株価
イオンファンタジーとは

イオンファンタジーは、イオングループのショッピングセンターを軸に、子ども向けアミューズメント施設およびインドアプレイグラウンドを展開する企業である。本社は千葉県千葉市美浜区の幕張新都心にあり、イオングループの集客力を活かした出店戦略を最大の強みとしている。事業の中心は「12歳までのこどもたちとそのファミリー」に特化した施設運営であり、安心・安全に遊べる空間づくりを通じて、時間消費型サービスを提供している。
同社は「こどもたちの夢中を育み、えがおあふれる世界をつくる。」をパーパスに掲げ、国内のみならず中国やASEAN諸国へも積極的に展開している。2023年8月末時点で、海外子会社やフランチャイズを含む店舗数は1,118店舗に達しており、内訳は国内678店舗、中国186店舗、マレーシア112店舗、フィリピン52店舗、タイ28店舗、インドネシア34店舗、ベトナム23店舗、その他ASEAN5店舗となっている。国内市場が成熟する中で、海外展開は中長期的な成長ドライバーとして位置づけられている。
アミューズメント事業では、「モーリーファンタジー」を主力ブランドとして、ファミリー層向けにメダルゲームや体感型ゲーム、クレーンゲームなどを提供している。近年は「あそびごころの森」をコンセプトに、店舗デザインやロゴを刷新し、体験価値の向上を図っている。また、派生業態として、中高生からシニア層までを対象とした「モーリーファンタジーf」、ティーンズや若年層向けの総合アミューズメント「PALO」、カプセルトイ専門の「TOYS SPOT PALO」、クレーンゲーム特化型の「PRIZE SPOT PALO」など、客層や遊び方に応じた多様なブランドを展開している。
さらに、2024年にはアメリカンダイナーをモチーフにした複合施設「Feedy Diner&Arcade」を開業し、従来の子ども中心の顧客層に加えてZ世代の取り込みも図っているなど、事業の幅を広げている。
プレイグラウンド事業では、「スキッズガーデン」をはじめ、保育士資格などを持つプレイリーダーが常駐し、子ども一人でも安心して遊べる施設運営を行っている。加えて、「キッズーナ」は親子で一緒に楽しみながら創造性や社会性を育む施設として展開されている。海外では、フィンランドの教育思想を取り入れた「FANPEKKA」を中国やASEAN各国で展開しており、日本では展開していないものの、教育要素を重視した独自性の高いブランドとなっている。
このほか、東京ソラマチに出店した「ちきゅうのにわ」や、NHK Eテレのキャラクターを活用した「にこはぴきっず」、インドネシアで展開する日本文化をテーマにした「EDOKKO」など、年齢層や地域特性に合わせた多様なプレイグラウンドを展開している。
周辺事業としては、2018年に参入したインターネットクレーンゲーム「MOLLY.ONLINE」を運営しており、リアル店舗のスケールメリットを活かした限定景品などで差別化を図っている。また、温浴施設「OYUGIWA」の運営など、アミューズメント以外の時間消費型事業にも取り組んでいる。このように、イオンファンタジーはイオングループのモール展開力を基盤に、国内外でアミューズメントとプレイグラウンド事業を多角的に展開する企業であり、少子化という構造的課題を抱えつつも、海外展開と業態多様化によって成長機会を模索している。
イオンファンタジー 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.2期 | 46,116 | -7,429 | -7,719 | -9,277 | -469.5 | 30 |
| 22.2期 | 60,170 | -3,408 | -3,385 | -4,507 | -228.1 | 20 |
| 23.2期 | 72,690 | 849 | 1,318 | -3,376 | -170.8 | 10 |
| 24.2期 | 81,758 | 3,585 | 4,488 | 1,314 | 66.5 | 10 |
| 25.2期 | 87,240 | 4,344 | 3,440 | -1,816 | -91.9 | 5 |
| 26.2期(予) | 92,200 | 7,300 | 5,700 | 2,500 | 126.4 | 15 |
| 27.2期(予) | 97,000 | 8,000 | 6,500 | 2,900 | 146.6 | 15〜20 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.2期 | 9,057 | -4,845 | -4,379 |
| 24.2期 | 12,056 | -10,725 | -97 |
| 25.2期 | 12,353 | -10,858 | -2,841 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.2期 | 1.1 | -42.5 | -7.2 | – | – |
| 24.2期 | 4.3 | 15.8 | 2.5 | – | – |
| 25.2期 | 4.9 | -27.7 | -3.4 |
58.5(高値平均) 34.5(安値平均) |
6.89 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模と推移を見る。売上高は24.2期が817億、25.2期が872億、26.2期予が922億と、年を追って拡大している。国内外での出店拡大や既存店の回復を背景に、トップライン自体は安定した成長軌道にあることが分かる。
利益面を見ると、営業利益は24.2期が35億、25.2期が43億、26.2期予が73億と増加基調にある。特に26.2期予では大きな改善が見込まれており、コロナ禍後の回復フェーズから、利益を取りに行く段階へ移行しつつある印象を受ける。一方で経常利益は24.2期44億から25.2期34億へ一度落ち込み、26.2期予で57億に回復する見通しとなっており、利益の安定性にはまだ波がある。純利益については、24.2期が13億、25.2期が-18億、26.2期予が25億と振れ幅が非常に大きく、収益構造が完全に安定したとは言い切れない。
収益性を見ると、営業利益率は23.2期1.1%、24.2期4.3%、25.2期4.9%と改善してきている。低収益体質からの脱却は進んでいるが、5%前後という水準は、アミューズメント事業としてはまだ高いとは言えず、少しの環境変化で利益が揺れやすい段階にある。
資本効率を見ると、ROEは23.2期-42.5%、24.2期15.8%、25.2期-27.7%と大きく振れている。ROAも23.2期-7.2%、24.2期2.5%、25.2期-3.4%と同様に不安定である。これは一過性の損益要因や減損、投資負担の影響が強く、継続的に高い効率で稼げている状態ではないことを示している。
次に市場評価を見る。25.2期時点の実績PERは高値平均58.5倍、安値平均34.5倍と非常に高い水準にあり、PBRも6.8倍と、明確に割高圏にある。営業利益率がまだ5%に満たず、ROEやROAが安定していない企業としては、かなり強気な期待が株価に織り込まれている状態といえる。
以上を踏まえると、この銘柄は業績回復と成長期待が先行して評価されている局面にある。売上と営業利益は改善しているが、純利益の変動が大きく、資本効率も安定していない。にもかかわらず、PER・PBRは高水準であり、バリュエーション面での安全余地はほとんどない。
結論としては、事業回復のストーリー自体は数字からも確認できるものの、現時点では「業績の安定性に対して評価が先に行き過ぎている」状態に近い。投資判断としては、強気で積極的に買いに行く局面ではなく、業績が実際に安定し、営業利益率が5%台後半以上で定着することを確認してからでないとリスクが高い。現状は中立からやや弱気寄り、成長期待は認めつつも、価格面では慎重に構えるべき銘柄という評価が妥当である。
配当目的とかどうなの?
連26.2期、連27.2期ともに予想配当利回りは0.51%で、この水準は配当目的としてはかなり低い。日本株全体の平均配当利回りと比べても明確に見劣りし、高配当株はもちろん、安定配当株としても位置づけにくい水準である。配当を主目的に投資する場合、この時点で優先順位はかなり下がる。
業績自体は回復基調にある。営業利益は24.2期35億、25.2期43億、26.2期予73億と拡大しており、事業環境が改善していることは数字からも確認できる。ただし、純利益は24.2期13億、25.2期-18億、26.2期予25億と振れが大きく、利益の安定性という点ではまだ途上段階にある。こうした状況下で配当水準が抑えられているのは、無理に還元を強めず、財務や事業基盤の安定を優先している結果といえる。
資本効率を見ると、ROEやROAは年によって大きく振れており、継続的に高い水準で安定しているとは言い難い。このような状態では、会社としても高配当を継続する戦略は取りにくく、配当は象徴的な意味合いにとどまっている。実際、配当利回り0.51%という数字は、株主還元の柱が配当ではないことをはっきり示している。
また、市場評価はPERが30倍超から50倍台、PBRも6倍台と非常に高く、株価は完全に業績回復と成長期待を織り込んだ状態にある。この株価水準で配当利回りが0.5%程度しかないということは、配当が株価の下支えになる構造ではなく、投資のリターンはほぼ値上がり益に依存していることを意味する。株価が調整局面に入った場合、配当面での防御力はほとんど期待できない。
結論として、この銘柄は配当目的とは明確に相性が悪い。配当を安定的に受け取りたい投資家にとっては選択肢になりにくく、インカム狙いで保有する理由は乏しい。業績回復や将来成長を前提にしたキャピタルゲイン狙いの銘柄であり、配当はあくまで付加的な要素に過ぎない。配当目的で見るなら不適、値動きを取りに行く投資でのみ検討余地がある銘柄、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
イオンファンタジーは、現在株価2,901.0円を基準に見ると、高配当株や安定ディフェンシブ銘柄というよりも、業績回復と成長期待を背景に評価される回復・成長寄りの循環型銘柄だと位置づけられる。イオングループのショッピングモールを軸に、子ども向けアミューズメント施設やインドアプレイグラウンドを国内外で展開しており、業績は人流や消費マインド、出店投資の成否に大きく左右されやすい。
一方で、コロナ禍からの回復局面では売上と営業利益が急速に改善しやすい事業特性を持っている。直近では営業利益率が1%台から4%台後半まで回復してきているが、ROEやROAは年による振れが大きく、収益構造が完全に安定した段階には至っていない。それにもかかわらず、市場評価はPER・PBRともにかなり高く、期待先行の色合いが強い。今後5年間の良い場合、中間の場合、悪い場合の値動き予想を書いていく。
良い場合のシナリオでは、国内既存店の回復が続き、海外事業も中国・ASEANを中心に順調に拡大する展開を想定する。出店投資が効率よく利益に結びつき、営業利益率が5%台後半から6%程度で定着すれば、利益のブレは徐々に小さくなる。純利益も安定して黒字を確保できるようになり、ROEの極端な振れも落ち着いてくれば、「回復から成長へ移行したエンタメ企業」としての評価が進みやすい。この場合、高いPER水準が一定程度正当化され、市場の期待も維持される。5年後の株価水準は4,200円から4,600円程度が目安となり、値上がり益を中心とした強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、売上は出店効果により緩やかに拡大するものの、人件費や投資負担が重なり、利益成長は徐々に鈍化するケースを想定する。営業利益率は5%前後で頭打ちとなり、純利益も年によって振れが残る。市場評価は次第に冷静化し、PERは20倍台前半程度まで調整される。この場合、株価は大きな上昇トレンドを描きにくく、現在値付近を中心としたレンジ相場になりやすい。5年後の株価は2,800円から3,300円程度と、値上がり益は限定的な中立的シナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、国内消費の鈍化や海外事業の採算悪化により、出店投資が利益につながらず、収益性が再び低下する展開を想定する。営業利益率は4%台前半まで落ち込み、純利益も不安定な状態が続くと、市場は高い成長期待を維持できなくなる。この場合、PERは15倍前後まで切り下がり、株価は調整局面に入る。5年後の株価水準は2,000円から2,400円程度まで下落するリスクがあり、配当利回りが低いため下支えは弱い弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価2,901.0円を起点としたイオンファンタジーの5年間の値動きは、良い場合で4,200円から4,600円前後、中間で2,800円から3,300円、悪い場合で2,000円から2,400円といったレンジが想定される。安定配当を受け取りながら保有する銘柄ではなく、業績回復と成長がどこまで本物になるかを見極めつつ、値動きの大きさを許容できる投資家向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月21日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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