株価
積水化成品工業とは

積水化成品工業株式会社は、積水化学グループに属する発泡樹脂素材・成形品の大手メーカーであり、発泡スチロール(EPS)をはじめとする発泡樹脂分野では国内最大手クラスの地位を確立している企業である。積水化学工業が筆頭株主であることから積水グループに属し、同時に、みどり会の会員企業として三和グループにも属している。グループの中でも素材分野を担う中核的な存在であり、安定した事業基盤と技術力を背景に事業を展開している。
同社の中核技術は発泡樹脂であり、軽量性、断熱性、緩衝性、加工性といった特性を活かした製品を幅広い分野に提供してきた。従来は包装材や物流資材、建材用途などが中心であったが、近年では自動車分野向けの発泡樹脂成形品が事業の柱として成長している。自動車の軽量化や安全性向上、静粛性向上といったニーズを背景に、発泡樹脂の採用領域が広がっており、同社は国内のみならず海外市場でも積極的に事業を拡大している。
事業内容は、各種発泡プラスチックスの製造・加工・販売を中心に、有機ポリマー微粒子や高分子ゲルといった高機能材料分野まで多岐にわたる。発泡プラスチックスでは、EPSをはじめとする発泡樹脂素材や、それを用いた成形品を提供しており、包装、物流、建材、土木、自動車、産業用途など幅広い分野で使用されている。単なる素材供給にとどまらず、用途ごとに最適化した成形・加工技術を強みとしており、顧客ニーズに応じた提案型のビジネスを展開している。
また、微粒子ポリマーや高分子ゲルといった分野は、同社のもう一つの重要な事業領域となっている。これらは発泡樹脂とは異なる高付加価値材料であり、工業用途や機能性材料分野など、より専門性の高い用途に向けて展開されている。素材メーカーとしての高分子技術を活かし、差別化された製品群を育成することで、事業ポートフォリオの高度化を図っている。
事業拠点としては、本社を大阪市北区西天満に構え、東京本部を東京都新宿区に置くことで、関西と首都圏の双方をカバーする体制を整えている。研究開発面では、奈良県天理市に基礎研究所を設置し、発泡樹脂や高分子材料に関する基礎研究から応用開発までを一貫して行っている。素材の基礎研究を重視する姿勢は、長期的な競争力の源泉となっている。
このように積水化成品工業は、発泡樹脂分野における圧倒的な実績と規模を背景に、自動車用途を中心とした海外展開を進める一方で、微粒子ポリマーなどの高機能材料分野にも注力している。積水化学グループの一員としての安定性を持ちながら、素材技術を核に事業領域を拡張し、環境対応や軽量化といった社会的要請にも応え続ける企業である。
積水化成品工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 118,851 | 2,091 | 1,956 | 1,126 | 24.9 | 21 |
| 連22.3 | 117,567 | 1,463 | 1,401 | -5,917 | -131.0 | 12 |
| 連23.3 | 124,683 | 793 | 704 | 452 | 10.0 | 12 |
| 連24.3 | 130,265 | 1,261 | 2,733 | 1,083 | 23.9 | 13 |
| 連25.3 | 137,072 | 641 | 102 | -6,282 | -138.3 | 3 |
| 連26.3予 | 114,000 | 2,350 | 1,600 | 0 | 0.0 | 10 |
| 連27.3予 | 98,000 | 3,500 | 3,100 | 2,100 | 46.1 | 10〜14 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー (百万円) |
投資キャッシュフロー (百万円) |
財務キャッシュフロー (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 3,110 | -993 | -1,542 |
| 2024.3 | 7,375 | -3,779 | -3,658 |
| 2025.3 | 4,753 | -5,694 | -618 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 0.6% | 0.7% | 0.3% | – | – |
| 2024.3 | 0.9% | 1.9% | 0.7% | – | – |
| 2025.3 | 0.4% | -12.9% | -4.7% | 33.5倍(高) / 26.7倍(安) | 0.41倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見ると、積水化成品工業の2024年3月期は売上高1,302億円に対して営業利益12.6億円、経常利益27.3億円、純利益10.8億円となっている。売上規模は大きいものの、営業利益は10億円台にとどまり、利益率の低さが目立つ内容である。2025年3月期は売上高1,370億円と増収した一方で、営業利益は6.4億円、経常利益は1.0億円まで急減し、純利益は-62.8億円と大幅な赤字に転落している。売上が伸びても利益が維持できておらず、収益構造の脆さがはっきり表れている年度といえる。
2026年3月期予想では売上高1,140億円と減収となるものの、営業利益23.5億円、経常利益16.0億円、純利益は0億円見込みと、黒字回復を前提とした計画になっている。ただし、直近数年の変動の大きさを考えると、計画達成の確実性は高いとは言い切れない。収益性を見ると、営業利益率は2023年が0.6%、2024年が0.9%、2025年が0.4%と、3年間を通じて1%未満にとどまっている。
本業でほとんど利益が出ていない状態であり、少しのコスト増や市況悪化で業績が大きく振れる体質であることが数値から明確に分かる。ROEは2023年0.7%、2024年1.9%と低水準で推移した後、2025年には-12.9%まで悪化している。ROAも0.3%、0.7%から-4.7%へと落ち込んでおり、資本効率、資産効率の両面で評価できる水準にはない。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均33.5倍、安値平均26.7倍と非常に高い水準になっている。ただし、これは成長性が評価されている結果ではなく、赤字によって利益が歪み、見かけ上PERが跳ね上がっている状態である。一方、PBRは0.4倍と極端に低く、資産価値に対して市場評価が大きく割り引かれている。これは割安というよりも、収益力そのものに対する不信感の反映と見る方が自然である。
これらを総合すると、積水化成品工業は売上規模は大きいものの、本業の収益力が極めて弱く、利益の振れ幅が非常に大きい企業である。営業利益率は長期にわたり1%未満にとどまり、ROE・ROAも低水準から赤字水準へと悪化しており、資本を使って安定的に利益を生み出す力は不足している。PBRの低さは一見魅力に見えるが、現状では構造的な収益力の弱さを織り込んだ結果と考えられる。
結論として、提示された数値だけで判断する限り、積水化成品工業は業績回復シナリオが実現すれば見直される余地はあるものの、現時点では収益構造が弱く、リスクの高い銘柄と評価される。長期投資や安定運用には向きにくく、投資判断としては慎重、もしくは明確な利益改善が継続して確認できるまで様子見が妥当と考えられる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で積水化成品工業を見ると、予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに2.45%と、配当株としては中程度の水準にとどまっている。まず利回り水準そのものを見ると、2%台半ばは「高配当」と言えるほどではなく、インカムゲインを主目的にする投資家にとってはやや物足りない数字である。銀行預金や債券よりは魅力があるものの、配当狙いで株式を保有する場合、一般的には3%前後以上を期待するケースが多く、その基準からすると見劣りする。
次に配当の安定性という点では注意が必要である。直近では純利益が-62.8億円と大きな赤字に転落しており、2026年3月期も純利益は0億円見込みと、配当を十分に裏付けるだけの利益余力は強いとは言えない。営業利益率も1%未満が続いており、本業で安定して配当原資を生み出せる体質にはなっていない。今回の2.45%という利回りも、業績回復を前提にした配当水準であり、業績が再び崩れれば減配や配当維持への慎重姿勢が強まる可能性は否定できない。
また、PBRは0.4倍と低いものの、これは高配当を期待できる「資産株」というより、収益力の弱さを市場が織り込んだ結果と見る方が自然である。配当利回りも2.45%で横ばい予想となっており、今後の増配余地が大きいとは言いにくい。
総合すると、積水化成品工業は「配当目的で積極的に選ぶ銘柄」ではないと考えられる。利回りは中程度にとどまり、業績の振れ幅が大きく、配当の安定性にも不安が残る。配当はあくまでおまけ程度と捉え、業績回復や構造改善が明確に進んだ場合の見直し余地を狙う位置づけであり、インカムゲイン重視の長期保有にはあまり向かない銘柄という評価が妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
積水化成品工業は、積水化学グループに属する発泡樹脂メーカーであり、発泡スチロールを中心とした発泡樹脂素材・成形品を主力とする企業である。包装材や建材用途に加え、近年は自動車向け部材や産業用途、海外展開にも注力している。一方で、事業構造上、原材料価格や市況の影響を受けやすく、利益率は低水準にとどまりやすい。実際、直近では赤字決算も発生しており、収益の安定性には課題が残る。現在の株価407円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、2026年3月期以降に想定されている業績回復が計画どおり進み、発泡樹脂事業の採算改善と海外事業の立て直しが軌道に乗る展開を想定する。自動車用途や環境対応素材の需要が安定的に拡大し、原材料コストの影響も吸収できるようになれば、営業利益率は現在の1%未満から1%台後半から2%程度まで改善する可能性がある。ROEも5%前後まで回復すれば、市場は最悪期を脱したと評価し、極端に低いPBRは見直されやすくなる。この場合、PBRが0.8倍前後まで切り上がることも視野に入り、5年後の株価は700円から900円程度まで上昇する展開が考えられる。低評価からの修復が進む強気シナリオである。
中間のシナリオでは、赤字からは脱却するものの、構造的な低収益体質は大きく改善せず、営業利益率は1%前後にとどまるケースを想定する。利益の振れ幅は小さくなるが、高収益企業と評価されるほどではなく、ROEも3%前後で安定する水準にとどまる。この場合、市場の評価は慎重ながらも過度に悲観的ではなくなり、PBRは0.5〜0.6倍程度で落ち着く可能性が高い。株価は現在水準から緩やかに回復し、5年後の株価は450円から550円程度で推移する展開が想定される。値上がり益は限定的だが、最悪期は過ぎたとみなされる中立的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、発泡樹脂事業の採算改善が進まず、原材料価格の変動や市況悪化の影響を受けて再び赤字が常態化する展開を想定する。営業利益率は引き続き1%未満にとどまり、ROEやROAも低迷が続く。この場合、市場の評価はさらに厳しくなり、PBRは0.3倍台まで低下する可能性がある。配当維持も難しくなれば、株価の下支え要因は乏しくなり、5年後の株価は300円から350円程度まで下落する展開も考えられる。構造的な弱さが再認識される弱気シナリオである。
総合すると、現在株価407円を起点とした積水化成品工業の5年間の値動きは、良い場合で700円から900円程度、中間で450円から550円程度、悪い場合で300円から350円程度といったレンジが想定される。高成長株ではなく、業績の安定性も高いとは言えないが、極端な低評価が続いている分、回復局面では値動きが大きくなりやすい銘柄でもある。今後は業績改善が一過性に終わらず、収益構造そのものが改善するかどうかが、中長期の株価を左右する最大のポイントになると考えられる。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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