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扶桑化学工業(4368)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

扶桑化学工業とは

扶桑化学工業株式会社は、本社を大阪府大阪市中央区高麗橋、東京本社を東京都中央区日本橋小舟町に置く化学品メーカーである。主力製品であるリンゴ酸をはじめとする果実酸と、半導体ウエハ研磨剤の主原料となる超高純度コロイダルシリカにおいて、世界トップクラスのシェアを有するニッチトップ企業である。JPX日経中小型株指数の構成銘柄の一つであり、2014年には経済産業省が公表した「グローバルニッチトップ企業100選」に選定されている。

同社は1957年、創業者である赤澤庄三が帝國製薬の大阪工場を独立させる形で設立された。1962年には無水マレイン酸を原料としたリンゴ酸の製造を開始し、これが現在のライフサイエンス事業の出発点となっている。リンゴ酸は現在も同社を代表する主力製品であり、会社ロゴにもリンゴをモチーフとしたデザインが採用されている。

扶桑化学工業の事業は、大きくライフサイエンス事業と電子材料および機能性化学品事業の二本柱で構成されている。ライフサイエンス事業では、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、イタコン酸、ビタミンCなどの果実酸およびその誘導体を製造・販売している。これらの製品は食品・飲料用途を中心に、医薬品原料、健康食品、化粧品、食品製剤など幅広い分野で使用されており、高純度・高品質を強みとして安定した需要を確保している。

電子材料および機能性化学品事業では、半導体ウエハ研磨工程で使用される研磨剤の主原料である超高純度コロイダルシリカを中核製品としている。同社の超高純度コロイダルシリカは、半導体の微細化・高集積化に対応できる極めて高い純度と品質を持ち、世界的に見ても高い市場シェアを占めている。また、高純度オルガノシリカゾル、微粉球状シリカ、アルキルシリケート、高純度果実酸、ファインケミカルなど、先端分野向けの機能性化学品も展開している。半導体設備投資の動向に左右されやすい一方で、技術的参入障壁が高く、価格競争に陥りにくい事業領域である点が特徴である。

2014年5月には、三井化学からリンゴ酸の原料である無水マレイン酸を製造販売する有機酸事業の承継について基本合意しており、原料調達から製品供給までの競争力強化を進めてきた。世界的に見ても食品用途の果実酸と半導体研磨剤原料という二つのニッチ市場で確固たる地位を築いており、安定収益と成長性を併せ持つ事業構造となっている。

なお、同じ「扶桑」の名称を冠し、大阪市中央区に本社を置く医薬品メーカーである扶桑薬品工業とは資本・事業上の関係はない。また、旧大和銀行(現りそな銀行)とその主要取引先によって構成される大輪会の会員企業でもある。国内拠点としては、大阪本社、東京本社のほか、新大阪事業所を有し、研究開発・生産・品質管理体制の強化を進めている。全体として、扶桑化学工業は世界シェア首位級の製品を複数持つ高付加価値型の化学メーカーであり、ライフサイエンス分野の安定性と半導体材料分野の成長性を併せ持つ企業である。

扶桑化学工業 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益 EPS(円) 一株配当 DPS(円)
連21.3 42,209 9,632 9,746 6,808 191.8 48
連22.3 55,760 15,034 15,509 10,890 308.1 55
連23.3 68,459 18,930 19,740 14,129 400.9 63
連24.3 58,970 11,083 11,883 8,343 236.7 66
連25.3 69,501 16,230 16,561 11,622 329.7 73
連26.3(予) 75,500 17,500 17,600 12,200 345.9 82
連27.3(予) 77,000 18,000 18,100 12,500 354.5 82〜84

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023.3 13,925 -13,417 -2,124
2024.3 7,061 -18,576 17,663
2025.3 22,701 -20,538 -2,409

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率(%) ROA(%) ROE(%) PER(倍) PBR(倍)
2023.3 27.6 12.4 16.1
2024.3 18.7 6.2 8.7
2025.3 23.3 8.2 11.1 10.6〜15.8 2.04

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず業績の流れを見る。売上高は2024.3期で589億、2025.3期で695億、2026.3期予で755億と拡大傾向にある。2024.3期に一度落ち込んだ後、2025.3期で明確に回復し、2026.3期は増収を維持する予想となっている。

営業利益は2024.3期が110億、2025.3期が162億、2026.3期予が175億で、利益面でも2024.3期を底に大きく回復している。経常利益は2024.3期118億、2025.3期165億、2026.3期予176億、純利益は2024.3期83億、2025.3期116億、2026.3期予122億となっており、いずれも同じく底打ち後の回復基調にある。利益水準自体は依然として高く、構造的な収益力が失われた印象はない。

収益性を見ると、営業利益率は2023.3期27.6%、2024.3期18.7%、2025.3期23.3%である。ピークアウト後に大きく低下したものの、2025.3期には再び20%超まで戻しており、依然として製造業としてはかなり高い水準にある。ただし、23.3期の水準には届いておらず、完全な回復途上といえる。

資本効率では、ROEが2023.3期16.1%、2024.3期8.7%、2025.3期11.1%、ROAが2023.3期12.4%、2024.3期6.2%、2025.3期8.2%となっている。こちらも24.3期で大きく低下し、25.3期で持ち直しているが、ピーク時と比べるとまだ低い。効率性は改善方向にあるものの、力強さは回復途中という評価になる。

バリュエーションを見ると、2025.3期の実績PERは高値平均15.8倍、安値平均10.6倍、実績PBRは2.0倍である。ROEが11%台にとどまっている現状を踏まえると、PBR2倍は割安とは言えず、市場は将来の収益回復を一定程度織り込んでいる水準と考えられる。一方で、PERの下限水準を見る限り、過度に割高とも言い切れない。

以上を総合すると、この銘柄は業績・利益率・資本効率ともに2024.3期を底として回復局面にあり、高収益体質は維持されているが、過去のピーク水準にはまだ届いていない。その割にPBRはすでに2倍程度まで評価されており、明確な割安感はない。結論として、扶桑化学工業は底値圏で拾うような割安株ではなく、かといって業績悪化を懸念して避ける銘柄でもない。高収益ニッチ企業としての回復を妥当な評価で織り込んだ状態にあり、強気で買い進む局面というよりは、業績回復がこの先も続くかを確認しながら中期で向き合う銘柄、という投資判断になる。

配当目的とかどうなの?

配当目的という観点で扶桑化学工業を見ると、結論から言えば配当を主目的に保有する銘柄ではない。予想配当利回りは連26.3期、連27.3期ともに1.28%と低水準であり、一般的に配当目的で評価されやすい2.5〜3.0%以上と比べると、インカム狙いとしての魅力は乏しい。

一方で業績自体は悪くない。純利益は2024.3期83億、2025.3期116億、2026.3期予122億と回復・増益基調にあり、EPSも236円から329円、345円と伸びている。このため配当の安全性は高く、近い将来に減配リスクが大きい状態ではない。配当が少ない理由は業績不安ではなく、配当性向を抑えて内部留保や成長投資を優先する企業姿勢にあると判断できる。

収益力を見ると営業利益率は20%超、ROEも11%台まで回復しており、企業としては十分に稼ぐ力を持っている。その割に配当利回りが低い点は、この会社が配当還元よりも事業成長や競争力維持を重視していることを示している。また、PBRは2.0倍とすでに一定の評価水準にあり、低配当かつ高PBRという組み合わせは、配当目的の投資家にとって効率が良いとは言えない。

以上を踏まえると、扶桑化学工業は安定配当を長期で受け取りたい投資家や、利回り重視でインカムを積み上げたい投資家には向かない。一方で、業績回復による将来的な増配余地を中長期で期待する、あるいは値上がり益を主軸にしつつ配当は副次的に受け取るといったスタンスであれば、保有の意味はある。結論として、扶桑化学工業は配当を取りにいく銘柄ではなく、高収益ニッチ企業としての成長や競争力を評価して保有し、配当はおまけ程度に考える銘柄であり、配当目的単独で選ぶ対象ではない、という判断になる。

今後の値動き予想!!(5年間)

扶桑化学工業は、現在株価6,360.0円を基準に見ると、高成長株というよりも、半導体ウエハ研磨剤原料である超高純度コロイダルシリカと、リンゴ酸を中心とした果実酸で世界トップクラスのシェアを持つ、技術優位型の高収益ファインケミカル銘柄と位置づけられる。営業利益率は市況の影響を受けつつも20%超の高水準を維持し、ROE・ROAも調整後に回復基調にある。一方で配当利回りは1%台にとどまり、配当還元よりも成長投資や競争力維持を優先する企業である。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、半導体市況が中長期的な拡大トレンドに乗り、先端ロジックやメモリ向けを中心に超高純度コロイダルシリカの需要が安定的に伸びる展開を想定する。設備投資の波にうまく乗りながら高付加価値製品比率が高まり、営業利益率は再び25%前後まで改善、ROEも13〜15%水準まで上昇する。この場合、市場では「世界シェアを持つ高収益ニッチトップ企業」としての評価が強まり、PERは15〜18倍程度まで許容されやすくなる。5年後の株価水準は8,500円から10,000円程度が目安となり、配当は低いものの、明確な値上がり益が期待できる強気寄りのシナリオとなる。

中間のシナリオでは、半導体市況は循環的な波を繰り返しつつも、全体としては緩やかな成長にとどまるケースを想定する。売上高・利益は横ばいから緩やかな増加にとどまり、営業利益率は20〜22%程度、ROEは10〜12%台で安定する。市場評価も現状水準から大きく変わらず、PERは12〜14倍程度で推移する。この場合、5年後の株価は6,000円から7,000円前後と、現在値近辺でのレンジ推移が中心となる。配当利回りは低いためインカム目的には向かないが、事業の安定性を評価した中長期保有向きの中立的なシナリオである。

悪い場合のシナリオでは、半導体投資の停滞が長期化し、設備投資関連需要が想定以上に低迷する展開を想定する。高付加価値製品であるものの数量減の影響を受け、営業利益率は18〜19%程度まで低下、ROEも一桁台にとどまる。この場合、市場の評価は慎重となり、PERは10倍前後まで切り下げられる可能性がある。5年後の株価は4,000円から5,000円程度まで下落する余地があり、配当利回りの低さも相まって株価面では厳しい弱気シナリオとなる。

総合すると、現在株価6,360.0円を起点とした扶桑化学工業の5年間の値動きは、良い場合で8,500円から10,000円前後、中間で6,000円から7,000円、悪い場合で4,000円から5,000円といったレンジが想定される。配当を目的に保有する銘柄ではないが、世界シェアを持つ高収益ニッチ企業としての競争力を評価し、業績と市況の回復局面での値上がりを狙う中長期投資と相性の良い銘柄と評価できる。

この記事の最終更新日:2025年12月21日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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