株価
ADEKAとは

株式会社ADEKAは、東京都荒川区に本社を置く日本の化学素材メーカーであり、車向け樹脂添加剤や半導体向け高誘電材料などの中間素材分野で世界トップクラスのシェアを持つ独立系化学企業である。2006年5月1日に旭電化工業株式会社から現社名に変更しており、長い歴史と技術蓄積を背景に、食品、化学品、ライフサイエンスの3事業を柱とした事業展開を行っている。古河三水会に所属し、世界21の国と地域に58のグループ会社を擁するグローバル企業である。業績は需要期が集中する下期偏重型である点も特徴の一つである。
化学品事業はADEKAの中核事業であり、特に自動車向けを中心とした樹脂添加剤や、半導体分野で用いられる高純度材料・高誘電材料に強みを持つ。樹脂添加剤では、ポリオレフィン用添加剤、塩ビ用安定剤・可塑剤などを手掛け、耐熱性や耐久性、加工性を高める高付加価値製品を提供している。情報・電子化学品分野では、高純度半導体材料、電子回路基板向けのエッチング装置や薬剤、光硬化樹脂、光開始剤などを展開し、半導体や電子部品の高性能化・微細化に対応した製品群を持つ。機能化学品分野では、エポキシ樹脂、ポリウレタン原料、水系樹脂、界面活性剤、潤滑油添加剤、化粧品原料、プロピレングリコール類、過酸化水素および誘導品など、産業用途から生活関連分野まで幅広い製品を提供している。
食品事業では、マーガリンやショートニング、チョコレート用油脂、フライ・調理用油脂などの加工油脂を中心に、製パン・製菓向け製品で高い存在感を持つ。パン用加工油脂は同社の強みの一つであり、加えてプラントベースフード、ホイップクリーム、練込用クリーム、フィリング類、マヨネーズ・ドレッシング類、機能性食品素材なども展開している。食品事業は景気変動の影響を受けにくく、ADEKAの収益基盤を安定させる役割を担っている。
ライフサイエンス事業では、グループ会社である日本農薬を中核に、農薬、医薬品、医薬部外品、動物用医薬品、木材用薬品、医療材料などを手掛けている。農薬分野ではグローバルに事業を展開しており、化学品・食品事業とは異なる需要サイクルを持つことで、グループ全体の事業分散にも寄与している。
主要事業所としては、本社を東京都荒川区に置き、大阪、名古屋、福岡、札幌に支社・営業所を展開している。国内グループ会社には、ADEKAケミカルサプライ、ADEKAライフクリエイト、ADEKAクリーンエイドなどがあり、化学品供給、不動産、環境・洗浄関連など周辺分野も含めた事業体制を構築している。
ADEKAは、食品という安定収益分野と、自動車・半導体向けの高付加価値化学品という成長分野を併せ持つ点に大きな強みがある。特定市場に依存しすぎない事業構造を持ち、技術力と世界シェア製品を背景に、景気循環を緩和しながら中長期的な成長を目指す、堅実型の化学メーカーと位置づけられる。
ADEKA 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 327,080 | 28,979 | 29,270 | 16,419 | 159.0 | 48 |
| 連22.3 | 363,034 | 34,927 | 35,770 | 23,744 | 230.2 | 70 |
| 連23.3 | 403,343 | 32,369 | 32,579 | 16,778 | 163.3 | 70 |
| 連24.3 | 399,770 | 35,428 | 35,763 | 22,977 | 224.9 | 90 |
| 連25.3 | 407,145 | 41,010 | 39,346 | 25,019 | 245.6 | 100 |
| 連26.3予 | 430,000 | 43,500 | 44,000 | 27,000 | 271.7 | 104〜106 |
| 連27.3予 | 460,000 | 46,500 | 46,500 | 28,500 | 310.5 | 104〜124 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 17,253 | -19,520 | -2,618 |
| 2024.3 | 41,954 | -23,069 | -4,559 |
| 2025.3 | 46,235 | -12,553 | -22,288 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 8.0 | 6.4 | 3.3 | — | — |
| 2024.3 | 8.8 | 8.0 | 4.2 | — | — |
| 2025.3 | 10.0 | 8.4 | 4.6 | 15.4(高) / 10.7(安) | 1.27 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ADEKAは、直近数年にわたり売上・利益を着実に拡大しつつ、収益性と資本効率を段階的に改善している中堅化学メーカーと位置づけられる。まず利益水準を見ると、2024年3月期は売上高3,997億円、営業利益354億円、経常利益357億円、純利益229億円で、営業利益率は8.8%と化学メーカーとしては比較的良好な水準を確保している。ROEは8.0%、ROAは4.2%であり、突出して高いわけではないが、安定した資本回転と収益構造が確認できる。
2025年3月期は売上高4,071億円、営業利益410億円、経常利益393億円、純利益250億円と増収増益を達成しており、営業利益率は10.0%まで上昇している。ROEは8.4%、ROAは4.6%と着実に改善しており、利益成長が一過性ではなく、構造的な収益力の底上げによるものであることが数値から読み取れる。
2026年3月期予想では、売上高4,300億円、営業利益435億円、経常利益440億円、純利益270億円と、さらに利益水準の拡大が見込まれている。営業利益率は10%前後を維持する想定であり、食品・化学品・ライフサイエンスを組み合わせた事業構造が安定的に機能していることが前提となっている。
バリュエーション面では、2025年実績PERは高値平均15.4倍、安値平均10.7倍と、成長性を織り込みつつも過度な割高感はない水準にある。PBRは1.2倍であり、ROE8%台という資本効率を踏まえると、市場評価はおおむね妥当からやや慎重寄りといえる。高ROE企業のようなプレミアム評価は受けていない一方、財務や収益の安定性が一定程度評価されている状態である。
以上を踏まえた投資判断として、ADEKAは高成長株ではないものの、営業利益率が8%から10%へ改善し、ROE・ROAも緩やかに上昇している点から、事業の質は着実に向上していると評価できる。一方で、ROEは1桁台にとどまっており、資本効率の観点では突出した魅力がある銘柄ではないため、急激な評価修正を期待するタイプではない。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、ADEKAは純粋な高配当目的というよりも、安定配当を土台にした中長期向けのインカム補助型銘柄と位置づけるのが妥当である。予想配当利回りは連26.3、連27.3ともに2.69%と、市場全体で見れば中位水準にあたる。3~4%台を狙う高配当投資と比べると見劣りするものの、極端に低い水準ではなく、安定配当株として一定の魅力はある。
配当の裏付けとなる収益力を見ると、営業利益率は8.0%から10.0%へと改善基調にあり、営業利益・純利益ともに着実に増加している。ROEは6%台から8%台へ、ROAも3%台から4%台へと緩やかに改善しており、資本効率は高成長企業ほどではないが、安定した事業基盤を背景に無理のない水準で推移している。こうした数値から見る限り、現在の配当水準は利益とのバランスが取れており、持続性は比較的高いと判断できる。
一方で、ADEKAの配当は急激に引き上げていくタイプではなく、業績の伸びに合わせて段階的に増配していく性格が強い。ROEが1桁台にとどまっている点を踏まえると、今後も配当利回りが大きく跳ね上がる可能性は高くなく、インカムを最優先する投資家にはやや物足りない。
したがって、配当利回りを最優先する高配当投資や、短期間でのインカム最大化を狙う投資には向かない。一方で、業績の安定性を重視しつつ配当も確保したい、配当を受け取りながら中長期でじっくり保有したいといったスタンスであれば、利回り2.7%前後は十分に意味を持つ。総合すると、ADEKAの配当目的としての評価は、「高配当株ではないが、業績の安定性と増配余地を背景に、安心して配当を受け取れる堅実型インカム銘柄」という位置づけになる。純粋な配当狙いよりも、安定成長と配当を組み合わせた中長期投資と相性の良い銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ADEKAは、現在株価3,863.0円を基準に見ると、急成長株というよりも、食品・化学品・ライフサイエンスを組み合わせた分散型の事業構造を持つ、堅実成長型の総合化学メーカーと位置づけられる。自動車向け樹脂添加剤や半導体向け高誘電材料などの高付加価値化学品に強みを持つ一方、パン用加工油脂を中心とした食品事業が安定収益源として機能している点が特徴である。営業利益率は直近で10%前後まで改善しており、ROEも8%台と化学メーカーとしては標準からやや良好な水準にある。配当利回りは2%台後半で、インカム重視というよりは、安定成長と配当を組み合わせた中長期向きの銘柄である。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、自動車・半導体向けの機能性化学品が堅調に拡大し、食品事業も安定収益を維持することで、全体として緩やかながら持続的な成長が続く展開を想定する。営業利益率は10%前後で定着し、ROEも8%台後半から9%程度まで改善する。この場合、市場では「高成長ではないが利益率改善が進む安定成長型化学メーカー」としての評価が強まり、PERは14〜16倍程度、PBRも1.4倍前後が許容されやすくなる。利益成長を前提とすると、5年後の株価水準は4,800円から5,600円程度が目安となり、配当を受け取りながら緩やかな値上がりを狙える強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、化学品・食品ともに需要は底堅く推移するものの、大きな成長ドライバーはなく、利益率やROEも現在水準近辺で横ばいが続くケースを想定する。営業利益率は9〜10%程度、ROEは8%前後で安定し、市場評価も現状を大きく上回ることはない。この場合、PERは12〜14倍、PBRは1.2倍前後で落ち着き、5年後の株価は4,000円~4,600円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。値上がり益よりも、配当を含めたトータルリターンを重視する投資と相性が良い。
悪い場合のシナリオでは、半導体市況の調整や自動車関連需要の減速により、化学品事業の収益性が低下し、食品事業の安定収益だけでは全体を補いきれない展開を想定する。営業利益率は8%前後まで低下し、ROEも7%台にとどまる。この場合、市場の評価は慎重となり、PERは10〜11倍、PBRも1倍前後まで調整される可能性がある。5年後の株価は3,200円から3,600円程度まで下押しされ、値動きの冴えない弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価3,863.0円を起点としたADEKAの5年間の値動きは、良い場合で4,800円から5,600円前後、中間で4,000円から4,600円、悪い場合で3,200円から3,600円といったレンジが想定される。爆発的な成長を狙う銘柄ではないが、利益率改善と事業の安定性を背景に下値は比較的堅く、配当を受け取りながら中長期で価値の積み上がりを狙う投資と相性の良い銘柄と評価できる。
この記事の最終更新日:2025年12月22日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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