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旭有機材とは

旭有機材は、旭化成グループに属する合成樹脂・配管材料メーカーであり、管工機材、樹脂材料、水処理・資源開発を三本柱とした事業を展開している企業である。本社は宮崎県延岡市と東京都台東区の二本社制を採用しており、化学・素材系企業としては珍しく、製造現場に近い地方拠点と首都圏機能を併せ持つ体制を取っている。
創業の原点は管材システム事業にあり、1956年に時代に先駆けて樹脂製バルブの製造を開始したことが同社の大きな転機となった。当時は金属製バルブが主流で、薬品や海水を扱う現場では腐食やさびによる交換頻度の高さが課題であったが、旭有機材は塩化ビニルなどの樹脂材料を活用することで、軽量で耐腐食性に優れた樹脂製バルブを開発した。その後、製鉄、化学、半導体といった工場用途を中心に採用が広がり、現在では上下水道、農業用水、水族館や養殖場の循環ろ過システムなど、幅広い分野で不可欠な製品となっている。長年にわたり蓄積してきた設計・製造ノウハウと、豊富な製品ラインナップは、同社の大きな競争力となっている。
管材システム事業の特徴は、単なる製品供給にとどまらず、顧客ごとに最適な配管・バルブの組み合わせを提案するソリューション型のビジネスにある。樹脂製バルブは軽量でさびず、薬品や海水にも強く、長寿命であるという特性を持つが、旭有機材はそれらの特性を熟知した立場から、顧客の設備条件や使用環境に応じた最適解を提供している。この総合力が、半導体工場や化学プラントなど高い信頼性が求められる分野で評価されている。
樹脂事業では、フェノール樹脂を中心とした熱硬化性樹脂の重合・合成技術をコアとして、自動車、住宅・建築、液晶・半導体分野向けに樹脂製品を供給している。特に自動車分野では、ディスクブレーキなどの鋳造工程で不可欠となる鋳物用樹脂とレジン・コーテッドサンドの両方を手掛けており、国内最大メーカーとして高いシェアを持つ。これにより、自動車メーカーや部品メーカーの多様な要求に細やかに対応できる体制を構築している。また、樹脂事業は表に出にくい存在であるものの、ブレーキパッド、タイヤ素材、住宅用断熱材、半導体や液晶パネル製造に用いられるフォトレジストなど、身近な暮らしや産業の基盤を陰で支えている。
水処理・資源開発事業は、グループ会社であるドリコを中核として展開されており、70年以上にわたる掘削技術や地下探査技術、膨大なデータの蓄積を強みとしている。商業ビルや大型施設での中水再利用システム、各種工場の排水処理、公共上下水道施設などで多数の実績を持つほか、温泉井戸の掘削では国内トップクラスの実績を誇る。伊香保温泉や宮崎県のリゾート施設をはじめ、全国で400本を超える温泉井戸を手掛けてきた。また、再生可能エネルギーとして注目される地熱発電分野においても、調査井や生産井、還元井の掘削などを担い、資源開発と環境分野の両面で社会的役割を果たしている。
総じて旭有機材は、派手な消費財メーカーではないものの、半導体・化学・自動車・インフラ・水資源といった社会基盤を支える分野に深く関わる企業である。樹脂配管やバルブといったニッチだが不可欠な分野で確固たる技術力を持ち、樹脂材料と水処理・資源開発を組み合わせた事業構造により、安定性と専門性を兼ね備えた産業素材メーカーとしての位置づけを確立している。
旭有機材 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(単位百万) | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(円) | 一株当り配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 53,551 | 3,404 | 3,648 | 2,789 | 145.7 | 50 |
| 連22.3 | 64,732 | 6,575 | 7,012 | 4,773 | 249.2 | 60 |
| 連23.3 | 77,099 | 11,947 | 12,140 | 9,425 | 492.0 | 70 |
| 連24.3 | 87,426 | 15,576 | 16,076 | 11,382 | 594.3 | 100 |
| 連25.3 | 85,162 | 11,121 | 11,250 | 7,624 | 401.3 | 110 |
| 連26.3予 | 80,000 | 7,500 | 7,600 | 5,100 | 271.5 | 120 |
| 連27.3予 | 82,500 | 7,600 | 7,700 | 5,200 | 276.8 | 120 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 5,841 | -4,836 | -1,871 |
| 2024 | 9,698 | -4,649 | -546 |
| 2025 | 11,335 | -5,157 | -1,572 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 15.4 | 15.5 | 10.9 | – | – |
| 2024 | 17.8 | 16.0 | 11.2 | – | – |
| 2025 | 13.0 | 9.8 | 7.2 | 5.8~9.7 | 1.23 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見ると、連24.3では営業利益が約155億円、経常利益が約160億円、純利益が約113億円と非常に高い水準にあった。半導体関連投資や工業用配管需要が重なった局面であり、業績としては明確なピークだったと考えられる。一方、連25.3では営業利益が約111億円、経常利益が約112億円、純利益が約76億円へと大きく減少しており、利益面でははっきりとした調整局面に入っている。連26.3予では営業利益が約75億円、経常利益が約76億円、純利益が約51億円と、さらに減益が続く見通しであり、短期的に業績が回復基調へ転じるとは言いにくい。
収益性を見ると、営業利益率は2023年15.4%、2024年17.8%と非常に高水準だったが、2025年には13.0%まで低下している。それでも製造業としては高い水準を維持しているものの、ピークアウト後の低下傾向は明確である。ROEも15.5%、16.0%から9.8%へ、ROAも10.9%、11.2%から7.2%へと低下しており、資本効率の面でも調整が進んでいることが分かる。高収益体質は維持しているが、かつての勢いは一服している状況と言える。
評価面に目を向けると、2025年の実績PERは安値平均で5.8倍、高値平均でも9.7倍と低水準にある。これは減益を市場がかなり織り込んでいることを示しており、成長期待は抑えられている。一方でPBRは1.23倍と、ROEが1桁台後半まで低下している現状を考えると、割安とも割高とも言い切れない水準である。
これらを総合すると、旭有機材は過去数年にわたり高い利益率と資本効率を誇ってきた優良企業である一方、現在は明確にピークアウト後の調整局面にある。半導体関連や設備投資の影響を受けやすい事業構造であるため、外部環境の変化が利益に直結しやすい点が、今回の数値からも読み取れる。
結論としては、旭有機材は今すぐ強気で買いに行く局面ではなく、業績の底打ちや需要回復の兆しを確認したい段階にある。ただし、PERが5〜9倍台まで低下していることから減益自体は相当程度織り込まれており、企業の基礎体力や過去の高収益実績を踏まえると過度に悲観する必要もない。投資判断としては中立からやや様子見寄りで、タイミングを慎重に見極めたい銘柄と位置づけられる。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは連26.3、連27.3ともに2.36%と、東証全体の平均と同程度かやや低めの水準にある。高配当株と呼べる4%超には届かず、インカムゲインを主目的にする投資家にとっては、利回りの面で強い魅力があるとは言いにくい。
一方で、これまでの配当推移を見ると、連24.3で100円、連25.3で110円、連26.3予で120円と、減益局面にありながらも配当は引き上げられている。これは株主還元を重視する姿勢の表れであり、配当の安定性という点では評価できる。ただし、利益はピークから大きく減少しており、配当性向は上昇していると考えられるため、今後も同じペースでの増配が続くとは限らない。
営業利益率やROEが低下している点を踏まえると、将来的な配当の原資はやや細りつつある。現状の2%台前半の利回りは、業績が安定している局面であれば無理のない水準だが、減益基調が長引いた場合には、配当の伸びは抑制され、場合によっては据え置きにとどまる可能性もある。
総合すると、旭有機材は配当目的だけで積極的に選ぶ銘柄ではない。配当は安定しており、企業の基礎体力を考えれば大きく減配されるリスクは高くないものの、利回り自体は高くなく、インカム重視投資の主力に据えるタイプではない。位置づけとしては、成長や業績回復を見込みつつ、配当を補助的に受け取る中長期投資向けであり、配当目的としては中立からやや弱めの評価が妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
旭有機材は、樹脂製バルブや配管材料を中心に、半導体製造装置向け管材、フェノール樹脂・レジスト用樹脂、水処理・資源開発まで幅広く手掛ける産業インフラ型の化学メーカーである。特に樹脂製バルブ分野では長年の技術蓄積を背景に高い信頼性を持ち、化学・半導体工場や上下水道などで不可欠な存在となっている。一方で、業績は半導体投資や設備投資の影響を受けやすく、足元では高収益期を過ぎた調整局面にある。現在の株価5,080円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、半導体市況が回復基調に入り、製造装置向けの樹脂配管・バルブ需要が再び拡大する展開を想定する。加えて、水処理や資源開発分野が安定的に成長し、業績の下支えとなる。営業利益率は13%台から再び15%前後へ回復し、ROEも10%台前半まで持ち直す。この場合、市場は一時的な減益を乗り越えたと評価し、PERは現在の5〜9倍水準から10〜12倍程度まで切り上がる可能性がある。増配は緩やかにとどまるものの、収益回復と評価修正が重なり、5年後の株価は7,000円から8,500円程度まで上昇する展開が考えられる。高収益体質の復活が前提となる強気シナリオである。
中間のシナリオでは、半導体投資は回復と停滞を繰り返しながらも大崩れせず、水処理・インフラ関連が安定収益源として機能するケースを想定する。営業利益率は12〜13%前後で安定し、ROEは8〜9%台にとどまる。市場評価はPER7〜9倍、PBR1倍前後で落ち着き、配当も現行水準を維持する。この場合、株価は大きな上昇はないものの下値も限定され、5年後の株価水準は5,000円から6,000円程度と、現在値近辺での推移となる。値上がり益よりも安定性を重視する中立的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、半導体投資の低迷が長期化し、設備投資関連需要が想定以上に弱含む展開を想定する。営業利益率は10%前後まで低下し、ROEも1桁台前半にとどまる。市場の評価は慎重となり、PERは5〜6倍程度まで低下する可能性がある。配当は維持されるものの増配余地は乏しく、株価の下支え効果も限定的となる。この場合、5年後の株価は3,500円から4,200円程度まで下落する展開も考えられる。高収益企業としての評価が後退する弱気シナリオである。
総合すると、現在株価5,080円を起点とした旭有機材の5年間の値動きは、良い場合で7,000円から8,500円前後、中間で5,000円から6,000円、悪い場合で3,500円から4,200円といったレンジが想定される。高成長株ではないものの、樹脂配管というニッチ分野での競争力と安定した事業基盤を背景に、業績回復局面では評価修正が起こりやすい銘柄であり、景気循環を意識した中長期投資向けの企業と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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