株価
クイックとは

クイックは、製薬・建設関連、エンジニア、看護師など特定領域に強みを持つ人材紹介を中核とし、人材派遣や採用広告、情報サービスまで幅広く展開する総合人材サービス企業である。株式会社クイックは大阪市北区に本社を置き、東京にも本社機能を持つ。専門性の高い人材領域に特化することで、景気変動の影響を受けつつも安定した需要を取り込んできた点が特徴である。
同社は「人材」と「情報」の2つの事業領域を軸に事業を展開している。人材領域の中心は人材紹介事業であり、採用企業と求職者を直接結びつけることで最適なマッチングを実現している。製薬・医療分野、建設・不動産分野、エンジニア領域、看護師などの専門職に強く、キャリア人材や有資格者といった即戦力層の紹介を主力としている。
人材領域のもう一つの柱が、創業事業でもあるリクルーティング事業である。求人広告を通じて企業の採用活動を支援し、人材紹介と組み合わせることで、企業の多様な採用ニーズに対応している。また、人材派遣、紹介予定派遣、請負事業なども展開しており、企業の人材活用を多面的にサポートしている。
情報領域では、人材ビジネスを支える各種Webサービスの提供をはじめ、人事関連Webサイトやイベントの運営、出版・Webメディア事業などを行っている。グループ全体で情報関連事業を推進している点が特徴で、「日本の人事部」を運営するHRビジョンをはじめ、北陸最大級の編集出版・Webメディア企業であるカラフルカンパニーなどが中核を担っている。
グループ会社には、人材派遣や紹介予定派遣を行うキャリアシステム、ワークプロジェクト、クイックケアジョブズのほか、新卒採用の採用戦略コンサルティングを手掛けるジャンプなどがある。海外事業では、米国7拠点を中心に、メキシコ、英国、ベトナム、タイ、オランダなどに現地法人を展開し、人材コンサルティング事業を行っている。
事業環境としては、国内景気の先行きが不透明な一方で、少子化による人材不足を背景に、企業の採用意欲は業種を問わず高水準で推移している。特に事業拡大や新規事業を担うキャリア人材や専門人材への需要は強く、クイックグループは既存サービスの強化に加え、新たな業界・分野の開拓や人事課題への提案力を高めることで差別化を進めてきた。
クイックグループは「関わった人全てをハッピーに」という経営理念のもと、人材サービス事業、リクルーティング事業、地域情報サービス事業、ネット関連事業、海外事業の5つの事業領域を展開している。国内外で人材・情報ビジネスを通じて社会に貢献し、「日本の人事部から世界の人事部へ」というグループビジョンの実現を目指す総合人材サービス企業である。
クイック 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益(EPS) (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3* | 20,089 | 1,867 | 2,124 | 1,464 | 25.9 | 14.7 記 |
| 連22.3* | 23,590 | 3,345 | 3,423 | 2,248 | 39.8 | 16 |
| 連23.3* | 27,794 | 4,487 | 4,543 | 3,261 | 57.7 | 23.3 |
| 連24.3* | 29,487 | 4,964 | 5,029 | 3,505 | 62.5 | 31.3 |
| 連25.3* | 32,501 | 4,533 | 4,611 | 3,583 | 63.9 | 32 |
| 連26.3*予 | 34,000 | 4,600 | 4,650 | 3,700 | 65.9 | 34.7 |
| 連27.3予 | 37,000 | 4,900 | 4,950 | 3,900 | 69.5 | 36〜38 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 (百万円) |
営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023 | 3,545 | -497 | -1,370 |
| 2024 | 2,973 | -750 | -1,493 |
| 2025 | 4,158 | -224 | -1,965 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 16.1% | 16.1% | 23.7% | ― | ― |
| 2024 | 16.8% | 15.9% | 21.3% | ― | ― |
| 2025 | 13.9% | 14.2% | 20.0% | 高13.0倍 / 安8.7倍 | 2.56倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績水準を見ると、連24.3は売上約294億円に対し、営業利益49億円、経常利益50億円、純利益35億円と、非常に高い利益水準を確保している。連25.3では売上約325億円、営業利益45億円、経常利益46億円、純利益35億円と、営業利益はやや減少したものの、利益規模は高水準を維持している。連26.3予では売上約340億円、営業利益46億円、経常利益46億円、純利益37億円が見込まれており、成長は緩やかだが安定的な増益基調が続く想定となっている。
収益性指標を見ると、営業利益率は2023年16.1%、2024年16.8%、2025年13.9%と、直近でやや低下しているものの、人材業界としては依然として非常に高い水準である。ROEは23.7%、21.3%、20.0%、ROAは16.1%、15.9%、14.2%と、いずれも長期的に高水準を維持しており、資本効率・資産効率の両面で優れた企業であることが数値から明確に読み取れる。
バリュエーション面では、2025年の実績PERは高値平均13.0倍、安値平均8.7倍と、ROE20.0%という高い収益力を考慮すると割高感は小さい。PBRは2.5倍と一見高く見えるが、ROEが20%前後で安定している点を踏まえれば、妥当な水準と評価できる。これらを総合すると、クイックは、高い営業利益率とROE・ROAを安定的に維持しながら、売上・利益ともに堅実な成長を続けている優良人材サービス企業である。人材需要という構造的な追い風を背景に、収益基盤は強固で、業績のブレも比較的小さい。
投資判断としては、安定性、収益性、資本効率のいずれもが高水準にあり、PER水準も過度に高くないことから、数値面だけで見れば中長期で安心して保有しやすい銘柄と評価できる。急成長を狙うタイプではないものの、高収益体質と安定成長を両立した、質の高い人材関連株として、堅実な中長期投資に適した銘柄という判断になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的で見ると、クイックは「配当狙いとして十分に検討できる、安定感のある銘柄」という評価になる。まず利回り水準は、連26.3予で3.87%、連27.3予で4.02%と、東証プライムの平均を明確に上回っており、インカム投資としての魅力は高い。4%前後の利回りが見込める点は、配当目的の投資家にとって分かりやすい強みである。
業績との整合性を見ると、営業利益・経常利益・純利益はいずれも高水準で安定しており、営業利益率は二桁台、ROEは20%前後、ROAも14%超と、収益力と資本効率の裏付けが強い。配当は無理に背伸びした水準ではなく、利益創出力の範囲内で賄われていると判断できる。
キャッシュフロー面でも、営業CFは3年間連続で大きなプラスを確保しており、投資CFは抑制的、財務CFは配当支払いを反映したマイナスが続いている。これは「稼いだキャッシュを株主に還元する」健全な構造であり、配当の持続性という点で安心感がある。
また、ROEが高水準で安定しているため、PBRが2倍超であっても過度な違和感はなく、配当を含めた総合リターンを意識した評価が成り立つ。人材需要という構造的な追い風もあり、業績が大きく崩れにくい点は配当投資と相性が良い。結論として、クイックは「高配当株」とまでは言わないものの、利回り水準、業績の安定性、キャッシュ創出力のバランスが取れた、配当目的に向いた銘柄である。値上がり益を大きく狙うタイプではないが、安定配当を受け取りながら中長期で保有するインカム寄り投資には十分に適した銘柄と評価できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
クイックは、現在株価895円を基準に見ると、高成長株というよりも、高収益体質と安定配当を背景に評価される人材サービスの優良・安定成長銘柄と位置づけられる。製薬・医療、建設、エンジニア、看護師など特定領域に強みを持つ人材紹介を中核とし、営業利益率は二桁台、ROEは20%前後と高水準を維持している点が特徴である。一方で、景気や採用環境の影響を一定程度受けるため、値動きは緩やかな循環型になりやすい。以下、今後5年間の良い場合、中間の場合、悪い場合の値動きを考える。
良い場合のシナリオでは、少子化による人材不足を背景に、医療・建設・ITなどの専門人材需要が引き続き強く推移し、クイックの人材紹介事業が安定的に拡大する展開を想定する。営業利益率は14〜16%程度で安定し、ROEも20%前後を維持できれば、「高収益・高還元の人材サービス企業」としての評価がさらに定着しやすくなる。この場合、PERは12〜14倍程度が許容され、配当利回り3.5〜4%前後を維持しながら株価水準が切り上がる。5年後の株価は1,300円から1,600円程度が目安となる、やや強気寄りのシナリオである。
中間のシナリオでは、人材需要は底堅いものの、景気の波や競争環境の影響で成長は緩やかにとどまるケースを想定する。営業利益率は13〜15%程度、ROEは18〜20%前後で安定し、市場評価も大きくは変わらない。PERは10〜12倍、PBRは2倍前後で推移し、配当利回り4%前後が株価の下支えとなる。この場合、5年後の株価は950円から1,200円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。値上がり益と配当をバランスよく狙う投資と相性が良い。
悪い場合のシナリオでは、国内景気の悪化や企業の採用抑制が長期化し、人材紹介市場全体が停滞する展開を想定する。営業利益率は12%前後まで低下し、ROEも15%台に下がると、市場の評価はやや慎重になる。PERは8〜10倍程度まで切り下がり、配当は維持されるものの株価の上値は重くなる。この場合、5年後の株価は700円から900円程度にとどまる、もしくは一時的に下振れする可能性がある。
総合すると、現在株価895円を起点としたクイックの5年間の値動きは、良い場合で1,300円から1,600円前後、中間で950円から1,200円、悪い場合で700円から900円程度のレンジが想定される。大きな成長を狙う銘柄ではないが、高い収益性と安定配当を背景に、インカムを重視しながら中長期で保有する投資と相性の良い銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月21日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す