛びつくよりも、半導体市況や業績進捗を見ながら押し目で拾う、もしくはすでに保有しているなら成長継続を前提に中期で持つ、というスタンスが妥当といえる。
配当目的とかどうなの?
東京応化工業を配当目的で見ると、結論としては「配当を主目的に持つ銘柄ではない」という評価になる。予想配当利回りは2025年12月期、2026年12月期ともに1.24%と低水準であり、インカムゲインを重視する投資家にとっては明確に物足りない水準である。配当金自体は業績拡大に合わせて増配傾向にあるものの、株価水準が高く、成長期待が強く織り込まれているため、利回りという形では魅力が出にくい。
同社は営業利益率が18%台まで上昇し、ROE・ROAも大きく改善していることから、稼いだ利益を内部留保や成長投資に回す色合いが強い企業である。実際、半導体材料という技術集約型分野では、継続的な研究開発投資や設備投資が競争力維持に直結するため、配当性向を高めて安定配当を前面に出す企業体質ではない。
そのため、東京応化工業は高圧ガス工業や三菱ガス化学のようなインフラ型・安定配当型銘柄とは性格が大きく異なる。配当は「成長の結果として付いてくるもの」であり、配当そのものを狙って保有する銘柄ではない。
以上を踏まえると、東京応化工業は「配当目的には不向き」「値上がり益と業績成長を主軸に考える成長株」という位置づけが最もしっくりくる。配当を主目的にするのであれば、別の高配当・安定配当銘柄を選び、東京応化工業はキャピタルゲイン狙い、もしくは半導体成長テーマへの投資として位置づけるのが現実的といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
東京応化工業の現在株価は5,618円である。この水準を起点として、今後5年間の株価推移を良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、先端半導体の微細化が想定以上のスピードで進み、フォトレジストを中心とした高付加価値材料の需要が拡大し続ける展開を想定する。営業利益率は20%前後まで上昇し、ROEも15%近辺で安定する。業績成長が継続することで市場の成長期待は維持され、PERは25倍前後を許容される水準で推移する。この場合、利益成長に沿って株価も切り上がり、5年後には8,000円から9,500円程度まで上昇する展開が考えられる。半導体材料分野の勝ち組として評価が定着する強気シナリオである。
中間のシナリオでは、半導体市況は循環的な波を繰り返しながらも大崩れはせず、業績は緩やかな成長にとどまるケースを想定する。営業利益率は18%前後で頭打ちとなり、ROEも13%前後で安定する。成長期待はやや落ち着き、PERは20倍前後まで調整される。この場合、株価は現在水準を中心に上下しながら推移し、5年後の水準は5,500円から6,800円程度に収まる可能性が高い。配当は低利回りながらも増配基調を維持し、値上がりと横ばいを繰り返す現実的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、半導体市況の調整が長期化し、設備投資の減速によって材料需要が伸び悩む展開を想定する。業績は減益まではいかないものの成長が止まり、営業利益率は15%前後まで低下する。成長株としての評価が後退し、PERは15倍程度まで切り下がる。この場合、株価は調整色を強め、5年後には4,000円から4,800円程度まで下落する可能性がある。配当利回りはやや改善するものの、株価下落リスクが意識される局面となる。
総合すると、現在株価5,618円を起点とした東京応化工業の5年間の値動きは、良い場合で8,000円から9,500円、中間で5,500円から6,800円、悪い場合で4,000円から4,800円といったレンジが想定される。高成長が続けば大きな上振れ余地がある一方、成長前提が崩れると評価調整も起こりやすく、値動きは半導体市況に強く左右される銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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