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ロート製薬とは

ロート製薬は1899年創業の老舗製薬会社であり、日本におけるセルフメディケーション分野を代表する企業である。本社は大阪府大阪市に置き、東京証券取引所プライム市場に上場している。創業以来一貫して一般用医薬品を中心に事業を展開しており、医療用医薬品には原則として参入しないという独自の戦略を採ってきた点が大きな特徴である。
同社の最大の強みは、一般用医薬品の目薬分野における圧倒的な競争力である。国内では長年トップシェアを維持しており、世界的に見ても一般用目薬メーカーとして首位級のポジションを確立している。単なる目薬メーカーではなく、洗眼薬、コンタクトレンズ、レンズケア用品までを含めたアイケア製品を総合的に展開することで、目に関する日常的な悩みを幅広くカバーする事業構造を築いている。
一般用目薬で培った研究開発力や処方技術を背景に、製品数は非常に多く、症状別や使用シーン別に細かく商品を展開する戦略を取っている。これによりドラッグストアなどの店頭で高い視認性と存在感を持ち、安定した販売実績につながっている。訪日外国人観光客からの人気も高く、日本製の目薬ブランドとして海外での認知度も年々高まっている。
近年、事業のもう一つの柱として成長しているのがスキンケア事業である。肌研をはじめとするスキンケアブランドは、機能性と価格のバランスが評価され、国内外で急速に販売を拡大している。医薬品メーカーとしての皮膚科学の知見や研究データを活かした商品開発が強みであり、単なる化粧品メーカーとは異なる信頼感を武器としている。
スキンケア事業は特にアジア市場との相性が良く、中国や東南アジアを中心に高い成長を続けている。現地のニーズに合わせた商品投入やマーケティングを行い、海外売上比率の上昇に大きく貢献している。ロート製薬は国内市場の成熟を見据え、早い段階から海外展開に力を入れてきた企業であり、この点が中長期成長を支える重要な要素となっている。
また、健康食品やサプリメント分野にも事業を広げており、日常的な健康維持を目的とした製品群を展開している。医薬品と食品の中間領域に位置する商品を多く持ち、セルフケア市場全体を取り込む戦略を進めている点も特徴的である。
生産体制としては、大阪と三重に工場を持ち、研究開発拠点は大阪、三重、京都に配置されている。研究開発から製造までを自社グループ内で完結させる体制を構築しており、品質管理や商品開発スピードの面で強みを発揮している。加えて、大阪梅田エリアにもオフィスを構え、研究や事業開発、人材確保の拠点として活用している。
グループとしては米国のメンソレータム社を傘下に持ち、グローバルブランドの展開も進めている。これにより、日本発の一般用医薬品メーカーでありながら、世界市場でのプレゼンスを持つ点がロート製薬の特徴となっている。全体としてロート製薬は、一般用目薬という強固な収益基盤を持ちながら、スキンケアや健康食品、海外事業を成長エンジンとして育てている企業である。ディフェンシブな側面と成長性を併せ持ち、安定性と拡張性を両立した事業構造を志向するヘルスケア企業と位置付けられる。
ロート製薬 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 181,287 | 22,990 | 23,910 | 16,743 | 73.4 | 14 |
| 連22.3 | 199,646 | 29,349 | 29,084 | 21,018 | 92.1 | 18 |
| 連23.3 | 238,664 | 33,959 | 35,568 | 26,377 | 115.6 | 22 |
| 連24.3 | 270,840 | 40,048 | 42,434 | 30,936 | 135.6 | 27 |
| 連25.3 | 308,625 | 38,939 | 40,430 | 31,006 | 136.1 | 36 |
| 連26.3予 | 338,500 | 39,500 | 44,000 | 32,000 | 141.6 | 43 |
| 連27.3予 | 370,000 | 43,000 | 45,000 | 33,000 | 146.0 | 46〜47 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 30,924 | -13,176 | -16,199 |
| 2024.3 | 34,245 | -16,317 | -13,784 |
| 2025.3 | 36,917 | -89,170 | 35,319 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 14.2 | 12.6 | 8.5 | ― | ― |
| 2024.3 | 14.7 | 12.5 | 8.9 | ― | ― |
| 2025.3 | 12.6 | 11.9 | 7.3 | 27.2(高)/16.5(安) | 2.19 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず売上と利益の規模を見ると、売上高は2024年3月期で2,708億円、2025年3月期で3,086億円、2026年3月期予想で3,385億円と着実に拡大している。売上成長自体は安定しており、事業基盤が崩れている様子は見られない。
営業利益は2024年3月期400億円、2025年3月期389億円、2026年3月期予想395億円で、一度減少した後に横ばいから小幅回復という形になっている。経常利益も2024年424億円、2025年404億円、2026年予想440億円と、変動はあるものの水準自体は高く、利益の絶対額は安定している。純利益についても2024年309億円、2025年310億円、2026年予想320億円と、ほぼ横ばいから緩やかな増加にとどまっている。
次に収益性を見ると、営業利益率は2023年14.2%、2024年14.7%と一度上昇した後、2025年には12.6%まで低下している。依然として高い水準ではあるが、ピークアウトして低下局面に入ったことは数字上は明確である。ROEは2023年12.6%、2024年12.5%、2025年11.9%とわずかずつ低下しており、ROAも2023年8.5%、2024年8.9%、2025年7.3%と2025年に大きく落ち込んでいる。資本効率、資産効率ともに良好な水準を保ってはいるものの、改善トレンドではなく、やや弱含みに転じていると評価できる。
株価評価の面では、2025年実績PERは高値平均で27.2倍、安値平均で16.5倍とレンジが広い。利益成長が緩やかな中で27倍台は明らかに高評価であり、成長期待を強く織り込んだ水準である。一方、16倍台まで下がる局面であれば、安定成長企業としては妥当水準に近づく。実績PBRは2.1倍で、ROEが低下傾向にある状況を踏まえると、こちらも割安とは言いにくい水準である。
以上を総合すると、ロート製薬は売上規模と利益水準が安定しており、事業の強さは数字からも確認できる。一方で、営業利益率、ROE、ROAはいずれも2025年に低下しており、収益性と効率性は拡大局面から調整局面に移行している。
この状態でPER高値水準を正当化するだけの成長加速は、今回提示された数値からは読み取れない。そのため投資判断としては、成長株として積極的に高値を追う局面ではなく、PERが安値レンジに近づいた場面での検討、もしくは既に保有している場合は保有継続が妥当という評価になる。数字だけを見る限り、安定性は高いが割高感には注意が必要、というのが結論である。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは、2026年3月期で1.61%、2027年3月期で1.72%となっている。この水準は日本株全体の平均と比べても低く、明確にインカムゲインを狙う投資先とは言いにくい。一方で、これまでの業績を見ると、売上や利益は大きく崩れておらず、配当額自体は増配基調にある。つまり、減配リスクが高い企業ではなく、配当の安定性という点では一定の安心感はある。ただし、その安定性は配当利回りの低さと引き換えになっている。
また、営業利益率、ROE、ROAが直近で低下していることを踏まえると、今後も配当利回りが大きく跳ね上がるような前提は置きにくい。配当性向を急激に引き上げる余地はあるものの、少なくとも提示された数字の範囲では、株価水準に対して配当が魅力的とは言えない。
結論として、ロート製薬は「配当をもらうために買う銘柄」ではない。配当はあくまでおまけであり、主目的は事業の安定性や中長期での企業価値維持に置かれる。インカム重視であれば他に利回りの高い選択肢は多く、この銘柄はキャピタルかディフェンシブな保有を前提にした補助的な配当、と割り切る必要がある。
今後の値動き予想!!(5年間)
ロート製薬は、現在株価2,664.5円を基準に見ると、高配当を狙う典型的なインカム株というよりも、一般用医薬品を中核に安定した事業基盤を持ちながら、スキンケアや海外展開によって中長期の企業価値成長を積み上げていくディフェンシブ寄りの成長株と位置づけられる。目薬を中心とした一般用医薬品では世界トップクラスのシェアを持ち、売上規模と利益水準は安定している一方、直近では営業利益率、ROE、ROAがやや低下しており、収益性と資本効率は調整局面に入っている。配当は増配基調ではあるが利回りは1%台後半にとどまり、投資リターンの主軸は配当ではなく株価の安定推移と緩やかな上昇にある。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、一般用医薬品の安定収益を土台に、スキンケア事業と海外事業が想定以上に伸び、売上成長とともに利益率が回復する展開を想定する。営業利益率は再び14%前後まで戻り、ROEも12%台後半へ回復することで、収益性の低下懸念が払拭される。この場合、市場はロート製薬を安定成長株として再評価し、PERは過去の高値圏に近い25倍前後が許容される可能性がある。5年後にEPSが180円前後まで成長すると仮定すれば、株価水準は4,300円から4,600円程度が視野に入り、現在値から1.6倍前後の上昇を見込む強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、売上は着実に伸びるものの、原価上昇や販促費の増加により営業利益率の回復は限定的にとどまるケースを想定する。営業利益率は12%前後、ROEは11%台で安定し、急成長でも失速でもない状態が続く。この場合、市場評価は落ち着いた水準に収まり、PERは20倍前後、PBRも2倍前後で推移する可能性が高い。5年後のEPSが160円程度まで伸びるとすると、株価は3,100円から3,300円程度が目安となり、現在値からは緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。配当を含めたトータルリターンは小幅なプラスに落ち着く可能性が高い。
悪い場合のシナリオでは、スキンケアや海外事業の成長が鈍化し、コスト増を吸収できずに収益性の低下が続く展開を想定する。営業利益率は11%を下回り、ROEやROAもさらに低下することで、成長期待は後退する。この場合、市場評価は保守的になり、PERは安値平均に近い16倍前後まで低下する可能性がある。EPSが150円前後にとどまると仮定すると、5年後の株価水準は2,300円から2,500円程度となり、現在値をやや下回るか横ばい圏で推移する弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価2,664.5円を起点としたロート製薬の5年間の値動きは、良い場合で4,300円から4,600円前後、中間で3,100円から3,300円、悪い場合で2,300円から2,500円といったレンジが想定される。配当利回りは低めであるため、インカム目的には不向きだが、事業の安定性と緩やかな成長を前提に、値崩れリスクを抑えつつ中長期での企業価値の積み上がりを狙う投資と相性の良い銘柄と評価できる。
この記事の最終更新日:2025年12月24日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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