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日油(4403)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

日油とは

日油株式会社は、油脂・石油化学品・化成品などを幅広く展開する日本の総合化学メーカーであり、近年は狙った患部に薬物を届けるDDS製剤原料を成長分野として位置づけている企業である。旧社名は日本油脂株式会社で、日産コンツェルンに由来し、春光グループおよび芙蓉グループに属している。JPX日経インデックス400の構成銘柄でもあり、長い歴史と技術基盤を持つ多角化型メーカーである。

「バイオから宇宙まで」というコーポレートスローガンの通り、油化、化薬、化成、食品、ディスプレイ材料、ライフサイエンス、DDS、防錆と極めて幅広い事業領域をカバーしている点が最大の特徴である。創業以来の中核である油化事業では、油脂化学分野のパイオニアとして業界をリードしてきた。一方で、化薬事業では産業用爆薬から防衛・宇宙開発分野まで手掛け、H-IIAロケット用固体推進薬のメーカーとして日本の宇宙産業にも関わっている。

化成事業では、有機過酸化物、機能性ポリマー、石油化学製品、電子材料などを展開し、電子・情報分野や自動車・樹脂分野に製品を供給している。機能材料事業は、油脂事業を起点に発展し、現在ではライフ・ヘルスケア、環境・エネルギー、電子・情報、樹脂・自動車分野まで事業領域を広げている。

化薬事業は、1919年の火薬事業創業以来の研究開発力と製造技術を背景に、世界でも数少ない総合火薬メーカーとして確固たる地位を築いている。産業用爆薬事業ではトンネル掘削などの国土開発を支え、防衛・宇宙開発事業では発射薬、ロケット用推進薬、火工品などの高性能製品を提供している。また、海洋機器や医薬品原料、防犯機器など民生分野にも製品を展開している。

食品分野では、加工油脂事業と健康関連事業を展開している。マーガリンやショートニング、製パン・製菓用の機能性油脂、調理・冷凍食品向け素材などを通じて、フードロス削減や植物タンパク質活用といったサステナビリティにも取り組んでいる。健康関連事業では、独自素材や油脂コーティング技術を活かし、健康食品市場向けの製品を提供している。

ライフサイエンス分野では、DDS(薬物送達システム)関連素材が重要な成長領域となっている。ポリエチレングリコール誘導体、機能性脂質、高純度ポリソルベートなどを医薬品向けに供給しており、生体適合性素材であるLIPIDUREを核に、医薬品、医療機器、診断薬分野へ展開している。DDS製剤原料は今後の成長ドライバーとして位置づけられている。

防錆事業では、自動車部品向け防錆処理剤を中心に、世界的なデファクトスタンダードを確立している。国内外にグローバルな供給ネットワークを構築し、環境配慮型の高機能表面処理技術の開発を進めている。日油は、油脂・化学品といった安定事業に加え、防衛・宇宙、DDS、電子材料といった高付加価値・高参入障壁分野を併せ持つことで、景気変動に強い事業ポートフォリオを構築している。急成長型ではないが、技術力と多角化戦略を背景に、安定性と成長性を両立させた総合化学メーカーと位置づけられる。

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直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益 EPS(円) 一株当たり配当 DPS(円)
連21.3 172,645 26,602 28,870 23,302 93.5 26.7
連22.3 192,642 35,595 37,624 26,690 107.9 30
連23.3 217,709 40,624 43,183 33,973 139.0 36
連24.3 222,252 42,142 45,577 33,990 141.2 38
連25.3 238,310 45,308 46,572 36,497 153.9 45
連26.3予 258,400 46,000 48,300 38,200 167.1 52
連27.3予 265,000 48,500 50,500 38,800 169.8 52〜54

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023.3 23,333 -709 -16,170
2024.3 29,970 -14,964 -17,101
2025.3 28,975 -13,749 -22,015

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率(%) ROE(%) ROA(%) PER(倍) PBR(倍)
2023.3 18.6 14.2 10.9
2024.3 18.9 12.8 9.9
2025.3 19.0 13.1 10.2 16.6(高) / 11.8(安) 2.59

出典元:四季報オンライン

投資判断

日油は、直近数年にわたり売上・利益ともに安定した成長を続けており、高い収益性を維持する高付加価値型の化学メーカーと位置づけられる。まず利益水準を見ると、2024年3月期は売上高2,222億円、営業利益421億円、経常利益455億円、純利益339億円で、営業利益率は18.9%と非常に高い水準にある。ROEは12.8%、ROAは9.9%であり、化学メーカーとしては資本効率も良好な部類に入る。

2025年3月期は売上高2,383億円、営業利益453億円、経常利益465億円、純利益364億円と増収増益を達成しており、営業利益率は19.0%まで上昇している。ROEは13.1%、ROAは10.2%と、やや低下した年もあるものの全体としては高水準を維持しており、本業の競争力が安定していることが数値から確認できる。

2026年3月期予想では、売上高2,584億円、営業利益460億円、経常利益483億円、純利益382億円と、利益成長はやや緩やかになるものの、引き続き高い利益水準を維持する想定である。営業利益率は19%前後を維持する前提であり、収益力の高さは構造的なものと考えられる。

バリュエーション面では、2025年実績PERは高値平均16.6倍、安値平均11.8倍と、成長性と安定性を併せ持つ企業としては妥当なレンジにある。PBRは2.5倍で、ROE13%前後という資本効率を踏まえると、市場は同社を高収益企業として一定のプレミアムを付けて評価しているが、過度な割高感まではない水準といえる。

以上を踏まえた投資判断として、日油は営業利益率18~19%、ROA10%前後という非常に高い収益性を安定的に維持している点が最大の強みである。一方で、ROEは二桁前半にとどまっており、爆発的な成長による評価急拡大を狙うタイプではない。結論として、日油は、「高い利益率と安定した収益基盤を背景に、比較的高い評価水準を正当化できる質の高い化学メーカー」と位置づけられる。割安株狙いよりも、事業の質と収益の持続性を重視し、中長期で安定的に保有する投資と相性の良い銘柄と判断される。

配当目的とかどうなの?

結論から言うと、日油は純粋な配当目的には向かず、成長と事業の質を重視する投資の中で配当を補助的に受け取る銘柄と位置づけるのが妥当である。予想配当利回りは連26.3、連27.3ともに1.63%と低水準であり、高配当株として意識される水準ではない。このため、配当利回りを最優先するインカム投資や、短期間での配当収入最大化を狙う投資には明確に向かない。

一方で、日油は営業利益率18〜19%、ROA10%前後という極めて高い収益性を安定的に維持しており、利益の質そのものは非常に高い。配当も無理に引き上げるタイプではなく、研究開発投資や成長分野への再投資を優先しつつ、持続可能な範囲で安定的に支払う姿勢がうかがえる。数値を見る限り、現在の配当水準は十分に利益でカバーされており、減配リスクは相対的に低いと判断できる。

ただし、ROEは13%前後と良好ではあるものの、配当性向を高めて株主還元を前面に出す段階にはなく、今後も配当利回りが大きく上昇する可能性は高くない。そのため、配当を主目的に長期保有する銘柄というよりは、高収益体質と成長分野を評価し、その過程で安定的な配当を受け取る銘柄と考えるのが現実的である。

総合すると、日油の配当目的としての評価は、「高配当株ではないが、高い利益率と事業の質を背景に、安心して配当を受け取れる成長優先型の準インカム銘柄」という位置づけになる。配当そのものを狙うよりも、事業価値の積み上がりを主軸に据えた中長期投資と相性の良い銘柄といえる。

今後の値動き予想!!(5年間)

日油は、現在株価3,185.0円を基準に見ると、急成長株というよりも、DDS(薬物送達システム)原料や電子・半導体材料、防衛・宇宙関連といった参入障壁の高い分野に強みを持つ、高収益・高付加価値型の総合化学メーカーと位置づけられる。営業利益率は18〜19%台と素材・化学企業としては極めて高く、ROEも13%前後、ROAは10%前後を維持しており、本業の稼ぐ力は非常に強い。一方で配当利回りは1%台にとどまり、インカムよりも事業の質と将来的な価値向上を重視する中長期向きの銘柄である。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、DDS製剤原料を中心としたライフサイエンス分野が着実に拡大し、電子・半導体材料や防衛・宇宙向け製品も安定的に需要を取り込む展開を想定する。売上成長は緩やかでも高付加価値製品の比率上昇により利益水準は維持され、営業利益率は18〜19%台で安定する。ROEは13〜14%前後を維持し、市場では「高収益・高技術のニッチ化学メーカー」としての評価が強まる。この場合、PERは15〜17倍程度が許容されやすくなり、5年後の株価水準は4,500円から5,200円程度が目安となる。配当は低水準ながら、値上がり益を主軸に据えた強気寄りのシナリオとなる。

中間のシナリオでは、高付加価値分野は堅調に推移するものの成長ペースは落ち着き、売上・利益ともに安定推移にとどまるケースを想定する。営業利益率は18%前後、ROEは13%前後で横ばいとなり、収益構造に大きな変化はない。市場評価も現状水準を大きく超えることはなく、PERは12〜14倍程度で落ち着く。この場合、5年後の株価は3,500円から4,000円程度と、現在値近辺から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。値上がり益は限定的だが、事業の安定性を評価して保有する投資と相性が良い。

悪い場合のシナリオでは、半導体市況の調整やDDS分野の成長鈍化、防衛関連需要の変動などにより、利益成長が一時的に停滞する展開を想定する。営業利益率は16%前後まで低下し、ROEも11%台に落ち込む。市場の評価は慎重となり、PERは10〜11倍程度まで切り下がる可能性がある。この場合、5年後の株価は2,600円から3,000円程度まで下押しされるリスクがあり、値動きの冴えない弱気シナリオとなる。

総合すると、現在株価3,185.0円を起点とした日油の5年間の値動きは、良い場合で4,500円から5,200円前後、中間で3,500円から4,000円、悪い場合で2,600円から3,000円といったレンジが想定される。大きな成長を狙う銘柄ではないが、営業利益率18%超という極めて高い収益性と参入障壁の高い事業基盤を背景に、安定性と中長期的な価値向上を重視して保有する投資と相性の良い銘柄と評価できる。

この記事の最終更新日:2025年12月22日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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