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JMDCとは

株式会社JMDCは、健康保険組合などが保有する医療データを匿名加工し、製薬会社や医療機器メーカー、保険会社などに提供することを主力とするヘルスケアデータ企業である。オムロンの子会社として、医療・保険分野におけるビッグデータ活用を軸に事業を展開しており、日本における医療データ利活用の先駆的な存在として位置付けられている。
同社の中核は医療統計データサービスであり、健康保険組合に加入する本人および家族のレセプトデータ、健診データ、加入者台帳データなどを基盤としたJMDC Claims Databaseを構築・運用している。これらのデータは厳格な匿名加工を施したうえで提供され、製薬会社や医療機器メーカーにおける研究開発から市販後調査まで、リアルワールドデータに基づく分析や意思決定を支援している。臨床試験では把握しきれない実臨床での治療実態や患者動向を把握できる点が大きな強みであり、今後もデータ量やデータの種類を拡充し、提供可能なソリューションの幅を広げていく方針である。
ビッグデータの活用領域は製薬・医療機器分野にとどまらず、生損保分野にも広がっている。保険会社向けには、ヘルスケアデータを活用した商品設計、リスク分析、加入者向けサービスの高度化などを支援している。JMDC Claims Databaseを中核に、健保データに加えて、加入者が装着するウェアラブルデバイスから取得したデータをPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)経由で収集・分析する取り組みも進めており、保険事業におけるデータ活用の高度化を後押ししている。
保険者支援の分野では、健康保険組合や自治体が行う保健事業を包括的にサポートしている。紙・画像レセプトを含むレセプトデータ、健診データ、台帳データなどをデータベース化し、保健事業のPDCAサイクルを一気通貫で支援することで、データヘルス計画の推進を支えている。他の保険者との比較による医療費分析やハイリスク者の抽出といった実態把握型の分析を起点に、コンサルティング、詳細な分析レポートや個人宛通知物の作成、施策効果の検証までを行い、実効性の高い保健事業の実現を目指している。また、情報ポータルを通じて健康保険組合向けの情報発信も行っている。
ヘルスデータプラットフォームの分野では、JMDCが保有する膨大なデータを基に、さまざまなオンラインサービスを提供している。2023年3月時点で、約9億8,500万件のレセプトデータと約4,900万件の健診データを分析対象としており、国内最大級の医療データ基盤を有している。診療記録、検査結果、健診結果、処方薬情報などを集約するPHRサービスや、スマートフォンで利用できる医療相談サービス、さらには気象データと医療データを組み合わせた情報提供サービスなど、生活者向け・事業者向けの両面でサービス展開を進めている。
医療機関支援の分野では、病院内に蓄積されるレセプトデータやDPCデータ、各部門データを集計・分析し、経営の効率化や業務改革、医療の質向上を支援している。煩雑な事務作業の業務支援やデータ利活用の推進を通じて、医療機関がより効率的で質の高い医療を提供できる体制づくりを後押ししている。
全体としてJMDCは、医療・保険分野における膨大なリアルワールドデータを安全に匿名加工し、高度に活用することで、製薬会社、保険会社、医療機関、保険者といった多様なプレイヤーを支えるデータプラットフォーム企業である。医療DXの進展とともにデータの社会的価値が高まる中で、日本のヘルスケアデータ活用を牽引する存在として事業を拡大している。
JMDC 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 16,771 | 3,695 | 3,636 | 2,476 | 46.5 | 0 |
| 22.3 | 21,814 | 4,800 | 4,785 | 3,258 | 57.9 | 10 |
| 23.3 | 27,809 | 5,926 | 5,876 | 4,267 | 71.2 | 12 |
| 24.3 | 32,381 | 7,006 | 6,907 | 4,607 | 71.8 | 14 |
| 25.3 | 41,722 | 8,717 | 8,510 | 7,275 | 111.3 | 16 |
| 26.3予 | 50,500 | 11,500 | 11,000 | 7,400 | 113.1 | 16〜18 |
| 27.3予 | 56,000 | 13,000 | 12,500 | 8,400 | 128.4 | 16〜20 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 4,062 | -22,769 | 28,296 |
| 2024 | -17 | -24,864 | 16,581 |
| 2025 | 14,685 | -3,467 | 6,484 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 21.3 | 6.6 | 4.3 | – | – |
| 2024 | 21.6 | 6.5 | 3.7 | – | – |
| 2025 | 20.8 | 9.3 | 5.0 | 79.9(高)/39.4(安) | 3.07 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
売上高は24.3期に323億円、25.3期に417億円、26.3期予想で505億円と、3年で大きく拡大している。医療ビッグデータというストック型・積み上げ型の事業モデルを背景に、売上の成長スピードは非常に高い水準にある。
営業利益は24.3期に70億円、25.3期に87億円、26.3期予想で115億円と着実に増加しており、営業利益率も21.3%→21.6%→20.8%と、20%超の高水準を安定して維持している。データ提供型ビジネスとしては非常に収益性が高く、価格競争に陥りにくい強い事業構造がうかがえる。
経常利益も24.3期69億円、25.3期85億円、26.3期予想110億円と営業利益と同様に拡大しており、収益の質は安定している。純利益は24.3期46億円、25.3期72億円、26.3期予想74億円と高水準だが、25期から26期にかけては伸びがやや鈍化している点は一応の確認ポイントとなる。
一方で資本効率を見ると、ROEは6.6%→6.5%→9.3%、ROAは4.3%→3.7%→5.0%と、改善傾向ではあるものの水準自体は中程度にとどまる。高収益ビジネスである一方、資本を多く使うM&Aや投資を継続しているため、ROEが突出して高くならない構造といえる。
バリュエーション面では、2025年の実績PERは高値平均79.9倍、安値平均39.4倍、PBRは3.1倍と、明確に高評価ゾーンにある。営業利益率20%超、売上成長率も高いことを考えれば一定のプレミアムは妥当だが、PERは依然としてかなり高く、成長鈍化局面では株価調整が起きやすい水準でもある。
以上を踏まえると、この銘柄は高成長・高利益率の医療ビッグデータ事業を背景に、業績面の安心感は非常に高い一方、PER・PBRはすでに成長期待を織り込んだ水準にあり、割安感はない。そのため、短期的な指標面の割安さを狙う投資には向かず、医療データ市場の拡大を信じて中長期で業績の積み上がりを取りにいく「成長プレミアム容認型」の投資と相性が良い銘柄、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、この銘柄は配当目的にはほぼ向かない。26.3期、27.3期ともに予想配当利回りは0.42%と極めて低く、インカムを重視する投資家にとって魅力は乏しい水準である。配当額自体も利益水準に比べてかなり抑えられており、会社としては配当よりも成長投資を優先するスタンスが明確に表れている。
事業の性質上、JMDCは医療ビッグデータの拡充やM&A、システム投資などに継続的に資金を投下する必要があり、余剰資金を積極的に株主還元へ回す段階にはない。営業利益率は20%超と高水準だが、ROEが1桁台にとどまっている点からも、利益を配当で還元するより内部成長に振り向けている企業であることが分かる。
そのため、この銘柄は配当だけを目的に買うインカム株ではなく、配当はほぼおまけ程度で、株主還元の主軸は将来的な企業価値の拡大と株価成長に置かれている。
まとめると、高配当や安定配当を狙う投資には明確に不向きだが、医療データ市場の拡大と業績成長を信じて、株価の中長期的な上昇を狙うグロース寄りの投資と相性が良い銘柄という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
株式会社JMDCは、現在株価3,745.0円を基準に見ると、安定的な医療・保険データ基盤を強みとする成長寄りのデータプラットフォーム企業と位置付けられる。健康保険組合のレセプトデータや健診データを匿名加工したビッグデータを中心に、製薬・保険・医療機器メーカーや保険者支援、医療機関支援など複数の収益軸を確立している。利益率も高く、売上・利益の成長トレンドが続く一方で、PER水準は高めで成長期待が織り込まれている。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで整理すると以下のようになる。
良い場合のシナリオでは、医療データ活用の需要がさらに強まる展開を想定する。製薬や医療機器業界におけるリアルワールドエビデンス(RWE)案件が増加し、保険者支援やPHRを活用した新サービスの収益化が進むことで、売上・利益の伸びが市場予想を上回る展開となる。高収益性を維持しつつROE・ROAも改善が続き、PERが許容範囲で維持されると評価される。この場合、PERが上昇余地を残し、株価は5,500円〜6,500円程度までの上昇が期待でき、株価上昇と配当利回り(低いものの継続的)を合わせたトータルリターンも魅力的となる強気寄りのシナリオ。
中間のシナリオでは、医療・保険データの活用拡大は続くものの、競合環境の変化やデータ利活用への規制・プライバシー対応等で成長がやや鈍化するケースを想定する。売上・利益は緩やかな成長を続けるが、PERは現在値付近から大きな拡大は期待できない。業績は堅調に推移し、株価は企業業績と連動しながら次第に評価され、中期的には4,200円から5,000円程度のレンジで推移する中立的なシナリオとなる。配当は依然低水準のため、株価の値動きが投資リターンの主軸となる。
悪い場合のシナリオでは、医療データ利活用をめぐる法規制の厳格化や、主要顧客企業の投資抑制が重なってデータ提供・分析サービスの成長が停滞する展開を想定する。利益成長が停滞することでPERが低下し、株価の評価が割安方向へシフトする可能性がある。この場合、株価は3,000円〜3,400円程度に下落し、短期的な調整局面となる弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価3,745.0円を起点としたJMDCの5年間の値動きは、良い場合で5,500円〜6,500円前後、中間で4,200円〜5,000円、悪い場合で3,000円〜3,400円程度といったレンジが想定される。配当利回りは低水準だが、高収益性と医療・保険データの成長ポテンシャルを背景に、中長期での値上がりを狙う投資と相性の良い銘柄という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月24日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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