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Sansan(4443)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

Sansanとは

Sansan株式会社は、クラウド型名刺管理の法人向けサービスを日本でいち早く事業化した草分け的なSaaS企業である。名刺というアナログな情報をデータ化し、個人管理にとどまりがちだった人脈や取引情報を企業全体の資産として活用できる仕組みを構築した点に特徴がある。本社は東京都渋谷区に置き、法人向け・個人向け双方の名刺管理サービスを起点に、営業、経理、契約管理といった企業活動の中核業務をデータで支える事業を展開している。

同社の主力サービスである法人向け名刺管理サービスSansanは、名刺をスキャンしてデータ化し、企業内で一元管理、共有できるクラウドサービスである。名刺情報に企業情報や営業履歴をひも付けることで、営業活動の属人化を防ぎ、組織全体で顧客との関係性を可視化できる点が強みとなっている。2018年時点で導入企業数は約7000社、国内シェアは82%とされ、6年連続で市場シェア1位を獲得するなど、国内名刺管理SaaS分野で圧倒的なポジションを確立している。大企業や中堅企業を中心に導入が進んでおり、月額課金を基本とするストック型ビジネスモデルによって、安定した収益基盤を築いている。

Sansanは単なる名刺管理ツールではなく、名刺、企業情報、営業履歴といったビジネスデータを統合したビジネスデータベースとして位置付けられている。人と企業のつながりを可視化し、全社で共有することで、売上拡大と業務効率化、コスト削減を同時に実現することを目的としており、営業DXを支える中核サービスとなっている。

近年、同社は名刺管理で培ったデータ化技術やオペレーションを横展開し、バックオフィス領域へと事業を拡大している。その代表例が経理DXサービスのBill Oneである。Bill Oneは、請求書受領、経費精算、債権管理といった経理業務をデータ化し、業務プロセス全体の効率化を図るクラウドサービスである。紙やPDFで届く請求書を正確にデータ化し、経理担当者の作業負担を大幅に軽減するとともに、経理業務を起点に全社の働き方改革を進めるサービスとして成長している。名刺管理に次ぐ第二の柱として、同社の中長期的な成長を担う重要な事業と位置付けられている。

さらに、取引管理サービスとしてContract Oneを展開している。Contract Oneは、契約書をはじめとする取引書類をAIでデータ化し、契約条件や取引の変遷を可視化するサービスである。契約内容の見落としや管理ミスによる機会損失や信用低下を防ぎ、企業の利益を守ることを目的としている。営業部門や法務部門、経営層が契約情報を横断的に把握できる点が特徴で、取引の透明性向上に寄与している。

また、データクオリティマネジメント分野ではSansan Data Intelligenceを提供している。これは取引先データを常に最新かつ正確な状態に保つことで、企業内に蓄積されたデータの価値を高め、DX推進を後押しするサービスである。データの重複や陳腐化を防ぎ、営業やマーケティング、経営判断に活用できるデータ基盤を整備する役割を担っている。

個人向けには名刺管理アプリEightを展開している。Eightは、スマートフォンアプリ上で誰でも簡単にデジタル名刺を渡せるサービスで、名刺交換した相手の異動や転職などの情報が自動的に更新される点が特徴である。個人の人脈管理ツールとして利用されるだけでなく、イベントや企業向け機能を通じて法人サービスへの接点としても機能しており、同社のサービスエコシステムを支える基盤となっている。

Sansan株式会社は、名刺管理というニッチな領域から事業を立ち上げ、現在では営業、経理、契約、データ管理といった企業活動全体を横断するAXサービスを提供する企業へと進化している。非構造データを正確にデータ化し、企業の意思決定や業務効率を高めるという一貫した思想のもと、ストック型SaaSビジネスを軸に中長期的な成長を目指している。

Sansan 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益 EPS(円) 一株当たり配当(円)
連23.5 25,510 199 122 -141 -1.1 0
連24.5 33,878 1,337 1,224 953 7.6 0
連25.5 43,202 2,800 2,743 424 3.4 0
連26.5予 53,500 7,000 7,000 4,300 34.0 0
連27.5予 65,000 11,500 11,500 8,000 63.3 0

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023 3,848 1,364 523
2024 5,483 -3,180 1,431
2025 9,651 -2,550 -654

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率(%) ROE(%) ROA(%) PER(倍) PBR(倍)
2023 0.7 -1.2 -0.5
2024 3.9 6.8 2.5
2025 6.4 2.8 0.8 高値平均 519.8
安値平均 303.6
15.71

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず売上と利益の流れを見ると、2024年5月期の売上は338億円、2025年5月期は432億円、2026年5月期予想で535億円と、売上成長はかなり力強い。年率で見ても高い成長率が続いており、事業の拡大フェーズにあることは数字からはっきり分かる。トップラインに関しては疑いようがなく、需要自体は確実に伸びている局面だと言える。

営業利益を見ると、2024年5月期が13億円、2025年5月期が28億円、2026年5月期予想で70億円となっている。売上以上に利益の伸びが大きく、特に2026年5月期予想では利益が一気に跳ねている。この数字だけを見ると、規模拡大に伴って固定費負担が軽くなり、収益構造が改善し始めている段階に入っていると考えられる。

経常利益もほぼ同じ動きで、2024年5月期が12億円、2025年5月期が27億円、2026年5月期予想で70億円と、営業利益と同様に急成長の見通しになっている。少なくとも本業以外で大きく足を引っ張る要素はなく、事業そのものの収益力が上がっていく前提になっている。

一方で純利益を見ると、2024年5月期が9億円、2025年5月期が4億円と一度落ち込み、2026年5月期予想で43億円と急回復する形になっている。2025年5月期の純利益の弱さは、コストや投資、あるいは一時的な要因が影響していると考えられるが、少なくとも利益の安定性という点ではまだ発展途上だという印象は残る。

収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年が0.7%、2024年が3.9%、2025年が6.4%と、段階的に改善している。数字自体はまだ高いとは言えないが、確実に右肩上がりであり、スケールメリットが出始めている途中段階と捉えられる。ただし、この水準ではまだ成熟企業とは言えず、今後さらに上がることを市場が前提にしている状態だと感じる。

ROEは2023年がマイナス1.2%、2024年が6.8%、2025年が2.8%となっており、改善はしているものの安定感はない。ROAも2023年がマイナス0.5%、2024年が2.5%、2025年が0.8%と低水準にとどまっている。資本や資産を効率良く使って高いリターンを出している段階にはまだ入っておらず、効率面では評価しにくい数字である。

バリュエーションを見ると、2025年の実績PERは高値平均で519.8倍、安値平均でも303.6倍と、一般的な感覚では極端に高い。PBRも15.7倍と、資産価値から見ればかなり割高な水準にある。これらの数字は、現在の利益水準ではなく、将来の大幅な利益成長をほぼ前提として株価が形成されていることを示している。

以上を踏まえると、この銘柄は足元の利益やROE、ROAといった効率指標に対して、株価がかなり先を見に行っている状態だと感じる。売上成長と営業利益の改善は確かに強く、2026年5月期以降に予想どおり利益が伸びれば評価が維持される可能性はある。ただし、現時点では数字上の実力よりも期待の割合が大きく、少しでも成長が鈍化した場合にはPERの調整が起きやすい。

結論としては、成長性は高いが、数値だけを見る限り割安感はなく、かなり期待先行の水準にある銘柄だと判断できる。長期で事業の拡大を信じられる人向けの成長株であり、短期や安全重視の投資には向きにくい、リスクと期待が表裏一体の銘柄という印象になる。

配当目的とかどうなの?

配当目的かどうかという点について、結論から言うと配当目的には全く向かない。提示されている数値を見る限り、連26.5予の配当利回りは0.00%、連27.5予も0.00%であり、少なくとも向こう数年は現金配当を実施する前提になっていない。インカムゲインを期待して保有する理由は、この数字だけを見る限り存在しない。

これまでの利益推移を見ると、営業利益や経常利益は急拡大している一方で、純利益は年度によって振れがあり、ROEやROAもまだ低水準にとどまっている。この段階の企業が、成長投資よりも配当を優先するとは考えにくく、創出したキャッシュは事業拡大やプロダクト強化に回される局面だと読み取れる。

また、PERが300倍から500倍超という水準にあること自体、市場がこの銘柄を配当株ではなく、将来の利益成長によって株価が評価される成長株として見ていることを示している。仮に配当目的で保有した場合、配当は得られず、株価変動リスクだけを負う形になりやすい。

以上を踏まえると、この銘柄の位置付けは、配当を受け取りながら保有するインカム目的の銘柄ではなく、事業成長と利益拡大がどこまで続くかに賭けるキャピタルゲイン狙いの成長株である。したがって、配当を重視する投資家にとっては不適であり、配当目的であれば最初から候補から外すべき銘柄という判断になる。

今後の値動き予想!!(5年間)

Sansan株式会社は、現在株価1,732.0円を基準に見ると、安定配当を享受するインカム株ではなく、名刺管理を起点とした営業DX・経理DX・契約管理といった企業向けSaaSの拡大によって、利益成長がどこまで実現するかが株価を左右する期待先行型の成長企業と位置づけられる。売上高は高い成長率を維持しており、営業利益も拡大基調にあるものの、営業利益率はまだ6%台、ROEやROAも低水準にとどまっており、収益性と資本効率は発展途上にある。一方で、PERは300倍超から500倍超、PBRも15倍超と極めて高く、市場はすでに数年先の大幅な利益成長を織り込んでいる状態にある。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、Sansan本体の名刺管理サービスに加え、Bill Oneなどの周辺SaaSが想定以上に成長し、売上拡大とともに利益率改善が加速する展開を想定する。営業利益率は2桁に近づき、ROEも一桁後半から10%前後まで改善することで、成長の質が市場から評価される。この場合、現在の高いPER水準が大きく崩れることなく、利益成長に伴って株価も切り上がる。5年後の株価水準は3,500円から4,500円程度が視野に入り、現在値から2倍前後の上昇余地が意識される強気シナリオとなる。

中間のシナリオでは、売上成長と利益成長は続くものの、競争環境や人件費増などの影響で利益率の改善ペースは市場の高い期待をやや下回るケースを想定する。営業利益率は7〜9%程度で推移し、ROEやROAも緩やかな改善にとどまる。市場は成長企業としての評価を維持する一方で、PERは時間をかけて切り下がり、評価と成長のバランスを取る形になる。この場合、5年後の株価は1,800円から2,400円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。

悪い場合のシナリオでは、SaaS事業の成長が鈍化し、営業利益率の改善も頭打ちになる展開を想定する。利益成長が市場の期待に届かず、ROEやROAも低位にとどまることで、高いPERを支える前提が崩れる。この場合、評価調整が先行し、PERは大きく切り下がる可能性が高い。5年後の株価水準は800円から1,200円程度にとどまり、現在値から大きく下落する弱気シナリオとなる。

総合すると、現在株価1,732.0円を起点としたSansanの5年間の値動きは、良い場合で3,500円から4,500円前後、中間で1,800円から2,400円、悪い場合で800円から1,200円といったレンジが想定される。配当は見込めず、値動きの振れ幅も大きいため安定志向の投資には向かないが、事業成長が想定どおり進めば大きなリターンも狙える、典型的な期待先行型の成長株と評価できる。

この記事の最終更新日:2025年12月23日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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