株価
ツムラとは

株式会社ツムラは、1893年創業の日本を代表する漢方薬メーカーであり、東京都港区赤坂に本社を置く。コーポレート・スローガンは「自然と健康を科学する」で、医療用漢方薬を中核とした事業展開を行っている。現在は「漢方のツムラ」という表記を前面に出し、漢方分野に特化した専門性を明確にしている。
同社の起源は、創業者である津村重舎が奈良から上京し、日本橋に漢方薬局を開いたことに始まる。創業当初から婦人保健薬「中将湯」を主力商品として展開し、その後も胃腸薬「ヘルプ」などを発売した。中将湯の製造過程で生まれた副産物を入浴に用いた経験をきっかけに「くすり湯中将湯」が開発され、これが後の「バスクリン」へとつながるなど、生活関連分野にも影響を与えてきた。
1936年に株式会社津村順天堂として法人化され、1988年に現在の社名であるツムラへと変更された。1980年代には多角化経営を進め、化粧品、雑貨、海外での日用品事業などを展開したが、バブル崩壊後に多くが不採算となり経営を圧迫した。この反省を踏まえ、1995年以降は経営改革を進め、医療用漢方製剤に経営資源を集中する方針へと大きく転換している。
その結果、現在のツムラは医療用漢方薬で国内シェア8割超という圧倒的な地位を確立している。特に、高齢者医療、がん支持療法、女性関連疾患の3領域を重点分野として位置付け、医療現場での漢方薬の活用を深掘りしている点が特徴である。高齢化社会の進展に伴い、慢性疾患や体力低下、複合症状への対応として漢方薬の需要は堅調であり、ツムラはその最大の受益者となっている。
製品面では、医療用漢方エキス顆粒を中心に、葛根湯、小青竜湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、防風通聖散など、医療機関で広く処方される処方群を多数展開している。加えて、漢方内服液、錠剤、トローチなど剤形の多様化にも取り組み、服用しやすさや用途別の使い分けにも対応している。一般用医薬品としては、中将湯をはじめとする婦人薬、尿トラブル改善薬、滋養強壮薬なども手掛けており、OTC漢方分野でも一定の存在感を持つ。
事業の根幹には、生薬の安定調達と品質管理がある。ツムラは中国をはじめとする海外産地での生薬栽培支援やトレーサビリティ確保に力を入れており、原料段階から品質を管理する体制を構築している。これは医療用漢方薬で高い信頼を維持するための重要な競争力となっている。
総合すると、ツムラは多角化の失敗を経て、医療用漢方薬に特化することで再成長を遂げた企業であり、現在では高齢化社会と親和性の高いビジネスモデルを確立している。医療用漢方薬で圧倒的な市場支配力を持ち、重点3領域を軸に市場深耕を進める、安定性と専門性を兼ね備えた漢方専業メーカーとして位置付けられる。
ツムラ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 130,883 | 19,382 | 20,866 | 15,332 | 200.4 | 64 |
| 連22.3 | 129,546 | 22,376 | 25,904 | 18,836 | 246.2 | 64 |
| 連23.3 | 140,043 | 20,916 | 23,453 | 16,482 | 215.6 | 64 |
| 連24.3 | 150,845 | 20,017 | 23,493 | 16,707 | 219.8 | 85 |
| 連25.3 | 181,093 | 40,125 | 42,446 | 32,428 | 427.2 | 136 |
| 連26.3予 | 198,000 | 35,000 | 34,500 | 24,300 | 326.9 | 144 |
| 連27.3予 | 230,000 | 40,000 | 39,500 | 27,600 | 371.3 | 144〜160 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 16,452 | -15,493 | 24,423 |
| 2024.3 | 5,608 | -19,351 | -4,417 |
| 2025.3 | 33,823 | -24,974 | -19,871 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 14.9 | 6.5 | 4.1 | ― | ― |
| 2024.3 | 13.2 | 6.1 | 3.9 | ― | ― |
| 2025.3 | 22.1 | 10.7 | 6.9 | 15.3(高)/10.4(安) | 1.04 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
売上高は2024年3月期で1,508億円、2025年3月期で1,810億円、2026年3月期予想で1,980億円と、ここ数年で明確な拡大局面に入っている。特に2025年は売上が一段と伸びており、事業規模そのものがワンランク上がった印象を受ける。
営業利益は2024年に200億円、2025年には401億円とほぼ倍増しており、2026年予想では350億円とやや減少するものの、高水準を維持する見通しである。経常利益も2024年234億円、2025年424億円と大きく伸び、2026年予想では345億円と調整が見込まれている。純利益は2024年167億円から2025年324億円へと急拡大し、2026年予想では243億円と減少するものの、2024年を上回る水準である。利益は2025年がピークだが、構造的に稼ぐ力が高まったことは数字から読み取れる。
次に収益性と効率性を見る。営業利益率は2023年14.9%、2024年13.2%とやや低下した後、2025年には22.1%まで大きく改善している。これは一時的な要因も含まれる可能性はあるが、製薬企業としてはかなり高い水準であり、収益力が一段階引き上がったと評価できる。ROEは2023年6.5%、2024年6.1%から、2025年には10.7%まで上昇しており、資本効率も明確に改善している。ROAも2023年4.1%、2024年3.9%から、2025年には6.9%まで上昇しており、資産を使った稼ぐ力も強まっている。
株価評価を見ると、2025年実績PERは高値平均15.3倍、安値平均10.4倍と、業績の伸びを考えると過度に割高な水準ではない。実績PBRは1.0倍前後であり、資産価値と市場評価がほぼ釣り合っている状態にある。高成長が強く織り込まれているわけではなく、業績の安定性と収益力をベースにした妥当な評価水準といえる。
以上を総合すると、2025年にかけて売上・利益ともに大きく伸び、営業利益率、ROE、ROAも明確に改善している点は非常に評価できる。2026年は利益調整が見込まれているものの、2024年以前と比べれば高い利益水準を維持する見通しであり、業績の基礎体力は確実に強化されている。
投資判断としては、高成長株というよりも「収益力が一段上がった安定成長型製薬会社」という位置付けになる。PER・PBRともに極端な割高感はなく、業績が大きく崩れない限り評価が大きく下がるリスクは限定的と考えられる。結論として、ツムラは直近の業績改善を背景に中期的な安定成長が期待できる銘柄であり、過度な期待をかけず、収益力の維持を確認しながら保有を検討できる水準にある、という評価になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で見ると、ツムラは「悪くはないが、純粋な高配当株ではない」という位置付けになる。2026年3月期、2027年3月期ともに予想配当利回りは3.49%と、製薬株の中では比較的しっかりした水準にある。定期預金や債券と比べれば明確に高く、インカム要素を一定程度期待できる水準ではある。
ただし、ツムラの配当は「高配当を売りにしている銘柄」というより、「業績拡大に伴って結果的に配当水準が上がってきた銘柄」に近い。実際、直近数年で利益が大きく伸び、それに合わせて配当も増額されているが、もともと利回り重視で設計された配当政策ではない。
業績面を見ると、2025年に利益が大きく拡大し、2026年はやや調整が見込まれているものの、それでも2024年以前と比べれば高い利益水準を維持する見通しである。営業キャッシュフローも安定しており、配当の原資という点では無理のない範囲に収まっている。このため、短期的に配当が不安定になるリスクは高くない。
一方で、ツムラは今後も原料生薬の安定調達、研究開発、海外展開などに一定の投資を続ける必要があり、配当性向を大きく引き上げてインカム株化する可能性は高くない。増配余地はあるものの、緩やかで段階的なものになると見るのが現実的である。
総合すると、ツムラは「配当を主目的に長期保有する銘柄」としてはやや中途半端だが、「業績成長+ほどほどの配当」を同時に狙う投資とは相性が良い。高利回りだけを求めるインカム投資家には物足りない一方で、安定した事業基盤を背景に、3%台半ばの利回りを受け取りながら中期保有するには十分に検討価値がある。結論として、ツムラの配当は「主役」ではなく「安心材料の一つ」として捉えるのが適切であり、配当をもらいながら業績の安定成長を見守るタイプの投資に向いた銘柄、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ツムラは医療用漢方薬で国内シェア8割超を持つ圧倒的な専業メーカーであり、高齢者医療、がん支持療法、女性関連という需要が構造的に伸びやすい分野を重点領域としている。直近では売上・利益ともに大きく伸び、営業利益率も20%超まで改善するなど、収益力が一段引き上がった局面にある。一方で、漢方薬は急成長産業ではなく、業績は安定成長型であることから、株価の評価は業績の持続性と利益水準に左右されやすい。この前提を踏まえて、現在の価格(4,121.0円)から今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、医療用漢方薬の需要が高齢化の進行とともに安定的に拡大し、がん支持療法や女性関連領域での処方拡大が進む展開を想定する。原料生薬の調達やコスト管理も安定し、高水準の営業利益率が維持されることで、ROEも10%前後を保つ。この場合、市場はツムラを「高収益・安定成長の医薬品企業」として評価し、PERは15〜18倍程度が許容され、PBRも1.2倍前後まで上昇する可能性がある。5年後の株価水準は5,500円から6,500円程度が目安となり、現在値からは緩やかだが着実な上昇を期待できる強気寄りのシナリオとなる。
中間のシナリオでは、売上は引き続き増加するものの、2025年に見られた高い利益水準はやや調整され、営業利益率は15〜18%程度で安定するケースを想定する。業績は堅調だがサプライズは少なく、市場評価も現在水準を大きく上回らない。この場合、PERは12〜15倍、PBRは1倍前後で推移し、株価は4,000円から4,800円程度のレンジでの推移となる。配当を受け取りながら、緩やかな値上がりを期待する中立的なシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、医療用漢方薬の市場成長が想定より鈍化し、薬価改定や原料生薬コストの上昇によって利益率が低下する展開を想定する。営業利益率が一桁後半から10%台前半まで落ち込み、ROEも再び一桁台にとどまる場合、市場の評価は慎重になる。この場合、PERは10倍前後まで低下し、PBRも0.8倍程度まで調整する可能性がある。5年後の株価水準は3,000円から3,600円程度にとどまり、現在値を下回る弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価4,121.0円を起点としたツムラの5年間の値動きは、良い場合で5,500円から6,500円前後、中間で4,000円から4,800円程度、悪い場合で3,000円から3,600円程度といったレンジが想定される。高成長株のような急騰は期待しにくいものの、事業の安定性と収益力を背景に、配当を受け取りながら中長期で緩やかな値上がりを狙う投資と相性の良い銘柄と評価できる。
この記事の最終更新日:2025年12月24日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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