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ポバール興業とは

ポバール興業株式会社は、愛知県名古屋市中村区に本社を置く、工業用ベルトおよびガラス等の研磨材を中心とした樹脂加工品メーカーである。旧商号は神田製作所で、長年にわたり接着技術と樹脂加工技術を核に事業を展開してきた企業である。現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、国内だけでなく海外にも生産・販売拠点を持つ。
同社の事業の柱は、カスタム品を中心とした工業用ベルト事業と、ガラスや電子部品向けの研磨材事業である。事業内容は、総合接着・樹脂加工品として、ベルト関連製品および研磨関連製品の製造・販売を行っている点に特徴がある。大量生産型ではなく、顧客ごとの仕様に応じた少量多品種のカスタム対応を強みとしており、用途や使用環境に合わせたきめ細かな製品設計が評価されている。
工業用ベルト事業は同社の根幹事業であり、産業用ベルトの製造・販売および現場加工までを一貫して手がけている。工業用ベルトは大きくゴムベルトと樹脂ベルトに分けられるが、ポバール興業グループは樹脂ベルトに特化している点が特徴である。創業以来培ってきた接着技術、樹脂加工技術、精密加工技術という三つの特殊技術を組み合わせることで、使用条件や搬送物、環境負荷などに応じたオンリーワンのベルト製品を提供している。
素材選定技術も同社の強みの一つである。工業用ベルトや研磨材は、性能、用途、使用環境が顧客ごとに大きく異なるため、帆布、シート、フィルム、不織布など多様な素材の中から最適なものを選定し、製品化する技術力が求められる。ポバール興業は、顧客の課題を踏まえた素材提案から加工、接着までを一体で行うことで、高付加価値な製品を生み出している。
研磨関連事業では、ガラスや電子部品の研磨工程で使用される研磨材や樹脂加工品を提供している。精度や品質が厳しく求められる分野であり、安定した加工技術と品質管理力が重要となる。この分野でも同社はニッチながら確かなポジションを築いており、工業用ベルト事業と並ぶ収益の柱となっている。
海外展開としては、タイ王国、中国、韓国に連結子会社を持ち、現地生産・現地供給体制を構築している。特に中国やタイには工場を構え、現地の製造業需要に対応するとともに、日系企業の海外拠点向けにも製品を供給している。これにより、国内景気に過度に依存しない事業構造を形成している。
このようにポバール興業株式会社は、工業用ベルトと研磨材というニッチな分野で、接着技術と樹脂加工技術を武器に、カスタム対応力の高い製品を提供するメーカーである。派手な成長は見込みにくい一方で、製造現場に密着した技術力と海外展開を背景に、安定した事業基盤を持つ企業として位置づけられる。
ポバール興業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 経常利益(億円) | 純利益(億円) | EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3期 | 3,252 | 322 | 349 | 211 | 80.4 | 30 |
| 22.3期 | 3,475 | 370 | 380 | 279 | 106.2 | 35 |
| 23.3期 | 3,566 | 368 | 383 | 256 | 97.2 | 36 |
| 24.3期 | 3,589 | 317 | 345 | 185 | 70.5 | 37 |
| 25.3期 | 3,378 | 238 | 267 | 80 | 30.6 | 38 |
| 26.3期(予) | 3,610 | 350 | 370 | 230 | 87.3 | 39 |
| 27.3期(予) | 3,650 | 360 | 380 | 235 | 89.2 | 40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年(決算期) | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 213 | -143 | -97 |
| 2024年 | 456 | -765 | -96 |
| 2025年 | 483 | -386 | 101 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 10.3% | 3.8% | 4.6% | ― | ― |
| 2024年 | 8.8% | 2.6% | 3.2% | ― | ― |
| 2025年 | 7.0% | 1.1% | 1.4% | 24.8(高) 20.6(安) |
0.59 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ポバール興業は、直近数年の数値を見る限り、業績の山を越えて調整局面に入った企業だと感じる。24.3期の営業利益は3.1億、経常利益は3.4億、純利益は1.8億だったが、25.3期には営業利益2.3億、純利益0.8億まで落ち込んでおり、利益水準は一段低下している。26.3期は営業利益3.5億、純利益2.3億と回復予想が出ているものの、過去最高水準に戻るというよりは、落ち込んだ水準からの持ち直しに近い印象を受ける。
収益性を見ると、営業利益率は2023年の10.3%から2024年8.8%、2025年7.0%へと一貫して低下している。これは売上構造やコスト構造の面で、以前ほどの利益を出しにくくなっていることを示している。売上は大きく崩れていない一方で、利益率だけが削られているため、価格競争や固定費負担の重さが効いている可能性を感じさせる。
資本効率はさらに厳しい。ROEは4.6%から3.2%、そして1.4%まで低下しており、株主資本を使って十分な利益を生み出せていない状態が続いている。ROAも3.8%から1.1%まで下がっており、会社全体の資産効率も弱まっている。利益は出ているものの、効率性という観点では明確に悪化している。
こうした状況での2025年の評価を見ると、PERは安値平均で20.6倍、高値平均では24.8倍となっている。ROEが1.4%しかない企業に対してこのPER水準は、割安というより割高寄りに映る。一方でPBRは0.6倍と低く、資産価値だけを見れば安い。しかし、このPBRの低さは市場が将来の収益性を低く見ている結果とも考えられる。
全体として見ると、資産面では割安だが、利益率と資本効率の低下が強く、評価が上がりにくい状態にある企業と言える。26.3期の利益回復予想が実現したとしても、営業利益率が7.0%付近で止まり、ROEが1%台に留まるのであれば、大きな評価見直しは期待しづらい。
この銘柄は、成長や効率性を重視する投資には向かず、資産バリューを意識した長期保有でようやく検討対象になるタイプだと思う。少なくとも、営業利益率が再び8%台以上に戻り、ROEが3%を超えてこない限り、積極的に買いたい局面とは言いにくい。今は無理に手を出すより、数字の改善が確認できるまで距離を取るのが無難だと判断する。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で見ると、ポバール興業は「悪くはないが、積極的に狙うほど強くもない」という位置づけになる。26.3期の予想配当利回りは2.97%、27.3期は3.05%と、いずれも3%前後で安定している。この水準は、無配や低配の企業と比べれば十分に意味があり、銀行預金よりは明確に高い。一方で、高配当株として一般に意識される4%超と比べると、やや物足りなさも残る。
これまでの数字を見る限り、配当は年々少しずつ積み上げられており、急に減配するような荒い動きはしていない。26.3期、27.3期ともに配当利回りが3%前後で維持される想定になっている点からは、会社として配当をある程度安定的に出す姿勢は感じられる。
ただし注意点もはっきりしている。ROEは1%台まで低下しており、利益効率はかなり低い。営業利益率も7%まで落ちているため、配当の原資となる利益の余力は決して大きくない。この状態で配当利回りだけを見て飛びつくと、将来の業績次第では増配余地が乏しい、あるいは業績悪化時に配当が伸び悩む可能性もある。
そのため、ポバール興業の配当は「高配当を取りに行く投資」よりも、「極端に減らされにくい中配当を受け取りながら、資産価値の下支えを期待する投資」に向いている。PBRが0.6倍と低い点を踏まえると、配当+資産バリューの組み合わせで長く持つタイプの銘柄と言える。
まとめると、配当目的としては合格点だが、主役にはなりにくい。3%前後の利回りを安定的に受け取りつつ、業績や利益率が改善すれば評価が見直される、というスタンスで構えるのが無難だと思う。高配当一本狙いなら他銘柄、安定配当+バリューなら検討余地あり、という判断になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ポバール興業は、樹脂製バルブや配管材料を主力とする化学・産業資材メーカーであり、半導体関連装置向けの樹脂配管部材や、化学・水処理分野向けの機能性製品を中核事業としている。樹脂製バルブ分野では長年の技術蓄積を背景に一定のシェアと信頼性を持ち、化学プラントや半導体工場などのインフラ的な用途で安定した需要を確保している。一方で、事業特性上、半導体設備投資や製造業の設備投資動向の影響を受けやすく、高成長よりも景気循環に左右されやすい堅実型の企業体質である。現在の株価1,309.0円を起点に、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、半導体関連投資が底打ちし、装置向け樹脂配管や高付加価値製品の需要が緩やかに回復していく展開を想定する。価格競争が落ち着き、原価上昇の吸収が進むことで、営業利益率は7%台で安定し、低下していたROEも3%前後まで回復する。この段階になると、市場からは「利益効率の底打ちが確認できた企業」として見直されやすくなり、現在0.6倍前後にあるPBRは0.8〜0.9倍程度まで切り上がる余地が出てくる。配当利回り3%前後を維持できれば、インカム狙いの資金も入りやすくなり、5年後の株価は1,800円から2,100円程度まで上昇する可能性がある。地味ながら割安修正が進む強気寄りのシナリオである。
中間のシナリオでは、半導体関連需要は回復するものの力強さに欠け、樹脂配管事業は安定するが大きな成長には至らないケースを想定する。営業利益率は7%前後で横ばいとなり、ROEも2%前後にとどまる。市場評価は「安定はしているが効率は低い企業」という見方が続き、PBRは0.6〜0.7倍程度で推移する。配当利回りが3%前後で下支えとなるため、大きく売られることもないが、積極的に買われる材料にも乏しい。この場合、株価は1,200円から1,500円程度のレンジで推移し、5年後も現在値近辺で落ち着く展開が想定される。値上がり益より配当を重視する中立的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、半導体関連投資の回復が遅れ、価格競争やコスト負担が続くことで収益性がさらに低下する展開を想定する。営業利益率は6%を割り込み、ROEも1%台に張り付く状態が続くと、市場は「資産はあるが稼げない企業」として一段と慎重な評価を下す。この場合、PBRは0.5倍を下回り、配当は維持されるものの株価の下支え効果は限定的となる。5年後の株価は800円から1,000円程度まで下落する可能性があり、冴えない値動きが長期化する弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価1,309.0円を起点としたポバール興業の5年間の値動きは、良い場合で1,800円から2,100円前後、中間で1,200円から1,500円、悪い場合で800円から1,000円といったレンジが想定される。高成長を期待する銘柄ではないが、インフラ性の高い製品群と安定配当を背景に、極端な下振れリスクは比較的限定されやすい。配当を受け取りながら、利益率と資本効率の改善を気長に待つ中長期保有向きの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月20日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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