株価
ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスとは

ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスは、人材派遣・アウトソーシングを基盤に、IPを活用したアパレル制作やEC運営支援、空港関連のハンドリング業務、観光・インバウンド対応まで幅広く手掛けるサービスグループである。2019年3月に持株会社体制へ移行し、グループ各社の経営管理を行いながら、多様な現場型サービスを展開している。
グループの中核には、流通・小売、通信、家電、モバイル分野を中心とした人材派遣・業務委託事業がある。家電量販店や携帯ショップ、量販店などでの販売支援において、単なる人材提供にとどまらず、販売戦略の企画立案、マーケティング、販売体制構築、人員手配、教育研修、接客・販売、スタッフ管理、顧客ニーズのフィードバックまでを一括で受託する点が強みとなっている。現場運営力と人材マネジメント力を組み合わせたビジネスモデルで、クライアントの売上拡大に直接関与する形を取っている。
近年の成長分野の一つが、IPを活用したアパレル制作とECサイト運営支援である。グループ会社を通じて、アパレルやスポーツブランドなどの公式ECサイトを対象に、自社開発のEC支援プラットフォームを活用し、企画・構築から広告販促、決済、物流までをフルフィルメントサービスとして一括で運営・管理している。ローコストオペレーションと蓄積されたノウハウを強みに、クライアントのブランド力向上と売上拡大を支援し、成果報酬型のレベニューシェアモデルで収益を上げる点が特徴である。ECサイト内でのチャット接客センター運営や、越境ECへの対応も行っている。
インサイドセールス分野では、保有する膨大な企業データベースと統計データを活用し、商材に適した営業先を自動抽出する仕組みを構築している。ターゲットリストの作成から、トークスクリプト設計、顧客カルテのクラウド管理、BANT条件の把握までを一体で行い、費用対効果の高い営業活動を支援している。携帯電話や通信サービスの営業支援もこの領域に含まれる。
インバウンド・ツーリズム関連事業もグループの重要な柱である。免税カウンターや免税店、多言語コールセンター、ショッピングアテンダー、ツーリストインフォメーションの運営を行い、多言語対応人材の研修・派遣を通じて訪日外国人向けサービスを支えている。観光分野では、国内外旅行向けの添乗員派遣、FIT対応のガイド・通訳案内士、ホテル・リゾートスタッフ派遣、ランドオペレーター事業、豪華客船や観光バス添乗なども手掛けている。
空港関連業務は同社グループのもう一つの特徴的な分野である。国内主要空港において、ラウンジ運営、売店・レストランスタッフの採用代行、レンタルWi-Fiカウンター運営、バレーパーキングサービスなど、空港内の運営を支える人材募集・研修・派遣を行っている。多言語対応力と現場運営ノウハウを活かし、空港のサービス品質向上に貢献している。
さらに、スポーツイベントやMICE分野にも対応しており、国際的スポーツイベントでのVIP受付、選手アテンド、通訳、救護室・クリーンスタッフ運営、ボランティアの募集・研修・管理までを一括受託してきた実績がある。国際会議や展示会、文化・スポーツイベントなどの大型イベント運営においても、人的オペレーションを支える役割を担っている。
総じてヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスは、人材派遣を基盤としながら、IPを活用したアパレル・EC、空港ハンドリング、インバウンド・観光、イベント運営まで事業領域を広げてきた「現場運営力」に強みを持つ企業グループである。人を介在させるサービス領域において、企画から運営までを一気通貫で担える点が最大の特徴であり、景気循環の影響を受けつつも、複数分野の組み合わせによって収益機会を広げる構造となっている。
ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益(EPS) (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.8 | 84,225 | 4,787 | 5,125 | 2,774 | 155.5 | 24.5 |
| 22.8 | 64,130 | 5,739 | 5,759 | 3,227 | 180.9 | 30 |
| 23.8 | 63,980 | 4,198 | 4,300 | 1,885 | 105.7 | 31 |
| 24.8 | 58,547 | 1,568 | 1,536 | -43 | -2.4 | 35 |
| 25.8 | 63,596 | 2,495 | 2,504 | 853 | 47.9 | 37 |
| 26.8(予) | 67,300 | 3,000 | 3,000 | 1,400 | 78.5 | 37.5〜39 |
| 27.8(予) | 69,000 | 3,150 | 3,160 | 1,550 | 86.9 | 40〜41 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.8 | 2,525 | -5,263 | 5,703 |
| 24.8 | 980 | -1,233 | -2,024 |
| 25.8 | 3,406 | -3,600 | -2,033 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.8 | 6.5% | 10.5% | 4.4% | — | — |
| 24.8 | 2.6% | -0.3% | -0.2% | — | — |
| 25.8 | 3.9% | 4.9% | 2.0% |
高20.7倍 安14.5倍 |
1.05倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず24.8期を見ると、営業利益と経常利益はいずれも15億円と黒字を維持している一方で、純利益は4300万円の赤字となっている。この点から、事業そのものは利益を生んでいるものの、最終段階で一時的なコストや要因が重なり、最終赤字になった年だったと読み取れる。業績の流れとしては、この24.8期が底に近い局面だったと考えるのが自然である。
25.8期に入ると状況は大きく改善し、営業利益は24億円、経常利益は25億円、純利益は8億円まで回復している。最終赤字から一転してしっかりとした黒字を確保しており、事業環境や収益構造が改善方向に動いていることが数字からはっきり分かる。さらに26.8期予想では、営業利益30億円、経常利益30億円、純利益14億円と、回復が一段と進む見通しになっている。利益水準としてはまだ過去のピークには及ばないものの、底打ちから回復局面に入っている流れは明確である。
収益性を見ると、営業利益率は2023年6.5%、2024年2.6%まで低下し、2025年には3.9%まで戻している。24.8期の落ち込みは大きかったが、25.8期は回復途上にあると言える。ただし、依然として利益率は低く、事業全体が高収益体質に戻ったとは言い難い。ROEも2023年の10.5%から2024年はマイナスに転じ、2025年は4.9%まで回復しているが、水準としてはまだ物足りない。ROAも同様で、2024年にマイナスとなり、2025年は2.0%まで改善しているものの、効率性が高い企業とは言えない段階にある。
バリュエーションを見ると、2025年実績PERは安値平均で14.5倍、高値平均で20.7倍と幅があり、評価が回復期待によって振れやすい状態にあることが分かる。PBRは1.0倍前後で、資産価値に近い水準にとどまっている。市場は現時点でこの企業を高成長・高収益企業として評価しているわけではなく、あくまで回復が本物かどうかを見極めている段階と考えられる。
これらを総合すると、この銘柄はすでに安定した優良企業として安心して持てる段階ではなく、業績が底を打ち、回復に向かっている途中の銘柄という位置づけになる。回復が計画どおり進めば評価が見直される余地はあるが、収益性や資本効率が再び崩れれば、株価も伸び悩みやすい。したがって、安定性やインカムを重視する投資よりも、業績回復が数字として定着するかを見ながら向き合う投資に向いた銘柄だと判断できる。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、配当目的としては「検討余地はあるが、安定配当株としてはまだ様子見寄り」です。まず予想配当利回りは、26.8期が3.65%、27.8期が3.89%と、表面利回りだけを見ると十分に魅力的な水準です。一般的な配当投資の目安である3%を明確に超えており、インカム狙いの最低条件は満たしています。
一方で、直近の業績推移を見ると注意点もあります。24.8期は営業利益・経常利益こそ黒字だったものの、純利益は4300万円の赤字でした。25.8期に純利益8億円まで回復し、26.8期予想では14億円と改善が続く見通しですが、これは「回復途中」の段階です。営業利益率も6%台から2%台へ落ち込んだ後、現在は4%弱まで戻しているものの、まだ安定水準とは言えません。
つまり、この配当利回りは「高い収益力に裏打ちされた余裕の配当」というよりも、「回復を前提にした配当水準」である点が重要です。PBRが1倍前後という評価からも、市場は減配リスクを完全には織り込んでいないものの、強気一辺倒で見ているわけでもないことが分かります。
キャッシュフローを見ると、営業CFは年によって振れがあり、投資CFも大きく動いています。財務CFは配当や資金調整の影響を受けやすく、配当を絶対的に安心して受け取れる「鉄板の配当株」とまでは言い切れません。ただし、業績回復が続けば、現在の配当水準を維持できる可能性は十分にあります。
総合すると、この銘柄は、配当利回りは3.5〜4%程度あれば十分と考え、業績回復局面に伴うリスクを許容でき、配当と同時に株価の戻りも狙いたいというスタンスの投資家とは相性があります。一方で、減配リスクを極力避けたい、長年にわたる安定した配当実績を最優先したい、配当を生活費の柱にしたいというタイプには、まだ不安が残ります。結論としては、この銘柄は純粋な安定高配当株ではないものの、業績回復が前提であれば配当目的としても成り立つ「回復期待込みのインカム寄り銘柄」という評価になります。
今後の値動き予想!!(5年間)
ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスは、現在株価1,027.0円を基準に見ると、急成長を狙うグロース株というよりも、人材派遣・アウトソーシングを軸に、空港関連業務やインバウンド、IPを活用したアパレル・EC運営など、景気循環と需要回復の影響を受けやすい分野で事業を展開する回復局面型の企業と位置づけられる。営業利益率は過去に6%台を確保していたものの、直近では2〜4%台まで低下しており、現在は収益性の立て直し段階にある。一方で配当利回りは3.5〜4%前後と比較的高く、業績回復が前提とはなるものの、インカム要素も意識されやすい水準にある。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、インバウンド需要の回復や空港関連業務の正常化が進み、人材稼働率が改善することで売上・利益が計画どおり回復する展開を想定する。IPを活用したアパレルやEC運営支援も安定収益源として定着し、営業利益率は4〜5%台まで回復する。純利益も安定して積み上がり、ROE・ROAが改善することで、市場からは「回復が定着した循環株」として評価されやすくなる。この場合、PBRは1倍超、PERは15〜18倍程度が許容され、株価は徐々に見直される。5年後の株価水準は1,600円から1,900円程度が目安となり、配当を受け取りながら株価の戻りも期待できる強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、インバウンドや空港関連需要は回復するものの、人件費や運営コストの上昇が重荷となり、利益率の改善は限定的にとどまるケースを想定する。営業利益率は3〜4%台で推移し、ROE・ROAも低位安定となる。市場評価は慎重で、PBRは1倍前後、PERは12〜15倍程度に落ち着く。この場合、5年後の株価は1,200円から1,400円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。配当と値上がりを合わせたトータルリターンを重視する投資と相性が良い。
悪い場合のシナリオでは、インバウンド回復の遅れやコスト上昇が続き、利益改善が想定を下回る展開を想定する。営業利益率は3%を下回り、ROE・ROAも低迷したままとなる。市場の評価は厳しくなり、PBRは1倍を割り込み、PERも10倍前後まで切り下がる可能性がある。この場合、5年後の株価は700円から900円程度にとどまり、高配当利回りは維持されても株価面でのリターンが限定される弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価1,027.0円を起点としたヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスの5年間の値動きは、良い場合で1,600円から1,900円前後、中間で1,200円から1,400円、悪い場合で700円から900円といったレンジが想定される。爆発的な成長を狙う銘柄ではないが、業績回復と高めの配当利回りを背景に、回復局面を取り込みつつ中長期でトータルリターンを狙う投資と相性の良い銘柄と評価できる。
この記事の最終更新日:2025年12月23日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す