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ゼリア新薬工業とは

ゼリア新薬工業株式会社は、日本の中堅製薬会社の中でも、医療用医薬品と一般用医薬品の両分野を長年にわたってバランス良く手がけてきた企業で、本社は東京都中央区に置いている。1955年の設立以来、「健康づくりは幸せづくり」というスローガンのもと、治療から予防、日常の体調管理までを視野に入れた事業展開を続けてきた。
医療用医薬品では、消化器系領域を中核とする専門性の高い製品構成が特徴となっている。胃・腸疾患や消化管機能改善、炎症性腸疾患といった分野に強みを持ち、プロマック、アシノン、アサコール、アコファイドなどの製品は、消化器内科領域で一定の認知と実績を積み重ねてきた。革新的な新薬を次々と生み出すタイプではないものの、特定領域に集中し、医療現場で長く使われる医薬品を安定供給することで収益基盤を築いている点が同社の特徴といえる。
一方、一般用医薬品、いわゆるコンシューマーヘルスケア分野はゼリア新薬工業のもう一つの大きな柱である。コンドロイチン硫酸エステルナトリウムを主成分とするコンドロイチンZS錠は、同社の原点ともいえる製品で、関節や腰の不調を訴える中高年層を中心に長年支持されてきたトップブランドとなっている。また、滋養強壮剤のヘパリーゼは、液体胃腸薬やドリンク、健康食品など多様な形態で展開され、二日酔いや疲労回復のイメージが広く浸透した看板商品として、同社の収益と知名度を支えている。
このほかにも、目薬のビュークリアシリーズ、風邪関連のセピーシリーズ、滋養強壮薬のハイゼリーやコンクレバンなど、ドラッグストア向けの製品ラインアップは幅広く、医療用医薬品とは異なる安定収益源として機能している。医療用で培った成分や技術を一般用に応用することで、他社との差別化を図っている点も同社の強みといえる。
海外展開については、2009年にスイスの製薬会社ティロッツ社を買収したことが大きな転機となった。これによりゼリアグループは、スイスを研究開発の拠点とし、欧州を中心に複数の国で医薬品の製造・販売を行う体制を構築した。スウェーデン、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、チェコ、デンマークに加え、ベトナムなどにも事業を広げており、国内依存型だった事業構造から、海外を含めた分散型の収益構造へと変化している。医薬品の開発そのものをスイスで行っている点も、同社の国際展開の特徴となっている。
研究開発においては、消化器系領域を中心に自社開発を継続しつつ、海外子会社の知見や外部との連携を活用することで、パイプラインの維持と拡充を図っている。製造面では品質管理と安定供給を重視し、医療用と一般用の双方で信頼性を確保する姿勢を取っている。
全体としてゼリア新薬工業は、医療用では消化器系に特化した専門性、一般用ではヘパリーゼやコンドロイチン製剤といった強いブランド力を持ち、さらにスイス企業の買収を通じて海外展開も取り込んだ、バランス型の製薬中堅企業といえる。急成長を狙うタイプではないが、医療と生活の両面から健康を支える事業構造を背景に、安定性と持続性を重視した経営を続けている点が同社の本質的な特徴となっている。
ゼリア新薬工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 55,442 | 3,442 | 3,175 | 3,119 | 67.7 | 34 |
| 連22.3 | 59,532 | 6,366 | 5,935 | 3,961 | 87.8 | 35 |
| 連23.3 | 68,383 | 9,014 | 7,579 | 6,195 | 140.3 | 40 |
| 連24.3 | 75,725 | 9,621 | 8,513 | 7,731 | 175.4 | 44 |
| 連25.3 | 87,311 | 12,197 | 12,840 | 9,936 | 225.4 | 47 |
| 連26.3予 | 90,000 | 12,000 | 12,000 | 9,500 | 215.5 | 48 |
| 連27.3予 | 100,000 | 13,500 | 13,500 | 9,800 | 222.3 | 48〜50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 13,157 | -2,574 | -7,415 |
| 2024 | 12,183 | -3,952 | -8,124 |
| 2025 | 12,922 | -1,050 | -7,756 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 13.1% | 4.5% | 9.4% | – | – |
| 2024 | 12.7% | 5.1% | 9.7% | – | – |
| 2025 | 13.9% | 6.2% | 11.0% | 14.2(高)/10.8(安) | 1.00 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見ると、連24.3では営業利益96億円、経常利益85億円、純利益77億円、連25.3では営業利益121億円、経常利益128億円、純利益99億円と大きく伸びており、この期間は事業環境が非常に良好だったことが分かる。連26.3予では営業利益120億円、経常利益120億円、純利益95億円と、ピークアウト気味ではあるものの高水準を維持する計画となっており、急減速というよりは一段上の利益水準で安定させるフェーズに入ったと見るのが自然である。
収益性の面では、営業利益率が2023年13.1%、2024年12.7%、2025年13.9%と3年を通じて13%前後を維持しており、製薬会社の中でもかなり高い水準にある。医療用医薬品とOTCの両輪が機能していることが、この安定した利益率につながっていると考えられる。ROEも9.4%から11.0%へと徐々に改善しており、資本効率は着実に良くなっている。ROAも4.5%から6.2%まで上昇しており、資産を使った稼ぐ力も強まっていることが数字に表れている。
一方でバリュエーションを見ると、2025年の実績PERは高値平均14.2倍、安値平均10.8倍、PBRは1.0倍となっている。営業利益率13%台、ROE11%という水準を考えると、極端に割高な評価ではなく、むしろ市場は成長性よりも安定性を重視した慎重な評価を与えている印象がある。高成長株のようなプレミアムは付いていないが、その分、評価の下振れ余地も限定的と考えられる。
これらを総合すると、ゼリア新薬工業は高い利益率を安定的に維持し、ROEやROAも改善傾向にある収益性の高い企業である一方、今後については急成長よりも高水準での横ばいから緩やかな成長を想定すべき段階にあるといえる。PER10〜14倍、PBR1倍前後という評価は、現在の利益水準と事業特性を踏まえると妥当であり、過度な期待も過度な悲観も織り込まれていない。
投資判断としては、短期間で大きな株価上昇を狙う成長株ではないが、収益性と安定性を重視する中長期投資には向いた銘柄といえる。業績が大きく崩れない前提であれば、評価面での安心感は高く、じっくり持つことで報われやすいタイプの企業、という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
まず予想配当利回りを見ると、連26.3、連27.3ともに2.29%となっており、水準としてははっきりと高配当とは言えない。一般に配当目的で投資する場合、3%台以上を一つの目安にすることが多いため、この利回りだけを見るとインカム狙いの主力銘柄にはなりにくい。
一方で、配当の裏付けとなる収益力はかなり安定している。営業利益率は13%前後と高水準を維持しており、ROEも11%、ROAも6%台まで改善している。営業キャッシュフローも安定してプラスで推移しており、無理をして配当を出している印象はない。現在の配当水準は、利益やキャッシュフローの範囲内で十分に賄えていると考えられる。
ただし、会社の性格として、配当を強く前面に押し出すタイプではないことは意識しておく必要がある。医療用医薬品とOTCの両立、海外展開、研究開発といった分野に一定の資金を回しつつ、余力の範囲で安定配当を行うスタンスに見える。そのため、今後も配当利回りが一気に3%台後半や4%台まで高まる展開は想定しにくく、利回りは2%台前半から中盤で落ち着く可能性が高い。
結論として、ゼリア新薬工業は配当目的だけで買う銘柄ではない。利回り2.29%ではインカム投資の中心にはなりにくい。一方で、利益率が高く、業績の安定感もあるため、配当の維持や緩やかな増配は期待しやすい。高配当を狙う投資よりも、安定した収益力を背景に、配当をもらいながら中長期で保有する補助的な配当銘柄として考えるのがしっくりくる、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ゼリア新薬工業について、現在株価2,095円前後を基準に見ると、安定配当を前面に押し出した高配当株というよりは、消化器系の医療用医薬品と滋養強壮剤「ヘパリーゼ」を中心とするOTCを両輪に、比較的高い収益性を維持している中堅製薬会社と位置づけられる。医療用では消化器系に強みを持ち、OTCでは長年育ててきたブランド力が安定収益につながっている点が特徴であり、さらにスイス企業の買収を通じて海外展開も進めている。
一方で、急成長型の新薬メーカーではなく、事業の性格は成熟寄りで、株価の評価は成長期待よりも収益の安定性と水準に左右されやすい。配当は安定しているが利回りは2%台前半にとどまり、投資リターンは配当よりも業績水準と評価レンジの変化に依存する構造になっている。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、医療用医薬品の消化器系が引き続き堅調に推移し、OTCではヘパリーゼを中心としたブランドが安定的に成長、さらに海外事業が徐々に利益貢献を高める展開を想定する。営業利益率は13%前後の高水準を維持し、ROEやROAも改善基調を続け、収益性の高さが持続的なものとして市場に評価される。この場合、安定高収益企業としての位置づけが明確になり、PERは14〜15倍程度、PBRも1.2〜1.4倍程度が許容されやすくなる。利益水準の安定と評価の見直しが進めば、株価は段階的に切り上がり、5年後には2,900円から3,300円程度を目指す展開が考えられる。これは事業基盤の強さが素直に評価された場合の強気寄りのシナリオになる。
中間のシナリオでは、消化器系医療用とOTCの主力製品は底堅いものの、海外展開や新たな成長ドライバーの寄与は限定的で、利益は高水準ながら横ばいで推移するケースを想定する。営業利益率は12〜13%前後、ROEやROAも現状水準で安定し、大きな悪化は見られないが、さらなる改善も進まない。この場合、市場評価は現状を大きく変えず、PERは11〜13倍、PBRは1倍前後で落ち着きやすい。株価はレンジ内での動きが中心となり、5年後の水準は2,300円から2,700円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、国内医療費抑制の影響やOTC市場での競争激化、海外事業の伸び悩みなどが重なり、売上は維持できても利益率が徐々に低下する展開を想定する。営業利益率が12%を下回り、ROEやROAも低下すると、収益性の高さに対する市場評価は慎重になる。この場合、PERは10倍前後まで切り下げられ、PBRも1倍を下回る可能性がある。配当は維持されても評価の下支えとしては弱く、株価は調整を受けやすい。5年後には1,700円から2,000円程度にとどまる弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価2,095円を起点としたゼリア新薬工業の5年間の値動きは、良い場合で2,900円から3,300円前後、中間で2,300円から2,700円、悪い場合で1,700円から2,000円といったレンジが想定される。配当利回りは安定しているものの高水準とは言えず、投資妙味はインカムよりも、高い収益性がどこまで維持され、それが評価にどう反映されるかにかかっている。高成長株ではないが、安定した利益基盤を背景に中長期で値動きを狙う投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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