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テイクアンドギヴ・ニーズとは

テイクアンドギヴ・ニーズは、ハウスウェディングのパイオニアとして知られる、国内最大級のブライダルサービス企業である。株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(英文社名 TAKE AND GIVE. NEEDS Co., Ltd.、略称T&G)は東京都品川区に本社を置き、1998年10月に創業された。創業者で現代表取締役会長の野尻佳孝が、レストランとの提携によるウェディングプロデュースから事業をスタートさせたのが始まりである。
創業当初から一貫して「1軒家を丸ごと貸し切るハウスウェディング」というスタイルにこだわり、2001年に東京・代官山でハウスウェディング1号店を開業。2003年以降は直営施設の全国展開を業界に先駆けて進め、ハウスウェディングという概念を日本全国に定着させた。現在では全国32都道府県に約100会場以上の直営ゲストハウスを展開し、年間約2万組の結婚式をプロデュースする、国内ウェディング取扱組数No.1のブライダル企業となっている。
国内ウェディング事業では、「一顧客一担当制」「完全貸し切り」を特徴とし、新郎新婦一組一組に寄り添ったオリジナル性の高い結婚式を提供している。「One Heart Wedding」をサービスコンセプトに、青山迎賓館をはじめとする『◯◯迎賓館』ブランドの会場を全国展開し、付加価値の高いウェディングによる単価維持とブランド力の確立を強みとしている。
国内事業に加え、海外・リゾートウェディング事業も重要な柱である。2003年設立の子会社グッドラック・コーポレーションを通じ、「アールイズウエディング」ブランドでハワイ、グアム、バリ、沖縄などのリゾート地に拠点を持ち、日本人向け海外挙式を展開している。さらに台湾での直営施設運営や、インドネシアでの海外有名ホテルとの業務提携など、アジア市場でのローカルウェディングにも取り組み、インバウンド需要の取り込みを進めている。
2017年には東京・渋谷に日本初の本格的ブティックホテル「TRUNK (HOTEL)」を開業し、ホテル事業にも進出した。同ホテルは国内外から高い評価を受けており、同社はホテル事業をウェディングに次ぐ「第2の成長の柱」と位置づけている。今後は東京都心部や地方政令都市を中心に、欧米で定着しているブティックホテルモデルを展開していく方針を掲げている。
そのほか、婚礼ノウハウを活かしたコンサルティング事業も展開しており、ホテルやレストランの婚礼部門に対して、広告戦略や人材育成を含めた総合的な支援を行っている。東京會舘の婚礼部門コンサルティングなど、実績も豊富である。
周辺事業としては、オーダーメイドウェディングを手がけるHaute couture Design、ドレス事業(MIRROR MIRROR、Dressmore、WITH A WHITEの3ブランドを全国14店舗展開)、レストラン事業(Pie Holic、BLUE POINT)、保育事業(も、の保育園)、ブライダルローン事業、ハネムーンを手がけるツーリズム事業など、ブライダルを軸とした多角化を進めている。
2018年には長期経営方針「EVOL2027」を発表し、2027年に売上高1,000億円企業となる目標を掲げている。少子化や婚姻数減少という構造的逆風がある中でも、高付加価値型のウェディング、海外展開、ホテル事業の育成によって成長を目指す戦略を取っている点が、テイクアンドギヴ・ニーズの特徴である。総じて同社は、ハウスウェディングという独自ポジションを確立した業界最大手であり、婚礼市場の成熟・縮小局面においても、ブランド力と企画力を武器に事業領域を広げながら持続的成長を模索するブライダル企業と位置づけられる。
テイクアンドギヴ・ニーズ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 20,044 | -11,191 | -11,687 | -16,214 | -1,251 | 0 |
| 連22.3 | 39,482 | 2,089 | 1,548 | 1,877 | 128.9 | 0 |
| 連23.3 | 45,532 | 3,681 | 3,181 | 4,108 | 300.8 | 20 |
| 連24.3 | 47,020 | 4,208 | 3,754 | 1,831 | 113.6 | 20 |
| 連25.3 | 47,668 | 4,104 | 3,586 | 3,547 | 243.2 | 40 |
| 連25.12予変 | 35,500 | 1,550 | 1,200 | 300 | 20.5 | 31 |
| 連26.12予 | 48,000 | 3,800 | 3,200 | 1,800 | 123.3 | 40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 3,545 | -375 | -2,419 |
| 2024 | 3,812 | -2,504 | -4,392 |
| 2025 | 5,462 | -786 | -5,001 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 (%) |
ROE (%) |
ROA (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 8.0 | 26.0 | 7.4 | – | – |
| 2024.3 | 8.9 | 10.7 | 3.3 | 8.7 〜5.4 |
0.65 |
| 2025.12予 | 8.6 | 19.5 | 6.6 | 37.8 | – |
| 備考 | 2025年より決算期を3月から12月へ変更 | ||||
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績水準を見ると、連24.3は売上約470億円に対し、営業利益42億円、経常利益37億円、純利益18億円であり、コロナ禍からの回復が一巡し、利益水準が安定してきた局面といえる。連25.3では売上約476億円、営業利益41億円、経常利益35億円、純利益35億円と、売上は横ばいながら純利益が大きく伸びており、コストコントロールや一時的要因も含めて収益性が高まった年である。
一方、連25.12予変では売上約355億円、営業利益15億円、経常利益12億円、純利益3億円と大きく落ち込んでいるが、これは業績悪化というよりも決算期変更(3月→12月)に伴う変則的な短期決算の影響が大きい。連26.12予では売上約480億円、営業利益38億円、経常利益32億円、純利益18億円が見込まれており、通常ベースでは再びコロナ後の安定水準に戻る計画となっている。
収益性指標を見ると、営業利益率は2023年8.0%、2024年8.9%、2025年8.6%と8%台で安定しており、ブライダル業界としては高い水準にある。ROEは26.0%、10.7%、19.5%と振れ幅は大きいが、直近では再び高水準に戻っており、自己資本を使った収益創出力は強い。ROAは7.4%、3.3%、6.6%で、こちらも安定的とは言えないものの、回復局面にあることが読み取れる。
バリュエーション面では、2024年実績PERは高値平均8.7倍、安値平均5.4倍、PBRは0.6倍と、数値だけを見ると明確に割安な水準である。一方で、2025年12月期予想PERは37.8倍と急上昇しているが、これは9か月決算による利益水準の歪みを反映したものであり、通常年の収益力を示すものではない。この点を考慮せずに割高と判断するのは適切ではない。
以上を総合すると、テイクアンドギヴ・ニーズは、婚姻数減少という構造的逆風を受けながらも、営業利益率8%台を維持し、高いROEを実現できる収益力を持つ企業である。PBR0.6倍という評価は、事業の不安定さや外部環境リスクを強く織り込んだもので、通常決算ベースの利益水準を前提にすると割安感は大きい。
投資判断としては、安定性や業績の振れに弱さはあるものの、コロナ後の通常収益力が維持される前提であれば、現在の評価は過度に低く、中長期では見直し余地がある。インカムや安定成長を狙う銘柄ではないが、景気回復局面や需要回復を取り込む循環型・バリュー寄りの投資対象としては検討余地が大きい銘柄と位置づけられる。
配当目的とかどうなの?
配当目的で見ると、テイクアンドギヴ・ニーズは現状では「配当目的として十分に検討価値がある水準に入ってきた」と評価できる。まず利回り水準を見ると、連25.12予想は4.00%、連26.12予で5.16%と、東証プライム全体と比較しても明確に高い水準にある。特に5%超は高配当株として意識されやすいラインであり、インカム投資の観点からの魅力は強い。
業績との整合性を見ると、通常決算ベースでは営業利益率が8%台、ROEも直近で19%台と高く、ブライダル業界としては収益力は高水準にある。営業キャッシュフローも黒字を確保しており、配当の原資となるキャッシュ創出力は一定程度確認できる。したがって、配当の継続性という点では、無理をしている印象は小さい。
一方で注意点もある。業績は婚姻数や景気動向の影響を受けやすく、コロナ禍のような外部ショックが発生した場合、利益が大きく振れるリスクは依然として高い。また、決算期変更による一時的な数値の歪みがあるため、短期的には配当額や配当性向が変動しやすい点も意識しておく必要がある。
これらを踏まえると、テイクアンドギヴ・ニーズは安定配当を最優先するディフェンシブな配当投資には向かないが、景気循環を許容しつつ高利回りを狙う配当投資や、業績回復局面で配当と値上がりの両取りを狙うインカム+キャピタル型投資とは相性が良い。結論として、本銘柄は「高配当を享受できる可能性は高いが、業績変動リスクを受け入れられる投資家向け」の配当銘柄であり、安定一本の配当目的というよりは、循環株・回復株としての位置づけで配当を取りにいく投資に向いた銘柄と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
テイクアンドギヴ・ニーズは、現在株価775円を基準に見ると、高成長株というよりも、業績回復と高配当利回りを背景に評価される循環型・高配当寄りのブライダル銘柄と位置づけられる。ハウスウェディングのパイオニアとして高いブランド力と運営ノウハウを持つ一方、婚姻数や景気動向の影響を受けやすく、業績の振れ幅が大きい点が特徴である。足元では営業利益率8%台、ROEも高水準にあり、PBRは1倍を大きく下回る水準にとどまっている。これらを踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合、中間の場合、悪い場合に分けて考える。
良い場合のシナリオでは、国内婚礼需要が底堅く推移し、1組当たり単価の維持・上昇とコストコントロールが両立する展開を想定する。ホテル事業や周辺事業も安定的に寄与し、通常決算ベースで営業利益40億円前後の水準が定着すれば、営業利益率8%台、ROE15%前後が維持される。「高収益体質の回復型ブライダル企業」としての評価が進み、PBRは0.9〜1.0倍程度まで見直される可能性がある。この場合、5年後の株価は1,100円から1,400円程度が目安となり、配当利回り4〜5%を維持しながら、値上がり益も期待できる強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、婚礼需要は大きく崩れないものの、少子化の影響や競争環境の厳しさから大きな成長には至らないケースを想定する。営業利益は30億円台後半で安定し、営業利益率は7〜8%程度、ROEは10%前後にとどまる。市場評価も慎重なままで、PBRは0.7〜0.9倍、PERは一桁台後半で推移する。この場合、配当利回りの高さが株価の下支えとなり、5年後の株価は800円から1,050円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、婚姻件数の減少が想定以上に進み、景気後退や消費マインドの悪化が重なることで婚礼需要が弱含む展開を想定する。営業利益率は6%台まで低下し、ROEも一桁台にとどまると、市場の評価は一段と慎重になる。配当は維持される可能性があるものの、減配リスクが意識される局面ではバリュエーションは切り下がり、PBRは0.5倍台まで低下することも考えられる。この場合、5年後の株価は500円から700円程度まで下落するリスクがあり、配当の魅力は残るものの株価面では厳しい弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価775円を起点としたテイクアンドギヴ・ニーズの5年間の値動きは、良い場合で1,100円から1,400円前後、中間で800円から1,050円、悪い場合で500円から700円といったレンジが想定される。大きな成長を狙う銘柄ではないが、業績回復局面と高配当を取り込みながら中長期で保有する、循環株・高配当寄りの投資と相性の良い銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月21日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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