株価
持田製薬とは

持田製薬は医薬品業界では中堅に位置する製薬会社であり、主に医療用医薬品を開発、製造、販売する研究開発型の企業である。本社は東京都新宿区に置き、東証プライム市場に上場している。大手のように幅広い領域を網羅するのではなく、特定分野に強みを持つ専門性重視の事業構造が特徴で、安定性を重んじた堅実な経営を続けてきた企業といえる。
事業の中核は医薬品事業であり、特に循環器系領域に強みを持つ。高脂血症治療薬のエパデールや、高血圧治療薬のアテレック、アテディオなどは、長期服用が前提となる慢性疾患向け医薬品であり、同社の安定収益を支える基盤となっている。循環器系は処方の継続性が高く、医師との信頼関係も重要な分野であるため、長年の実績を持つ持田製薬にとっては強固なポジションを築いている領域といえる。
婦人科系領域も同社の大きな特徴であり、子宮内膜症治療薬のディナゲストや、GnRH誘導体製剤であるスプレキュアなど、専門性の高い医薬品を展開している。産婦人科領域は競合が比較的限られるケースも多く、一定の市場シェアを安定的に確保しやすい分野であるため、持田製薬にとっては循環器系と並ぶ重要な収益源となっている。
そのほか、救急領域や皮膚科領域、消化器系にも製品を持ち、医療現場の幅広いニーズに対応している。ミラクリッドやトロンビンといった救急・止血関連薬、皮膚科向けの抗真菌薬などは、ニッチながら医療現場で欠かせない存在となっている。消化器系については、現時点では主力ではないものの、今後の育成領域として位置付けられており、事業ポートフォリオの広がりを支える役割を担っている。
研究開発については、自社開発に加えて他社との共同販売や導入品も活用している。トラムセットのように海外製薬企業とのコ・プロモーションを行うことで、研究開発リスクを抑えながら製品ラインアップを拡充している点も同社の特徴である。大型の新薬創出で一気に成長するというよりも、確実性を重視した製品展開を行う姿勢が一貫している。
医薬品以外では、持田ヘルスケアを通じたヘルスケア事業も展開している。皮膚科学に基づいた敏感肌向けスキンケア製品を中心に、コラージュやフルフルといったブランドを展開しており、医療用医薬品で培った皮膚科領域の知見を一般消費者向け製品に活かしている。規模は医薬品事業に比べると小さいが、収益の補完とブランド認知の向上に寄与している。
全国に営業拠点を持ち、循環器や婦人科といった専門領域を中心に、医療機関との密接な関係を築いている点も同社の強みである。全体として持田製薬は、高脂血症薬や降圧薬を中心とした循環器系、婦人科系に強みを持つ中堅製薬会社であり、消化器系の育成や化粧品事業を組み合わせながら、安定性と専門性を重視した事業運営を続ける企業と位置付けられる。
持田製薬 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 102,995 | 12,003 | 12,260 | 8,587 | 222.3 | 90 |
| 連22.3 | 110,179 | 14,392 | 14,799 | 10,569 | 277.4 | 90 |
| 連23.3 | 103,261 | 8,507 | 9,085 | 6,649 | 178.9 | 80 |
| 連24.3 | 102,885 | 5,802 | 6,037 | 4,547 | 126.8 | 80 |
| 連25.3 | 105,159 | 8,126 | 8,067 | 5,685 | 160.4 | 80 |
| 連26.3予 | 111,000 | 8,000 | 9,500 | 6,500 | 183.4 | 80 |
| 連27.3予 | 116,000 | 8,500 | 10,500 | 7,500 | 211.6 | 80 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 7,297 | -2,949 | -6,884 |
| 2024.3 | -7,480 | 74 | -6,393 |
| 2025.3 | 9,354 | 17,355 | -2,865 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 8.2 | 5.2 | 4.1 | ― | ― |
| 2024.3 | 5.6 | 3.5 | 2.8 | ― | ― |
| 2025.3 | 7.7 | 4.3 | 3.5 | 24.5(高)/19.6(安) | 0.9 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模と利益水準を確認する。売上高は2024年3月期で1,028億円、2025年3月期で1,051億円、2026年3月期予想で1,110億円と、緩やかながら増加傾向にある。高い成長率を示しているわけではないが、減少局面には入っておらず、事業規模は安定的に推移しているといえる。
営業利益は2024年3月期で58億円、2025年3月期で81億円と回復したものの、2026年3月期予想では80億円とほぼ横ばいである。経常利益は2024年60億円、2025年80億円、2026年予想95億円と増加基調にあり、純利益も2024年45億円、2025年56億円、2026年予想65億円と改善が続いている。利益水準そのものは高いとは言えないが、底打ち後の回復局面にあることは数字から読み取れる。
次に収益性と効率性を見る。営業利益率は2023年8.2%、2024年5.6%と低下した後、2025年には7.7%まで持ち直している。ただし依然として一桁台にとどまっており、収益性が十分に高い水準とは言い難い。ROEは2023年5.2%、2024年3.5%、2025年4.3%と低位で推移しており、ROAも4.1%、2.8%、3.5%と同様に低水準である。資本効率、資産効率ともに改善の兆しは見られるものの、評価を大きく引き上げるほどの水準には達していない。
株価評価について見ると、2025年実績PERは高値平均で24.5倍、安値平均で19.6倍となっており、成長性や収益力を踏まえるとやや高めの水準といえる。一方、実績PBRは0.9倍と1倍を下回っており、資産価値の観点では一定の下支えが意識されやすい状況にある。
以上を総合すると、持田製薬は売上と利益が底打ちから緩やかに回復している段階にあり、事業の安定性は一定程度確保されている。一方で、営業利益率、ROE、ROAはいずれも低位にとどまり、事業の収益性や資本効率が高いとは言えない。成長性も限定的であり、高いPERを正当化できるほどの勢いは、提示された数値からは確認できない。
投資判断としては、成長期待を前提に積極的に評価を引き上げる局面ではなく、基本的には慎重姿勢が妥当と考えられる。ただしPBRが1倍を下回っている点から、資産価値を意識した下値の堅さは一定程度期待できる。結論として、持田製薬は高成長株でも高収益株でもなく、回復途上にある安定型の中堅製薬会社であり、割安感が明確になった局面でのみ検討余地が生じる銘柄、という位置付けになる。
配当目的とかどうなの?
配当目的としてどうかを、提示された利回りの数字と直近の業績水準だけを前提に整理する。予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに2.32%となっており、日本株全体の中では低めから中程度の水準に位置する。高配当株と呼べる水準ではなく、インカム収入を主目的とする投資家にとっては物足りなさが残る利回りである。
業績を見ると、売上と利益は底打ち後に緩やかな回復局面にあり、純利益も増加基調にある。一方で営業利益率、ROE、ROAはいずれも低位にとどまっており、事業の収益性や資本効率が高いとは言えない。この水準を踏まえると、配当を積極的に引き上げていける余力は限定的であり、今後も配当は現状維持を基本とした保守的なスタンスが続く可能性が高い。
実際に配当利回りが2.3%台で横ばいという点からも、持田製薬の配当は業績拡大による成長型の増配を狙うものではなく、安定性を重視した最低限の株主還元という性格が強いといえる。業績が大きく悪化しない限り減配リスクは高くないが、反対に配当利回りが大きく上昇する展開も想定しにくい。
結論として、持田製薬は配当目的としての魅力は強くない。高配当を狙うインカム投資には向かず、配当はあくまで補助的な位置付けとなる。一方で、PBRが1倍を下回る水準にあり、業績が安定していることを踏まえると、値下がりリスクを抑えつつ小幅な配当を受け取る守り寄りの投資とは相性がある。配当を主目的に買う銘柄ではなく、回復途上の安定型中堅製薬会社として、値動きと配当を合わせて評価するタイプの銘柄、という位置付けになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
持田製薬は、現在株価3,435.0円を基準に見ると、急成長を期待するグロース株や高配当を狙うインカム株というよりも、循環器系や婦人科系を中心とした医療用医薬品で安定した事業基盤を持ち、業績回復の度合いによって評価が変わる中堅のディフェンシブ寄り製薬会社と位置づけられる。高脂血症薬や降圧薬など慢性疾患向け医薬品を主力とし、一定の需要が見込める一方で、直近では営業利益率、ROE、ROAはいずれも低位にとどまり、収益性と資本効率は高いとは言えない。配当利回りも2%台前半と控えめであり、投資リターンは配当よりも株価の安定性と緩やかな値動きに依存する構造である。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、循環器系や婦人科系の主力製品が安定して推移する中で、消化器系領域の育成が進み、売上と利益が想定以上に改善する展開を想定する。営業利益率は一桁後半から二桁近辺まで回復し、ROEやROAも徐々に改善することで、低収益体質との見方が修正される。この場合、市場は持田製薬を安定成長型の医療用医薬品企業として再評価し、PERは18〜22倍程度が許容される可能性がある。利益水準が着実に改善する前提では、5年後の株価水準は4,800円から5,500円程度が目安となり、現在値からは中程度の上昇を見込める強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、売上は緩やかに増加するものの、利益率の改善は限定的にとどまり、営業利益率、ROE、ROAはいずれも低位で安定するケースを想定する。市場評価も大きく変化せず、PERは15〜18倍程度、PBRは1倍前後で推移する。この場合、5年後の株価は3,600円から4,200円程度と、現在値からは小幅な上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。配当を含めたトータルリターンは限定的だが、下値も比較的堅い展開が想定される。
悪い場合のシナリオでは、薬価改定の影響や主力領域での競争激化により、利益回復が再び鈍化する展開を想定する。営業利益率は再度低下し、ROE、ROAも改善が見られないままとなる。この場合、市場は成長期待をさらに後退させ、PERは10〜13倍程度まで切り下がる可能性がある。業績が横ばいから弱含みに転じた場合、5年後の株価水準は2,300円から2,800円程度にとどまり、現在値を下回る弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価3,435.0円を起点とした持田製薬の5年間の値動きは、良い場合で4,800円から5,500円前後、中間で3,600円から4,200円、悪い場合で2,300円から2,800円といったレンジが想定される。高い成長を狙う銘柄ではなく、業績の安定性と回復度合いを見極めながら中長期で保有する投資と相性の良い銘柄であり、値上がり益は緩やかだが、大きなブレは起こりにくいタイプの企業と評価できる。
この記事の最終更新日:2025年12月24日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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